弾き語りがグングン上達する!! ボーカルレッスンノート VOL.10 ピッチを良くする(3)【Go!Go! GUITAR プレイバック】


解説/石田匠
 

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ボーカルレッスンノート VOL.10(1)
 

 ポップスなど現代の音楽は、昔のクラシックのような対旋律(主旋律を補う別のメロディーのこと。オブリガートとも言う)が主ではないので、コードに含まれる音(コードトーン)をしっかりと歌えるようになることが、理論を学んだりハモリをする上で重要になります。そのためにも、前回学んだ7つのダイアトニックコードを歌う練習は継続して行うようにしましょう。コツをつかんだら、それを発展させて自分なりのトレーニング法を作れるようになるのが理想的です。

 

ボーカルレッスンノート VOL.10(2)

 

ボーカルレッスンノート VOL.10(3)

 

 今回はドレミ歌いをより深く学んでいきますが、その前に音を当てるトレーニングをやりたいと思います。ソルフェージュ(楽譜を読むことを中心とした基礎訓練のこと)に近いのですが、前回練習したド→ミ→ソ→ミ→ド、ファ→ラ→ド→ラ→ファ、ソ→シ→レ→シ→ソ、ド→ソ→ミ→ドという3コードの構成音を歌う音階歌いを行ったあとに、その音の中からランダムに鍵盤を押して何の音か当てるゲームをしてみましょう。
 ドの音は何となく覚えているけど、それ以外の音を鳴らすとその音が主音だと錯覚しがちなので、音階歌いの余韻が消えないうちに答えるといいでしょう。ゲーム性もあるし、ピアノのアプリをダウンロードすればどこでも自分でできるので、ぜひ友達とやってみてください。
 慣れてきたら黒鍵も入れてみましょう。すると、何となく“ダイアトニックコードの音じゃないな”と気付くはずです。黒鍵を入れてもいいし、キーを変えてみてもいいと思う。これができるようになると、ピッチも良くなるしインターバル(スケール上における2つの音の音程差)も把握できるようになります。

 

ボーカルレッスンノート VOL.10(4)

 

ボーカルレッスンノート VOL.10(5)

 

 たとえばKey=Gの坂本九「上を向いて歩こう」だったら、クラシック育ちの人や絶対音感の人なら歌い出しの“上を”が“ソソラ”であるとすぐに把握できるけど、そうでなければ移動ドで譜面にドレミを書き込んでいきましょう。移動ドで書くなら“ソソラ”は“ドドレ”になります。なぜ移動ドで書き直すかと言うと、ドレミファソラシドのピッチ感がせっかくついてきたのに、Key=Gの主音をソで考えるとピッチ感が混乱して、メロディーをきちんと歌えなくなってしまうからです。移動ドでしっかりとメロディーを採って、その次に歌詞を当てはめていくとよりキレイにメロディーが体に入っていきます。メロディーを再度ちゃんと採ろうというときにも有効な方法です。
 このように、譜面の情報を読み取る“解読力”を高めれば、歌も楽器ももっとうまくなります。ポップスは、アドリブをしやすくするためにコードの上にメロディーを好きに歌っていいよという汎用性の高さがウリだと思うのですが、だからと言ってそれにあぐらをかいているといずれ壁にぶち当たります。クラシック育ちの人たちは小さい頃からソルフェージュや理論を学んでいるわけで、音楽を長くやる上で最低限の理論は勉強しておく必要があるでしょう。

 

ボーカルレッスンノート VOL.10(6)

ボーカルレッスンノート VOL.10(7)

 

ボーカルレッスンノート VOL.10(8)

 

