“なんとなく”演奏を脱却!プロギタリスト推奨 ギター奏法意識変革トレーニング 第5回「アームを使って、心を揺らせ!!! 音程の自由を手に入れ、感情を爆発させよう!」【produced by Go! Go! GUITAR】

 

基本テクニックはひととおり覚えて人並みにギターの演奏はできる、と思っているそこのアナタ!
本当に弾けていますか? なんとなく弾ける“つもり”になっていませんか??
コツコツ練習しなければいけないのは速弾きやハイテクプレイばかりではありません! 基本的なテクニックこそ、実は日々の積み重ねや意識が大切なのです!!
ここではプロだから教えられる、演奏テクニックに本当に大切な意識と練習を伝授します!

解説・模範演奏/生本直毅


この記事で学べること

アームの名手たち

アーミングの基本

実践! アーミング練習フレーズ

 

 

■ アームの名手たち

 

 音程を繊細に揺らしたり、大胆に揺らしたり、時に「ギュワ〜ン」と叫び声をあげたり、隠し味から飛び道具まで、実に幅広く使えるテクニックが「アーミング」です!
 先日、亡くなった孤高の天才ギタリスト「ジェフ・ベック」は、まさに幅広いアーミングテクニックを駆使して、ギターで歌い、泣き、そして叫んでいました。もちろん、ジェフ・ベックに限らず、ありとあらゆるジャンルやスタイルのギタリストが、アームを使ってさまざまな表現をしてきました。

 アームの使い方も千差万別、とても全部は紹介しきれませんが、アーミングが印象的なギタリストを何人か紹介していきます!

 まずは何と言っても、ジミ・ヘンドリックスでしょう! フェンダー・ストラトキャスターとマーシャルアンプ、ファズやワウを使って、爆音&ノイジーな音をフィードバックさせながら、1969年のウッドストックで演奏された「アメリカ国家」はあまりにも衝撃的です! 当時のベトナム戦争への抗議の意味も込めたこの演奏は、フィードバックとアームを駆使して、まるで爆撃シーンのような強烈なノイズを発しながらプレイされました。このプレイを始め、ジミ・ヘンドリックスがロックギターの表現に革命をもたらしたと言えるでしょう!

 それから約10年経ち、「フロイドローズ」というアーミングしてもチューニングが狂いにくいアームが開発され、より音程の可変幅が大きく激しいアーミングプレイが可能になりました。そのフロイドローズのシリアルナンバー1番を使っていたのが、エドワード・ヴァン・ヘイレンでした。ヴァン・ヘイレンと言えば、ライトハンドの印象が強いかもしれませんが、フロイドローズを使った大胆なアーミングも先駆者的な存在でした。デビューアルバム「Van Halen」2曲目に収録されている「Eruption」(邦題「暗闇の爆撃」)は必聴!

 その後、HR/HM全盛期には数々のフロイドローズの名手たちがアーミングをしまくりました! 特に印象的なのは、ブラッド・ギルス、ジョー・サトリアーニ、スティーブ・ヴァイなどでしょうか。

 その一方で、グレッチ6120に搭載されたビグスビータイプのトレモロユニットを使いこなしていた、ブライアン・セッツァーも忘れてはいけませんね! ビグスビーは、音程の可変幅は狭いですが、その限られた中で繊細な表現ができるアームです。ブライアン・セッツァーの演奏もぜひ聴いてもらいたいです。

 まだまだ、アームの名手はいっぱい居ますが、紹介しきれないのでこの辺にしてアーミングの解説に移っていきましょう!

 

■ アーミングの基本

 

・アーミングの原理

 アーミングの原理は、弦を固定しているブリッジを動かして弦の張力を弱めたり強めたりすることによって、音程を下げたり、上げたりしています。

・アーミングの基本フォーム

 ピックを持つ手で、ピッキングの合間にアームを掴んでネック側に倒したり、アームを引っ張り上げて揺らすのが、基本的なアーミングのやり方です。中には、ピックを持つ手の薬指と小指の間に挟んでアームを持ったままピッキングするギタリストもいます。そうすることで、瞬時にアームをかけられるメリットがあるからですね!

・アーミングテクニックの具体例

①ビブラート

 アームを使ったビブラートをかけるときの基本は、「音程を元の位置から下げてまた戻す」を一定の音程幅、間隔で繰り返すことです(図1(a))。このとき、図1(b)のように揺らす間隔も音程幅も一定でなかったり、元の音程まで戻さずに揺らすととても音痴に聴こえてしまうので気をつけましょう!
 図1(b)の最後にあるような、元の音程に対して一定の幅で上下に揺らすビブラートも綺麗なビブラートになります。

 

アームを使って、心を揺らせ!!! 音程の自由を手に入れ、感情を爆発させよう!(1)

 

・アーミングテクニックの具体例

②アームダウン

 ジミ・ヘンドリックスやヴァン・ヘイレンなどに見られる激しく「ギュワーン」と音程を下げるプレイがアームダウンです。アームを掴んで、思い切りネック側に倒すことで弦が大きく緩み音程が下がります。ただし、フロイドローズ以外のアームでは、チューニングも狂いやすいのが難点。「ナットグリス」をナットに塗って摩擦を減らすなどの改善方法もあるので、試してみてください!

