ロック史を創ってきた者たち 世界が愛したギターヒーロー名鑑 最終回 ジミ・ヘンドリックス【Go!Go! GUITAR プレイバック】

 

全てのギタリストの敬愛を集める、伝説を超えて神に昇華した男

ギターの可能性を広げてくれたギターヒーローにスポットを当てて紹介するコーナーもいよいよ最終回。トリを飾るのは、短い時間を駆け抜けて逝ってしまった史上最高のロックギタリスト、ジミ・ヘンドリックス!


文/平川理雄 マンガ/dobby

世界が愛したギターヒーロー名鑑  最終回(1)

 

世界が愛したギターヒーロー名鑑  最終回(2)

 

■ ルーツに流れるネイティブアメリカンの血

 本名、ジェームズ・マーシャル・ヘンドリックス(出生時の名前は母が名づけたジョニー・アレン・ヘンドリックス)。1942年11月27日、米国ワシントン州シアトル生まれ。父のアルはアフリカ系の父とネイティヴアメリカン(チェロキー族)の母の間に生まれたアフリカン-ネイティヴアメリカ人で、ジミはその祖母からチェロキー族の昔話を聞かされていた。両親が離婚し、父親に引き取られたジミは出生時の名前から前述の本名へと改名。

 

■ 大旋風を巻き起こしたイギリスでのデビュー

 15歳となる’57年頃、父に中古のアコースティックギターを買ってもらい、独学で弾き始める。ブルース、R&B、R&Rに留まらず、テレビのBGMや効果音までギターで弾いていたという。アマチュアバンドに加入するものの、自動車窃盗をはたらき’61年に逮捕。そして投獄を回避するために陸軍に入隊した。除隊後はギタリストとしてアイク&ティナ・ターナーやリトル・リチャードのバックバンドを努めている。’66年にイギリスに渡り、英国人であるノエル・レディング(b)、ミッチ・ミッチェル(ds)と共に「ザ・ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス」を結成。同年、シングル「ヘイ・ジョー/ストーン・フリー」でデビューした。ジミのプレイはたちまち話題となり、ザ・ビートルズ、ザ・ローリング・ストーンズ、エリック・クラプトン、ジェフ・ベックなど、当時イギリスですでに大スターとなっていたミュージシャン達がこぞってジミのステージを聴きに来た(ギターを燃やしたのは'67年3月、ロンドンのライヴハウスでの出来事)。

 

■ 伝説が続くと思われたアメリカ凱旋

 ’67年にはモンタレー・ポップ・フェスティバル出演で米国に凱旋。’69年、バンドにはコンガやサイドギターが加わることで「ジプシー・サンズ&レインボウズ」へと移行し、同年8月のウッドストック・フェスティバルではトリを務めた。バンドは再び3人編成の「バンド・オヴ・ジプシーズ」へと変化。
 '70年9月18日、ロンドンのホテルに滞在中に急逝。酒と睡眠薬の同時服用が原因とされる。わずか4年間の活動期間だった。

 

■ ジミ・ヘンドリックス年表

1942 11月27日、米国ワシントン州シアトルに生まれる。

1966 ザ・ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスを結成。デビューシングル「ヘイ・ジョー/ストーン・フリー」をリリース。

1967 シングル「パープル・ヘイズ」が全英3位を記録。勢いに乗って2枚のアルバム『アー・ユー・エクスペリエンスト?』『アクシス: ボールド・アズ・ラヴ』を立て続けにリリース。

1968 代表作となった2枚組のアルバム『エレクトリック・レディランド』をリリース。初の全米1位を獲得した代表作。

1969 念願の専用スタジオ、エレクトリック・レディ・スタジオの建設に着手。ノエル・レディング(B)の脱退によりバンドは解散。

1970 9月18日、ロンドンのホテルで急逝。27歳という若さでこの世を去る。

1997 生前、ニュー・アルバムのためにレコーディングしていた音源による『ファースト・レイズ・オブ・ザ・
ニュー・ライジング・サン』がリリースされる。ジミの魂のギターサウンドは今もなおロック史に光り輝く。

 

