ロック史を創ってきた者たち 世界が愛したギターヒーロー名鑑 vol.6 カルロス・サンタナ【Go!Go! GUITAR プレイバック】

ラテンロックのパイオニア ミスター哀愁ギタリスト
ギターの可能性を広げてくれたギター・ヒーローにスポットを当てて紹介するコーナーの第6回。今回取り上げるのは、ラテン、ロック、ブルース、ジャズ、ポップスと様々な音楽を融合させたアーティスト、カルロス・サンタナだ。
文/平川理雄 マンガ/dobby
■ ルーツはブルース/ジャズ
本名、カルロス・アウグスト・アルヴェス・サンタナ。1947年7月20日、メキシコのハリスコ州アウトラン・デ・ナヴァロ生まれ。ヴァイオリニストだった父の教えを受けながら5歳でヴァイオリンを始め、8歳からはギターも弾き始めた。家族でティファナに引越した頃から地元のバンドで活動した後、16歳の時にサンフランシスコへ移住。アメリカ音楽を本格的に体験することとなった当時、影響を受けたのはB.B.キング、T-ボーン・ウォーカー、ウェス・モンゴメリーなどのブルースやジャズのギタリストたちだった。
■ バンド「サンタナ」の誕生
66年、19歳のときに有名なライブハウス「フィルモア」のセッション・バンドに加入し、同年、自己のバンド「サンタナ・ブルース・バンド」を結成。翌年にはバンドとしてもフィルモアに出演した(この頃からバンド名を「サンタナ」に変更し活動していた模様)。ブルース、アフロ、ラテンなど、特にパーカッションが特徴的な音楽を融合させた独特のリズムに加え、サステインの効いたカルロスのギターサウンドは大きな話題となり、69年には伝説的なフェスである「ウッドストック」に出演。同年リリースしたデビューアルバム『サンタナ』が全米4位を記録し、スターダムを一気に駆け上った。70年代にはヒンズー教の導師スリ・チンモイに傾倒し、インド音楽とジャズロックを融合させ、80年代に入ると一転、時代に合わせたポップな楽曲も発表。90年代はその人気に陰りが見え始めたものの、99年リリースの『スーパーナチュラル』が大ヒット。グラミー賞9部門獲得と快挙を成し遂げた。
■ ワールドミュージックの雄
00年代以降はミシェル・ブランチやメアリー・J.ブライジなどの若手と積極的にコラボレーション。14年には初のスペイン語アルバム『コラソン』を発表。60年代から連続6ディケイド(10年単位の年代)でビルボード誌トップ10入りを果たしたのはバーブラ・ストライサンドとサンタナだけである。彼は「ワールドミュージック」という言葉が存在しなかった時代から、民族、ジャンル、そして世代を超えた音楽を作ってきたアーティスト(かつ世界屈指のギタリスト)なのだ。
■ カルロス・サンタナ 年表
1947 メキシコハリスコ州で誕生。
1962 アメリカサンフランシスコに移住。
1966 サンタナ・ブルース・バンドを結成。
1967 バンド名を「サンタナ」に変更。
1969 ウッドストックに出演。デビューアルバム『サンタナ』リリース。
1970 2ndアルバム『天の守護神』リリース。初の全米1位に。
1987 7thソロアルバム『サルバドールにブルースを』リリース。初のグラミー賞に輝く。
1999 『スーパーナチュラル』リリース。全世界で3,000万枚以上の大ヒットとなり、グラミー賞においても9部門で受賞。
2014 初のスペイン語アルバム『コラソン』をリリース。
■ 使用ギターの変遷
1969年〜:ギブソン・レスポール
(デビュー当時)SGスペシャル
L6-Sカスタム など
1976年〜:ヤマハ製SGカスタム“ブッダ”シリーズ
▲ʻ76年からヤマハ製SGカスタム、通称“ブッダ”シリーズを愛用。ベースとなるモデルのSG-175よりも重厚なマトワ材をボディトップにすることでレスポンスが向上。
▲ブリッジ下にサステインプレートを装着することでサンタナ・サウンドの特徴であるロングサステインを獲得した。
1982年〜:ポール・リード・スミス
1988年〜:サンタナ・モデル“Santana Yellow”
▲ʻ82年以降のメインはポール・リード・スミス(PRS)。メーカーが設立された当初から開発に携わる。
▲複数のプロトタイプを経たʻ88年に初のサンタナ・モデル “Santana Yellow”が誕生した。特徴は、単板のマホガニー・ボディ(メイプル・トップ)とローズウッド指板(ハカランダ含む)だ。
上記のメイン以外では…
フェンダー・ストラトキャスター(63年製や54年製など)
アルバレス・ヤイリのCY127CE(アコースティック)など
■ エフェクター
エフェクターは少なく、ミュートロンやエレクトロ・ハーモニクス社製のワウペダル、T-REX社製ディレイなど。歪み系はアイバニーズ製のチューブスクリーマー、エレハモ製のビッグマフなどだ。
■ アンプ
複数のメサ・ブギー社製MarkⅠヘッドと、トップ・プロ御用達のハワード・ダンブル製Overdrive Reverbを愛用。キャビネットはメサ・ブギー。ペダルボードにスイッチャーがあり、サウンドに応じてアンプやキャビネットを切り替えて使っている。
ギターもアンプも、お気に入りの仕様やセッティングを長く使うというのがサンタナ・スタイルのようだ。
サンタナ風サウンドの作り方
▲ギターはPRSの“Santana Yellow”、アンプはメサ・ブギーという組み合わせが基本。サンタナならではのズ太いロングトーンはディストーションで再現しょう。
▲サンタナといえば哀愁のロングトーン! ということで定番曲のイメージで。1小節4拍目〜3小節2拍目まで1弦13フレットに長期滞在だ。音を切らさずに伸ばせるか!?
▲当初のバンド名が「サンタナ・ブルース・バンド」だっただけあってか、ペンタトニックスケールもお手の物。譜例はDマイナーペンタトニックを激しくダウン&アップだ!
▲ラテンロックらしいミディアムテンポで休符を挟んだトリッキーなリズムも特徴的(休符は最大のリズムでもある)。2小節のビブラートの揺らし具合も絶妙なイナタさ!
▲オスティナートと呼ばれる「特定のリズムパターンの反復」を速弾きで行いながら、さらにリズムをずらズラしてトリッキーに聴かせるなんてことも、サンタナはプレイの中で行っている。
▲2音連打を3連符で行なうことも、リズムをズラして聴かせるテクニックの1つ。世界の幅広いジャンルを経験してきたサンタナならではのフレージングではないだろうか。
(Go!Go! GUITAR 2017年5月号に掲載した内容を再編集したものです)
Edit:溝口元海