1.字ハモとは
 

 ここからは、一番簡単なハーモニーの練習をしましょう。リードボーカルに対して、同じリズムで違う音程で歌を重ねることを“字ハモ”と言います。“イチロクニーゴー(I-Ⅵm-Ⅱm-Ⅴ)”と呼ばれる代表的な循環コード(延々に繰り返すことができるコード進行)で考えていきましょう。Key=Cのイチロクニーゴーは、C(I)→Am(Ⅵm)→Dm(Ⅱm)→G(Ⅴ)です。ワム!の「ラスト・クリスマス」もこのコード進行ですね。
 字ハモにはさまざまな種類がありますが、代表的なものにメロディーに対して3度上の音を積むというのがあります。基本的にはメロディーに対してひとつ飛ばして音を積むと考えておいてください(もちろん例外もありますが)。

 

ボーカルレッスンノート VOL.10(9)

 

2.コードの構成音は入れ替えてもいい?

 Cはドミソ、Amはラドミ、Dmはレファラ、Gはソシレという構成音から成り立っていますね。Cは上にもドミソがあります。Amは上にも下にもラドミがあります。DmもGも同じく上にも下にもレファラ/ソシレがありますね。コードの構成音を、オクターブ単位で上下に動かすことを“和音の転回”と言います。たとえば、ルート音(Cならド)をオクターブ上に上げてミを一番下に持ってくることを“第一転回形”と言います。つまり、Cの構成音だったらドミソではなくミソドにしてもいいんです。なぜならば、ベースがルート音を補っていれば、必ずしもドミソのドが下でなくてもいいからです。

 

ボーカルレッスンノート VOL.10(10)

 

3.ハモりの音を積んでいこう

 コードの音がなるべく大きく動かないように音を選んでいきます。鍵盤もギターもそうなんですけど、それが鉄則です。共通している音をつなげていくので、CとAmはドとミが共通ですね。ソはAmにはない音ですが、ここは例外的にAm7にしてソを重ねています。Dmはドミソからひとつずつ上げてレファラ。Gはレは一緒でファとラをひとつずつ上げる。下のパートは「ドドレレ」、真ん中のパートは「ミミファソ」、上のパートは「ソソラシ」になります。​​​​​​​

 

ボーカルレッスンノート VOL.10(11)

 

4.ウーアーでハモろう​​​​​​​

 真ん中のパートは全部コードの音にハマっているから歌いやすいけど、上のパートは若干難しいかも。下のパートはドとレのステイですね。ステイラインに対してきっちりと音を積んでいくのが字ハモの基本。これを自分で多重録音したり、仲間とかと一緒にやるとピッチは格段に良くなります。で、これを“ウーアー”で歌います。歌詞を潰さない言葉ってウーアーなんですよね。1〜2小節目はウー、3〜4小節目はアーで歌うといいでしょう。現在のレコーディングでは個別に録音していくことは可能ですけれど、昔はトラックにも限りがあり、ひとつのマイクに3人並んで録音することが普通でした。是非、仲間とコーラスレコーディングしてみてください。いろんな発見があると思います。
 管楽器やピアノやギターとはまた違う、人間の声の白玉の音というのはものすごいパワーがあります。音の積みがわかりやすいので、ピアノでやるといいでしょう。

 

 


 

■INFORMATION

PROFILE

石田匠

(いしだ・たくみ) 1973年生まれ・B型、広島県出身のシンガーソングライター。産まれた時からハスキーな泣き声に、両親が驚いたという。中学時代から80年代洋楽を入り口に、ロックを聴いて育つ。1998年、バンド『The Kaleidoscope』でメジャーデビュー。2004年、ササキオサム(MOON CHILD)とのユニット『Ricken’s』に参加。30代半ばになり自身のボーカルスタイルに限界を感じ、歌うことを一から見直すことになる。「気持ちよく歌うためには?」ということをいつも考えている。現在はソロアーティスト『石田匠』として活動中。同時にインストラクター、楽曲提供、コーラスなども行っている。www.kowanebito.jp

 

(Go!Go! GUITAR 2016年3月号に掲載した内容を再編集したものです)

 


 

Edit:溝口元海