【イントロマエストロ藤田太郎が厳選】神イントロソング 年別TOP10 ~1991年編~


ある編曲家は言いました。「編曲(アレンジ)」は、良いイントロができたらほぼ完成。それが、できるかできないかで大きく違ってくる。
名曲には、すべて良いイントロあり!そんな素敵な「神イントロ」からはじまる曲を、bayfm「9の音枠」水曜DJを担当し、クイズルーム「ソーダライト」のイントロクイズでお馴染みのイントロマエストロ藤田太郎が、経験と知識を駆使し当時の音楽トレンドや背景なども含め、リリースされた年でくくった独自のランキングを決定。そのTOP10を紹介してきます。

第12回目の今回、フォーカスするのは「1991年」

 

イギリスの物理学者ティム・バーナーズ=リーが、世界初のウェブサイトWorld Wide Web(WWW)を開設し、南アフリカ共和国が人種隔離政策「アパルトヘイト」を撤廃。世界が大きく変わる中、日本では東京都港区芝浦に『ジュリアナ東京』がオープンし、アメカジをルーツとしたストリートファッションがブームに。映画は『ターミネーター2』、『ホーム・アローン』、『プリティ・ウーマン』と海外作品が30億円を超えるヒットを記録する一方で、テレビドラマ『101回目のプロポーズ』『東京ラブストーリー』が最高視聴率30%越えと、トレンディな作品がブームとなった年でした。
そんな1991年という時代にヒットした音楽はどんな曲だったのか。厳選した「神イントロ」という切り口で、それまでとは違う楽曲の楽しみ方を見つけてくれたらうれしいです。それでは、カウントダウン!

 

神イントロソング_第10位
 

第10位:「LOVE TRAIN」TMN
発売日:1991年5月22日
編曲:小室哲哉
イントロ秒数:32秒

mysound_btn_470×58.png

10位は、カメリアダイアモンドのCMソングに起用された「LOVE TRAIN」。
私は1978年から1年ごとに年間シングルランキングTOP100のイントロ平均秒数を調査し、その結果を紹介していく記事をアップしているのですが、1991年は100曲の平均秒数が22.9秒と、調査した年代の中で最も平均秒数が長い年で、その要因は、TMNとXのヒットソングのイントロが長くこの2バンドのブレイクと密接な関係があります。機会があれば小室哲哉さんに、意識的に長いイントロを作成していたか聞いてみたいです。
楽曲から話が逸れてしまったので戻します。「LOVE TRAIN」はTMN名義でリリースされた曲ですが、売上枚数53万枚は、TM NETWORK時代も含めシングル最大のヒット曲です。走り出した恋のレールが止まらない表現を、イントロからアナログシンセとギターがエキサイティングに混ざり合うサウンドで彩ったロックナンバーは「Get Wild」と並び、記録にも記憶にも残るバンドのスタイルを代表する1曲といっても過言ではありません。イントロ秒数という切り口からも、この年にブレイクしたバンドという点からも、この曲のTOP10ランクインは当然の結果です!

 

神イントロソング_第9位
 

第9位:「ヒゲとボイン」ユニコーン
発売日:1991年10月25日
編曲:UNICORN
イントロ秒数:22秒

mysound_btn_470×58.png

9位は『ビッグコミックオリジナル』で連載されていた小島功のマンガからタイトルを拝借した「ヒゲとボイン」。
8cmシングルのジャケも小島功が担当しています。イントロはデジタルサウンドが高鳴るエレクトロ・ロック。その後、バンドを解散しPUFFYのプロデュースを手掛ける奥田民生が「アジアの純真」で同じサウンドアプローチを試みたのではと思わせるそのスタイルは、イギリスのバンド、E.L.O(エレクトリック・ライト・オーケストラ)をオマージュ。10位のTMN「LOVE TRAIN」もシンセとギターが混ざり合うサウンドですが、その雰囲気とは全く異なるバンドサウンドを展開しています。
特にこの曲は、ドラム西川幸一の汗を感じるようなエモーショナルな演奏力と、リアリティのある歌詞で無骨さを印象付け、会社とはなんだ!人生とは何だ!と叫び、それを永遠の深いテーマと嘆くことを、シニカルに捉え笑い飛ばす。ユニコーンというバンドの底力を知ることができる力強い1曲です。カッコいい!