・アーミングテクニックの具体例

③アームアップ

 元の音程から、アームを上に引っ張り上げて、チョーキングのように音程を上げることを、アームアップと言います。アームダウンした状態でピッキングし、そこからアームを元の位置まで戻すことを指す場合もあります(これを「アームリターン」と呼ぶ場合もある)。アームダウンした状態でハーモニクスを鳴らして、アームアップさせて「ギュイーン」と鳴らすプレイは、誰しもどこかで聴いたことがあると思うので、歪んだ音色でやってみてください!
 このとき、注意しなければならないのは、ストラトキャスターの場合、どれだけアームアップができるかは、トレモロユニットのセッティングによって変わってくるということです。
 上の写真のように、ユニットがちょっと浮いている状態を「フローティング」と言い、この状態だと、元の音程より上にアームアップができますが、下の写真のようにユニットが完全にボディにくっついた状態だと、音程を上げることはできません。
 フローティングの状態によって、上げられる音程幅は変わってくるので、自分の好きなセッティングを探してみてください!

 

アームを使って、心を揺らせ!!! 音程の自由を手に入れ、感情を爆発させよう!(2)

 

アームを使って、心を揺らせ!!! 音程の自由を手に入れ、感情を爆発させよう!(3)

 

■ 実践! アーミング練習フレーズ

 

 では実際に練習フレーズでアーミングのテクニックを磨いていきましょう!

・EX-1 アーミングビブラート

 まずは、アーミングビブラートの練習フレーズ。前述の通り、一定の音程幅、間隔で揺らすように心がけましょう! ビブラート以外にも、少しアームダウンした状態でピッキングして、歌の「シャクリ」のように少し音程を下からシャクっているのと、4小節目はビブラートではなく緩やかなアームダウンといったテクニックを盛り込んでいます。

 イメージは図2(a)のように、最初はシャクってある程度元の音程を聴かせてから緩やかにアームダウンすることです。図2(b)のようにシャクリは、元の音程にスッと戻してあげないと音痴になってしまいます。また、図2(c)のようにすぐアームダウンを始めてしまうと、こちらも音痴に聴こえてしまいます。細かいテクニックと併せてビブラートの練習をしてみてください!

 

アームを使って、心を揺らせ!!! 音程の自由を手に入れ、感情を爆発させよう!(4)

 

アームを使って、心を揺らせ!!! 音程の自由を手に入れ、感情を爆発させよう!(5)

 

 

・EX-2 アームで揺らぎを与えるアルペジオ

 アームを持った状態で揺らしながらピッキングし、まるでコーラスエフェクターをかけたように揺らいだサウンドのアルペジオ練習フレーズ。アームを持ちながらピッキングするのは意外と難しいので、慣れるまでやってみてください。最後の白玉の和音はゆっくりとしたビブラートでアンニュイな雰囲気を演出してください!

 

アームを使って、心を揺らせ!!! 音程の自由を手に入れ、感情を爆発させよう!(6)

 

 

・EX-3 クリケット奏法

 こちらは、トリッキーな「クリケット奏法」の練習フレーズ。ピッキングと同時にアームを上にはじくことで、とても細かく速い揺れが起こります。そして、2小節目などの伸ばしている音は、ピッキングする手でユニットを細かく揺らすビブラートを掛けています。これはジェフ・ベックがよくやるプレイのひとつです。

 

アームを使って、心を揺らせ!!! 音程の自由を手に入れ、感情を爆発させよう!(7)

 

アームを使って、心を揺らせ!!! 音程の自由を手に入れ、感情を爆発させよう!(8)

 

 

・EX-4 ハードロック系フレーズ

 6弦開放を大きくアームダウンさせたり、ハーモニクスを使ったりしたハードロック系の練習フレーズ。最初の4音も激しめにシャクったり、2小節目のハンマリング&プリングを使った速いパッセージにアームダウンを絡めたり、とにかくなるべく大胆なアーミングを心がけましょう。

 

アームを使って、心を揺らせ!!! 音程の自由を手に入れ、感情を爆発させよう!(9)

 

 

【まとめ】

 
ひとことでアーミングと言っても、いろんな表現やテクニックあることに気づいてもらえたでしょうか? まだアーム付きのギターを持っていない方もいると思いますが、ぜひ1本はアーム付きのギターを買ってみてください! 必ずや、ギターライフが楽しくなると信じています。

 筆者はジェフ・ベックの自由自在なアーミングを見てから、アーミングにとても興味を持ちました。まだ持っていませんが、いつかはビグスビーやフロイドローズがついたギターも欲しいと思っています。
 そして今回紹介できませんでしたが、ジャズマスターやファイヤーバード、ムスタングなど、他にもアームがついているギターはいっぱいあり、それぞれ違う個性を持っています。アームの種類によってかかり方も全然ちがうので、アームはギタリストとしての個性を発揮するための大きなツールのひとつと言えるでしょう!

 アーミングを真似してみたいギタリストを見つけて、とことん追求してみるのも面白いと思います! ぜひ練習フレーズでアーミングのテクニックを身につけ、いろんなプレイをしてみてください!

 

~オススメギタリスト~

ジェフ・ベック、ジミ・ヘンドリックス、エドワード・ヴァン・ヘイレン、ブライアン・セッツァー、ブラッド・ギルス、ジョー・サトリアーニ、スティーブ・ヴァイ、スティーヴィー・レイ・ヴォーン、Char、TAK MATSUMOTO、SUGIZO、DAITA、etc. (敬称略)

 


 

【著者プロフィール】

ビブラートをマスターして、ギターで表現豊かに歌おう!(7)

 

生本直毅(いくもと・なおき)

ギタリスト、作編曲家

高校卒業後、ヤマハ音楽院に入学し、ギターと音楽制作を学ぶ。ヤマハ音楽院卒業後、ギタリストの西川進氏のアシスタントとしてプロの現場を学んだのち、プロギタリストとして様々なアーティストのライブやレコーディングでサポート活動を始める現在に至る。
また、アレンジャー活動やアーティストへのギターレッスン、ギター雑誌への執筆など幅広く行っており、2014年にはギター教則本も出版。

Twitter:@Naoki_Ikumoto

 

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Edit:mysoundマガジン編集部

 

 

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