ヤマハ「DX7」と「reface DX」比較レポート!「reface DX」篇

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「reface DX」は「DX7」に比べてどこまで進化したのか?音や機能を徹底比較!

前回から始まりました、ヤマハ「DX7」(ディー・エックス・セブン)と「reface DX」(リフェイス・ディーエックス)の比較レポート!前回は1983年に発売され一世風靡し、その後の電子楽器に大きな影響を与えたフル・デジタル・シンセサイザー「DX7」のレポートをお届けしました。そして今回は、ヤマハから2015年9月に発売された現代バージョンのDX「reface DX」と「DX7」を徹底比較していきたいと思います。「reface DX」はいったいどのくらい進化した製品なのか、その魅力に迫ります。

コンパクトで高級感のあるルックス


こちらが「reface DX」です。そのルックスはコンパクト・サイズながらも、往年の「DX7」を彷彿とさせるダーク・ブラウンのボディーに、操作パネルには渋めのゴールドの金属パーツが使われていて高級感があります。そこにすっきりと配置された、スピーカー、レバー、スライダー、大きめのLCD液晶ディスプレイや、4本の赤く光るデータ・エントリー・セクション、そしてゴムのボタンを押した時に、ボタンの下に仕込まれた緑色のランプが点灯するなど、暗い場所で使用しても視認性が良く、落ち着きのある雰囲気はオモチャではない本格派なのが伝わってきます。

「DX7」から受け継がれた、きらびやかなサウンド


プリセットの音色は、往年の「DX7」を彷彿とさせる、ブラス、ベル、エレピ、そしてアタック・ベースなどの音色はもちろん、ワブル・ベースや、モデム・リードといった、最近のダンス・ミュージックに合いそうな派手な音色も入っています。「DX7」のプリセット音色は32個でしたが、「reface DX」も、1~4のバンクに8個ずつ、計32個の音色が内蔵されています。エディットした音色はストアボタンを押して新しい名前を付け、プリセットの音色に上書きする形で保存できます。まずはその音色が気になるかと思いますので、一曲演奏させていただきました。打ち込みの音は他のソフトウェアで制作しましたが、手弾きパートは「reface DX」を使って演奏しましたので聴いてみてください。

▼YAMAHA『reface DX』 DEMO PLAY


「reface DX」の音を聴いてみて感じたのは、とにかくきれいなサウンドだという事です。「DX7」の厚くて重みがあり、きらびやかでありながら、きれい過ぎない音色なのにに対して、「reface DX」は、軽やかで透き通るような透明感、一点の曇りのない、輝くようなサウンドです。

新開発の「HQ-Mini鍵盤」

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61鍵盤の「DX7」に対して本製品は37鍵盤ですが、オクターブ・スライダーで切り換えれば、低い音から高い音までカバーできます。「DX7」の鍵盤の感触も弾きやすくて好きでしたが、「reface DX」のミニ鍵盤もとても弾きやすいです。その感触は、弾く強さで音に表情を付けやすく、鍵盤の奥の方に指をのせてもらくらく弾けます。FM音源は音の強弱による音色の変化がすごく重要なので、音源部と鍵盤のマッチングには特にこだわって作ってあり、特に鍵盤は、世界一「弾ける」コンパクト鍵盤を目指した新開発の「HQ-Mini鍵盤」を採用し、感触や形状など、何度も試作を重ねて出来上がったもので、この弾き心地は、ぜひ楽器店で実際に触ってみて欲しいです。

ステレオ・アウト、2系統のエフェクト、MIDI、USBコネクターを搭載

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「DX7」ではアウトプットがモノラルで、エフェクトが内蔵されていなかったのに対し、「reface DX」のアウトプットはステレオ、2系統のエフェクターを搭載し、ディスト―ション、タッチワウ、コーラス、フランジャー、フェ―ザ―、ディレイ、リバーブなどのエフェクトをかける事ができます。MIDIについては、「DX7」のMIDIイン、アウト、スルーの3つの端子だったのに対し、「reface DX」は「ミニDIN-MIDIコネクター」に付属のMIDI変換ケーブルを取り付ける事で、MIDIイン、アウトに接続できます。新搭載の「USB(TO HOST)コネクター」からUSBケーブルをパソコンや、iPhone、iPadなどのデバイスと接続すれば、「reface DX」の鍵盤からDAWソフトウェア上へ打ち込みをしたり、ソフトウェア・シンセを鳴らす事はもちろん、DAW上に打ち込んだMIDIデータを再生し「reface DX」を鳴らす事もできます。