 

神イントロソング_第8位
 

第8位:「SEVEN YEARS AFTER」プリンセス・プリンセス
発売日:1991年10月25日
編曲:PRINCESS PRINCESS & 笹路正徳
イントロ秒数:31秒

mysound_btn_470×58.png

8位は、プリンセス プリンセスの12枚目シングル「SEVEN YEARS AFTER」。
私はロックバンドがイントロで奏でるアンサンブルが大好きで、ライブに参加した時にイントロを聴くだけで泣いてしまうことが多いです。「SEVEN YEARS AFTER」はまさにその代表的な1曲。「GET CRAZY!」や「Diamonds」で魅せるリズミカルでブルージーなスタイルと「19 GROWING UP -ode to my buddy-」で感じる、壮大でエモーショナルな雰囲気で心の琴線に触れる部分を凝縮し完成させたのがこの曲だと私は感じるのです。
アレンジに加わっている笹路正徳は、その後、スピッツやthe brilliant greenを担当し、90年代にヒットソングを多く生み出すロックバンドを数多くプロデュース。ツボを押さえたサウンドアレンジがこの曲にも、しっかりと宿っているのでしょう。あなたに逢えてよかった。7年後はもちろん、令和の時代になってもそう思わせてくれる名ロックイントロです。

 

神イントロソング_第7位
 

第7位:「ほっとけないよ」楠瀬誠志郎
発売日:1991年11月15日
編曲:楠瀬誠志郎
イントロ秒数:16秒

mysound_btn_470×58.png

7位は、遊川和彦が脚本の担当した『ママハハ・ブギ』、『予備校ブギ』に続く、3部作の最終作ドラマ『ADブギ』の主題歌に起用された「ほっとけないよ」。
加勢大周が演じるテレビ番組制作会社に入社した新米アシスタントディレクター和繁が、ダウンタウン浜田雅功が演じる先輩ADの巧と、的場浩司が演じる貴之とともに、3Kと言われていた「キタナイ」「キツイ」「キケン」な仕事を選んだ若者の夢を掴むため懸命に働く姿と青春を描いたドラマ。イントロからキラキラとしたシンセサウンドで、逆境を打破できる!と感じさせてくれ、明朗アレンジが響きます。
学生時代に名ドラマー村上"ポンタ"秀一に弟子入りし、1986年にメジャーデビューした楠瀬誠志郎は、5年目にリリースしたこの曲でヒットを記録。決して順風満帆では無かったミュージシャン人生とドラマのストーリーが重なることもあってか、1991年という時代を紹介する番組でこの曲が多く取り上げられることが非常に多いです。逆境を、明るい気持ちで飛び越えていく豊かな時代のサウンドがこのイントロには凝縮されているのかもしれません。

 

神イントロソング_第6位

 

第6位:「さよなら夏の日」山下達郎
発売日:1991年5月10日
編曲:山下達郎
イントロ秒数:7秒

この曲の歌詞は、山下達郎本人が高校時代に彼女と「としまえん」のプールに遊びに行った時に、降ってきた夕立の情景をベースに完成させたと話してます。7秒のイントロで響くシンセ音は、どしゃ降りという表現よりも小糠雨(こぬかあめ)の方がしっくりくる、ジメジメしない雨をイメージさせるサウンドです。
J-POPで登場する雨は、気持ちが晴れない心情を歌っている曲が多く、この曲もサビラストの歌詞は”雨に濡れながら 僕等は大人になって行くよ”と綴られています。しかし2番終わりで『最後の虹』が登場。この言葉は、この年の夏と、青春の終わりを意味します。そして続くフレーズは
”どうぞ変わらないで どんな未来 訪れたとしても”
本当に変わらなかったのはこの曲なのではないでしょうか。
聴き手一人一人が違うノスタルジーの景色を思い浮かべても、同じ空間にいるように、寄り添うように、この曲のイントロは、今日も大切に僕らの心に響くのです。

 

神イントロソング_第5位

 

