YAS-62が鳴り響いた瞬間、当時の記憶や熱い想いが蘇りました

 

サックスプレイヤーでありチャンネル登録者21万人を超えるYouTuberでもあるユッコ・ミラーが「Cheer」「My Memory」という新曲2曲に加え、彼女のレパートリーである人気カバー曲を収録した最新アルバム『City Cruisin'』を12月7日にリリースした。まるで導かれるように再会を果たした思い出のサックス、そこから生まれた眩い新曲について話を聞いた。

さまざまな時代のポップスやアニソンの名曲をクルーズ

 

――ニューアルバム『City Cruisin'』はどういった着想から制作がスタートした作品ですか?

 YouTubeで“吹いてみた”動画などをアップしているのですが、チャンネル登録者が21万人もいて、全国各地でライブをする時も“YouTubeを見て来ました”と言ってくれる方が多いんです。その中でも“YouTubeでカバーしている曲を音源として聴きたい”とか“YouTubeでカバーしている曲をアルバムにしてほしい”という要望が多くて、それに応えたいと思ったのが最初のきっかけでした。

――ファンからしたら待望というか、今までありそうでなかった作品なんですね。

 そうですね。これまでの作品にも何曲かカバー曲は収録していたのですが、カバーをコンセプトにしたアルバムは初めてです。

――『City Cruisin'』というタイトルもそうですし、ジャケットデザインもコンセプトを感じさせる仕上がりですよね。

 はい。今回はポップスの名曲がメインなので、最初は“Poppin’”というタイトルにしようと思っていました。それでCDジャケットをデザイナーさんにお願いしたら、ちょうどデザイナーさんがシティポップ時代のジャケットを手掛けてきた方だったんです。“Poppin’”というタイトルでジャケットデザインを作っていただいたのですが、できあがってきたジャケットのタイトルの下に小さく書かれていたのが“City Cruisin'”という言葉でした。“この言葉は何ですか?”と聞いたら、“シティポップというイメージで作ったら入れたくなってしまったんだよね”と。“City Cruisin'”という響きがとても魅力的で、“さまざまな時代のポップスやアニソンの名曲をクルーズする”という意味でつけたら素敵だなと思って、このタイトルに決めました。

 

ユッコ・ミラーインタビュー_01

 

――思わぬところにヒントがあったんですね。

 そうなんです。CDジャケットもシティポップをイメージして作ってもらったのですが、今作では竹内まりやさんの「プラスティック・ラブ」を私自身が歌っています。この曲が本当に好きで、お洒落で素敵だなと思って収録しました。

――たまたまYouTubeで知ったのですか?

 はい。覚えていないけど、たぶんオススメ動画に出てきたんだと思います。シティポップは数年前から海外でも流行っているし「プラスティック・ラブ」自体はけっこう前に聴いていて、ずっとやりたいなと思っていたんです。

――でも、YouTubeにカバー動画はアップしていなかったんですね?

 そうですね。というのも「プラスティック・ラブ」は歌いたいなって(笑)。

――(笑)。歌ってみたい曲とサックスで演奏したい曲、ユッコさんの中でどういう棲み分けがあるんですか?

 「プラスティック・ラブ」に関して言うと、サックスで演奏したら想像ができそうな気がして、歌でさらっと歌ったほうが素敵になりそうだなと。

――以前のインタビューでは“ボイトレに通っていない”と話していましたね。

 実はあの後、前作のツアーのために一時期ボイトレに通いました(笑)。今回「プラスティック・ラブ」をレコーディングするにあたりまた通い始めたのですが、途中で“自分にはあまり意味がないかもしれない”と思って通うのをやめました。もちろん意味がないなんてことはなく、歌唱力を磨く上で必要ですが、人それぞれ歌に求めるものは違うじゃないですか。上手くはなりたいけれど、人が良いと思ったり感動するものって、決して“上手い”だけじゃないというか。

――歌うにあたって意識したポイントは?

 サックスもそうなのですが、何かを参考にすることがあまりないんです。練習時に誰かの曲をコピーすることはあるけれど、自分の作品を作る上で誰かを真似したり参考にしたことはないです。ただの私でしかないので。

――ある意味、原曲に惑わされずというか。

 そうですね。どうやっても私は竹内まりやさんのようには歌えないし、寄せてしまうとかえって不自然になると思うんです。真似はいらないと思って。私を聴いてほしいという感覚です。

 

練習することも大事だけど、経験したことのない景色を見ることも大事

 

――新曲は「Cheer」「My Memory」の2曲ですが、これらは今作のために書き下ろした楽曲ですか?

 そうです。『City Cruisin'』をリリースするにあたり、キャッチーな曲を入れたいなと思って作りました。私は一人で知らない場所に行って、その土地のことを知っていくのが好きなんです。電車に乗って知らない駅に降り立って散歩をしたり、一人でカラオケに行ったり(笑)。そういう時にパッとメロディが浮かぶのですが、それでできた曲が「Cheer」でした。いつもファンの方に応援してもらって、それが何よりの励みになるので、メロディが浮かんだ時から今度は私がみんなを応援するような曲を作りたいなと思っていたんです。会社や学校に疲れたとか、嫌なことがあった時に聴いたらすごく元気になれる曲を作りたいと思ってイメージしたのがこの曲です。

――その場所によって受ける刺激も違うんですか?

