ロック史を創ってきた者たち 世界が愛したギターヒーロー名鑑 vol.11 ジョー・ペリー【Go!Go! GUITAR プレイバック】

 

熱きロックンロール魂とクールなブリティッシュロックのセンスを秘めたギター巧者

ギターの可能性を広げてくれたギターヒーローにスポットを当てて紹介するコーナーの第11回。今回取り上げるのはエアロスミスのオリジナルメンバー、ジョー・ペリーだ。


文/平川理雄 マンガ/dobby

世界が愛したギターヒーロー名鑑  vol.11(1)

 

世界が愛したギターヒーロー名鑑  vol.11(2)

 

■ ロックの洗礼を受けた少年期

 本名、アンソニー・ジョセフ・ペリー(祖父の代まではペレイラという名字)。1950年9月10日、米国マサチューセッツ州ローレンス生まれ。会計士の父と高校の体育教師の母の元で育ち、9歳でエレクトリックギターを手にする。10歳ほど年上の隣人の弾くギターやファッションに影響を受け、エルヴィス・プレスリーやチャック・ベリーといったアメリカンR&Rに憧れを持つ。高校の頃にはザ・ビートルズやヤードバーズなどのブリティッシュロックに熱狂し、バンド活動も開始。

 

■ モンスターバンド「エアロスミス」誕生

 友人のトム・ハミルトン(B)ら3人で組んだザ・ジャム・バンドでの活動の中で知り合ったのが、後にタイラーと改名するスティーヴン・タラスコ(Vo)だった。’70年に仲間たちとボストンに移り、バイトをしながらの共同生活をする中でメンバーを補強し、そしてエアロスミスは誕生した。’73年にアルバム『エアロスミス』でデビュー。キンクスやディープ・パープルなど、当時の大物バンドのオープニングアクトを務めるなど着々とキャリアを上げていき、ロックスターへと登りつめた。

 

■ 敏腕マネージャーとオリジナルメンバーの底力

 ところが元々やんちゃだったメンバー達。ドラッグの影響や気性の荒さからいさかいは絶えず、ジョーは’79年の夏にバンドを脱退。無名のメンバーを集めてザ・ジョー・ペリー・プロジェクトを始動した。しかしこの新バンドも本家エアロスミスもセールスは不調でトラブル続き。ジョーの借金もかさんでしまった。そんな彼らを救ったのがマネージャーのティム・コリンズ。エアロスミスをオリジナルメンバーに戻し、ドラッグもやめさせ、そして’84年にレコード会社を移籍して活動を再開した。
 ’86年、ラン・ディエムシーが「ウォーク・ディス・ウェイ」をカヴァーするなど話題にもなり、その後も’97年にリリースした、映画『アルマゲドン』の主題歌「ミス・ア・シング」が大ヒット、バンドは完全復活。’01年にはバンドとしてロックの殿堂入りを果たした。’05年にはソロアルバムを発表するなど、精力的な活動は現在も続いている。

 

■ ジョー・ペリー年表

1950 9月10日、米国マサチューセッツ州ローレンスに生まれる。

1970 エアロスミス結成。’73年、1stアルバム『エアロスミス』をリリース。

1975 アルバム『闇夜のヘヴィ・ロック』をリリース。シングル曲「スウィート・エモーション」のヒットも相まって全米11位を獲得。

1976 前作の勢いに乗ってアルバム『ロックス』をリリース。全米3位を獲得したエアロスミスの代表作。

1979 エアロスミスを脱退。ザ・ジョー・ペリー・プロジェクトを開始するもトラブル続きで活動は長続きしなかった。

1984 エアロスミス再結成。レコード会社を移籍して活動を再開。翌’85年、復活第一弾アルバム『ダーン・ウィズ・ミラーズ』をリリース。

1997 映画『アルマゲドン』の主題歌「ミス・ア・シング」の大ヒットをきっかけにバンドは完全復活。’01年にはロック殿堂入りを果たす。

 