格段に向上したエディット機能

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「DX7」の6オペレータ、32アルゴリズム、最大同時発音数16音だったのに対し、「reface DX」は、4オペレータ、12アルゴリズム、最大同時発音数8音と、少しシンプルな設計になっていますが、その分音色のエディットの操作性は格段に向上しています。「DX7」の6オペレータのFM音源は、多彩な音色が作れる一方で、構成要素が多くエディットが煩雑になってしまうという面がありました。「reface DX」では、「気軽な音作り」を目指してオペレーター数を6→4に減らしてありますが、音作りの多彩さを失わないように、各オペレーターに特殊なフィードバックを持たせてあり、その結果、シンプルながらもFMらしい音作りができるように開発されているのです。また、FM音源の難しい音作りを簡単に楽しめるように、代表的なパラメーター(FREQ, LEVEL, ALGO, FB)をFMセクションとしてまとめてあり、EDITモードに深く入らなくても簡単にエディットできるように出来ています。

タッチ式データー・エントリー・セクション


「reface DX」は限られたサイズの中、各パラメーターを同時に操作できるように4本のタッチ式データー・エントリー・セクションが付いています。この機能は、赤く点灯したランプに指でちょんと触れたり、サッとこすったりする事で、大きめの液晶ディスプレイに表示された、いくつかのパラメーターを同時に操作できます。このセクションは、たくさんあるパラメーターを画面上に一つずつ呼び出してエディットしていた「DX7」と比べて、使いやすく、見やすく、大きく進化したポイントと言えます。この機能の開発は、パラメーター毎に求められる操作挙動が異なるので、モード毎のタップやフリックを調整するのに、並々ならぬ苦労があったようです。

ピッチベンド・レバーとフレーズ・ルーパー

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「DX7」ではピッチベンド・ホイールだったのが、「reface DX」ではピッチベンド・レバーになっています。レバーを上げればピッチがあがり、下げればピッチが下がりますが、ピッチベンド・レンジを反転させれば、ピッチが変化する方向が逆になり、ショルダー・キーボードのように持った時に、ギターをチョーキングするようにしてピッチを上げる使い方もできます。「reface DX」にはフレーズ・ルーパーが搭載されています。ルーパーというのは自分で演奏したフレーズを録音、再生しながら、そこに新たなフレーズを多重録音し、一人でアドリブのパフォーマンスをするための機能で、同じrefaceシリーズの「reface CS」とつなげてルーパーを同期させる事も、「reface DX」単体で、ちょっとしたパフォーマンスをする事も可能です。これは「DX7」にはなかった機能です。

気軽に持ち運べるデザイン、サイズ

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「DX7」と「reface DX」を一緒にセッティングするとご覧の通り、まるで親機と子機のようです。そのルックスは初代「DX7」を意識しながらも、気軽に持ち運べるようにデザインやサイズが考えられています。2つのサイズを比べて「reface DX」がコンパクトなのは見ての通りですが、その重量は「DX7」の14.2kgなのに対し、「reface DX」は1.9kgと、片手で楽々持てるくらい軽量です。

電池駆動でスピーカー内蔵

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「reface DX」は、どこでも楽しめるように電池駆動でスピーカが内蔵されています。単3乾電池6本で駆動し、内蔵のスピーカーから音を出せば、屋外などでリラックスした姿勢でFMサウンドを気軽に楽しむ事が可能。これは「DX7」では出来なかった楽しみ方です。また、オートパワーオフ機能が付いているので、30分間操作されないと自動的にパワーオフになり、電源の切り忘れによる無駄な電力消費を防いでくれます。その上、鍵盤や音源は妥協せずこだわってあり、気軽かつ本格的な奥行きを持った楽器を「refaceシリーズ」では目指してあるのです。

「音を創る」楽しさを、いつでもどこでも体験できる

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ヤマハ「DX7」と「reface DX」の比較レポート!「reface DX」篇!いかがでしたでしょうか。初代「DX7」の発売から30年以上が経ち、現代の技術によって大幅に改善され、使いやすくなったDXの最新モデル「reface DX」の登場は、FM音源シンセサイザーのリバイバルの気配を感じます。時代が変わり、技術が進歩し、音楽のスタイルが変わっても、輝きを失わないDXの金属的できらびやかなサウンドが、後世に伝わっていって欲しいと思います。「reface DX」は往年の「DX7」のサウンドを受け継ぎながらも、まさに進化した現代のDXと言えるシンセサイザーなのです。「refaceシリーズ」のコンセプトは「Create your sound any place, any time.」で、シンセサイザー本来の「音を創る」楽しさを、いつでもどこでも体験して欲しいという思いを込めて開発された製品なのです。ぜひ試してみてください!