最新作のアニソンカバーアルバムからたどるYouTuberピアニスト「よみぃ」について

 

現在様々なYouTuberピアニストが活躍しているが、なかでも「よみぃ」の存在感は圧倒的である。YouTubeのチャンネル登録者数が267万人を超え(メイン、サブの合計。2023年8月現在)、動画総再生回数は8億回を超えている。あらゆる曲を自在に弾きこなすテクニック、幅広いジャンルをカバーする豊かな音楽性、そしてオリジナル曲も次々に作り出す卓越したセンスを持ち合わせるピアニストである。そんなよみぃがリリースした新譜は全17曲がアニメソングによるもの。「残酷な天使のテーゼ」をはじめ、アニメ史を彩る名曲たちがピアノによるアレンジで生まれ変わり、よみぃならではの世界を存分に楽しむことができる一枚だ。今回はこのアルバムに込めた想いや現在の活動のことなど、様々な角度からお話を伺った。

選曲は全てよみぃによる“神曲”尽くしのアルバム

 

―選曲は全てよみぃさんがご自身でされたそうですね。

日本のアニメソングは世界中で人気を集めていて、“神曲”とも言われたりしていますが、その中でも特に人気の高いものです。“ピアノでアレンジされることでどんな変化が生まれるだろう?”という観点から決めていきましたね。

―選曲されたものは90年代から最近のものまでと非常に幅広いですね。

本当にアニメソングは素晴らしい作品が多く、私自身大好きです。あまり知られていないもの、例えば挿入歌なども含め数百曲は弾けますね。その中から選ぶのは大変かなと思いましたが、実際に選曲していくと意外とすんなり決まっていきました。

―今回全曲をアニメソングにしたのはなぜだったのでしょうか。

私自身が大好きというのは大前提ですが、やはり多くの方に愛されているジャンルなので、より多くの方に届くかなと思いました。実際、ネット上でもストリートピアノでもリクエストを頂く機会がたくさんあって、本当にたくさんの方がアニメソングをお好きなんだなということを実感する機会が多いのです。

 

“ライヴ感”を大切にした演奏とバンドサウンドを意識したアレンジ

 

―収録曲をお聴きしましたが、どの曲もすごくエネルギッシュで疾走感があり、聴いていてとても興奮しましたし、元気をもらえるような感じがありました。

ここ数年の特殊な傾向として、ストリートピアノの動画が流行った影響なのか、ピアノ視聴者層には、たとえスタジオレコーディングのものでも、きっちりかっちりまとまっているよりもライヴ感のある演奏の方が好まれるなという印象があります。数年でまた変わると思うのですが。そこで今回は、そのような要素を取り入れてレコーディングを行いました。“具体的にはダイナミクスや抑揚の面で作り込みすぎた雰囲気を出さず、なるべく勢いを失わないような演奏を心がけました。

―音が華やかで輝きがあってメロディの魅力がより引き立っていますし、それを支えるハーモニーの美しさ、ビートの力強さが見事に調和していますね。

原曲はピアノだけのものではなく、バンドなどで演奏されているものなので、そういったサウンドを再現することを心がけました。特にベースラインなど、原曲を聴いて“いいな”と思ったところは積極的に取り入れています。

 

よみぃインタビュー(1)

 

2つのバージョンが収められた2曲

 

―「残酷な天使のテーゼ」と「めざせポケモンマスター」はそれぞれ2つのバージョンが収録されています。

「残酷な天使のテーゼ」はあらゆるランキングで上位に入る曲で、様々な方が歌や演奏でカバーされています。その中で自分らしさを出すにはどうすればいいだろう…と試行錯誤するうち、2つのアレンジができました。ひとつは原曲の色を残したもので、ボーナストラックの方はかなり崩したものにしています。個人的にかなり気に入ったものになったので、多くの方にお聴きいただきたいですね。

―ボーナストラックのバージョンはジャズ風のお洒落な楽曲になっていますね。

海外のプロのピアニストで、結構日本の曲をジャズアレンジしている方が多いんですよね。そして非常に人気が高い。そういったものをみているうちに、日本とはまた違うコード進行や音階が好まれるという傾向も見つけました。そういった要素を取り入れたアレンジをしてみたいと思ったところから生まれたものです。

―「めざせポケモンマスター」も収録された2曲は対照的ですね。

『ポケモン』は今年の3月にサトシとピカチュウの物語が終わりましたね。私自身がアニメの『ポケモン』が大好きでずっと観ていたので、ひとつは原曲に沿ったアレンジ、ボーナストラックの方は、ストーリーの終盤でメインテーマが回想される際にかかる楽曲のようなイメージでバラード風にしてみました。

 

「よみぃ」を形作ってきたもの

 

―よみぃさんのアレンジは非常に高度な技術が要求されるものばかりですが、これらを生み出したり、鮮やかに演奏するために普段されていることはあるのでしょうか?

もちろん普段から様々な楽曲を弾いたり、いい演奏やアレンジを聴いて、その要素を取り込むなど技術や知識のインプットは行います。特にそれを集中的に行っていた時期もありましたね。ただ、最近はあえてあまり音楽を聴かないようにしています。“普段音楽をあまり聴かない人が惹かれるメロディやアレンジってどういうものなんだろう?”という疑問から、新しい感覚を取り入れたいなと思い始めてみました。

―なにかきっかけがあったのでしょうか?

