仕組みがわかればコードはカンタン! ギターコードゼミ 最終回 特殊フォーム(ディミニッシュ、ハーフディミニッシュ)【Go!Go! GUITAR プレイバック】


コードを「フォーム」という観点からとらえ、各フォームでの響きや音の厚みを研究してみる連載の最終回。これまではオープンコードを元にした5種類のフォームを用いてそれぞれの響きや特徴の考察をしてきたが、コードは他にも数多く存在するわけで…。最後にそのいくつか、特に目にしやすい特徴的なフォームを紹介しておこう。


文/平川理雄

ギターコードゼミ 最終回(1)

 

 メジャーコードやマイナーコード、メジャーセブンスにマイナーセブンス…。それぞれの響きが違うっていうのはなんとなくわかるが、その違いとは一体?それを知るためのポイントはコード内の音と音の「音程(=音と音との距離)」で、そのものさしとなる基準が「半音」だ。
 半音は1オクターブを12分割した長さで、例えばCとCI、EとFなどが「半音」という音の距離を持っている。そして半音2つ分の長さを「全音」という。つまり1オクターブは12半音(6全音)という「音程」になる。ギターでいうと12フレット分だ(図1-a)
 ところで、ある音程を計る方法には連載第4回で学んだ「音の階段だと何段(何度)違い?」という「度数」で計る方法を取り上げた。本コーナーのダイアグラムのポジション表示に出てくる3m7などがそれだ。この方法だと1オクターブは8度(完全8度)という「音程」になる。
 実はコードの響きとは「音程と音程の掛け合わせ」なのである。たとえば3声和音であるCコード(構成音:C、E、G)の中には「CとE」「CとG」「EとG」という3種類の音程が掛け合わさって同時に鳴っていることになる(図1-b)。これが4声和音になると…そのパターンは実に6種類!(図1-c)。3声のCと4声のCM7の響きの違いは、単純に音が1つ増えただけなのではなく、複雑な響きの変化が起きているのだ。

 

ギターコードゼミ 最終回(2)

 

ギターコードゼミ 最終回(3)

 

マイナーセブンスマイナスファイブ【m7-5】(別名:ハーフディミニッシュ)

 マイナーセブンスの5thを半音下げたコードがマイナーセブンスマイナスファイブ(別名:ハーフディミニッシュ)と呼ばれている(図2)。暗く、そして不安さを感じさせる響きだ。
 ところで、2つの音で形成される音程には穏やかな響きがする「協和音程」と、緊張感が漂う「不協和音程」の2種類に分類されるのだが、その中でもかなりの不協和な音程を「トライトーン(=3全音)」と呼ぶ。そしてこのコードの中にはこのトライトーンが含まれている(ルートと-5th)。これが不安さを感じさせる理由だ。また、このコードは、ほとんどの場合何かのコードと連結して使用される(次ページ参照)。コード単体で覚えることも大切だが、その前後のコードと連結し、その響きの流れを覚えることがキモになる。そう「コード進行」である。このコードは前にも書いた通り「少し不安」な響きなので、「悲しみが〜♪」とか「切なくて〜♪」なんていう歌詞に組み込むととてもマッチする。

 

ディミニッシュ【dim】

 マイナーセブンスマイナスファイブの7度の音を半音下げたものがディミニッシュ(図3)だ。この響きは何というか…不思議?サスペンス?とても独特の響きで、この中にはトライトーンが2つも存在している(ルートと-5th、m3rdとm7th)。これもまた前後のコードと連結して使用されるケースが多い。たとえばベースラインが全音移動するコード進行(例:Key=CでのCM7→Dm7など)の間にC♯dimを挿入し「CM7→C♯dim→Dm7」のように弾くとサウンドが緊張感を持ちながら緩やかに進行する。この使い方を「パッシングディミニッシュ」と呼ぶ。ちなみにCM7、C7、Cm7、Cm7-5、Cdimの5つは音が1つずつ下がった構成音を持っているので、並べて覚えておこう(図4)

 

ギターコードゼミ 最終回(4)

 

ギターコードゼミ 最終回(5)

 

 「フォームで覚える」というコーナーの趣旨からは外れてしまうが、知っておくべきその他のコードについても少し書いておこう。まずは「aug、読み:オーギュメント」。これはメジャーコードの5thが半音上がったもの(例:Caug=C/E/GI)。場合によってはC7(b13)というテンションコード表記されたものもあるのだが、初心者向けのこの場ではシンプルに考えておこう。
 次に「sus4、読み:サスフォー」。これは同じくメジャーコードの3rdが半音上がったもの(例:Csus4=C/F/G)。「サス」とは「サスペンデッド(suspended)」の略で「吊り上がる」という意味を持つ。3rdが吊り上がり4thになっているという状態で、吊り上がっているだけに「着地したくなる衝動」がある。ゆえに「Csus4→C」のように組み合わせて使われることが多い。
 もう1つサスフォー系のコードに「7sus4、読み:セブンスサスフォー」があり、これはセブンスコードの3rdが半音上がったもの(例:C7sus4=C/F/G/BY)だ。やはり吊り上がっているので着地したくなるのだが、7sus4の着地点はセブンスコードであり、そのセブンスコードはさらに次の音に解決したくなる衝動を持っている。そのため「G7sus4→G7→C」のような3段階のコード進行として使われることが多い。
 最後に、ギターならではのコードとしてパワーコードと呼ばれるものも覚えておこう。楽譜によっては「omit3、読み:オミットスリー」なんて書かれていることもある。これはメジャーコード(あるいはマイナーコード)の3rdを大胆にも抜かしてしまったもの(C(omit3)=C/G)。ハードロックなどで使われるメロディーやリフのサウンドをブ厚くさせる手法で、ベースとギターでユニゾンさせることも多い。場合によってはオクターブ上のルートを重ねた3段積みのパワーコード(C/G/C)が使われることもある。

 

ギターコードゼミ 最終回(6)

 

ギターコードゼミ 最終回(7)

 

 では実際に、特殊コードを使った進行を弾いてみよう。コード自体の響きを知ることはもちろん、そのコードがどんな役割になっているかにも注目だ。

 

ギターコードゼミ 最終回(8)

 

CからAm7へ向かうコード進行の中にBm7-5 ― E7をはさむと、よりAm7の暗い世界観が強調される。ジャズでは定番のコード進行で、ポップスでもかなり“切なさ”を表現できる。ここには明るい歌詞を持ってこないように。

 

ギターコードゼミ 最終回(9)

 

キー=Cに存在するCM7―Dm7―Em7―FM7―G7というコードの、ルートが全音移動する箇所(C―D、D―E、F―G)の間にパッシングディミニッシュを挿入したコード進行。サウンドがウネウネと上っていく感じを体感しよう。

 

ギターコードゼミ 最終回(10)

 

メジャーコードの5thが半音上がったものがaugなので、それを半音ずつ上げていくコード進行を作ってみた。シックスコードはメジャーコードに長6度の音を加えた4声和音だ。このようにコードの1音のみが変化するパターンを「ラインクリシェ」と呼ぶ。

 

ギターコードゼミ 最終回(11)

 

2種類のサスコードを使ったコード進行。どちらも聴き覚えのあるサウンドだろう。4声の7sus4は4声の7thコードと組み合わせ、3声のsus4は同じく3声のメジャーコードやマイナーコードと組み合わせて使おう。

 


(Go!Go! GUITAR 2016年11月号に掲載した内容を再編集したものです)

 


 

Edit:溝口元海