【イントロマエストロ藤田太郎が厳選】神イントロソング 年別TOP10 ~1997年編~


ある編曲家は言いました。「編曲(アレンジ)」は、良いイントロができたらほぼ完成。それが、できるかできないかで大きく違ってくる。
名曲には、すべて良いイントロあり!そんな素敵な「神イントロ」からはじまる曲を、bayfm「9の音枠」水曜DJを担当し、クイズルーム「ソーダライト」のイントロクイズでお馴染みのイントロマエストロ藤田太郎が、経験と知識を駆使し当時の音楽トレンドや背景なども含め、リリースされた年でくくった独自のランキングを決定。そのTOP10を紹介してきます。

第7回目の今回、フォーカスするのは「1997年」

 

1997年は、消費税が5%に引き上げられ、大手金融機関の破綻が相次ぎ、不況の波が押し寄せてくる中、山梨県富士天神山スキー場でフジロックフェスティバルが初開催。NHK紅白歌合戦の司会に、SMAPの中居正広が抜擢され、紅組のトリを結婚・妊娠を発表した安室奈美恵が務め、レコード大賞を受賞した「CAN YOU CELEBRATE?」を披露するなど、新しいムーブメントの”はじまり”を予感させる出来事が目立った年でした。
「神イントロ」という切り口で、それまでとは違う楽曲の楽しみ方を見つけてくれたらうれしいです。それでは、カウントダウン!

 

神イントロソング_第10位
 

第10位:「愛なんだ」V6
発売日:1997年1月20日
編曲:CHOKKAKU
イントロ秒数:24秒

10位はV6、5枚目のシングル「愛なんだ」。
デビュー曲の「MUSIC FOR THE PEOPLE」から「MADE IN JAPAN」「BEAT YOUR HEART」「TAKE ME HIGHER」までの4枚は、ユーロビートサウンド戦略でヒットを連発していましたが、この曲からスタイルを変更。
メンバーの井ノ原快彦が出演したドラマ『コーチ』で共演し、主題歌の「田園」がロングヒットしていた玉置浩二に楽曲提供を持ちかけ、安全地帯で一緒に多くのヒットを生みだした、松井五郎が作詞をつけたこの曲は、V6のシングルでは最大売上となる58万枚を記録します。
作詞をした松井五郎は、この曲を書く前の思い出をこう話しています。
「まだこの曲が生まれる前、玉置浩二の武道館の楽屋にV6のメンバーが何人か来ていてご挨拶だけした。みんな「笑顔」が魅力的な若者だった。いま思えばその印象も、あの歌に導かれた要員のひとつ」
多くのジャニーズソングの編曲を担当し、ヒットを生み出してきたCHOKKAKUが手掛けた、イントロ一音目から笑みがこぼれる、軽快なギターのカッティングから、ここから変化を楽しんでいくんだ!という雰囲気も伝わってきます。グループメンバーと制作者の『絆』が、歌声と音から溢れているこの曲は当然のTOP10入りです!

 

神イントロソング_第9位
 

第9位:「Sweet Emotion」相川七瀬
発売日:1997年5月1日
編曲:織田哲郎
イントロ秒数:22秒

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9位は、1995年織田哲郎プロデュースの「夢見る少女じゃいられない」でデビューした相川七瀬の7枚目シングル。
相川七瀬は、織田哲郎が90年代前半にナチュラルな志向で等身大の “恋愛“ を描いた歌詞を爽やかなサウンドにのせて歌うムーブメントのアンチテーゼとして、アン・ルイスの「あゝ無情」や「六本木心中」を彷彿とさせる、“歌謡ロック” 系譜のサウンドアレンジが似合う、真逆の雰囲気を醸し出している人として発掘した秘蔵っ子。
デビュー曲の「夢見る少女じゃいられない」や、ミリオンヒットを記録した「恋心」も、『真逆』を表現したダークなギターロックが炸裂している曲ですが、“イントロ”ギターのカッコよさだけで判断するなら「Sweet Emotion」がナンバーワン!
織田哲郎本人もYouTubeで「相川の曲の中でも一番、自分の好きな感じを詰め込んだ曲。(The Whoのギタリストの)ピート・タウンゼントっぽいイントロもめっちゃお気に入り!」と話しています。
タイトルもアメリカ合衆国のロックバンド、エアロスミスの同名タイトルが由来というロックな遊び心も、とってもJ‐POPな感じ!最高です。