演奏し、動画を投稿していく中で、たくさんの方があたたかいコメントやリアクションをくださります。その中で、“自分は本当にいいものをお届けできているんだろうか?”と考えたことがきっかけでした。音楽には正解がありませんから、常に色々な疑問や原点に立ち返り、自分の演奏を振り返ったりして、新しいことを考え、取り入れていけるようにしたいなと思っているんです。

―それでは、よみぃさんが音楽の世界に入っていった“原点”についてもお聞かせいただけますか。

ピアノは小さい頃、偶然はじめた“おけいこ”でした。普段のレッスンで弾くのは、やはりクラシックがメインで当時はあまり楽しいと思えませんでしたし、練習も好きではありませんでした。でもある日、中学生くらいの時に、インターネット上に当時流行っている曲を弾いている様子を投稿している人の動画を見て、自分もやってみたいと思うようになったんです。正直なところ、やる前は“自分にもすぐできるだろう”と思ったのですが、現実はそう甘くはなく、最初は再生回数が10回や20回で低評価ばかりついていました。そこで逆に、もっと頑張ろう、本気でやってみようと思うようになったんです。

―ピアノに対する想いが強まったのですね。

それまでよりも真剣にピアノに向かうようになりました。そして音楽教室の上級クラスに入ったのはいいのですが、今度は周りの生徒たちのレベルがあまりにも凄すぎて、そこでも挫折しかけてしまいました。

―それでもやめることなくピアノに向き合い続けたのはなぜだったのでしょう。

ピアノほど真剣にやりたいと思うものが他になかったんです。だからこそやれることをどんどんやろうと練習したり勉強したりしましたね。

―現在では多くの人に愛されるピアニストになっていらっしゃるよみぃさんですが、最初は苦労の連続だったのですね。ターニングポイントになったできごとはありますか?

転機は、中学生のときに『太鼓の達人』に、オリジナル曲の「D's Adventure Note」が採用されたことですね。そこから注目して頂けるようになったなと実感しています。あとはストリートピアノです。2019年だったと思いますが、リスナーさんから教えていただき、軽い気持ちで東京都庁のストリートピアノを弾かせていただいたら、聴いていた人たちがとても盛り上がってくださったんです。とても嬉しかったですね。

 

よみぃインタビュー(2)

 

“よみぃ”のこだわり

 

―YouTubeやストリートピアノなど、聴衆の反応がダイレクトにわかる環境の中で演奏を続けてこられましたが、普段心がけていらっしゃることなどはあるのでしょうか?

動画を投稿したとき、完成度が低いと如実に再生回数や評価に表れます。たくさんご意見をいただくこともあるので、なるべくそれらを取り入れて、演奏に活かすようにしています。

―だからこそ多くの方がよみぃさんの演奏に惹かれるのですね!

多くの方が聴いてくださり、喜んでくださることは本当にありがたいことですね。

―ストリートピアノや動画配信での演奏は派手な演奏ほど注目を集めると思いますが、よみぃさんの演奏は迫力があるのはもちろん、音色の美しさも魅力的だと感じました。それを保たれている秘訣はありますか?

歌の場合ですとビブラートやしゃくりなど、様々なテクニックを駆使して繊細にコントロールすることで差別化をはかりますよね。ピアノは音程を動かしての表現ができないので、華やかなパッセージなどはもちろんですが、音色で訴えることもとても大切です。そのために、素晴らしい表現をされるアーティストさんの演奏を聴き込んで研究したりもしていました。

―非常に幅広く活動され、多彩な才能を発揮されているよみぃさんですが、今後の目標などを教えて頂けますか?

ストリートピアノでの演奏や、コンサートツアーなどもさせていただきますが、基本的に動画の配信がメインになるのは変わらないと思います。ピアノを弾くことはもちろん、動画の編集自体も好きなんです。たくさんの方に見ていただけるよう、さらに工夫していきたいですね。そのためにも今回のCDを通して私の音楽を多くの方に知っていただけたら嬉しいです。また、最近は人間同士のセッションをAIと人間で目指す「AIピアノ」の開発にも関わらせて頂いています。セッションの楽しさというものをぜひ多くの方に知っていただけたらと思いますし、そのために私にできることはたくさんしていきたいです。

 

 


 

【プロフィール】

よみぃ

YouTuber / ピアニスト / 作曲家

YouTube メインチャンネル登録者数 212 万人超、サブチャンネル同 55 万人超、 動画総再生回数 8 億回超え。 フジテレビ「キスマイ超 BUSAIKU!?」にて音楽ゲームの先生役や、「NHK 沼ハマ」「 クラシック TV」等に出演。TBS「再現出来たら 100 万円! THE 神業チャレンジ」 では、目隠しピアノ演奏を成功させ、1 度目は賞金 100 万円、2 度目は難易度 UP の特別賞金 200 万円を獲得した。 eSports 太鼓の達人 Switch オンライン大会 2020 大会アンバサダー /YAMAHA 「AI 合奏システム」アドバイザー。その他、各種音楽ゲームに楽曲提供。 2021 年 1 月には、『よ み ぃ × 太 鼓 の 達 人 ピ ア ノ コ レ ク シ ョ ン( お に )』 をヤマハミュージックコミュニケーションズよりリリース。 2022 年6~ 7 月には初の Zepp ツアー「よみぃ Zepp Tour 2022 ~ AI よみぃ も大爆奏㾗~」(全国主要 5 都市)を開催。

Official Web Site:https://yomii-piano.com

YouTube:https://www.youtube.com/user/WoooRen1006

 

【リリース情報】


よみぃインタビュー(3)


 

『よみぃ×アニメヒットソング ピアノコレクション』

2023年8月23日 Release
YCCS-10116 3,850円(税込)

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ヤマハミュージックコミュニケーションズ

https://www.yamahamusic.co.jp/s/ymc/discography/1154

 

 


 

Interview:長井進之介

 

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