『アナログレコードにまつわるエトセトラ』出版記念!レコ飯 part.3 ~ これで海外買付もバッチリ! 魂のご当地ファストフード【レコにまつわるエトセトラ 特別編】

 

2019〜2022年の3年間にわたり、mysoundマガジンで連載されたコラム【レコにまつわるエトセトラ】。ディスクユニオン新宿ロックレコードストア店長の山中明氏がアナログレコードの魅力を軽妙かつディープにお伝えしていく連載は、近年の新たなレコードブームの盛り上がりとともに読者層を着実に獲得してきました。

そんな人気連載を集約&加筆し、強力にグレードアップした書籍『アナログレコードにまつわるエトセトラ』(辰巳出版)が、2023年4月に刊行。今回はそれを記念して、本コラムがmysoundマガジンへ約1年ぶりに帰還! 「レコ飯 part.3 ~ これで海外買付もバッチリ! 魂のご当地ファストフード」と題して、連載当時も人気だったシリーズの最新版をお届けします。

買付の旅には欠かせないお供、ご当地ファストフードの名品をご紹介!

 

レコにまつわるエトセトラ特別編_01

なんだかんだで世界のファストフードの大正義、ハンバーガー。こちらはオランダものです。

 

2019年より3年にわたって書き続けてきた本連載。そんな原稿たちの中から選りすぐってまとめ上げ、2023年4月24日に『アナログレコードにまつわるエトセトラ』(辰巳出版)として、めでたく書籍化を果たしました。大好評発売中!

ということで、今回はそんな(私的に)めでたい出来事を記念して、書籍には収録されなかった人気シリーズ「レコ飯」の書き下ろしの話をアップさせていただきます。
コレを読んでいただいて、レコードに興味を持ったり、実際に料理を食べてみたりしてくれれば幸いです……ってまぁ正味な話、本を買っていただけるのが一番うれしいんですけどね……。ぜひ!

 

レコにまつわるエトセトラ特別編_02

オランダのレコード・フェアにて。ケバブもレコード界への浸透度が抜群です。ビールでブチ込んで英気を養う!

 

そもそも「レコ飯」ってなんじゃいっていう話なんですが、そんな大層な定義付けなんてありません。

私はレコード・バイヤーとして世界中を飛び回っているワケですが、やっぱり買付期間中は(ほぼ)100%レコードのことしか考えていないと思います。レコ屋で働いている普段も大差ないともいえますが、朝起きて夜寝るまでの全てをレコに費やす、買付行軍中はちょっと普段とはモードが違うものなんです。

しかし、私も今や百戦錬磨の買付猛者。そんな時にどんなご飯がフィットするのか、そしてどんなご飯が早くて安くて美味いのか、世界さまざまな土地の「レコ飯」がインプットされているのです……なんて謎の講釈垂れちゃいましたが、海外の美味しいご飯のちょっとしたオススメみたいなものだと思ってください。悪しからず。

そんなこんなで今回ご紹介させていただくのは、魂こもってるご当地ファストフードです。美味い上にパパッと手早く食べられるファストフードって、やっぱり時間がない買付にはありがたい存在なんです。
なお、私はヨーロッパに行くことが多いので、ヨーロッパ諸国の名物をオススメさせていただきます。

 

イギリスといえば、やっぱりフィッシュ&チップス!

 

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イギリスの某パブにて。フィッシュ&チップスはグリーンピースが添えられているのが定番ですが、正直あんまり好きくないです……。

 

まずはイギリスからご紹介しましょう。

過去にもUpper Crustをはじめとした素晴らしきパン文化をご紹介しましたが、やっぱりフィッシュ&チップスがキング的存在となるでしょう。
レストランやパブでゆったり食べるのも良いですが、テイクアウトして外でもパッと食べられる手軽さも兼ね備えていて、時間のない買付にもジャスト・フィット。さらに、いろんな街に行く買付という性質上、ついでに街々の美味そうな店探しなんていうのもオツです。

