地元民から愛されるニューヨークの音楽空間へ【 ON THE STREET CORNER in NEW YORK 】VOL.1 LunÀtico

 

様々なカルチャーや音楽の流行を生みだしてきたニューヨーク。そんな地元で愛されるライブハウスを紹介する新シリーズ「ON THE STREET CORNER in NEW YORK」。第1回は、ブルックリンの住宅街にたたずむLunÀtico(ルナティコ)へお連れします。 

音楽、ファッション、アート、ミュージカルなどなど、世界屈指のカルチャーの発信地であるニューヨーク。日本の音楽ファンにとってはブルーノートやアポロシアターといった由緒正しきクラブは馴染み深いが、それ以外にも人々の生活に根ざした良質なクラブは数多く存在する。というわけで、市民から愛されるライブハウス/クラブ/バーを探訪しに、いざニューヨークへ。 

 

メイン1.jpgVOL.1 LunÁtico_1

 

ミュージシャンの息遣いさえも感じる濃密な空間

 

ブルックリンのひっそりとした住宅街にポツンと存在するバー“ルナティコ”。ここでは毎晩、ジャンルを問わず素敵なライブが繰り広げられている。

 

VOL.1 LunÁtico_1VOL.1 LunÁtico_2

 

2006年に創刊された、ニューヨークの権威あるレストランを発信するサイト「Grub Street」から“喜びで満たされた輝くおとぎ話の宝石箱”と賞賛されたルナティコは、ミュージシャンのリチャード・ジュリアン、アーサー・ケル、ロジータ・ケスによって2014年に設立。

世界中のバーやライブ会場で演奏し、音楽はもちろん料理やワインへの情熱を分かち合ってきた3人は、“いつか自分たちの店をオープンさせたい”と日常的にアイディアを温めてきた。それは、大好きなカクテルバーの洗練された雰囲気と、お気に入りのライブ会場の“ファンキーさ”を融合させること。

ジャズ、レゲエ、アフリカン、ブルースなどなど、ルナティコで奏でられる音楽は多岐にわたる。日曜日の昼にはゴスペルブランチ(ゴスペルと食事が一緒になったもの)も行っており、音楽好きの地元民たちが足繁く通う“スペシャルな秘密スポット”といった存在だ。

 

VOL.1 LunÁtico_3VOL.1 LunÁtico_5VOL.1 LunÁtico_4

 

店内の壁には多くの絵画や写真、小物アイテムなどが飾られており、レトロな雰囲気を醸成している。店の奥のドアにはアラン・トゥーサンの絵が書かれている。彼はルイジアナ州ニューオーリンズ生まれのピアニスト/歌手/ソングライター/プロデューサー/アレンジャーであり、ポール・サイモンやミーターズ、ザ・バンドなどのプロデュースも手掛けた重鎮。ニューオーリンズのR&Bシーンを牽引した、まさにレジェンドだ(2015年没)。

 

VOL.1 LunÁtico_6VOL.1 LunÁtico_7VOL.1 LunÁtico_8VOL.1 LunÁtico_9

 

この日の演奏はクリス・マッカーシー・トリオ。2014年に日本人として初めてブルーノートレコードと契約したトランペッターの黒田卓也が参加。演奏曲はほとんどがクリス・マッカーシーのオリジナル曲で、グルーヴィなジャズに、観る者はグラスを傾けながら演奏に酔いしれていた。

 

VOL.1 LunÁtico_10VOL.1 LunÁtico_11

 

ルナティコのスペシャルなカクテルは“メスカルマルゲリータ”。メスカルはテキーラと同じく、多肉植物であるアガベを原料に造られるメキシコ産の蒸留酒。メスカルはさまざまな種類のアガベから作られているが、ルナティコのメスカルマルゲリータはスモーキーな香りが漂う大人なカクテルだ。

 

VOL.1 LunÁtico_12VOL.1 LunÁtico_13

 

この日は月曜日にも関わらず大繁盛。基本的にカバーチャージ(席料)はなくチップ制となっており、ライブ中にオーナーが鐘を鳴らすと、チップボックスを店中のお客さんに渡していくというシステム。だいたい相場が$10〜20で、それがミュージシャンのギャラとして充てられる(バーバックもあるかもしれないが)。店全体からミュージシャンへのリスペクトが感じられるルナティコ。ミュージシャンの息遣いさえも感じるアットホームな空間と、極上の音楽と料理。特別な時間を約束する、心温まるバーである。

 

【Information】

「LunÀtico」

bedford-stuyvesant
486 halsey street
brooklyn, ny -11233
Tel:718 513-0339
https://www.barlunatico.com

 


 

Text:Etsuko
Edit:溝口元海