【イントロマエストロ藤田太郎が厳選】神イントロソング 年別TOP10 ~1992年編~


ある編曲家は言いました。「編曲(アレンジ)」は、良いイントロができたらほぼ完成。それが、できるかできないかで大きく違ってくる。
名曲には、すべて良いイントロあり!そんな素敵な「神イントロ」からはじまる曲を、bayfm「9の音枠」水曜DJを担当し、クイズルーム「ソーダライト」のイントロクイズでお馴染みのイントロマエストロ藤田太郎が、経験と知識を駆使し当時の音楽トレンドや背景なども含め、リリースされた年でくくった独自のランキングを決定。そのTOP10を紹介してきます。

第11回目の今回、フォーカスするのは「1992年」

 

バルセロナ五輪で14歳の岩崎恭子が金メダルを獲得し、夏の高校野球では、星稜の松井秀喜が5打席連続で敬遠された。公立学校で第2土曜日を休業日とする週5日制がスタートと若い世代のトピックスが目立つ中、バブル崩壊で不況が深刻化し就職氷河期が到来。経済界は暗いムードが漂っていましたが、毛利衛がスペースシャトル・エンデバーに搭乗して宇宙へ行くなど明るい話題もありました。
フランスのファッションブランド『agnes b.(アニエスベー)』からフレンチカジュアルファッションが流行し、第一次タピオカブームの到来と、近年、新しいスタイルで人気が再燃している「モノ」がブームに火が付いた年でした。
そんな1992年という時代にヒットした音楽はどんな曲だったのか。
厳選した「神イントロ」という切り口で、それまでとは違う楽曲の楽しみ方を見つけてくれたらうれしいです。それでは、カウントダウン!

 

神イントロソング_第10位
 

第10位:「世界中の誰よりきっと」中山美穂&WANDS
発売日:1992年10月28日
編曲:葉山たけし
イントロ秒数:9秒

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10位は、中山美穂が主演を務めたフジテレビ系ドラマ『誰かが彼女を愛してる』の主題歌に起用された「世界中の誰よりきっと」。
80年代後半からドラマに出演すれば軒並み高視聴率を記録する、誰もが認めるスーパーアイドルだった中山美穂は、当時のことをインタビューでこう話しています。
「次はこういう歌を歌いたいとか思っていても、ドラマのストーリーに沿ったものになってしまうことが多く、どこかで自分の本当の気持ちを削りながら歌ってきた。それがまたヒットしてしまうと、また納得いかなくて…。ぜい沢な悩みですが」
そんな悩みを抱えながらも、いつかは自分の納得のいく曲を歌いたい。その想いが実ったのが「世界中の誰よりきっと」だったそうです。そして、いつかやりたいと志願していたデュエットも、当時、飛ぶ鳥を落とす勢いだったB-ing所属アーティストWANDSの上杉昇というサプライズ的な人選で実現します。
ザ・ロネッツの「ビー・マイ・ベイビー」を彷彿とさせるドラムイントロが、中山美穂の気持ちを表現するようにワクワクなグルーヴを奏でるパーティーチューンは183万枚と、中山美穂のシングルで最大の売上枚数を記録。記録も素晴らしいですが、それ以上にこの曲を歌番組で披露する中山美穂が、イントロが流れた瞬間から笑顔で本当に楽しそうに歌っていたのがとても印象に残っています。

 

神イントロソング_第9位
 

第9位:「ガラスのメモリーズ」TUBE
発売日:1992年7月1日
編曲:TUBE
イントロ秒数:16秒

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9位は「夏バンド」のイメージが非常に強いTUBEの「ガラスのメモリーズ」。
バンド名は、波でできたトンネルの中を滑ってくぐり抜けるサーフィンの演技方法「チューブライディング」が由来で、1985年にリリースしたデビュー曲の「ベストセラー・サマー」以降、毎年リリースするシングルには、必ず”夏”に関連するワードをタイトルや歌詞に登場させる徹底的なブランディングで、認知度を高めたバンドがリリースしたこの曲のイントロは、哀愁を帯びたフレーズを情熱的なエスニック風のギターが儚く響くアレンジ。
このアレンジは、日本人が好む歌謡のメロディを裏打ちリズムのサンバ調で編曲した1990年リリースの「あー夏休み」のヒットが大きなヒントになったのではないでしょうか。メロディは日本の夏、アレンジは海外の夏から取り入れる戦略で、誰も真似できない鉄壁のサマーソングを作り続けているTUBEのサウンドの中でも「ガラスのメモリーズ」の”せつなさ”は別格。夏限定ではなく、92年の神イントロTOP10にランクインは当然の結果です!