 そうなんです。それがすごく好きで。私、練習することも大事だと思うんですけど、自分が経験したことのない景色を見ることもすごく大事だと思っていて。それが音楽にも還元されると思うんです。

――「Cheer」はどういう瞬間に浮かんだのですか?

 曲を作りたいなと思った時に、パッと浮かんできた感じです。作曲に苦しむ方が多いと聞くんですけど、私は全然そんなことはなくて、“今作れ”と言われても作れます(笑)。例えばリクエストが多くて、私の思っているものではなかったら大変ですけど、私の作りたい曲であればすぐに作れます。メロディが降りてきたらコードも浮かんで、その続きも勝手に浮かんできます。「Cheer」も5分ほどで作りました。

――演奏面やレコーディングにまつわるエピソードがあれば教えてください。

 作曲はサックス、ピアノ、歌といろいろなパターンで作るのですが「Cheer」はサックスを持っている時に浮かびました。レコーディングまでにメンバーとの時間を設けるのが難しい中、野外イベント『海・みなと・蒲郡 SEASIDE LIVE2022』に出演したのですが、リハーサルの時間が余ったので初めて「Cheer」の譜面を渡して合わせたんですね。海が目の前に広がって、太陽が輝いている最高のシチュエーションで演奏をしていたら、どんどんインスピレーションが浮かんできて、“ここはこんな感じがいい”とみんながアイディアを出してくれました。

――良い“気”が入った曲なんですね。

 はい。それをスマホに録音しておいて、レコーディングの日に聴き返しながら“こんな感じだったね”って。ずっと一緒に廻っているメンバーということもあって、気心が知れているのも大きいと思います。

――では、レコーディングもスムーズに?

 そうですね。スタジオを2日間押さえていたんですけど、スムーズすぎて1日で全曲録ってしまいました(笑)。歌だけ別日に録ったのですが、めちゃくちゃ楽しくて、遊んでいる感覚でレコーディングをしたから“もう終わっちゃったー!”みたいな。すごく楽しかったですね。

 

ユッコ・ミラーインタビュー_02

レコーディングメンバー

左から:曽根麻央(pf)、ユッコ・ミラー、中村裕希(ba)、山内陽一朗(dr)

 

――普段、苦労したり悩むことはないんですか(笑)?

 それが全然ないんですよ(笑)。毎日楽しい〜!って感じで、今日も楽しみにやって来ました。

――もうひとつの新曲「My Memory」もサックスで作った曲ですか?

 これもサックスで作った曲です。『City Cruisin'』で使用したサックスは前作までとは違い、ヤマハYAS-62の初期型を使いました。私は高校1年生の時に初めて吹奏楽部でサックスを始めたのですが、高校2年生の時に親におねだりして買ってもらった初のマイサックスがこのYAS-62なんです。すごくお気に入りで、どんなに高価なサックスよりも私のサックスが世界一!だと思って大切に使ってきました。
 でも、プロになってからは他のメーカーやヴィンテージのサックスを使ってきたのですが、サックスをどこか商売道具のように思っていたんだと思います。そんな時に“ふと“そう言えば最初に買ってもらったサックスはどうしているかな?”と思って実家から送ってもらったんです。いざ吹いてみると、サックスが鳴り響いた瞬間に当時の記憶だったり熱い想いが蘇りました。今までいろいろなサックスを使ってきたけれど、このサックスが一番良い気がしたんです。原点回帰の気持ちでこのYAS-62を使おうと思って、今回のレコーディングもこれ1本でこなしました。作曲もこのサックスで行ったので「Cheer」も「My Memory」もYAS-62が運んできてくれた曲だと思っています。

――ふと思い出したのも偶然ではなさそうですね。

 そうなんです。しかも当時は何も知らなかったのですが、すごく高いモデルではないけれど、この初期型は海外ではデイヴ・コーズなどのプレイヤも使用されているモデルで。そんなことも知らずに高校時代は使っていたけど、実はいいモデルだったんです。

――サックスを手にした時に当時の想いが蘇ったとのことですが、それはどんな想いですか?

 サックスに出会うまで、私には好きなものがありませんでした。勉強も運動も趣味もない。そんな時に出会ったのがサックスです。やっと私の武器に出会えた気がして、これを極めて絶対にプロになってやる、“私にはこれしかない”と思いながら勉強もろくにせず音楽室にこもって練習をしたり。まさにサックスは、夢と希望が詰まっている楽器。そんなサックスに対する想いや、サックスに出会った頃のキラキラとした毎日が蘇りました。

 

ユッコ・ミラーインタビュー_03

実際にレコーディングで使用したYAS-62

 

――「My Memory」はどんな時に生まれた曲ですか?

