ハイレゾで味わうクラシック vol.1 ~爽やかさと情熱のバロック音楽~

 

リラックス・タイムや気持ちを盛り上げたいときなど、音楽はどんなタイミングでも心に寄り添ってくれますよね。でも、聴いている音楽がいつの間にか偏ったりしていませんか? 食事やファッション、メイクで“バランス”が重要なように、音楽も食わず嫌いせずにいろいろなものを楽しむことでもっと充実するはずです。熟成されたワインを味わうようにバロック音楽の格調高い響きを楽しんでみたら、いつもよりもちょっとゴージャスな気分に浸れるかもしれません。今回は、みなさんが素敵な時間を過ごすためのお手伝いができるバロック音楽の楽曲と演奏をご紹介いたします。奏者の息遣いや演奏のニュアンスのすべてを捉えたハイレゾ・サウンドならではの音質で、名曲と名演を味わってみてください。

 

 

バッハの「G線上のアリア」(聞き比べ)


最初にご紹介したいのは、バッハの「G線上のアリア」。ゆったりとした歩みを思わせる深い低音と、あたたかく包んでくれるような優しいメロディは、どんな時間でも、またどんな気分の時にもピッタリと寄り添ってくれます。今回はオーケストラとオルガンの二つのバージョンの音源をご用意してみました。ハイレゾならではの立体的な響きで、癒しの音楽をじっくりと堪能してみてください。

アルバム:「開幕の祈り」(佐渡裕)より
G線上のアリア
佐渡裕
※試聴音源はAAL-LC 320kbps(圧縮音源)となります

アルバム:「愛と祈りのパイプオルガン」(塚谷水無子)より
G線上のアリア
塚谷 水無子​​​​​​​

 

バッハの「ゴルトベルク変奏曲」


これからの時期、暑くて寝苦しい日が続きますね。そんな時には、不眠症に悩んでいた伯爵がバッハに作曲を依頼したという逸話のある「ゴルトベルク変奏曲」はいかがでしょうか? 優しい子守歌のようなテーマがさまざまにヴァリエーションされてキラキラと輝きを増していくのに耳を澄ますうち、一日の疲れが爽やかに癒されるはずです。

バッハ:ゴルトベルク変奏曲
高橋悠治​​​​​​​

 

パッヘルベルの「カノン」(聞き比べ)


続いては卒業式や結婚式、パーティーなど、さまざまな場で耳にする機会も多い、パッヘルベルの「カノン」。とても優しくエレガントなメロディが魅力ですし、音楽の流れが日本人にとても親しみやすいのも特徴です。この特徴的な進行は“カノンコード(進行)”とも呼ばれ、久石譲の「Summer」、葉加瀬太郎の「エトピリカ」、岡本真夜の「Tomorrow」といった、大ヒットしたポピュラー音楽にも引用されています。今回の「カノン」では、奥村愛さんの優しいヴァイオリンの響きを堪能できるものと、山形由美さんのフルートの可憐な響きとバンド・サウンドのコラボレーションによる音源をご用意しました。ぜひ聞き比べて、おなじみの曲から新たな表情を見つけ出してください。

アルバム:「With a smile~微笑みをそえて~」(奥村愛)より
パッヘルベル:カノン
奥村愛

アルバム:「山形由美ハイレゾコレクション」より
パッヘルベルのカノン
山形由美​​​​​​​

 

ヘンデルのオペラ・アリア


ここまでご紹介してきたのは、どちらかと言えば静かな時間を優雅に楽しむものが多かったですが、ここからは、夏にピッタリのパッションあふれる音楽を。朝起きて、やる気がでない、なんとなく体の調子が悪い……何かに背中を押してほしい!……そんなときには、ヘンデルのオペラ・アリアで美しい高音の連発と超絶技巧の連続に浸ってみてください。“オペラ”と聞くだけで遠い世界のものと思ってしまうかもしれませんが、オペラの中で生きるヒロインたちを取り巻く環境は、あらゆる困難に立ち向かったり、恋に悩んだりする私たちの生活とまったく同じ。ハイレゾ・サウンドで、時に優しく、時に強く……ヒロインのさまざまな想いを自在に演じ分ける森麻季さんの声の表情をとことん味わえば、ヒロインたちの想いに自分が重なるような気がしますし、“頑張ろう!”と思えることでしょう。

麗しき瞳よ〜ヘンデル・アリア集
森 麻季​​​​​​​

 

スカルラッティの「ソナタ」


歌詞がある曲はBGMにしづらいというかたには、スカルラッティのソナタがオススメ。バッハやヘンデルと同じ時期を生きた作曲家ですが、情熱の国イタリアとスペインで生涯を送ったスカルラッティの音楽はいわゆる“カタさ”とは無縁。ドラマティックな表現からはロックに通じる精神を感じます。ハイレゾ・サウンドなら、西山まりえさんの鍵盤を超高速で駆け巡るタッチを間近に感じることができます。ついつい身体が揺れ出してしまうかも。

ドメニコ・スカルラッティ: ソナタ集 鍵盤の魔術師
西山まりえ(チェンバロ)
 

 

ヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲「四季」


最後に、これからの夏をとことん満喫したい、もしくは暑さを忘れたいかたは、それぞれの季節を描き出したヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲「四季」はいかがでしょうか。川久保賜紀さんの華麗なヴァイオリンの音色とそれを爽やかに彩るオーケストラのサウンドをハイレゾで聴けば、うだるような暑さも吹き飛んでしまうはずです!

ヴィヴァルディ:四季
川久保賜紀 紀尾井シンフォニエッタ東京​​​​​​​

 

お気に入りの曲は見つかりましたでしょうか? 聞きなじみのある曲もたくさんあったかと思いますが、ハイレゾ音源の立体的なサウンドでお聴きいただくことで、いままでと違った響きに出会える、新しい発見もあったのではないでしょうか。
この連載では、これからもクラシック音楽の魅力をさまざまな角度からお伝えいたします。次回は8月4日(金)更新予定で、テーマは「優雅さと癒しの古典派」です。
どうぞお楽しみに。

 

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