 

神イントロソング_第8位
 

第8位:「はがゆい唇」高橋真梨子
発売日:1992年5月16日
編曲:岩本正樹
イントロ秒数:17秒

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8位は、田中美佐子主演のTBS系ドラマ『眠れない夜をかぞえて』の主題歌に起用された「はがゆい唇」。
作詞を担当したのは、山口百恵の「プレイバック Part2」や、中森明菜の「DESIRE -情熱-」も手掛けた阿木燿子(あき ようこ)。阿木燿子は、作詞家として自分が一番得意な分野は「大人の女性の官能世界」とインタビューで語っており「はがゆい唇」は、まさにその真骨頂。2番Aメロの歌詞「真夜中に シャワーを浴びると 窓にナルシスト 仄白い乳房を映して 綺麗 そう呟いてる」は歌詞を読むだけで、妖艶な世界へ迷い込んでしまいます。
この世界観を届けられるのは、1984年に濃厚な大人の世界を描いた「桃色吐息」をヒットさせた高橋真梨子しかいないと、阿木燿子(あき ようこ)は感じていたのではないでしょうか。「桃色吐息」の続編を聴いているかのように、ハスキーでソウルフルな歌声が見事なまでに歌詞の世界を彩ります。素晴らしい歌詞と歌唱力に負けない、恋の欲望をエモーショナルに演出するピアノの響きがセクシーなイントロも圧巻!心にぽっかり空いてる孤独を塞ぎます。美しい。

 

神イントロソング_第7位
 

第7位:「約束の橋」佐野元春
発売日:1992年10月28日
編曲:佐野元春
イントロ秒数:28秒

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7位は、牧瀬里穂と稲垣吾郎が主演のフジテレビ系ドラマ『二十歳の約束』の主題歌に起用された「約束の橋」。
元々は1989年にリリースしたシングルでしたが、このドラマのタイアップが決まり、ボーカルをリテイクし92年に再リリース。シンセとアコギの音が重なり合うイントロから、優麗なロックサウンドを響かせるこの曲は、甘酸っぱい恋愛を描く『二十歳の約束』の牧瀬里穂演じる夕希が、稲垣吾郎演じる純平に向かって叫ぶ「ヒューヒューだよ!」のフレーズと共に思い出す人も多いのではないでしょうか。
佐野元春はこの曲のヒットに関してインタビューで
「ドラマの主題歌にならないと聴いてくれないんですか?って当時ちょっと怒ってました(笑)。でもそれをきっかけに僕の他の曲も皆さん聴いてくれたので、結果的には良かったなって思ってる。」
と話しています。1979年生まれの私と同世代の方は、この曲で佐野元春と知ったという方は非常に多いと思います。この曲で、佐野元春を知ることが出来て本当によかった。それは間違いじゃない。

 

神イントロソング_第6位

 

第6位:「ZERO」B’z
発売日:1992年10月7日
編曲:松本孝弘・明石昌夫
イントロ秒数:33秒

6位は「太陽のKomachi Angel」や「LADY NAVIGATION」、「BLOWIN'」など、デジタルビートとギターロックを融合したサウンドでヒットを続けていたB’zが、ハードロックとファンクを融合したアレンジで挑んだ「ZERO」。
イントロからシンセとギターがヘヴィーな反響で高鳴りまくり、超アガります!1991年にリリースした「ALONE」でハードロック的なアプローチのバラードに挑戦し、112万枚のミリオンヒットを記録していますが、この時は、沢口靖子主演のドラマ『ホテルウーマン』の主題歌というタイアップが付いていました。「ZERO」は、メンバーの松本孝弘がB’zのハードロックサウンドがどこまで世の中に支持されるのか観てみたい!という熱い想いを汲み取りノンタイアップでリリース。
結果は「ALONE」を上回る131万枚のミリオンヒットを記録。すでにシングル連続1位記録が続いていたB’zの快進撃が、ここからさらに進んでいきます。フェイバリットなサウンドで、まっ白な、まさに”ZERO”の気持ちでチャレンジしたこの曲のランクインは必須です!

 

神イントロソング_第5位

 

第5位:「ムーンライト伝説」DALI
発売日:1992年3月21日
編曲:池田大介
イントロ秒数:17秒

5位はアニメ『美少女戦士セーラームーン』のオープニンテーマ「ムーンライト伝説」。
まさかの!?アニソンがランクインと思う方いらっしゃいますが、ごめんね、素直になりましょう(笑)弦楽器とギターが重なり、イントロからミステリアスな雰囲気へと一気に引き込むサウンドは、まさにミラクルロマンス!一度聴いたら口ずさめる人懐っこいキャッチーさのみで比べるならこの年ナンバーワンイントロと言っても過言ではありません。
2019年に開催されたソニー・ミュージックエンタテインメント主催のアニメソング人気投票キャンペーン「平成アニソン大賞」でこの曲は1989年-1999年部門の作品賞に選出。歌唱を担当したアイドルグループ・DALI(ダリ)の高橋美鈴と西本麻里は、のちにポップ・ユニットMANISH(マニッシュ)としてデビュー。桜っ子クラブさくら組、中川翔子、ももいろクローバーZ、LiSAと、世代を越えて多くアイドルやシンガーにカバーされているこの曲のランクインはサプライズではなく、当然です!

