コードの響き、キャラクターがよくわかる 作曲に役立つコードワーク 第5回 地に足が着かない不思議な響き「dim7」【Go!Go! GUITAR プレイバック】

コードがどうやって作られ、そしてどのように音楽に組み込まれているかを勉強していく連載の第5回。今回取り上げるのは、ダイアトニックコードには登場しないがとても関連性の高いdim7(ディミニッシュセブンス)だ。
文/平川理雄 マンガ/dobby
p
今回学ぶディミニッシュセブンスコード(セブンスを省略してディミニッシュ/dimと表記することもある)はダイアトニックコードの中には登場しない。だが、このダイアトニックコードととても強い関わり合いを持つコードなので、ぜひ使いこなせるようにしよう。
まずは構成音からチェックしよう(譜例①)。ルートの上に短3度、減5度、減7度が乗っているものだが、実はコレ、4つの音すべてが短3度音程で積み重なっている。減7度であるB♭♭(Bのダブルフラット=Aと同じ音)も、その上にあるルートのオクターブと短3度の音程にあることがわかる。1オクターブは12個の半音で成り立っていて、その1オクターブを均等に4等分した位置にあるのがこのコードの構成であり特徴(図①)。
M7やm7など他のコードでは、長3度と短3度など異なる音程がいくつか組み合わされていたが、dim7ではすべてが短3度音程。地に足が着かないような?不思議な響きを持っている。それもそのはずで、すべてが短3度音程ということは、どこをルートにしても構成音は同じ。つまり「Cdim7=D♯dim7=F♯dim7=Adim7」である。
どっしりとした“ルート感”がないから、地に足が着かなく聴こえるのは当然だ。ではこの響きをどうやって使えばよいのか? それは次の項目で説明する「パッシングディミニッシュ」がオススメ。
さて、これまで5回の講座に登場した5つのコードを振り返っておこう。ここまでお付き合いしてくれた方の中には、コードがたくさん出てきたので頭が記号でいっぱいになってしまった人がいるかもしれない。でも実はこの5つはそれぞれ半音違いが並んでいるだけなのだ(譜例②)。
ダイアトニックコードを使用した曲中でルートが「全音」でつながるコード進行のところ(CM7→Dm7やDm7→Em7など)で、その間にディミニッシュセブンスを配置するとアラ不思議。サウンドがものすごくスムーズに連結されるようになるのだ(譜例③(a))。
例えばCM7→Dm7の間にC♯dim7を挿入してみよう。CM7→C♯dim7では「2音が同音、2音が半音移動」になり、C♯dim77→Dm7ではなんと「3音が半音移動」になるというスムーズさなのだ! コードが柔らかく連結されているのがわかるだろう。
このように、経過的に配置されたディミニッシュセブンスコードは「パッシングディミニッシュ(略:PD)」と呼ばれる。PDは他にもIIm7→IIIm7(Dm7→Em7)の間に♯IIdim7(D♯dim7)を、IVM7→V7(FM7→G7)の間に♯IIV♯dim7(F♯dim7)を、V7→VIm7(G7→Am7)の間に♯V♯dim7(G♯dim7)をそれぞれ配置することができ(譜例③(b) ~(d))、これらのPDはすべて上行形(ダイアトニックコードがより高い方へ移動する)として使用できるのだが(その理由はまたの機会に…)、唯一♯IIdim7だけは下行形(IIIm7→♯IIdim7→IIm7)としても自然に使える(譜例③(e))。
ディミニッシュセブンスコードの使い方としては、他に「トニックディミニッシュ」と呼ばれるものもある。コードで伴奏をするときのちょっとしたアイデアなのだが、メロディーを邪魔しない限りお手軽に使えるコードだ(譜例④)。
CM7とCdim7では共通音はルートのCだけで、dim7にはあとで学ぶ「テンション」と呼ばれる、そのコードで使用可能とされる音の中にM7thがあるのだ。もしコードがCM7でメロディー音がM7thのB音だったらdim7が入れられる。
もし君が作曲を志しているのであれば、このトニックディミニッシュを積極的に採り入れたメロディーを作ってみてはどうだろう? Cn7→CM7というコード進行の部分を作り、そこでメロディー音をE♭→E(譜例⑤(a))や、G♭→G(譜例⑤(b))などと動かしてみると、コード感が豊かでとても雰囲気のある曲に仕上がるハズだ。
(Go!Go! GUITAR 2017年4月号に掲載した内容を再編集したものです)
Edit:溝口元海