 

神イントロソング_第8位
 

第8位:「One more time,One more chance」山崎まさよし
発売日:1997年1月22日
編曲:森俊之
イントロ秒数:26秒

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イントロで、儚さやメランコリックを表現し多くの人を惹きつける曲は、長く愛され続ける傾向があります。心の内に秘めておきたい傷心は、誰もが感じたくないもの。
傷を癒すように寄り添う曲は、薬箱のように必要な時に登場し安心感を与えてくれる役割として機能します。90年代にそのポジション『薬箱ソング』のド真ん中にいる曲が「One more time,One more chance」です。
本人主演の映画『月とキャベツ』の主題歌に起用されたこの曲は、映画公開から11年後の2007年に、新海誠が監督を務めたアニメーション映画『秒速5センチメートル』の主題歌にも起用されます。新海誠がこの曲を主題歌に起用した理由は「誰もが知っていて、現代を生きる人々にとって普遍性のある楽曲にこだわった結果、この曲に行きついたから」。
“こんなとこにいるはずもないのに” “願いがもしも叶うなら 今すぐ君のもとへ”。今日もこの曲は、たくさんの人の『薬箱ソング』として、傷を癒し続けています。

 

神イントロソング_第7位
 

第7位:「1/2」川本真琴
発売日:1997年3月21日
編曲:石川鉄男
イントロ秒数:15秒

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7位は、アニメ『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』の第2期オープニングテーマに起用された、川本真琴3枚目のシングル。
イントロでクリアに響くアコースティックギターを弾いているのは、佐橋佳幸(さはし よしゆき)。1995年の神イントロランキング7位の福山雅治「HELLO」をはじめ「ラブ・ストーリーは突然に」(小田和正)「TRUE LOVE」(藤井フミヤ)「もう恋なんてしない」(槇原敬之)など、まさに神イントロ職人。この記事は、佐橋佳幸のためにあるといっても過言ではないのですが、今回この曲で注目するのはこの曲の編曲を担当した、石川鉄男。
石川鉄男は、80年代後半に山下達郎が所属するスマイルカンパニーでマニピュレーターとしてのキャリアをスタートさせた人物。マニピュレーターとは、電子機器を用いてプログラミングされた音色や楽曲を作る人。石川鉄男は、このポジションで80年代に渡辺美里や岡村靖幸といったヒットメーカーの楽曲に携わった実績と、神イントロ職人佐橋佳幸のギターテクニックを駆使し「1/2」を完成させました。80年代のヒット曲を作ってきたメンバーが“魔法をかけた“神イントロなのです。

 

神イントロソング_第6位

 

第6位:「Red Angel」ポケットビスケッツ
発売日:1997年1月22日
編曲:パッパラー河合
イントロ秒数:23秒

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6位は、バラエティ番組『ウッチャンナンチャンのウリナリ!!』から誕生した、ウッチャンナンチャンの内村光良、タレントの千秋、キャイ〜ンのウド鈴木からなる3人組ユニット、ポケットビスケッツの3枚目シングル「Red Angel」。
はじめは、国生さゆり、室井滋、高山理恵のユニット「McKee(マッキー)」のライバルという位置づけで、引き立て役として登場したキャラクターだったのですが、爆風スランプのパッパラー河合がプロデュースを担当したこの楽曲は、歌謡曲の雰囲気をしっかりと残しつつも、イントロからオリエンタルでミステリアスなサウンドアレンジが展開される、バラエティの企画モノという域をはるかに超えたクオリティがカッコイイ!と話題になりミリオンヒットを記録しました。
2019年の雑誌対談で千秋と対談したパッパラー河合は「ポケビが売れたのは、千秋の声と俺の曲の相性が完全に良かったから」と語り、千秋も「曲の歌入れの時、パッパラーさんに“君の声は良いけど少し優等生過ぎる。今まで受けてきたレッスン全部忘れていいから好きに歌って”と言われて録った歌声が、CDになった。私の殻を破ってくれた」と話しています。常識外れの企画とプロデュースが見事にマッチした奇跡の1曲が、堂々のランクインです!

