伝播する笑顔のウェーブ。加美幸伸(FM COCOLO DJ)が見たm@eというアーティスト


10月11日にシングル「私こそ、ごめんね」を配信リリース、同日someno kyotoにて「バースデーワンマンライブ -はんなりある。-」を開催し、待望のメジャーデビューを盛大に飾った京都出身シンガーソングライターm@e(マエ)。
彼女自身の言葉でデビューへの想いを綴った前記事に引き続き、大阪のFMラジオ局「FM COCOLO」でDJを務める加美幸伸氏にm@eというアーティストについて語ってもらいました。11月11日に2ndシングル「つまんない、つまんない」、12月にはミニアルバムの配信リリースも決まり、勢いを増す彼女が、人を惹きつけてやまないその理由に迫ります。

希望が見えず挫けそうになる時、聞こえてきて欲しい声がm@eなのかも知れない

 

17歳はいつも怯えていた。自分より少し経験を積んだ大人というのは、見えない希望を追えとにじり寄り、ふとした隙に安定という足枷を装着しようとしてくる。なのに生きる足場は不安定。フラつきながら小さな歩みを始める私たちの前で、ある時、尾崎豊が歌った。「どんな生き方になるとしても、自分を捨てやしないよ」血が騒いだ。響いた。ただやみくもに私たちは未来への地図を描き始めた。何も見えなくてもただひたすら描き殴った。
なのに…私たちの希望の光は、結局この世を去ってしまった…。

私の心に残る17歳のしこりは、時折疼いたり、弾けたり、そうして歳を重ねて行く。だけど、最近までにそのしこりは随分小さくなってしまい、記憶の霞の中で彷徨いながら息を潜めていたようだ。

m@eとの出会いは、彼女が17歳。私が少年時代に夢中になって溺れたEXPO’70の跡地に生まれた青い芝の公園。平和の象徴、太陽の塔の後姿を臨み、彼女はギターを抱いて歌っていた。“17のこと”。
「なぜ大人になると純粋じゃいられなくなるの」涙を少し浮かべながら、顔をくしゃくしゃにして、指先に力を込め、ギターの弦に魂を打ち付ける。建前で生きる大人に向けて17歳の本音が強く歌い上げた。
何かが震えた。胸の奥が弾けた。きっと私の17歳のしこりがあれをキャッチし、また疼き始めたのだ。

2019年10月11日。元号も新しくなり、消費税も10%に値上げ、社会も経済もなんとなく新しく動き始めたようなそんなタイミングで、あの時の彼女がメジャーデビューをする。「はんなりある。」と名付けられたm@eのバースデーワンマンライブ。彼女は20歳になっていた。

私は大人の事情で開演時間を過ぎ、すっかり遅刻。京都の中心街四条。向かってくる人の束をすり抜けようと前のめりで急ぎ、それで靴紐が2度解けた。速まる心を抑え、たどり着いたsomeno kyoto。会場には当然多くのファンが集まっていた。恥ずかしさと焦る心を鎮め少しずつその背中の中に紛れ込もうと企てる。我が街からメジャーへ出征する喜びに溢れ、ファンの手拍子は大きく強い気がする。それがシンクロし、伝わり繋がり笑顔のウェーブが会場を包んでいた。しかも愛のある笑顔だ。そんな笑顔を養分にステージの上にも笑顔が溢れていた。そんな彼女の創る本音のドラマにゆったりと心を許してみることにした…

 

m@e(1)

 

「お願いもう少し格好つけてよ 気の利いたよく笑う子って どうせなら勘違いして」刺さる言葉の浴びせ倒しの後、大きくフワリと手を挙げて右へ左へ、「つまんない、つまんない」。強烈な語感の単語をいとも簡単に観客と共に連呼して笑顔で歌ってみせる。それはまるで呪文のようだ。いつかズシっと心の中に刻まれどんどん奥の方へと侵入してくる。

