コードの響き、キャラクターがよくわかる 作曲に役立つコードワーク 第3回 気持ちよく終わってほしい響き「7thコード」【Go!Go! GUITAR プレイバック】


コードがどうやって作られ、そしてどのように音楽に組み込まれているかを勉強していく連載の第3回。今回取り上げるのは、ちょっと響きが不安定(!?)な7th(セブンス)コード」だ。どうして不安定な響きが音楽に使われるんだろうか?その辺りを調べてみよう。


文/平川理雄 マンガ/dobby

作曲に役立つコードワーク 第3回(1)

 

作曲に役立つコードワーク 第3回(2)

 

 ダイアトニックコードのV7として登場する7thコード。メジャーコードに短7度が追加された形で、長3度と完全5度を持つのでメジャーコードとかなり似ているが、その響きにはとても不安感が含まれている。この響きのままじゃ曲は終われない!?とでも言おうか……。その原因は長3度と短7度で形成されるトライトーン(=三全音:全音3つ分の距離)という音程にある(譜例①)。この2つの音が同時に鳴ると空気がとても複雑に振動するのだ。
 ではどうしてそんな不穏な響きが音楽の中に存在するのだろう? それは聴いている人に「この不穏な響きから抜け出したい!」「気持ちいい響きに移って欲しい」という欲求をあえて与えることで、音楽を推進させる効果を出すためと言える。7thの響きから抜け出して安定したコードに移る(これを「解決する」という)ことでホッとさせるのだ。譜例②で確認してみると、G7の長3度「B」と短7度「F」がトライトーンで、それぞれの音が反対方向に半音移動して安定した「C」と「E」に移る。
 譜例③は多分みんな聴いたことがあると思うのだが、「気をつけ、礼」のときに鳴る「チャーン・チャーン→チャーン」だ。この「トライトーンが半音移動して解決する」動きのことを「ドミナントモーション」と呼ぶ。このドミナントモーションをコード進行の中に適度に散りばめると、楽曲がどんどん先に進んでいくような印象を与えることができる。たとえば「F→G7→C」というコード進行なら、G7→Cの部分で楽曲が強烈に進んでいく。逆に音楽を淡々とさせたいなら「F→G→C」とすればいい。ここでメジャーコードと7thコードの使い分けをしっかり理解しておこう。

 

 作曲に役立つコードワーク 第3回(3)
 

 作曲に役立つコードワーク 第3回(4)

 

 作曲に役立つコードワーク 第3回(5)

 

 V7は(I 完全4度上のダイアトニックコード)に解決することでドミナントモーションが形成されるのだが、この「完全4度上のコードに解決する」というドミナントモーションの性質を利用することで、実は他の部分でも7thは使用可能になる。
 例えば「C(I)→F(IV)」というコード進行を「C→C7(I7)→F」と置き換えてみよう(譜例④)。CからC7に移ったときに「あれ?何か変わった?」となり、C7→Fへ移ったときに「お〜!落ち着いた」と感じないだろうか?(感じ方には個人差はあるが……)。この「本来は7thではないコードを7thに置き換えた」コードを「セカンダリー(二次的)ドミナント」と呼ぶ。
 譜例⑤はEm7(IIIm7)をE7(III7)に置き換えたもの。置き換える前が淡々としたコード進行なのに対し、セカンダリードミナントを使うと圧倒的な推進力を感じないだろうか? 譜例⑥でまとめてみたのでぜひ弾いて確認してみよう。ただし注意点が1つ。それは「セカンダリードミナントへの置き換えでメロディーを邪魔しないこと」。いくらコード進行に推進力が加わったとしても、メロディーが歌いにくくなってしまったら意味がない。

 

 作曲に役立つコードワーク 第3回(6)

 

 作曲に役立つコードワーク 第3回(7)

 

 ドミナントモーションやセカンダリードミナントは適度に散りばめられることで楽曲の中に「緩急」が生まれるものなのだが、登場するコードがなんとすべて7thコードという音楽がある。それが「ブルース」だ(譜例⑦)。
 20世紀初頭あたりに確立した音楽の様式で、そこで歌われた内容は日々の労働のツラさや生活の厳しさなど、「ブルーな気分」になるようなものばかり。労働者たちが一日の仕事を終え、夕暮れにギターを手にし、日記代わりにその日のツラさを歌った……。でも……歌うことでツラさが報われた!よし、ブルースを歌うために明日も頑張って働こう!、という心境だったのではないかと筆者は思う。日々のことを淡々と歌うのだから、西洋音楽的な「解決」とか「不安→安定」とかはまさか考えるわけもなく、ただ気の向くままに12小節を繰り返しながら歌う……。
 みんなが好きなアーティストたちの中にも、ブルースに影響を受けている人は思っている以上にいるはずで、彼らの作る曲には7thコードがたくさん出ていると思う。好きなアーティストの弾いている7thコードをぜひ探してみてほしい。

 

 作曲に役立つコードワーク 第3回(8)
 


(Go!Go! GUITAR 2017年2月号に掲載した内容を再編集したものです)

 


 

Edit:溝口元海