 

神イントロソング_第4位

 

第4位:「クリスマスキャロルの頃には」稲垣潤一
発売日:1992年10月28日
編曲:清水信之
イントロ秒数:7秒


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4位は、唐沢寿明、清水美砂出演のTBS系ドラマ『ホームワーク』の主題歌に起用された「クリスマスキャロルの頃には」。
80年代後半以降、クリスマス・イヴは、カップルにとって一年で最大のビッグイベントとして定着していました。そこに目を付け、恋人同士が距離を置いてお互いの今後を見つめ直そうと悩みながら進んでいくゴールとしてクリスマスを迎えた場合、どんな結末を迎えるのかという内容でドラマ『ホームワーク』の企画立案を手掛けたのは、この曲の作詞も手掛けた秋元康。
秋元康と稲垣潤一は、1982年にリリースし31万枚のヒット曲を記録した「ドラマティック・レイン」でタッグを組んだコンビ。「ドラマティック・レイン」では、サビに入る直前に♪ドラマティッーーーーーークッ、レインという、一度聴いたら忘れない強烈なインパクトを残すフレーズを書いた秋元康がこの曲で書き上げたのは、タイトルのフレーズをラストで8回繰り返し登場させる、またもやインパクト大のフレーズ。その歌詞をみた稲垣潤一は「さすがにくどいんじゃない?」と秋元康に相談しますが、秋元康の答えは「このくどさがいいんですよ」。
逆にその言葉を聴いて安心した稲垣潤一は、清水信之が手掛けた、煌びやかでクリアな鍵盤の音がクールに響くイントロから流れるようにサビへと展開していく曲に、もどかしさを持つ哀愁のハイトーンボーカルを力いっぱい響かせます。結果、140万枚のミリオンヒットを記録。イントロから強烈に印象に残るサウンドと歌詞は、令和になった今でも12月に聴きたくなる定番曲として愛されて続けています。

 

神イントロソング_第3位

 

第3位:「もう恋なんてしない」槇原敬之
発売日:1992年5月25日
編曲: 槇原敬之
イントロ秒数:29秒


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3位は、柴田恭兵主演の日本テレビ系ドラマ『子供が寝たあとで』の主題歌に起用された「もう恋なんてしない」。
槇原敬之が最初に書いた歌詞は”もう恋しない”という内容だったのですが、プロデューサーから、救いがなさすぎる。聞いている人が悲しすぎると言われ「もう恋なんてしない、なんて言わないよ絶対」という歌詞に変更したそうです。変更したことを槇原敬之ははじめ、納得できなかったそうですが、曲のドアタマで入るキーボードの音色から琴線にふれる温かいギターは混ざっていくイントロが”悲恋”で終わらず、次の恋へ向かう希望を感じることができる仕上がりで、完成した曲を聴いた槇原敬之は、追加した歌詞は間違いなかったと納得できたそうです。
イントロのギターを弾いてるのは、小田和正の「ラブ・ストーリーは突然に」や、藤井フミヤ「TRUE LOVE」のイントロでアコースティックギターを弾いている佐橋佳幸。人が恋に落ちる瞬間をサウンドアレンジしヒットソングを生み出してきた天才ギタリストが、この曲でも失恋の傷を癒すようにエレキギターを響かせているのは、必然だったのかもしれません。

 

神イントロソング_第2位

 

第2位:「サヨナラ」GAO
発売日:1992年4月21日
編曲:編曲:山内薫, 井上徳雄, GAO
イントロ秒数:16秒

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2位は、髙嶋政宏、鈴木京香出演の日本テレビ系ドラマ『素敵にダマして!』の主題歌に起用された「サヨナラ」。
この曲のイントロを聴いて、イギリスのロックバンドThe Policeが1983年リリースにリリースした「見つめていたい」(原題: Every Breath You Take)を思い浮かべる人も多いと思います。「見つめていたい」は、メジャーコードに9thのテンションを加え、ベースが8分刻みで2拍目と4拍目にアクセントをつけたサウンドで、音楽的に発明を称されることも多い名アレンジですが「サヨナラ」は、そこに日本人が好きな儚さを加えていることが秀逸。大沢誉志幸が1984年にリリースした「そして僕は途方に暮れる」を経由し、90年代へとアップデートした「サヨナラ」のサウンドは、時代を越えて今もスタンダードナンバーとして語り継がれています。
歌い出しの「流れる季節に 君だけ足りない」から、経っていく時間を描いているのも、淡々と流れるサウンドの特徴をドラマティックに演出。何も失くさないと信じていた恋愛は失ってしまう曲ですが、私たち心の中では鳴りやむことはこれからも無いと感じられる名イントロです。

