仕組みがわかればコードはカンタン! ギターコードゼミ 第1回 Eフォーム(6弦ルート)【Go!Go! GUITAR プレイバック】


この新連載では、コードを「フォーム」という観点からとらえ、そのフォームがギターにとってどんな特徴的な響きをするのかを紹介していこう。フォームの仕組みさえ理解していれば、音符やタブ譜を追いかけなくても、コードネームを見ただけでザックリとではあるが伴奏が付けられるんだ。まずは「Eフォーム」から調べてみよう。


文/平川理雄

ギターコードゼミ 第1回(1)

 

ギターコードゼミ 第1回(2)

 

フォームの話

 ギターでもっとも低音が出せ、そしてもっとも力強い響きを聴かせるのが「Eフォーム(図1)」だ。使う指は人中薬の3本で済むし指を広げる必要もないから、早い段階で覚えてしまった人も多いハズ! またギターという楽器は、音程を出すのは弦だけなのではなく、ボディ、ネック、ブリッジ、ヘッドなどなど、楽器全体で豊かな響きを生み出すものなのだが、それは開放弦を鳴らしたときにもっともよくわかる。このEフォームでは6本のうちの3本が開放弦だ。楽器全体が振動するのをぜひ身体で感じ取って欲しい。注意したいのは、音を止める際に開放弦はミュートしないといつまでも音が持続して しまう。左右の手を使い正しい位置で音を止めよう。

 

ギターコードゼミ 第1回(3)
 

構成音の話

[使用弦]6本すべて
[構成音]度数:R 5 R 35 R(※R=Root)、階名:ドソドミソド、音名:E B E G♭ B E

Eフォームの響きを力強く感じる要因は、3つも含まれたルートだろう。しかもこのルート、ボトムとトップを押さえている(ここではダブルルートと呼ぼう)ので、とても「ルート感」があるのだ(図2)。さらに低音部4〜6弦を見てみるとR5Rと「パワーコード」を形成しているのがわかる。これによりまるでベーシストがいるかのような力強さを生み出している。弾き語りなどベーシストがいない編成では欠かせないフォームだろう。3rdが1つしかないのもメリット。1音動かすだけでマイナー・コードへの変化もカンタン。

 

ギターコードゼミ 第1回(4)

 

Eフォームのメリット感

このフォームのスゴさは何と言っても「6弦上のルートを変えるだけでその音がルートとなるメジャーコードが出せる」ことにある。たとえば「A♭」というコードネームをパッと見ただけでコードを押さえるのはピンとこない人も多いかもしれない。しかし6弦4フレットのA♭をEフォームの6弦開放ととらえれば、そのままA♭メジャーコードになるのだ。このとき、左手の指使いは変化するので注意。まず人差指で4フレットの1〜6弦までをバレー(セーハ)で押さえてしまおう。このセーハを開放弦とみなし、残りの中薬小指を使ってEフォームを押さえるとA♭メジャーコードとなる(図3-a)。6弦上の開放〜11フレットまでの12個の音名がパッとわかれば、即、その音をルートとしたメジャーコードが弾けることになるんだ(ダブルドットポジションの付いた12フレットは開放音の1オクターヴ上で、そこから上は再び1フレット〜と同音)。そのためには6弦上開放〜11フレットまでの音名を覚えてしまおう(図3-b)。ちなみに1フレットをバレーして作るEフォームは、みんなの苦手なFコードだ(コラム参照)。そう、FコードはEコードをゴッソリ半音上げただけの配置なんだ。ただし、このバレーを使った押さえ方だと開放弦は使わなくなるので、ギターらしい豊かな響きはかなり制限されてしまうだろう。それでも、パッとメジャーコードを押さえられるというメリットは大きい。

 

ギターコードゼミ 第1回(5)

 

ギターコードゼミ 第1回(6)

 

ギターコードゼミ 第1回(7)

 

Eフォームからわずかな変化をさせて作ることのできるコードを紹介しよう(図4)。3弦の3rdを半音上げれば「Esus4」となり、これを半音下げれば「Em」になる。そこから4弦を開放にしたものが「Em7」。Eフォームから4弦の指を外せば「E7」となり、これらはバレーコードでも使用可能だ。また、Eフォームに1弦2フレットを加えれば「Eadd9」となり、この響きもポップスには欠かせない。これはポジション移動したバレーコードでは指が足りないが、その場合には5・6弦を弾かないようにしてしまえばOK。1〜4弦だけでも十分コード感は出せる(響きは薄くなってしまうが…)。

 

ギターコードゼミ 第1回(8)

 

ギターコードゼミ 第1回(9)

 

来月号以降「Aフォーム」、「Cフォーム」、「Gフォーム」、「Dフォーム」を解説していくことになるけど、ここでは先取りしてそれらのフォームでもEコードが弾けるのだということを知っておこう(図5)。「なんでそんなフォームでEコードを弾かなきゃいけないの? EはEでイーじゃん!」と思うかもしれないが、重要なのは「トップノート」と「響きの厚さ」だ。トップノートはメロディを邪魔してはいけない音だし、響きの厚さはその前後のコードと関連してくる。「どうも曲中でEコードだけサウンドが浮いてるな……」と感じたら、別の押さえ方も試してみよう。

 

ギターコードゼミ 第1回(10)

 

人気/定番曲で、キーEの曲をピックアップしてみた!
 

「ヘイ・ジョー」/ジミ・ヘンドリックス
6弦の開放E音はもちろん、6弦を多用したフレージングはまさにロックギターの神髄。

「チェンジ・ザ・ワールド」/エリック・クラプトン
イントロにキーEの響きが集約。ギターなしでは生まれ得なかっただろう名フレーズ。

「ないものねだり」/KANA-BOON
原曲通りのリフを弾いても、コードストロークでも聴き応えあるのがキーEのメリット。

「海の声」/浦島太郎(桐谷健太)
キーEの曲は6弦にルートが出てくるコードが多いので、その動きを意識して弾こう。
 

ギターコードゼミ 第1回(11)


(Go!Go! GUITAR 2016年6月号に掲載した内容を再編集したものです)

 


 

Edit:溝口元海