11月11日に配信リリースの2ndシングル”つまんない、つまんない”
手探りで生きてきた大人と少女の境界線。そこを爪先立って歩んで来たm@e。彼女を”いまどき女子”と形容するなら、“いまどき女子”は純粋や適当では対処できない、大人にとって難儀な生態。のはずなのに…結局私も小さく手を振っていた。彼女が創造する”いまどき”のドラマは、きっと確実にあらゆる世代の人たちの”あのとき”に響いているのだろう。

 

m@e(2)

 

心の広場を開放してしまった私は、いつの間にやら”スマート・ボーイ”や”gap girl”に飛んだり跳ねたり自由に闊歩されて、「未来があ〜る」と笑顔で叫びながら、まだあるこれからの自身の未開の希望に灯りを灯そうとするのである。

そしてアンコール。先に登場したのはギター。共に生きた盟友との久しぶりの再会に緊張を口にするm@e。ずっと応援し支えてくれたファンの皆さんとの出会いの瞬間を共有するかのように“恋の詩”を会場いっぱいに共鳴させた。

 

m@e(3)

 

そしてエレキに持ち代えて「皆さんお待ちかねの曲…」と紹介し歌う”私こそ、ごめんね”。この日リリースのメジャーデビュー曲だ。
ギターの弦を軽やかに掻き鳴らす。柔らかいメロディー。回想力を煽るサウンド。真っ直ぐ前を向き「本当はね 本当はね 私こそごめんね」と心の底をチラ見せする。一瞬キュンと心に沁みる甘酸っぱい記憶が、胸のあたりに込み上げてきた。しかし歌う彼女の表情を見ていると、どうもこのドラマはこれだけでは無いようだ。m@eの表現する”いまどき女子”は本音だけで受け止めてはいけない。実は建前が闇の中から笑顔でひょこっと現れる。そして妖しい感覚が心を突く。ドキッと胸の奥が音を立てる。建前の中で生きることに馴れてしまった私の心は、本音との狭間でゆらぎ、まんまと振り回されようとしていたのだ。だけど…
胸のあたりを掌で摩ってみる。温もりが伝わってきた。私の今の温もりだ。変わらない、ちっとも変わっちゃいない。身体がスーッと軽くなる。私の中の本音がいつの間にか彼女と握手を交わしていたようだ。トントンと胸を柔らかく叩き大きく深呼吸をする。なにかとても健やかな気分だ。

希望が見えず挫けそうになる時、ただ懸命に踏ん張っている時、聞こえてきて欲しい声がある。今、私にとってそれは、m@eなのかも知れない。
彼女の声はあの頃残した17歳のしこりを疼かせる。きっとそれが私にとっての希望の力だったのだろう。

 

m@e(4)

 

「つまんない、つまんない」
呪文を唱えながら、日常の波の中に飲まれることとしよう。
だけど不思議だ…今日は笑顔になるんだな。
m@eありがとう。人生って結構楽しいかもね。

 

m@e(6)

 


 

Text:加美 幸伸
Photo:キタムラアイ

 


 

【New Release】
「つまんない、つまんない」
2019.11.11 配信リリース

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音楽配信サイト「mysound」で購入ダウンロード頂いた応募者全員に【m@e直筆サイン入りポストカード】をプレゼント!詳しくはmysound特設ページへ!

デジタルアルバム「はんなりある。」
2019.12.11 配信リリース


【Live】
『m@e 「はんなりある。」リリースワンマン-りあるはんなりある。-』
日程:2020年01月25日(土)
時間:OPEN / START : 18:00/ 18:30
会場:心斎橋Music Club JANUS(大阪市中央区東心斎橋2-4-30-5F)
料金:前売¥3,300(税込)整理番号付き ※ドリンク別
チケット一般発売日:2019/12/11(水) 10:00~
・SC TICKET
・ローソンチケット 0570-084-005 Lコード:53780
・イープラス
・チケットぴあ 0570-02-9999 Pコード:167-805
問合せ先:サウンドクリエーター 06-6357-4400

 


 

 

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