第5位:「どんなときも。」槇原敬之
発売日:1991年6月10日
編曲:槇原敬之
イントロ秒数:33秒

mysound_btn_470×58.png
 

5位は、織田裕二主演の映画『就職戦線異状なし』の主題歌に起用された「どんなときも。」
売り手市場と言われた時期の大学生が、就職活動に奔走される若者達の姿を描いた映画を彩ったのは、青臭い気持ちを美しく響かせるシンセイントロ。この曲の誕生秘話を槇原敬之はこう語ります。
「楽曲製作の打ち合わせ後、サビのフレーズが浮かんだ。でもそれを聴いた時に『うーわ、だっさい』って(思った)。でも、寝ても起きてもずっとそれが(頭の中で)鳴り続けて。(曲を)作らないと消えないんだと思って曲に仕上げたところ、周囲の評価は上々。あれよあれよと大ヒット曲になった。」

映画もこの曲も、イントロからがむしゃらで、何かしたいけど何をすればよいのか、どうすることが成功なのかわからない葛藤を感じるのは私だけではないでしょう。それが本人がおっしゃっている「ダサい」部分なのではないかと。ダサい部分をさらけ出すから愛おしい。まさにイントロからそれを教えてくれるのがこの曲。これからも、泥にまみれながらしっかり前を向いて進んでいきたい!どんなときも。

 

神イントロソング_第4位

 

第4位:「SAY YES」CHAGE & ASKA
発売日:1991年7月24日
編曲:十川知司
イントロ秒数:23秒

mysound_btn_470×58.png

4位は、浅野温子、武田鉄矢出演のドラマ『101回目のプロポーズ』の主題歌に起用された「SAY YES」。
感情が交錯するエモーショナルな出だしから、キラキラした星が舞い散るように鍵盤の音が優麗に響くこの曲のイントロが「僕は死にましぇん」のフレーズを叫ぶシーンや、ウェディングドレス姿で駆け、ナットを指輪代わりにはめるシーンなど、ドラマの名場面を思い出す時に頭に浮かばない人はこの世の中に1人もいないのではないでしょうか。
90年代という10年単位でランキングを付けても間違いなく上位に入るこの曲のグッとくるポイントは、エモいイントロと対照的な歌詞 ”愛には愛で感じ合おうよ 恋の手触り消えないように” というフレーズから、柔らかなぬくもりと優しさが溢れ、ASKAの伸びやかなボーカルと、チャゲとのハモリが深みを加えている点。曲のどこを切り取っても豪華絢爛な名バラードは、音楽を深く味わえる層がいくつも重なり合ってるミルフィーユのような構造になっているのです。素晴らしい。
そして4位なのは、この年の神イントロレベルの高い証拠です。

 

神イントロソング_第3位

 

第3位:「格好悪いふられ方」大江千里
発売日:1991年7月18日
編曲:大村雅朗
イントロ秒数:14秒

mysound_btn_470×58.png

3位は、片岡鶴太郎主演のドラマ『結婚したい男たち』の主題歌に起用された「格好悪いふられ方」。
力強くクリアな鍵盤の音が高鳴るイントロを大江千里と共に作り上げたのはアレンジャーの大村雅朗。80年代に松田聖子の「SWEET MEMORIES」や、渡辺美里の「My Revolution」など、当時の気品あふれる洋楽のサウンドスタイルを、日本人好みに落とし込んだ大村雅朗のアレンジは令和の時代も音楽ファンを魅了し続けています。
私が大村雅朗という名前を初めて認識したのはこの曲でした。全く楽器を演奏することが出来ない私が、ピアノを弾いてみたい!と思ったのもこの曲のイントロ。一緒に曲作りをしてきた大江千里がインタビューで大村雅朗サウンドの特徴は?と聞かれた時
「わかりやすいダイナミズム、音の明快さ、スタイリッシュでありながら、あたたかい品格のあるサウンド、数えきれません」

と答えています。この曲のことじゃん!と思った人、私だけではないでしょう。
90年代に青春を過ごしてきた僕らに“大村雅朗”という名アレンジャーを教えてくれたこの曲をTOP3ランクインにさせていただきます!