ただ、一口にフィッシュ&チップスといっても、そのクオリティには相当にバラつきがあるものです。全ての具材を親の仇のように焼き切り、塩コショウを振るとか基本的な味付けすらも(ほぼ)しない、イギリスの狂おしいほどにシンプルが過ぎる食文化を侮ってはいけません……。
ちょっと言葉が過ぎたかもしれませんが、試しに街のそこら辺の店でテイクアウトしてみてください。悶えるほどに油ダクダクのものをビニール袋にブッ込んで、ホイと渡してきたりすることもあるんですよ……。ただ、そんな時はビネガーをもっとダグダグにブッかけちゃえば、バキッと脳天が覚醒するジャンク・フードに早替わりです! キクー!
まぁ、もちろん大体の店は普通に美味いですし、お初な方はコイツで最高の白身魚の食べ方のひとつを知ることになるでしょう。

オススメの店はそれこそいっぱいあるんですが、急にワケの分からない街の店を紹介されても困ると思いますので、抜群に行きやすくて安定感のある味の店を紹介しておきましょう。
そこは専門店ではないんですが、とにかく行きやすいですし、そういや今回の旅で食べ忘れたな……なんて帰り際に気づいた方でも速攻で行けちゃいます。だって、ヒースロー空港にある店ですからね!

 

 
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Vagabond Bar and Kitchen

T5(ターミナル5)の出国ゲートを過ぎたところにあります。

 

オランダ代表はコロッケ…ではなく「クロケット」

 

お次はオランダのファストフードをご紹介しましょう。

オランダといえば、誰がなんと言おうとコロッケ。正しくは「クロケット」と呼ばれるオランダ式コロッケのことなんですが、私たちが親しんでいるコロッケとはずいぶんとテイストが異なります。
というのも、そもそも中身はジャガイモではなく、クリーム(ベシャメル・ソース)をベースに、肉とか海老とかいろいろな具材を混ぜたものをタネにして、衣を付けてかなりハード目に揚げたヤツなんです。要は変形クリーム・コロッケって感じですね。
一度噛み締めれば、トロッとガリガリッの二つの食感と、口いっぱいに広がる濃厚な味わいが楽しめる、オランダ代表の名に恥じぬ名品です。

なお、ここでみなさんに美味そうなクロケットの勇姿をお見せしようと思ったんですが、意外にちゃんとした写真を撮ってなくて、レコード・フェア会場で私が食ってる途中のきったねーヤツしかありませんでした……。右端のフォークがブッ刺さってるものがそうなんです……すいません……。

 

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クロケットは単に美味くて食べやすいということもあるんですが、その販売方法でも買付にピッタリです。

オランダの駅に行くとよく目にしますが、至るところにコロッケの自動販売機が設置されているのです。日本ではあり得そうな光景ですが、ことヨーロッパではこういう自販機は珍しいと思います。
クレジットカードをサッとかざせばパッと買えるこのスタイルは、買付の合間の小腹空いた時にはピッタリです。他にもクロケットをパンでサンドしたものとか、チキンやビーフのハンバーガーとかも売っていますので、腹の塩梅に合わせて買えるのも良いですね!

 

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あと、ビターバレンっていうクロケットの小さくて丸いバージョンもあります。
基本大きさが違うだけなんですが、より食べやすい一口サイズになっているということもあって、酒のつまみ的な感じもあります。そのため、カレー粉がインされているものとか、味にパンチがプラスされたものも人気ですね。あ、添え物にマスタードはマストですよ!

ちなみにですが、このマスタードはディジョン・マスタードっていう、私たちが慣れ親しんでいるものとはちょっと違うものらしいです。さっき調べて判明したんですが、いつもパクパク食べてるだけで全然知りませんでした……。

 

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オランダはアムステルダムにて。フリッツはオランダでもポピュラーです。

 

ドイツ代表はハンパじゃなくデカい豚カツ「シュニッツェル」

 

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ドイツはプレッツェルも名物。その塩っぱさがサンドにビタッとはまります。

 

ヨーロッパは他の国にもたくさんの極上ファストフードがあります。ベルギーにはフリッツ(フライドポテト)、イタリアには切り売りのピザ、さらにはすべての国に浸透しまくってるケバブ等々、もう挙げ出せばキリがないんですが、最後にドイツだけ紹介させてください。

私が小学生の時、東西に分かれていたドイツがまたくっつくその前後の頃の話なんですが、私はドイツの港町ハンブルグというところに住んでいました。まだレコードがどうとか、そんなことはビタイチ考えていなかったんですが、ファストフードは人一倍食べていたと思います。

