コードの響き、キャラクターがよくわかる 作曲に役立つコードワーク 第2回 “次へ”と進んでいくポジティブな響き「マイナー7th」【Go!Go! GUITAR プレイバック】


コードがどうやって作られ、そしてどのように音楽に組み込まれているかを勉強していく連載の第2回。今回取り上げるのは、ちょっと浮遊感があり、音楽がそこからまだ続いていくような印象を与える「マイナーセブンス(m7)」だ。よく見る「マイナー(m)」とはどう違うのか、どんな特徴があるのか、調べてみよう。


文/平川理雄 マンガ/dobby

作曲に役立つコードワーク 第2回(1)

 

作曲に役立つコードワーク 第2回(2)

 

 前回学んだ「ダイアトニックコード」の中に3回も登場するのがマイナーセブンスだ。数あるコードネームの中でも登場頻度は高い方なので是非モノにしてもらいたい。まずは3声和音のマイナー(例:Cm)と4声和音のマイナーセブンス(例:Cm7)の違いを確認しよう(譜例①)。
 「どんより重くてもう動きたくない(泣)」感じがするマイナーコード(注:個人差はありますが…)に短7度が追加されたのがマイナーセブンス。たったこれだけの違いなのだが、マイナーの響きにくらべてマイナーセブンスは「どこかふんわりしててサウンドがまだ続きそう(ワクワク)」な感じがしないだろうか? そう、ルート(R)の上3音がメジャーコードの構成音になるため響きが柔らかくなるのだ。
 マイナーはたいていマイナーセブンスに置き換えることが可能だが、この「サウンドが続きそう」な感覚が曲を前進させる駆動力にもなっている。なので作曲した時点ではマイナーだったコードも、アレンジの過程でマイナーセブンスに積極的に置き換えたりもする。IImやIIImはそれぞれIIm7、IIIm7に置き換えてしまった方がいい場合が多い。例外的だが、VImはもともと重たい響きを担う役割なので、7thをつけない方がコード進行のメリハリがつくケースがある。初心者向けのギター教則本や歌本では、演奏を簡単にするために、本来はマイナーセブンスで演奏されている箇所もマイナーで記譜されていることもなくはない。自分で演奏してみて「なんかサウンドがどんより、もっさりしているな~?」なんて感じるようだったらそこをマイナーセブンスにしてみるとサウンドに広がりが出たり、前後のコード進行の繋がりが良くなることもあるので機会を見つけて試してほしい。

 

作曲に役立つコードワーク 第2回(3)

 

作曲に役立つコードワーク 第2回(4)

 

作曲に役立つコードワーク 第2回(5)

 

 譜例②を見てみよう。(a)はダイアトニックコードを順に上がっていくコード進行。登場する4つのコードはすべて4声和音だけれど、これを3声和音の[C – Dm – Em - F]と弾きくらべてみて欲しい。3声の方はサウンドがどこか重たくてテンポも遅くなりそう……DmとEmのところでなんだかどんよりと感じるだろう。これを4声和音で揃えると軽快でふんわりした感じがしないだろうか? 特にDm7とEm7の響きがサウンドを広げてくれている。この2つはマイナー系コードなのにも関わらず、どこか明るさを持っているので、音楽をどんどん先へと進めてくれる効果があり、聴いている人に「この先何が待っているんだろう?」と期待させる力がある。
 (b)はよく見るコード進行だと思うが、Am7が一応サウンドの終着点となっている。その直前のEm7をEmにしてしまうと、Am7に向かう直前に一旦ブレーキが掛かってしまったように聴こえてしまう。終着点の前にサウンドがどんより重くなってしまうのを避けるためにも、Em7にしておくのがいいだろう。一方のAm7は終着点なので逆に3声のAmにしておく方法もアリだ(その後もコード進行を続けたいならもちろん4声のAm7でもよい)。

 

作曲に役立つコードワーク 第2回(6)

 

作曲に役立つコードワーク 第2回(7)

 

 マイナーセブンス以外のマイナー系コードの中でよく使われるコードを紹介しておこう。譜例③を見てみると[Dm - DmM7 - Dm7 - Dm6]と4種類のマイナー系コードが並んでいる。この2つ目「DmM7(Dマイナーメジャーセブンス)」と4つ目「Dm6(Dマイナーシックス)」というコードについて解説しよう。DmM7はDマイナーの上に長7度が乗ったコード。“マイナー”と”メジャー”という2つの相反する言葉が並んでいるのでわかりづらいかもしれないが、コードの3rd音がマイナーで、7th音がメジャーセブンスという構成音だ。Dm6は同じく長6度が乗ったコード。
 このコード進行はダイアグラムを見てもらうとわかりやすいのだけれども、2弦の音だけが1フレットずつ下がっていっている。
 このようにコードの一部の音だけが動き続けるパターンは「ラインクリシェ」と呼ばれていて、特にマイナーメジャーセブンスはラインクリシェの定番としてよく使われている。マイナーコードのバリエーションとしてぜひ覚えておこう。

 

作曲に役立つコードワーク 第2回(8)
 


(Go!Go! GUITAR 2017年1月号に掲載した内容を再編集したものです)

 


 

Edit:溝口元海