 セッションをしていた時、適当に吹いていたら“このメロディ良くない?”と浮かんだ曲です。まずは冒頭のフレーズが浮かんで、それから肉付けをしていきました。これもスムーズに完成しました。「Cheer」は最初にタイトルが浮かんだのですが、こっちは全然浮かばなくて。でも、思い出を振り返るようなメロディに聴こえると思って「My Memory」にしました。このサックスが、高校生の頃の思い出を連れて来てくれたので。

――他の曲に関してはどうですか?

 他の曲は、ツアー中のリハの空き時間にみんなでやってみようとアイディアを出してくれて。ツアーをしながらどんどんとアレンジが出来上がっていった感じです。2022年のツアー『ユッコ・ミラーSummer Tour 2022』から一緒に廻っているメンバーなのですが、みんな素晴らしくて、お互いをリスペクトしている感じが演奏にも出ていて、その状態で演奏するのってすごく楽しいんですよね。お互いを尊重しつつ、自分の個性も出しつつ、支え合いながら演奏するバランスがすごく良くて、絶対にこのメンバーでレコーディングをしたいなと思ったんです。それが叶って、しかも1日で録れたのがすごいなと思ったし、何よりもそのサックスを大切に使って全曲をレコーディングできたのがすごく嬉しいことで。

――1日でレコーディングを終えたのは信頼感やスキルもそうですが、純粋に皆さんが楽しんでいたからかもしれないですね。そんな気持ちが音にも現れているように思います。

 嬉しいです。YouTubeでたくさんの人が聴いてくれて、良かったよ、あの曲を入れてくれたら嬉しいなという想いを集めた作品ですし、ファンの方たちが支えてくれて完成したアルバムだと思っています。

――2023年1月から全国ツアー『ユッコ・ミラー5thアルバム「City Cruisin'」リリースライブ』が始まりますが、意気込みをお願いします。

 全国で待ってくれている人がいるので、会えるのが純粋に楽しみだし、最高のメンバーとの演奏を聴いてもらえるのも幸せです。カバー曲もジャズにアレンジしているので、ジャズが苦手だという人も楽しめるし、少しでもジャズのことを好きになってくれると思っています。みんなが聴きたいカバー曲をたくさん披露するので、大満足してくれるんじゃないかな。もちろん、歌もしっかり練習しておきます(笑)。

 


 

【プロフィール】

ユッコ・ミラー

Saxophonist / Composer / Arranger

三重県伊勢市出身。2016年9月キングレコードよりメジャーデビューし、テレビや雑誌を賑わす実力派のサックス奏者。
3歳よりピアノを始め、高校で吹奏楽部に所属しアルトサックスを始める。在学中よりパリ・ウィーン等、海外演奏旅行、数々のコンテストにてグランプリ等受賞。河田健氏、川嶋哲郎氏、エリック・マリエンサル氏に師事。キャンディー・ダルファー本人から演奏を気に入られ、キャンディー・ダルファー来日公演に異例のスペシャルゲストとして出演。グレン・ミラー・オーケストラのジャパンツアーにスペシャルゲストとして出演を果たすなど国内外で活躍するトップミュージシャンと多数共演。韓国やマレーシアなどの海外でのジャズフェスティバルにも出演するなど、世界的に高い評価を得ている。
2016年にリリースした1stアルバム「YUCCO MILLER」は、グラミー賞受賞アーティストのロニー・プラキシコがサウンドプロデュースを務め、ニューヨークにて録音。
2018年にリリースした2ndアルバム「SAXONIC」は、JAZZ JAPAN AWARD 2018 アルバム・オブ・ザ・イヤー(ニュースター部門賞)を受賞。ピコ太郎のプロデューサーとしてもお馴染みの古坂大魔王とのコラボ曲も収録した。
2019年にリリースした3rdアルバム「Kind of Pink」は、グラミー賞を3度受賞したデビッド・マシューズがアレンジとピアノで参加。2021年にリリースした4thアルバム「Colorful Drops」では、サックス以外に初のボーカルとしても参加している。
地上波人気テレビ番組への出演、テレビ CM ミュージックの作曲・演奏、アパレルブランドのPVに主演モデルとしても出演するなど多方面で活躍している。
2018年からはYouTuberとしての活動も展開し、現在ユッコ・ミラー公式 YouTubeチャンネルのチャンネル登録者は20万人を超え、総再生回数は4000万再生回数を突破。(2022年11月時点)自身のブログの一日の最高アクセス数が40万アクセスに達し、Ameba 芸能人・有名人ブログの人気ランキングにて第1位を獲得、また、JazzPage 人気投票サックス部門で第1位を獲得、「楽器店大賞 2021」のサックス部門で大賞を受賞するなど、インストゥルメンタルアーティス トとして類希な人気を集めている。

Official Web Site:https://www.yuccosax.com/

YouTube:https://www.youtube.com/user/la000eclair

 

【リリース情報】


ユッコ・ミラーインタビュー_04


 

『City Cruisin’』

2022年12月7日 Release
KICJ-860 3,300円(税込)

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キングレコード

商品詳細:https://www.kingrecords.co.jp/cs/g/gKICS-4088/

 


 

Interview & Text:溝口元海

 

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