ロック史を創ってきた者たち 世界が愛したギターヒーロー名鑑 vol.8 リッチー・ブラックモア【Go!Go! GUITAR プレイバック】

ロックとクラシックを融合した様式美でHM/HRシーンを席巻
ギターの可能性を広げてくれたギターヒーローにスポットを当てて紹介するコーナーの第8回。今回取り上げるのはディープ・パープル、レインボーとハードロック界の歴史に多大な痕跡を残したヒーロー、リッチー・ブラックモアだ。
文/平川理雄 マンガ/dobby
■ クラシックギター体験が後の様式美に
本名、リチャード・ヒュー・ブラックモア。1945年4月14日、イギリスのサマセット州ウェストン・スーパー・メア生まれ、2歳からミドルセックス州ヘストン(ジミー・ペイジの生誕地)で育つ。11歳のときに父親からスパニッシュギターを買い与えられ、約1年間クラシックギターのレッスンを受けた。当時憧れていたギタリストは、ステージ上を飛び跳ねるパフォーマンスを見せていたトミー・スティール。14歳で初めてエレクトリックギターを手にし、15歳で学校を卒業。最初に就いた仕事はロンドン・ヒースロー空港での無線技士見習いだった。同時にビッグ・ジム・サリヴァン(ジミー・ペイジの仕事上の師匠)から本格的にギターのレッスンを受け始める。その後セッションプレイヤーとしての仕事を開始し、いくつものローカルバンドでレコーディングやコンサートに参加。
■ ディープ・パープル結成
’61年からはドイツのハンブルグでも活動するようになる。その後、元サーチャーズのクリス・カーティス(vo)とジョン・ロード(key)が構想するバンドに参加を要請されるが、企画そのものが頓挫。それでも熱心なマネージャーの働きかけで’68年、遂にディープ・パープルは結成された。アルバム『SHADES OF DEEP PURPLE(邦題:紫の世界)』でデビューすると第一期~第三期と活動。多くの名曲を残す。
■ 休止、再結成をくり返したソロ活動
’75 年、アメリカのハードロック・バンド、エルフのメンバーと共にシングルを制作した直後に脱退し、そのエルフを吸収する形でリッチー・ブラックモアズ・レインボー(後にバンド名をブラックモアズ・レインボー→レインボーと変更)を結成した。’84 年のディープ・パープル再結成時にはレインボーを休止して活動に参加。’94 年にレインボーを再結成するも、’97年に解散。同年、キャンディス・ナイト(vo)と共に、ヨーロッパや中近東、アジアの民謡を取り入れたフォーク・ロック・ユニットとしてブラックモアズ・ナイトを結成した。そして2016年、レインボーの活動は再開された。
■ リッチー・ブラックモア年表
1945 4月14日、イギリスのサマセット州に生まれる。
1959 15歳で学校を卒業。ジミー・ペイジの師匠、ビッグ・ジム・サリヴァンからギターを学ぶ。
1968 ディープ・パープル結成。デビューアルバム『SHADES OF DEEP PURPLE』をリリース。
1972 ロック史に残る傑作、アルバム『MACHINE HEAD』をリリース。
1975 ディープ・パープルを脱退、レインボーを結成。
1976 ロニー・ジェイムズ・ディオ(vo)、コージー・パウエル(dr)らが加入し、アルバム『RISING』をリリース。
1984 ディープ・パープル再結成、レインボー活動休止。再結成後初のアルバム『PERFECTSTRANGERS』をリリース。
1997 キャンディス・ナイトと共にブラックモアズ・ナイトを結成。アルバム『SHADOW OF THE MOON』をリリース。
2016 レインボー活動再開。
■ 使用ギターの変遷
ディープ・パープル初期:ギブソンES335、フェンダー・テレキャスター・シンラインなど。
ディープ・パープル第2期:ラージヘッドのフェンダー・ストラトキャスターがメイン。’68 ~ ’72年は’68年製のブラックボディ/メイプル指板、この仕様にはジミ・ヘンドリックスの影響がうかがえる。指板にはスキャロップド加工(※図参照)。’71年からは’71年製1ピース・メイプルネックのサンバーストボディ。
ディープ・パープル第3期:’72年製のナチュラルボディ。
レインボー期以降:’76 ~ ’91年には’74年製のホワイトボディ/ローズウッド指板がメイン。なお、ストラトのセンターピックアップはダミー。
ブラックモアズ・ナイト期:アコギとして、アルバレツヤイリ(Kヤイリの海外ブランド名)やKAWAKAMI GUITARS、テイラー、フェンダーなど。
ラージヘッドのストラト
▲ディープ・パープル時代、数々の名リフ&ソロを繰り出した銘器。ひと回り大きめのヘッドが特徴。
スキャロップド指板
※スキャロップド加工:フレット間の指板を丸く削り落とした加工で、リッチーがこの仕様の先駆者である。
■ ピック
使用ピックは独特で、べっ甲から作られた五角形(ホームベース型)のもの。人の爪と似たサウンドがするので気に入っているとのこと。
五角形のピック
■ エフェクター
’70~’73年頃まではホーンビー・スキューズ社製トレブル・ブースターを使用。特筆すべきは’73年から使い始めたアイワ社製オープンリール・デッキTP1011。これを改造してテープエコーとして使っただけではなく、インピーダンスの違いから生じる歪みを発生させるブースターとしても使っていた。他にはペダルワウ、ファズ、オクターバー、フェイザーなど。
■ アンプ
マーシャル200W Majorカスタムを長年愛用し、レインボー再結成以降はENGL社製のシグネイチャーモデルを使用。
リッチー風サウンドの作り方
▲ギターはストラトタイプ。アンプはマーシャルで内蔵リバーブを軽くかけるのが基本。アンプの歪みは抑えておき、ソロではブースターで歪み成分を足すのがリッチー流。
▲ロック史上も有名なリフとも言われる「スモーク・オン・ザ・ウォーター」を模した。ピッキングはすべてダウンで。指を寝かせて2本の弦をまとめて押さえるのが特徴。余弦ミュートは必須で、休符ではしっかり音を止めよう。
▲「Highway Star」のソロでの速弾きをイメージした。すべてオルタネイトピッキングによる力技だが、問題はその速さ。音が雑にならないよう、遅めのテンポから練習しよう。
▲「Burn」のイントロを参考にしたリフ。6弦を親指で押さえてしまうのがポイント。人差指をスライドさせるときには、力を抜いた親指ごと移動させるとラクだ。
▲レインボー期の「Long Live Rock 'n' Roll」のソロをイメージ。2小節目・4小節目はエコノミー・ピッキング的フレーズ。速弾きではハンマリング&プリングで左手が大活躍だ。
(Go!Go! GUITAR 2017年7月号に掲載した内容を再編集したものです)
Edit:溝口元海