世界が愛したギターヒーロー名鑑  vol.11(3)

 

使用ギターの変遷

 所有するギターの本数は数知れず、ステージでも曲ごとに持ち替える程の使用ギター数だが、ここではジョーの代表的なギターを紹介しよう。

□フェンダー・ストラトキャスター

サードアルバムを制作していた’75年あたりまでのメイン。チューニングの狂いやすいトレモロユニットを自らロック式に改造したりしていた(フロイドローズが発売されたのは’77年)。

□’59年製ギブソン・レスポール

同じく’75年頃、とても貴重なこのギターを入手したが、資金繰りが厳しかった’80年代に売ってしまう。が、このギターは巡り巡ってガンズ・アンド・ローゼスのスラッシュの手に渡り、’90年代にジョーの元に戻ってきた。

□その他

ギブソン製シグネイチャーモデル、レスポール・カスタム(米国国旗柄)、レスポールJr.、グレッチ製ホワイト・ファルコンを黒く塗ったブラック・ファルコンなどを使用。

 

サウンドメイクの核を担うギターはギブソン・レスポール

 

世界が愛したギターヒーロー名鑑  vol.11(4)

 

ジョーのメインギターと言えばギブソン・レスポール。トーンの効きが強力なシグネチャーモデルが有名だが、スタンダードタイプも数多く所有し、ライブやレコーディングで使用。

 

アンプ

 アンプはツアーごとに組み替えているが、マーシャル(JTM45、1959、JCM800)や特注のミュージックマンHD-130など複数のアンプヘッドを、これまた複数の12インチ× 4キャビネットをアルミ溶接されたフレームに収納することで巨大な“アンプの壁”を形成している。他にも’60年代後期のプレキシ、モーリス製ヘッドなどを使用。エアロスミスの活動初期の頃には、ギター音量のデカさが元でスティーヴン・タイラーから怒鳴られることもしばしばあったとか。

 

エフェクター

 ツアー毎にセットリストに合わせて構成を変えているが、通常8 ~ 10個程度をボードに載せているようだ。主なエフェクターは、クロン製ケンタウルスなどの歪み系、デューセンバーグ製クリーンブースター、TCエレクトロニック製ディレイ、MXR製グラフィックEQ、フェイザー、フランジャー、デジタルディレイなど。

 

ジョー・ペリー風サウンドの作り方

 

世界が愛したギターヒーロー名鑑  vol.11(5)

 

ギターはレスポールタイプ、アンプはマーシャルコンボタイプを使用。機材コレクターとして有名なジョーだが、アンプのボリュームで得られるナチュラルなオーバードライブサウンドが基本。イコライザーはミドル、トレブルを上げて派手なトーンを目指そう。

 

世界が愛したギターヒーロー名鑑  vol.11(6)

 

世界が愛したギターヒーロー名鑑  vol.11(7)

 

「ウォーク・ディス・ウェイ」での有名なイントロリフをイメージした。開放弦を活かした太い音色によるリフでは、余弦ミュートは必須。

 

世界が愛したギターヒーロー名鑑  vol.11(8)

 

初の全米アルバム1位を獲得した’93年のアルバム『ゲット・ア・グリップ』から、「リヴィン・オン・ジ・エッジ」を参考にした。スライドバーを使ったギターソロ。

 

世界が愛したギターヒーロー名鑑  vol.11(9)

 

’01年のアルバム『ジャスト・プッシュ・プレイ』から「ジェイディッド」のイントロフレーズを模した譜例。AM7やDM7でのM7th音を強調した印象的なフレージングだ。

 

世界が愛したギターヒーロー名鑑  vol.11(10)

 

同アルバムのタイトル・ナンバー「ジャスト・プッシュ・プレイ」でのリフをシミュレート。ドロップDチューニングであり、5+6弦同フレットでパワーコードとなる。

 


(Go!Go! GUITAR 2017年10月号に掲載した内容を再編集したものです)

 


 

Edit:溝口元海