地元民から愛されるニューヨークの音楽空間へ【 ON THE STREET CORNER in NEW YORK 】VOL.2 Public Records
様々なカルチャーや音楽の流行を生みだしてきたニューヨーク。そんな地元で愛されるライブハウスを紹介する新シリーズ「ON THE STREET CORNER in NEW YORK」。第2回は、ブルックリン屈指の音響設備を誇るPublic Records(パブリックレコード)へお連れします。
音楽、ファッション、アート、ミュージカルなどなど、世界屈指のカルチャーの発信地であるニューヨーク。日本の音楽ファンにとってはブルーノートやアポロシアターといった由緒正しきクラブは馴染み深いが、それ以外にも人々の生活に根ざした良質なクラブは数多く存在する。というわけで、市民から愛されるライブハウス/クラブ/バーを探訪しに、いざニューヨークへ。
イーストコースト随一の音質を誇る複合施設
ニューヨーク市ブルックリン区にある屋内競技場・多目的ホール“バークレイズ・センター”から徒歩で約15分。住宅街に存在する“パブリックレコード”は2019年3月にオープンした。“良質な音楽と食事、ホスピタリティが交差する場所”をコンセプトに、サウンドルームと呼ばれるDJ&ライブスペース、ヴィーガン料理を中心としたレストラン&カフェ、希少なレコードが揃うHi-Fiレコードバー、2階にあるリスニングバー“Upstairs”、屋外ガーデンからなる複合施設だ。
もともとはASPCA(アメリカ動物虐待防止協会)本部があった築110年以上の歴史的価値のある建物を、外観はそのままに改装。建物の再利用の一環として装飾に廃材を使用するなど環境問題に配慮しながら、歴史とモダンが見事に調和した温かな空間が広がっている。
入り口から中に入るとすぐにコートチェックがあり、同じ空間にはマガジンショップが。日中の穏やかな雰囲気から一転、ディナータイムになるとムーディな空間へと変貌する。
ブルーに彩られた長い通路を抜けると、メインのライブ会場へ。
中庭から裏手に回ると、150人ほどを収容できるサウンドルームがある。ここではオープン以来、地元はもちろん海外DJを招いてパーティが開催されており、他にもアルバムのリスニングパーティ、SupremeやMaison Kitsunéといった著名ブランドのアフターパーティなど、クリエイティビティを刺激する多様なイベントが行われている。
ドリンクメニューは、クラシックカクテル、オリジナルのカクテル、ニューヨークの地ビール、ワイン、お茶などシンプルなセレクション(カッコ内はドル)。
この日は、トランペット奏者である黒田卓也のアルバムリリースライブが行われていた。ジャズ、ファンク、ネオソウル、アフロビートの要素を含んだ心地良いグルーヴから、踊り出したくなるようなアップテンポの楽曲までバラエティ豊かな楽曲を演奏していた。
その有機的なサウンドを見事に出力しているのは、フロアの四隅に置かれた存在感のあるスピーカー「Ojas」。パブリックレコードはオーディオ機器にも重点を置いており、バーとサウンドルームには木材のフレームでできたOjasによるカスタムメイドのスピーカー、Isonoeによる特注のロータリーミキサーが設置され、イーストコースト(ボストン、ニューヨーク近辺。アメリカの東海岸)随一とも噂される音質を誇る。
食、音楽、アート。さまざまなカルチャーがシームレスに行き交い、日夜訪れる人々の感性を刺激し続けているパブリックレコード。ニューヨークを訪れた際は、ぜひ足を運びたい穴場スポットだ。
【Information】
「Public Records」
233 Butler street
brooklyn, ny 11217
Tel:(347)529-4869
https://publicrecords.nyc
Text:Etsuko
Edit:溝口元海