世界が愛したギターヒーロー名鑑  最終回(3)

 

ストラトの魔術師

 右利き用のフェンダー・ストラトキャスターを左利き用として使用していたのはあまりにも有名。弦の張り方は6弦(上)/1弦(下)なので、決して右利き用のままで使っていたわけではない。ただし、本来は弦の太さに合わせて溝を削る必要のあるナットは、右利き用のままだったとのこと。
 実はジミの活動当時、ストラトキャスターはまったく人気のないモデルだったが、彼の多彩なアーミングや、派手なフィードバック奏法、ハーフトーンと呼ばれる、PUセレクターを途中で固定するサウンドメイクが大きな話題となり、このモデルはギブソン・レスポールと並んでロックギターの定番モデルとなった。活動初期には他にギブソン・フライングVやSGなどを使用。

 

右利き用のストラトキャスターを巧みに操るサウスポー

 

世界が愛したギターヒーロー名鑑  最終回(4)

 

ジミと言えば1~6弦を上下逆に張り替えた右利き用のフェンダー・ストラトキャスター。激しいアーミングを取り入れたフレーズも軽々と弾きこなす。

 

アンプも規格外の使い方

 アンプはマーシャル1959やスーパー・リードの他、活動初期にはフェンダー・ツインリバーブも使用していた。これらのアンプを鳴らすキャビネットにフィードバックの発生しやすいシングルコイルPUを持ったストラトを向け、アームやストリングスクラッチを駆使しながら絶妙に音量をコントロールすることで、様々な効果音を得ていた。幼少期にテレビの効果音を真似ていたことが功を奏したのかもしれない。

 

エフェクターを駆使したサウンドメイク 

 ロックギタリストがエフェクターを多数使用するようになったのもジミの功績のひとつ。
 Dallas-Arbiter社製ファズフェイス、VOX社製ペダルワウ、Roger Mayer社製オクタヴィア、シンエイ社製ユニヴァイブなどの使用が確認できる。
 エンジニアであるロジャー・メイヤーとの関わり合いは深く、ジミの機材の多くを彼がカスタマイズしていたとのこと。
 もうひとつ特徴的な機材がカール・ケーブル! 巻きの分だけストレートケーブルよりも長くなり、さらにノイズ特性も大きく異なるため、これはエフェクターのひとつと言っても過言ではない程に音を変化させてしまう。しかしジミのいた'60年代末のサウンドを追求するのなら、ぜひ手にして欲しい一品だ。

 

ジミ・ヘンドリックス風サウンドの作り方

 

世界が愛したギターヒーロー名鑑  最終回(5)

 

ギターはストラトタイプ、アンプはマーシャルのコンボタイプを使用。強めにピッキングして少し歪む程度にゲインを設定。トレブルを上げてベースを抑えめにするのが基本。エフェクターはワウペダルとファズを揃えておきたい。

 

世界が愛したギターヒーロー名鑑  最終回(6)

 

世界が愛したギターヒーロー名鑑  最終回(7)

 

1小節は「パープル・ヘイズ」で聴くことのできるE7(♯9)で「ジミヘンコード」などとも呼ばれている。怪しい雰囲気満載だ。

 

世界が愛したギターヒーロー名鑑  最終回(8)

 

デビュー曲「ヘイ・ジョー」のイントロ部分をイメージ。開放弦、ハンマリング、プリング、スライドなどを駆使したいかにもギターらしい音使いで、彼のテクニックがよく伝わる。

 

世界が愛したギターヒーロー名鑑  最終回(9)

 

ペダルワウによるサウンドが印象的な「ヴードゥー・チャイルド (スライト・リターン)」のイントロを参考にした(ペダルの動きは音源を聴いてコピー!)。

 

世界が愛したギターヒーロー名鑑  最終回(10)

 

ジミがギターを燃やした曲「ファイア」。拍のアタマがずれて聴こえる(4拍目からフレーズが始まっている)ので、はじめは戸惑うかも!? しかし慣れればメチャカッコいいイントロ!

 


(Go!Go! GUITAR 2017年11月号に掲載した内容を再編集したものです)

 


 

Edit:溝口元海