【秘密レコード〜 レコ屋がこっそり教える、ヒミツのレコメンド】第6回「柔らかく降り注ぐメロディー 〜 木漏れ日フォーク名盤撰」


ディスクユニオン新宿ロックレコードストア店長の山中明氏​​による、新たな連載コラムがスタート! レコード・バイヤーとして、そして1レコード愛好家として有名無名を問わず数知れない盤に触れてきた著者が、独自の視点でセレクトした推薦盤をその時々のテーマに沿って紹介していく連載です。

第6回は「柔らかく降り注ぐメロディー 〜 木漏れ日フォーク名盤撰」。そもそも「木漏れ日フォーク」とは何ぞや? というところから、今回はご案内していきます。その代名詞たるHeronから始まり、手の届きやすいアイテムから、本連載ならではのマイナーな激レア盤まで魅力的な名作の数々をご紹介!

なお、以下に記載のレアリティーはあくまでもオリジナル盤の希少度になります。多くはCDやアナログ盤で再発されていたり、音楽配信されていたりもしますので、もし気になったものがありましたら、まずはインターネット上でディグするところから始めてみてはいかがでしょうか? そこには、底知れぬ深淵が待ち構えているかもしれませんが…。

秘密レコード_01


いらっしゃいませ! Himitsu Recordsへようこそ!

皆さんは「木漏れ日フォーク」というジャンルをご存知でしょうか?

いや、そんなの聞いたことないよっていう方、ご安心ください。というのも、木漏れ日フォークはここ日本で生まれたジャンルではあるんですが、なにぶんものすごくフワッとしたもので、正直言って定義らしい定義なんてありません。また、そもそも海外ではそれに相当するようなジャンル自体存在しません。

ただ、日本人のレコード・ラヴァーの間では、さも常識かのように日々語られていて「木漏れ日フォーク苦手な人0人説」が成立しそうなぐらい、日本人にどストライクなジャンルではあります。

とそこまで言うなら、フワッとでも良いからどんなジャンルなのか教えてよってなると思いますので、ここで私なりにちょっとした定義付けをしてみましょう。

「木漏れ日」というある種の音楽用語は、さまざまなシチュエーションで使われることがあるかもしれませんが、基本原則は英国生まれの音楽のみが対象となります。また、そのネーミングそのままに、穏やかで陽光差し込むような、ハートウォーミングなサウンドであることも、定義の1つとなってくるでしょう。

まぁ、ここまでであればまだフワフワなんですが、定義する上で最も重要かつ、それらを一言でまとめてしまうパワー・ワードがあります。それは「Heron度が高いか否か」です。
Heronというのはイングランド南東部、バークシャー生まれのフォーク・グループのことですが、要は彼らの存在こそが木漏れ日フォークそのものなのです。英国生まれの音楽でなければならないのも、ハートウォーミングなサウンドでなければならないのも、単にHeronのことを指しているに過ぎないのです。

ということで、今回はそんなHeronに代表されるジャンル、木漏れ日フォークの名盤たちをご紹介させていただきます。
聴くだけで心に光が差し込み洗われる、そんな音楽って最高じゃありませんか? ぜひご一読ください!

 

※レアリティーとは

オリジナル盤の希少度を星印で表現しています。最大は6星。

★☆☆☆☆☆ 定番:買いやすくて好内容

★★☆☆☆☆ 王道:一家に一枚

★★★☆☆☆ 希少:試されるのはレコードへの情熱

★★★★☆☆ 財宝:これであなたもお金持ち!

★★★★★☆ 遺産:金銭よりも入手機会獲得の難度

★★★★★★ 神器:世界が一丸となって守り抜くべき聖杯

 

Heron『Heron』

発売国:UK 
レーベル:Dawn
規格番号:DNLS3010
発売年:1970
レアリティー:★★★★☆☆(4/6)

まるでそのDNAに刷り込まれているかのように、ここ日本でとりわけ多くの音楽ファンから愛されて止まない木漏れ日フォーク。ただ、なんだか海外ではそこまでの評価ではないような気もしますので、これが「日本人の琴線」っていうヤツなのかもしれません。

先ほども言った通り、彼らが木漏れ日フォークそのものであるワケですが、その語源の由来も実に明確です。彼らのデビュー・アルバムである本作は、農場の屋外で録音されており、これがロックのレコーディング史における最初の野外録音作と呼ばれています。本当かどうかは知りませんけどね……。
そのため、フィールド・レコーディングとでも言わんばかりに、そこかしこに小鳥のさえずりや小川のせせらぎが収められており、彼らが爪弾くアコースティック・サウンドと相まって、温もりに溢れた豊潤なサウンドスケープを創り出しています。

ただ、木漏れ日というネーミング自体が生まれたのは、もっと単純明快な理由です。
本作の裏ジャケを見れば一目瞭然。樹々の間から陽光差し込む中、サウンドを奏でる彼らの姿を見れば、そのまま直球で「木漏れ日フォーク」と呼び始めるのも無理はないってもんです。

彼らはこの1970年作でデビューを果たして以降、近年に至るまでマイペースに活動を続けていますが、特に初期2枚のアルバムは必聴といえましょう。
デビュー作はもう説明不要な完全無欠の名作で、翌1971年にリリースされた『Twice As Nice & Half The Price』は、2枚組の大作となっています。そのボリュームから少し冗長に感じる人もいるかもしれませんが、最終面には彼らの代表曲「The Devil」も収録されており、こちらも愛好者からは100%名作の太鼓判を押される一枚です。

また、1971年にリリースされた4曲入りEP『Bye and Bye』(UK / Dawn / DNX2509)も必聴です。いずれもアルバム未収録曲となっており、彼らの曲の中では珍しい、快活なリズム・セクションが先導する代表曲の1つ「Bye and Bye」や、ボブ・ディランのカヴァー曲「Only A Hobo」が収録されています。最高!