露天に行けば美味そうなヴルスト(ソーセージ)やポンフリ(フライドポテト)に目をつけ、ドイツ語も喋れないのにケチャップとかマヨネーズの塩梅を伝える能力だけは磨かれていました。
あとは近くのガソリンスタンドとかスーパーに行けば量り売りのグミ(もちろんハリボー)が売っていて、その時の気分と懐具合に合わせてウマウマと堪能していたものです。すごいちなみにですが、その時のマイ・フェイバリットは通称ポンフリ・グミ(サワーレモン)でした。

そして大人になった今、仕事としてレコードの買付でドイツに行くようになったワケですが、そんな経験も活きてそれらは素晴らしき「レコ飯」へと昇華したのです。めでたしめでたし……ってホントか?

 

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とまぁ、私的な話をグダグダ書きましたが、最後にご紹介するのは魂のレコ飯、シュニッツェルです。薄汚れた地元のカフェからシュッとしたホテルまで、さまざまな飲食店で提供されるすこぶるポピュラーな名物料理です。純粋なファストフードっていうワケではないんですが、それっぽい専門店だってあったりします。
元々はヴィーナー・シュニッツェルという料理で、オーストリアのウィーンが発祥です。ただ、ヨーロッパ全土で広く親しまれていて、体感では特にドイツとオランダで多いような気がします。

そして肝心の料理なんですが、ハンパじゃなくデカい豚カツっていう感じのものです。ただ、ハンマーで叩いて薄く伸ばしたものなので、その大きさの割りには意外に食べやすい量かもしれません。いや、だいぶガッツリしてはいるんですけどね。
なお、上の写真はコレでもだいぶ小ぶりなタイプのシュニッツェルたちです。本当は大きいのをお見せしたかったんですが、またしても良い感じの写真がなかったんですよ……。この皿一杯のサイズ感も珍しくありませんよ!

また、食べ方はレモンを絞って塩をかける、このシンプル・スタイルが王道中の王道。マッシュルーム・ソースとかグレイビー・ソースとか、国や店によってはいろいろとバリエーションありますが、やっぱり王道スタイルを強くオススメします。あと添え物もポテトやらサラダやらとさまざまですが、ドイツではザワークラウトというキャベツの酢漬けも定番です。でも、子供の頃は結構苦手でしたね……今は好きなんですけど。

一日中レコ堀りして疲れ切った後は、ビール片手にゆっくり&ガッツリとこのシュニッツェルを食べる……いや〜タマランですよ!

 

レコードもレコ飯も堪能したら…ようこそ天国(地獄?)へ!

 

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ヴルスト盛り合わせに、シュヴァイネブラーテン(ローストポーク)とブラートカルトッフェルン(ジャーマンポテト)……ドイツ料理全部盛りな最高のヤツ。

 

長々と書いてしまいましたが、今回はここまで。

今やレコードを買う手段っていろいろあるもので、ネットでポチるスタイルは欠かせないものとなりました。世界津々浦々のレコードたちをキャッチするためには、もはやマストな手段といって良いでしょう。
その一方で、わざわざ自分の手と足を使ってレコ屋に掘りに行くっていうのも、また欠かせないスタイルだと思います。目当てのレコードを買うだけじゃなくて、行った先の土地のいろんなモノを見たり食べたり、丸ごとが体験としてフィジカルに訴えかけてくるんです。

ただ、そんなことばかりを繰り返していると、レコードが自分のライフ・スタイルから離れなくなってしまって、気づけばレコードが自分の生活の中心になってしまっている、なんていうことも……レコード天国(地獄?)へようこそ!

ということで、新著『アナログレコードにまつわるエトセトラ』をよろしくお願いします! ではまた!

 

【Information】


レコにまつわるエトセトラ特別編_16

 

『アナログレコードにまつわるエトセトラ』
(辰巳出版刊)

山中明著
初版刊行日:2023年4月24日
判型:A5判(オールカラー)
定価:2,300円+税
ISBN:978-4-77-782972-9
https://tg-net.co.jp/tatsumi_book/13936/

ディスクユニオンサイト:https://diskunion.net/rock/ct/detail/1008635156

 


 

Text&Photo:山中明(ディスクユニオン)
Edit:大浦実千

 

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