ロック史を創ってきた者たち 世界が愛したギターヒーロー名鑑 vol.7 エドワード・ヴァン・ヘイレン【Go!Go! GUITAR プレイバック】

ロックギターの歴史に変革をもたらした、ライトハンド奏法の発明者
ギターの可能性を広げてくれたギター・ヒーローにスポットを当てて紹介するコーナーの第7回。今回取り上げるのは、ライトハンド(タッピング)奏法を大きく発展させ、ロック界に衝撃を与えたヴァン・ヘイレンだ。
文/平川理雄 マンガ/dobby
■ 音楽一家に生まれ育つ
本名、エドワード・ローデヴェイク・ヴァン・ヘイレン。1955年1月26日、オランダのナイメーヘンにてオランダ人の父とインドネシア系の母の間に生まれる。ミドルネームの“ローデヴェイク(Lodewijk)”はベートーヴェンのファーストネーム “ルートヴィヒ”のオランダ名からつけられた。バンド”ヴァン・ヘイレン”のドラマー、アレックス・ヴァン・ヘイレンは2歳上の実兄。父はクラリネット、サックス、そしてピアノを弾く奏者であり、父の勧めで兄弟共に6歳からピアノを始める。エディが7歳となるʼ62年には家族でアメリカ合衆国カリフォルニア州パサデナに移住。12歳頃のエディのピアノの腕前は地域で賞を獲る程になっていたが、その頃の兄弟の興味はロックンロールであり、アレックスはギターを、エディはドラムを始める。しばらくするとお互い、相手の楽器の方が性に合っている事に気づき、楽器を交換することとなった。
■ 兄アレックスとともに「ヴァン・ヘイレン」を結成
エディは特にクリームでのエリック・クラプトンのプレイに惹かれ、片っ端から完コピしていった。他に影響を受けたギタリストはリッチー・ブラックモアやアラン・ホールズワースなど。兄弟で初めて結成したバンドはザ・ブロークン・コーム。そこから幾つかのバンド遍歴を経て辿り着いたバンド、マンモスにデヴィッド・リー・ロスを加えてバンド名を“ヴァン・ヘイレン”へと改名。ʼ78年のデビューから快進撃を続け、同年初来日。ʼ91年にリリースのアルバム『FOR UNLAWFUL CARNAL KNOWLEDGE』ではグラミー賞も獲得した。
■ ビックアーティストとの共演、そして闘病…
バンド以外の活動としては、マイケル・ジャクソンの“Beat It”でのギターソロ(ʼ82年)や、映画のサウンドトラック、スティーヴ・ルカサー(TOTO)やブライアン・メイ(QUEEN)との共演など。ʼ00年に舌癌が発覚したが、後に手術により一時的に完治。しかし20年10月、闘病の末に喉頭がんで死去したことが息子のウルフのTwitter上で公表された。65歳没。ʼ91年に誕生した息子ウルフギャングはベーシストとしてエディとともに活動しているが、彼の名前はモーツァルトのファーストネームからつけられたものである。
■ エドワード・ヴァン・ヘイレン年表
1955 1月26日、オランダのナイメーヘンに生まれる。
1962 アメリカ、カリフォルニア州パサデナに移住。
1975 兄のアレックス・ヴァン・ヘイレン(Dr)とともに、デヴィッド・リー・ロス(Vo)、マイケル・アンソニー(Ba)を迎えてヴァン・ヘイレン結成。
1978 デビューアルバム『VAN HALEN』リリース。世界中のギタリストに衝撃を与える歴史的名盤。
1983 6thアルバム『1984』リリース。シングルカットされた「Jump」は全米で5週連続1位を獲得。
1985 デヴィッド・リー・ロスが脱退。新ヴォーカリストにサミー・ヘイガーを迎え7thアルバム『5150』リリース('86年)。
1991 9thアルバム『For Unlawful Carnal Knowledge』リリース。全米初登場1位を獲得し、グラミー賞にも輝く。
2000 舌癌に侵されるが手術により翌年には快復。
2012 12th アルバム『A DIFFERENT KIND OF TRUTH』リリース。翌年には来日公演を果たす。
■ 使用ギターの変遷
デビュー当時メインで使用していたギターは“ フランケンストラト”。これはシャーベルから購入したボディやネック、ピックアップ、トレモロユニット等を個別に購入し、エディ自らが組み立てたストラトタイプのものだった。’83 年からはクレイマー製シグネチャー・モデル“5150” を、’90 年からはアーニーボール/ミュージックマン製EVH シグネチャー・モデル(現AXIS)を使用している。
’95 年以降は息子の名を冠したピーヴィー製“ ウルフギャング” を使用し、このモデルは後に自身がフェンダー社とともに起ち上げたブランド“EVH” に製造を移行して使用し続けている。他にもアイバニーズデストロイヤー、ブギーボディーズ(現ワーモス)製ストラトタイプ、ギブソン’58 年製フライングV、ギブソン製チェット・アトキンス・モデル(エレアコ)、スタインバーガー製GL-2T などを使用。
エディの愛器“フランケンストラト”
▲エディのトレードマークでもある“フランケンストラト”。アルバム『5150』までのメインギターだ。
▲エディの過激なアーム奏法を支えるフロイドローズのトレモロユニットを搭載。チューニングの安定感はピカイチ!
■ エフェクター
エフェクターは、MXR製のphase90(フェイザー)、flanger(フランジャー)、WAH(ワウ)はシグネチャー・モデルをリリースするほどのお気に入り。他にはMXR analog chorusやLEXICON PCM-70(リバーブ)、Maestro Echoplex(テープエコー)、Roland SDE-3000(デジタル・ディレイ)等を使用。歪み系はアンプの歪みを利用するので、足元にはない。
ギター、アンプ、エフェクターのどれをとっても目的の音を創るためにカスタマイズしてきたエディ。そのこだわり方はギターキッズそのものだ。
■ アンプ
初期のアンプはカスタマイズされたマーシャル1959。’80年代中頃からはsoldano社製アンプを併用し、その後自身のシグネチャー・アンプでもあるピーヴィー製5150(現6505)を開発。後に自己のブランドEVHに製造を移したEVH5150 IIIアンプを使用。
エディ風サウンドの作り方
▲ギターはハムバッカー搭載のストラトタイプ。アンプはマーシャルが基本。歪み系のエフェクターを使わずにキレのよいディストーションサウンドを得るのがエディ流。エフェクターはディレイ、フランジャーを効果的に使用。
▲「Jump」でのギターソロをイメージした、指板を広く使ったタッピングフレーズ。左手人差指は7フレットに固定し、両手タッピング(プリングも含む)を駆使しよう。「↓」は右手タッピングを示す。
▲5弦開放と2~4弦押弦を散りばめた、「5150」を模したフレーズ。1小節での大きな左手移動をクリアすればあとはリズムと音を正確に刻むだけだが、それが案外難しい。
▲左手ストレッチを必要とする、「Cabo Wabo」的なエクササイズ。2フレット(人)~5フレット(小)まで無理なく開くためにはネックを深く握りすぎないこと。
▲まさにタッピング的発想のフレーズは「Eruption」のソロを参考にした。この時のピックは親指と中指で握り込み、エディのように人差指でタップしてみよう。
▲チェットアトキンス(アコースティック)を使用したサウンドが美しい「316」をシミュレート。フィンガーピッキングによるアルペジオを丁寧に鳴らすトレーニングに最適。
(Go!Go! GUITAR 2017年6月号に掲載した内容を再編集したものです)
Edit:溝口元海