【秘密レコード〜 レコ屋がこっそり教える、ヒミツのレコメンド】第15回「店頭演奏NG!? あえぎ声満載、うれしはずかしエクスタシー・レコード5撰」

ディスクユニオン新宿ロックレコードストア店長の山中明氏による連載コラム! レコード・バイヤーとして、そして1レコード愛好家として有名無名を問わず数知れない盤に触れてきた著者が、独自の視点でセレクトした推薦盤をその時々のテーマに沿って紹介していく連載です。
第15回は「店頭演奏NG!? あえぎ声満載、うれしはずかしエクスタシー・レコード5撰」。家族や友人と一緒にテレビを見ていた時に突然セクシーなシーンが始まってしまい、なんとも言えない気まずい思いをしたことってありませんか? 特に予想できない場面で急に出てきたときは、誰しも対処に困るもの…。それはレコードも同じなのです。
有名アーティストの楽曲ですら潜んでいることもある、そんなリスク。今回は予期せぬ事故に出会わないよう、いや、もしかしたらあえて出会いたいというお好きな方に向けて贈る、まさに「レコ屋がこっそり教える、ヒミツのレコメンド」な逸品をご紹介していきます。
※いつもはレアリティーを記載していますが、今回はテーマに合わせて「あえぎ度」で表現しております(笑)
いらっしゃいませ! Himitsu Recordsへようこそ!
みなさん、音楽にもTPOってあると思いませんか? というか、なんなら音楽にこそ強くTPOが求められている気もします。時には場を盛り上げてくれたり、時には優しくそっと寄り添ってくれたりと、時や場所に合わせた音楽はその効力を遺憾なく発揮してくれるのです。
しかし、裏を返してみれば、TPOに反した音楽は場の空気を乱す、そんなこともあるということです。とはいえ、ノイズやハードコアみたいに、分かりやすい感じであればプレイせずとも察しがつくかもしれませんが、トラップさながらの予測不能の隠れ反TPO因子(今思いついた造語です)が潜んでいたりすることもあるのです。
そんな反TPO因子なるものにもさまざまな種類があると思いますが、とりわけ場を気まずい空気に変えてしまうのが「あえぎ声」だと思います。
ジャケットからエロ全開であれば、いざ知らず。全然そんな感じの雰囲気を出していないのに、唐突に激しくあえぎ出す……。これって1人で聴いてる分には全然問題ない(むしろみなさんお好き?)んですが、人前ではちょっと気まずいですよね……。
ということで、今回はそんな事故的な気まずさを忌避すべく、私たちレコード屋が店頭でのプレイはキツイよねって共通して思っている、あえぎ声満載なエクスタシー・ナンバー収録のレコードたちをご紹介したいと思います。
なにぶん刺激が強いので、みなさんも試聴の際はTPOを考えてくださいね! ぜひ!
■ Serge Gainsbourg & Jane Birkin「Je T'Aime… Moi Non Plus」
収録アルバム:『Jane Birkin - Serge Gainsbourg』
発売国:France
レーベル:Fontana
規格番号:885.545 MY
発売年:1969
あえぎ度:★★★★☆(4/5)
紛れもなくエクスタシー・レコード界を代表する1曲。
この曲は、まず最初にブリジット・バルドーと録音しておいてお蔵入り、そしてバルドーと別れるや否や、続けざまに急接近したジェーン・バーキンと再録音と、ゲンズブールの破格のジゴロぶりを見せつけた1曲でもあります。
一部の国では放送禁止曲にまでなったのもさもありなん。録音中にホントにしてるでしょ!? ってなぐらい真に迫ったあえぎ声がてんこ盛りなのです。店頭NG。
■ James White & The Blacks「Stained Sheets」
収録アルバム:『Off White』
発売国:US
レーベル:ZE Records
規格番号:ZEA33-003
発売年:1979
あえぎ度:★★★★★(5/5)
猥雑なサックスがひとしきりいななき終わった後、電話のコールを皮切りに、男性の問いかけと女性の盛大なあえぎ声との果てなき応酬がスタート。その次第に激しさを増すエロティック・カンバセーション(というかただのプレイ)は、まぁすぐにこの気まずい空気も終わるさ、という期待に一切応じない、5分超乱れっぱなしのロング・エクスタシー・トラックとなっています。店頭演奏なんて、ダメ。ゼッタイ。
■ Brainticket「Brainticket (Part One)」
収録アルバム:『Cottonwoodhill』
発売国:German
レーベル:Bellaphon
規格番号:BLPS 19019
発売年:1971
あえぎ度:★★☆☆☆(2/5)
なかなかにブッ飛んだサイケデリック・グルーヴが渦を巻く、スイス出身のクラウトロック集団による官能アシッド・チューン。街の喧騒から「ガラガラペッ!」のうがいまで、さまざまな具体音が入り乱れる曲ですが、後半は女性の慟哭にも似たあえぎ声が繰り広げられるのです。エロ度は薄めですが、店頭でのプレイしづらさは一級品。
■ Donna Summer「Love To Love You Baby」
収録アルバム:『Love To Love You Baby』
発売国:US
レーベル:Oasis
規格番号:OCLP 5003
発売年:1975
あえぎ度:★★★☆☆(3/5)
彼女のキャリアを代表する1曲にして、スロウなディスコ・ビートがドクンと脈を打つ、ブラック・エクスタシー・ナンバー大本命曲。
シングルは「Billboard Hot 100」で2位まで上昇した大ヒット曲なんですが、ヒットしたからってホイホイ店頭でかけて良いのかは迷いどころ。
■ Sylvia「Pillow Talk」
収録アルバム:『Pillow Talk』
発売国:US
レーベル:Vibration
規格番号:VI-126
発売年:1973
あえぎ度:★★★☆☆(3/5)
曲名からしてモロ出しな、かなり攻め込んだエクスタシー・ソング。もう歌詞も満点エロなんですが、セクシー・ヴォイスもかなりシーハー系でキワキワです。
こちらもシングルは「Billboard Hot 100」での最高位が3位。アメリカの方たちはお好きですね〜……って、どこの国でもお好きな方だらけだと思いますけど。まぁ大事なのはTPOですよ!
ということで今回はここまで。またのご来店お待ちしております!
Text:山中明(ディスクユニオン)
Edit:大浦実千