 

神イントロソング_第5位

 

第5位:「promise」広瀬香美
発売日:1997年11月27日
編曲:本間昭光・広瀬香美
イントロ秒数:18秒

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5位は、スポーツ用品店「アルペン」のCMソングで、サビ前の「ゲッダン!」フレーズがゲームや動画配信サービスでも話題となった『冬の女王』広瀬香美の11枚目シングル。
この曲の最大の特徴は、なんといってもクラシック・ギターを響かせる情熱的なイントロ!冬景色で「永遠の愛」を誓う歌詞をドラマティックに演出しています。このアレンジを手掛けた本間昭光は、3年後の2000年にポルノグラフィティの「サウダージ」を大ヒットさせます。「サウダージ」以降、J‐POPでは王道の「失恋」というテーマを、ラテンロックなアレンジで、感傷的且つ、説得力のある形で描く曲が増えていきますが、それは「promise」から誕生したといっても過言ではありません。寒い季節の恋愛模様を描く、革新的な編曲イントロは、もっと語られるべき「発明」です!

 

神イントロソング_第4位

 

第4位:「Shangri-La」電気グルーヴ
発売日:1997年3月21日
編曲:Silvetti、電気グルーヴ
イントロ秒数:27秒

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テクノサウンドに独自の音楽性と、荒々しいパフォーマンスで1990年代のサブカルチャーの担い手となっていた電気グルーヴの石野卓球は、当時この曲に関して「シングルチャートに上位にランクインするグループやバンドを聞いているような人たちが間違って買ったら面白いと思って作った」と語っています。
サブカルの雄が、テクノサウンドに拘らず”あえて”ヒットを意識して制作した曲は、アルゼンチン出身のピアニスト、ベブ・シルヴェッティが1975年にリリースした「スプリング・レイン」をサンプリングした、イントロからクラシカルで美しいサウンドが響くポップナンバー。シングルチャート最高位10位まで駆け上がり、44万枚のヒットを記録しました。
ライブ定番曲となっていますが、この曲を待っていた!というポジション「Shangri-La」が演奏されることはほとんど無く、曲をつなぎながら高いテンションを保ち続ける電気グルーヴのライブパフォーマンスをキープするための“1曲”として登場するのが当たり前になっています。これは、この曲には飽きが来ないずっと愛される“耐久性”を持っている証明です。自分たちのスタイルを崩さずに、J-POPのド真ん中に理想郷をぶち込んだストロングスタイルな1曲!最高!!

 

神イントロソング_第3位

 

第3位:「ESCAPE」MOON CHILD
発売日:1997年5月28日
編曲:Moon Child・今井裕
イントロ秒数:17秒

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3位は、ドラマ『FiVE』の主題歌に起用された、4人組ロックバンドMOON CHILDの5枚目シングル「ESCAPE」。
ダンス系アーティストをチャート上位に送り込んでいたレコード会社、エイベックスが初めてバンドを手掛ける!と大きな話題と共に登場したMOON CHILD。それまで多くのヒット曲を生み出してきた、ドラマやCMのタイアップを付け、深夜のテレビで自社CMも大量にオンエアするエイベックス必勝パターンで、1996年に「Victoria」CMソングに起用されたデビューシングル「Brandnew Gear」をリリース。しかしそこから4枚目までは、なかなかヒットに恵まれませんでした。
そろそろヒットを出さなければ。。というタイミングで、ともさかりえ主演のドラマ『FiVE』の主題歌の依頼が舞い込みます。フロントマンの佐々木収は、もらったドラマの台本に書いてあった"女の子たちのスパイ大作戦"というワードから、映画「007」っぽさを出そうと完成させたのがこのイントロです。こんなにも、何かがはじまろうとしているワクワク感と、ドキドキする気持ちを私は他に知りません。
歌い出しの”綱渡りのevery day”へと続いていく17秒は、90年代に青春を過ごした人の心の深い部分にある「トキメキ」を思い起こさせてくれる神イントロです!

 

神イントロソング_第2位

 

