コードの響き、キャラクターがよくわかる 作曲に役立つコードワーク 第1回 オシャレで都会的な響き「メジャー 7th」【Go!Go! GUITAR プレイバック】


コード=(和音)にはそれぞれ特有の響きがあって、たとえばCとCmとでは響きが違うのはすぐにわかると思う。ではそのコードってどうやって作られるのか? そしてどうやって音楽に組み込んでいけばいいのか?それを勉強していく連載の記念すべき第1回目!今回採り上げるのは、ちょっと都会的でお洒落な響きの「メジャーセブンス(M7th)」だ。


文/平川理雄 マンガ/dobby

作曲に役立つコードワーク 第1回(1)
 

 メジャー7thの響きがなぜ都会的でお洒落なのか? それはそのような音楽に使われてきたからだ。メジャー7thが日本のポップスで多用されるようになったのは、1970年代始め頃に流行った荒井由実あたりの「ニューミュージック」と呼ばれる音楽からと言われている。
 それ以前、1960年代後半の音楽シーンではグループサウンズやクロスオーバー、フォークなんかが流行っていて、そこで多用されていたのは3声和音の明るいメジャーコードと暗いマイナーコード(それに4声和音の7thコード)くらいだった。その明るいメジャーコードに4つ目の音であるM7音が追加されただけで、その響きが一気に深くなるのだから不思議としかいいようがない。というのもM7音はルートが半音下がった音で「何かの音が下がると暗く感じる」という響きの特性(譜例①)が反映されているようだ。明るさと暗さが共存するなんて、なんと奥ゆかしいことか。

 

作曲に役立つコードワーク 第1回(2)

 

作曲に役立つコードワーク 第1回(3)

 

作曲に役立つコードワーク 第1回(4)

 

 ダイアトニックコードに登場する2つのM7thコード(IM7/IVM7)を、3声和音(譜例②)と4声和音(譜例③)で弾きくらべてみよう。3声和音の方は元気で明るくて、熱血漢のような熱さ、ストレートな響きという印象だと思うが(感じ方は人それぞれ…)、それにくらべて4声和音の方はホワっとした響きで、優しさが伝わってくるような、自分の辛さに共感してくれる印象を受けないだろうか。このように、通常3声和音のメジャーコードで弾いている箇所でも、もしその部分で柔らかさや優しさ、共感などを表現したいのであれば、4声和音のメジャー7thに置き換えてみよう。ただし! 条件が1つだけある! それは「メロディーがルート音ではないこと」。
 例えばメロディーがルートと同じC音のときにCM7を弾いてしまうと、M7thであるB音とC音とが半音でぶつかってしまう(譜例④)。このような伴奏だと、メロディーの音程が取りづらくて歌いにくくなってしまう。「コードの中のどれかがメロディー音となる」のが鉄則なので、ここでのメロディーはC音以外のE音、G音、B音のどれかでなければならない。もしC音のメロディーを優先させたい曲なら、あえてM7thを使わずコードは3声和音のCにしよう。

 

作曲に役立つコードワーク 第1回(5)

 

作曲に役立つコードワーク 第1回(6)

 

 最後にメジャー7thの響きを効果的に使ったフレーズ(譜例⑤)をあげておこう。1970年代にはフュージョンと呼ばれるインストゥルメンタル音楽(以下、インスト。主にアメリカ発祥)が大流行し、そこでよく使われた手法で「メジャー7thの平行移動」というものがある。これはエレクトリックギターのカッティングで演奏するとより雰囲気が出るのだが、もちろんアコギでも問題ない。
 この手の音楽では転調が多いことからあえてダイアトニックコードを使わず、コード進行から曲を作ることも多いので、メロディーは後からコードの邪魔にならないところに配置されたりする。そしてインストの場合は歌詞の影響を受けないので、あまり情念に縛られることがない。感情的なものよりもサウンドを優先させるあたりが、クールで都会らしい響きを印象づけるのかもしれない。

 

作曲に役立つコードワーク 第1回(7)

 

作曲に役立つコードワーク 第1回(8)

 

 コードの響きや使い方を学ぶ際に、連載を通して知っておいてもらいたいことがある。それが「ダイアトニックコード」と呼ばれるコードの集まりだ。譜例⑥を見てもらうと、各コードの一番下だけを取り出せばCメジャースケールになっているのがわかる。その上にスケールの音を1つ飛ばしに拾って縦に4つ積み重ねる(Cの上にはE、G、B)と自動的に4声の和音が出来上がる。メジャースケールの7つの音すべてにこれをおこなうと7つのコード群が現れる。よって、譜例⑥はCメジャースケールから作られた「Cメジャーダイアトニックコード」ということになる。
 伴奏としてのコードは「メロディー音」を飾るものなので(コードの中のどれかがメロディー音となる)、Cメジャースケールで作られたメロディーならCメジャーダイアトニックコードだけで伴奏することが可能だ。つまり、初心者が最初に学ぶべきコードはここに登場する「M7、m7、7、m7-5」の4種類ということになる。
 メジャーダイアトニックコードには共通点がある。まずDメジャーダイアトニックコードを見てみよう(譜例⑦)。Dメジャースケール上に自動的に作られたコードの並びは、下から「M7、m7、m7、M7、7、m7、m7-5」と、Cメジャーダイアトニックコードとまったく同じだ。そこでローマ数字で度数を示した「IM7、IIm7、IIIm7、IVM7、V7、VIm7、VIIm7-5」という並びは必ず覚えておこう。ちなみに、マイナースケールにもダイアトニックコードはもちろん存在するのだが、それはまた別の機会に。今回は、ダイアトニックコードに2つ登場するM7を研究したことになる。ちなみにCM7なら以下の6つのフォーム(図)で演奏可能だ。

 

作曲に役立つコードワーク 第1回(9)

 


(Go!Go! GUITAR 2016年12月号に掲載した内容を再編集したものです)

 


 

Edit:溝口元海