あと余談ですが、2016年には初となる来日公演が行われました。その際には、私が当時在籍していた下北沢の店舗にもお招きして、インストア・イベントを開催させていただいたんですが、Heronを狂おしいほどに愛している私は、逆にその時はレコード買付でイギリスにいたという始末……ぐぬぬ。
ああ、もう悔やんでも悔やみ切れませんよ! どうかもう一度来日お願いします!

 

■ Water Into Wine Band『Hill Climbing For Beginners』

発売国:UK
レーベル:Myrrh
規格番号:MYR1004
発売年:1973
レアリティー:★★★☆☆☆(3/6)

すでに第2回の話でしっかりご紹介させていただきましたが、 Water Into Wine Bandは、ケンブリッジ大学の学生4人で結成されたクリスチャン系のフォーク・グループで、Heronに次ぐ木漏れ日フォーク代表格と言って良いでしょう。
本作はデビュー作になりますが、彼らが残した2枚(+α)のアルバムは、木漏れ日マスターピースとして認定済(愛好家調べ)の作品です。

ちなみに、わざわざ「+α」と書いたのは、デビュー作には2種類のバージョンが存在するからです。その辺りの話も詳しくお話ししていますので、第2回の復習はマストでお願いします!

 

■ Ron Paul Morin, Luke P. Wilson『Peaceful Company』

発売国:UK
レーベル:Sovereign
規格番号:SVNA7252
発売年:1972
レアリティー:★★☆☆☆☆(2/6)

バンドとしては、上記2グループが木漏れ日最高峰と言って良いと思いますが、ソロ〜デュオ作としては本作こそが「トップ・オブ・木漏れ日」の勲章を受けるべき一枚でしょう。

ドラムレスの心穏やかなフィーリングの中、美しくもメランコリックなハーモニーを紡ぎ、アコースティック・ギター、バンジョー、エレピ他がそっと華を添える。そして、アートワークには、文字通り木漏れ日を受けながら歩き語らう2人の写真が使用されています。そんな隙なく木漏れ日度100%な仕上がりが、私たち愛好家のハートを射抜くのです。

ソングライティングはHeronと並べても遜色なく、アルバム通しても穴っぽいところはありません。中でも、極限まで装飾を削ぎ落としたA6「Speaking Sounds Of Love」は、木漏れ日フォーク史上、最もタイトで美しい名曲だと思います。

そんな彼らがHeronと異なるのは、そのネーム・バリューだけ。未聴の方はこの機会にぜひ!

 

■ Alfalpha 『Alfalpha』

発売国:UK
レーベル:EMI
規格番号:EMC3213​​​​​​​​​​​​​​
発売年:1977
レアリティー:☆☆☆☆(1/6)

1970年代初頭メインのジャンルでもある木漏れ日フォークですが、まさに「ネオ木漏れ日」の最右翼ともいえるグループです。

数年後にはThe Dream Academyを結成し、ネオアコ・シーンで大きな成功を収める、ニック・ライアード・クロウズ。そんな彼が在籍していたグループとしても知られるAlfalphaは、1977年にたった1枚のアルバムを残しています。

木漏れ日フォーク・サウンドを正統後継しながらも、甘くてキャッチーなヴォーカルと、モダン・ポップ的職人芸を織り込んだアレンジの妙が、木漏れ日の未来を描いたような至高の名作です。

まだ英オリジナル盤もそこまで高くはないので、今の内に一家に一枚は揃えておきましょう。損はさせませんよ!

 

■ Time Wasters『Time Wasters』

発売国:UK
レーベル:Personal Records​​​​​​​
規格番号:STICKY1​​​​​​​
発売年:1978
レアリティー:★★★★(5/6)

最後にご紹介するのは、上記グループに比べると、マイナーかつレアな一枚です。

1977年の暮れ、イングランドのウェスト・ミッドランズはスタッフォードシャーにある、インガスター・ホールというアートセンターに集められたのは、音楽の才に秀でた地域選抜の学生たち。彼らはお互いに面識ない即席グループであったものの、DNAに刻み込まれた木漏れ日サウンドを継承しつつ、そこに卓越したバンド・アンサンブルを持ち込み、木漏れ日にプログレ〜サイケ的なエッセンスを織り込むことに成功しています。

そのため、木漏れ日度低めな曲もあるものの、あくまでも主軸にあるのは瑞々しくも豊潤な歌心で、一部のディープな木漏れ日ファンからは高い評価を受ける一枚となっています。そういったことから、本作をカテゴライズするのであれば、木漏れ日フォークというよりも、木漏れ日サイケのほうが妥当なのかもしれません。細かいですけど。

録音はオープンリールへの一発録りで行われており、その多くがライブ・レコーディングで構成されていますが、はっきりとそれを感じさせることはありません。そう、そのバックグラウンドにフィーリングを忍ばせている程度の味付けが、また木漏れ日度を、否、Heron度を高めているのです……。

​​​​​​​では次回ご来店をお待ちしております!

 

 

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Text:山中明(ディスクユニオン)
Edit:大浦実千

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