第2位:「MajiでKoiする5秒前」広末涼子
発売日:1997年4月15日
編曲:藤井丈司
イントロ秒数:23秒

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90年代を代表するアイドルは!?という質問があったら、それは広末涼子です。異論は認めません(笑)
というのも半分冗談、半分本気で、1995年のクレアラシルのCMに登場したショートカットの"ヒロスエ”を観て、そのピュアな雰囲気に衝撃を受けた私を含めた当時の中高生は数知れず。翌年に、NTTドコモポケットベルのCM「広末涼子、ポケベルはじめる」に出演しその人気を不動なものにし、9月に初の写真集『H』『R』を同時発売。当時、高校生だった私は、どの部活の部室にも必ず、御守りのように置いてあったこの写真集が先生に見つかり没収されていったことを昨日のことのように今もはっきりと思い出します。
そんなスーパーアイドルの"ヒロスエ”が、竹内まりやプロデュースでCDデビューしたのがこの曲です。イントロから、スプリームスの「恋はあせらず(You Can't Hurry Love)」などに代表される、ベース音が「♪デッ・デッ・デー デッデッデッデー」と響くモータウンビートで躍動感と高揚感、そして爽快で甘酸っぱい雰囲気が加わったポップサウンド!
当時の流行語「MK5(マジキレる5秒前)」をもじったタイトルと歌詞を歌う"ヒロスエ”は、80年代アイドルソングの作り方で90年代のチャートを席捲し、同世代はもちろん、音楽に精通している上の世代にも支持され、59万枚のヒットを記録しました。令和になった今、聴いても変わらない初々しさを感じることができる名曲です。

 

神イントロソング_第1位

 

第1位:「硝子の少年」KinKi Kids
発売日:1997年7月21日
編曲:山下達郎
イントロ秒数:30秒

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1位は、2022年に結成25周年を迎えたKinKi Kidsのデビューシングル!
1995年放送のドラマ『金田一少年の事件簿』で主演の金田一一を演じていた堂本剛と、1996年放送のドラマ『銀狼怪奇ファイル〜二つの頭脳を持つ少年〜』で主演を演じていた堂本光一の2人のCDデビューは、ブレイク確実と言われていました。
そのデビューの大役を担ったのは松本隆と山下達郎。昭和の時代に数々のヒットソングを生み出してきた2人は、ジャニーズ事務所から“初登場1位は当然。ミリオンヒットもマスト” という、非常にハードルが高いオーダーを受けます。
松本隆は、そのプレッシャーでなかなか良い詞が書けず煮詰まってしまい、今日はもう書くのやめようと、居間へ行きテレビを付けた時に偶然KinKi Kidsの2人が歌っている姿が映り、その姿から「壊れやすくて、でもキラキラしてて綺麗だな。。硝子だな!」と思いつき、この歌詞を書きあげます。その詞を観た山下達郎は「若いからこそ輝く、もろさや、繊細さ」をイメージする、この神イントロを完成させます。
私がこの曲を一位にした最大の理由は、発売から25年経った今聴いても全く色褪せない、むしろ新しい"輝き"を放つように聴こえる点です。そして楽曲同様、堂本光一、堂本剛の2人も、1997年のデビューから今もガラスのような儚さを持ちながら、煌めき続けている同世代のスーパースターのままです。
青春の想い出の中に、KinKi Kidsとこの曲が存在することは”誇り”です。”誇り”を持って「硝子の少年」を1997年神イントロ、堂々のナンバーワンソングとさせていただきます!

 

【1997年神イントロランキングの総評】

1997年は、新しいスターの誕生を、玉置浩二、織田哲郎、竹内まりや、山下達郎といった、昭和から第一線で活躍しているミュージシャンが育んだ曲でランキングに名を連ねる中、サブカルチャーの世界からヒットソングを生み出した電気グルーヴや、ダンス系からの脱却を試みたエイベックスからデビューしたMOON CHILDなど、J-POPというフィールドに自らのスタイルを貫きながらチャレンジし成功を収めた曲も多かった年でした。90年代ヒットの“味わい深い”部分をイントロだけでもしっかりと堪能できるランキングでした。

 


 

【1997年イントロベスト25】

ランキングは25位まで決定したので、11位以下も下記に紹介します。
(藤田太郎調べ) 

 

ランキング1-10位ランキング11-20位

ランキング21-25位

 

さらに、YouTubeでイントロクイズとして楽しむことができます。

うたドン!【イントロクイズ】

 

 

【Profile】

藤田太郎

「30,000曲のイントロを0.1秒聴くだけでわかる男」イントロマエストロ。bayfm「9の音粋 」水曜日のラジオDJ、Tokyo FM『ももいろクローバーZのSUZUKI ハッピー・クローバー!』音楽コメンテーターを担当。フジテレビ『99人の壁』に出場し、ジャンル「90年代J-POP」でグランドスラム達成。日本初のクイズ専門店「ソーダライト」で毎月イントロクイズを出題中。

 

 

前の話へ→

 


 

Text&ランキング:藤田太郎