 

神イントロソング_第2位

 

第2位:「あなたに会えてよかった」小泉今日子
発売日:1991年5月21日
編曲:編曲:小林武史
イントロ秒数:17秒

mysound_btn_470×58.png

2位は、田村正和主演、小泉今日子もヒロイン役で出演していたドラマ『パパとなっちゃん』の主題歌に起用された「あなたに会えてよかった」。
結婚間近の娘と、その父の関係を描くホームドラマを彩ったこの曲の作曲と編曲を手掛けたのは、当時、桑田佳祐ソロ楽曲のアレンジを担当し、高いクオリティが話題になっていた小林武史。後にMr.childrenのメンバーから「イントロ大王」と呼ばれるほど、聴いた人の心を一瞬でわしづかみにする独創的なイントロを作ることが得意な小林武史は、この曲のイントロでも、心の奥がキュンとなるせつなくてカワイイフレーズを作り上げ、その才能をいかんなく発揮。ミリオンヒットと、この年の日本レコード大賞編曲賞を受賞と輝かしい結果を残します。作詞を担当したのは小泉今日子本人。この曲の歌詞に関してインタビューでこう話しています。
「今まで出会った人たちで、自分に影響を与えてくれた人に、ありがとうって気持ちを伝えたくて書いた。恋人に限らず、自分にとってスペシャルなポストにある人すべてにね。」

アイドルとしてデビューし、女優として成長を遂げた小泉今日子はこの曲で日本レコード大賞作詞賞を受賞。バブル景気が終わりを告げた1991年に、派手な雰囲気とは対照的なサウンドと歌詞のこの曲がたくさんの人に共感されたことは、新しい時代のスタートだったことを予感させたのではないでしょうか。”この曲に出会えてよかった”令和に時代もそう思えるこの曲を2位とさせていただきます。

 

神イントロソング_第1位

 

第1位:「ラブ・ストーリーは突然に」小田和正
発売日:1991年2月6日
編曲:小田和正
イントロ秒数:39秒

mysound_btn_470×58.png

 

1位は、鈴木保奈美と織田裕二主演ドラマ『東京ラブストーリー』の主題歌に起用された「ラブ・ストーリーは突然に」。
イントロ1音目、エレキギターの「♪チュクチュチューン」を弾いているのは、山下達郎や佐野元春など、多くのミュージシャンから絶大な信頼を得ているギタリストで、この曲の2年後に藤井フミヤの「TRUE LOVE」でもイントロのアコースティックギターを弾いている佐橋佳幸。1993年の神イントロ1位を「TRUE LOVE」にしている私が「ラブ・ストーリーは突然に」を1位以外にする理由は全くありません。ぶっちぎりのTOP!というか、1990年代の10年のベスト神イントロ選曲でも私はこの曲を1位にするでしょう。
私は、神イントロの選定条件を、イントロ『だけ』でサビと同等か、それ以上のインパクトと哀愁を感じられて、すぐにまたイントロだけを聴き返したくなることを常に意識し選曲しているのですが、この曲のイントロを聴いて、その条件をつけていったのかもと感じるほどパーフェクト。曲名よりも短い「♪チュクチュチューン」という言葉だけでこの曲を表現できる最高の神イントロ!文句なしのナンバーワンです!

 

【1991年神イントロランキングの総評】

前回発表した92年同様、ドラマ主題歌のランクインが目立つ結果でした。
ドラマの演出として主題歌が非常に重要で、イントロの音だけでドラマの名シーンを思い出せる曲が多かったです。その中でTOPに輝いた「ラブ・ストーリーは突然に」の存在感!90年代という10年を代表するといっても過言ではないこの曲が世の中に生み出されたのが1991年だと、これからも胸に刻んでいきたいです。

 


 

【1991年イントロベスト25】

ランキングは25位まで決定したので、11位以下も下記に紹介します。
(藤田太郎調べ) 

 

ランキング1-10位ランキング11-20位

ランキング21-25位

 

さらに、YouTubeでイントロクイズとして楽しむことができます。

うたドン!【イントロクイズ】

 

 

【Profile】

藤田太郎

「30,000曲のイントロを0.1秒聴くだけでわかる男」イントロマエストロ。bayfm「9の音粋 」水曜日のラジオDJ、Tokyo FM『ももいろクローバーZのSUZUKI ハッピー・クローバー!』音楽コメンテーターを担当。フジテレビ『99人の壁』に出場し、ジャンル「90年代J-POP」でグランドスラム達成。日本初のクイズ専門店「ソーダライト」で毎月イントロクイズを出題中。

 

 

←前の話へ          次の話へ→

 


 

Text&ランキング:藤田太郎