 

神イントロソング_第1位

 

第1位:「決戦は金曜日」DREAMS COME TRUE
発売日:1992年9月19日
編曲:中村正人
イントロ秒数:17秒

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1位は、陣内孝則とDREAMS COME TRUEのメンバーもレギュラー出演していたフジテレビに深夜放送されていたバラエティ番組『うれしたのし大好き』のオープニングテーマに起用された「決戦は金曜日」。
この曲は、SING LIKE TALKINGの佐藤竹善が出演していたラジオ番組TOKYO FM『旭化成 CATCH THE POP』で、佐藤竹善とDREAMS COME TRUEの中村正人がそれぞれ、アメリカのR&Bシンガー、シェリル・リンの「Got to be real」をベースにして曲を作る、という企画から生まれた曲で(SING LIKE TALKINGは92年にシングルリリースした「Rise」を制作)中村正人は「Got to be real」だけでなく、編曲でアース・ウィンド・アンド・ファイアーの「Let's Groove」をベースにし、イントロから2曲をミックスしたような雰囲気を演出しています。
中村正人はこのことに関して後に、こう話しています。
「俺はデビューしたとき、自分が大好きな洋楽をパクリ倒そうと思ってたの。何千曲とある名曲をやり尽くしたかった。俺、アースのモーリス・ホワイトを大尊敬してて、自分の曲に参加してもらったときにモーリスに告白したのね。「私はあなたの作った音楽をさんざんパクって日本で今売れちゃってます」って。そしたらモーリスが「それでいいんだ」って。私もいろいろ盗んでる。そこにオリジナリティを足して次の世代に受け渡すのがお前たちの仕事だ」って。それ聞いて俺もうめっちゃうれしくって大泣きして」
90年代にヒットチャートの上位にランクインした曲については、洋楽からのオマージュで制作した曲に関して今よりも風当たりが強く”パクリだから聴かない”という人もいました。また、洋楽を聴いている私の方が凄い(“凄い“の意味は不明)と、無駄に勝ち誇っている友人が私の周りにも大勢いました。
そんな人たちは令和になった今、カラオケに行くと「決戦は金曜日」を熱唱し、「『うれしたのし大好き』のバブリーな感じ、懐かしいよね。」と盛り上がるのです。くだらない邦楽アレルギーを持っていた人たちに、中村正人の涙は、今、どう映るのでしょうか。
吉田美和という、唯一無二のボーカリストがソウルフルに、まさに『うれしたのし大好き』な気持ちが伝わってくるパフォーマンスで、私たちに洋楽の楽しさを教えてくれたこの曲を1992年のナンバーワン神イントロとして紹介させていただきます。最高!

 

【1992年神イントロランキングの総評】

ランクインした10曲中、6曲がドラマ主題歌という結果でした。
これは1988年頃から都会に生きる男女の恋愛を当時の流行を背景に描いた“トレンディドラマ”が流行し、その勢いが92年も続いていたことが理由です。イントロから“トレンディドラマ”のターゲットである「F1層」(20歳から35歳であった新人類世代の女性)がグッとくるサウンドを研究した結果、煌びやかでドラマティックなアレンジの曲が多くなり、それらの曲がヒットチャートの上位を賑わせた年でした。

 


 

【1992年イントロベスト25】

ランキングは25位まで決定したので、11位以下も下記に紹介します。
(藤田太郎調べ) 

 

ランキング1-10位ランキング11-20位

ランキング21-25位

 

さらに、YouTubeでイントロクイズとして楽しむことができます。

うたドン!【イントロクイズ】

 

 

【Profile】

藤田太郎

「30,000曲のイントロを0.1秒聴くだけでわかる男」イントロマエストロ。bayfm「9の音粋 」水曜日のラジオDJ、Tokyo FM『ももいろクローバーZのSUZUKI ハッピー・クローバー!』音楽コメンテーターを担当。フジテレビ『99人の壁』に出場し、ジャンル「90年代J-POP」でグランドスラム達成。日本初のクイズ専門店「ソーダライト」で毎月イントロクイズを出題中。

 

 

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Text&ランキング:藤田太郎