レコ飯 part.4 ~ レコード買付にまつわるイギリス飲食事情【レコにまつわるエトセトラ 特別編】

 

2019〜2022年の3年間にわたり、mysoundマガジンで連載されたコラム【レコにまつわるエトセトラ】。ディスクユニオン新宿ロックレコードストア店長の山中明氏がアナログレコードの魅力を軽妙かつディープにお伝えしていく連載は、近年の新たなレコードブームの盛り上がりとともに読者層を着実に獲得してきました。

2023年4月には『アナログレコードにまつわるエトセトラ』(辰巳出版)として書籍化もされた人気連載の中でも、とりわけ好評だった「レコ飯」シリーズがmysoundマガジンに再び降臨! 今回はブレックファーストからパブまで、写真を見ただけでも英国臭がプンプンと匂い立つような魅惑のレコ飯をご紹介していきます。

 

レコにまつわるエトセトラ特別編_01

行きのJALの機内食でジャパン・クオリティーともしばしの別れ。すでにこれからのイギリス飯に不安が募るのです……。

 

レコード・バイヤーのリアルな食事情をお伝えするコラム「レコ飯」も、気づいてみればなんだかんだと第4弾。途中コロナ禍への突入もあり、海外への渡航が難しい時期もありましたが、近年はまた活発化してきたということもあって、またこうしてレコ飯の話をさせていただいているワケです。

そんなこともあって、今回はコロナ禍以降のレコ飯状況をお伝えしようと思うのですが、とにかく今海外に行って否が応でも体感させられるのは、露骨なまでの物価の違いです。もちろん、渡航前の手配段階で気づいてはいるんですが、コロナ禍以前とはもうまったくの別世界に突入してしまったなぁ……とつくづく思い知らされるのです。
中でもやっぱり1番ダイレクトに感じるのは円安の影響で、食事はもちろんのこと、肝心要のレコードの価格高騰&円安のダブルパンチがマジでエグいです……。

まぁそんなことばっかり言っててもしょうがないんで、そこは自分のバイイング・スキルを信じて、今日も美味いレコ飯を食いながらレコードを買いまくるのです……ヤッタルゼ!

 

レコにまつわるエトセトラ特別編_02

7大要素がそろった典型的なイングリッシュ・ブレックファースト。ただ、これは空港なんんでまだお上品。

 

このコラムでは毎回言っている気もしますが、何をするにしても食事は大事です。とはいえ、海外買付中は本当に時間がタイトで、ゆっくりご飯を食べている時間なんてありません。
ただ、私も40代半ばに差し掛かったということもあり、以前のガムシャラなハードコア・スタイルからは脱却し、多少なりとも余裕のあるスケジュール感で回るようになりました。まぁ、ちゃんと朝ごはんを食べるようになったっていう程度なんですけどね……。

ということで、私が1番多く渡航する国、イギリスの朝食事情からお話しいたしましょう。ただ、そんなイギリスでの朝ごはんに選択肢なんてありません。そう、みなさんご存知のイングリッシュ・ブレックファーストの一択なのです。

では、まずイングリッシュ・ブレックファーストとはどういうものか改めて説明しておきましょう。
上の写真の通り、いろいろなものがワンプレートに盛られた料理なんですが、盛られているものにはある程度決まりがあります。そして、それらは私が勝手に「イングリッシュ・ブレックファースト7大要素」と呼んでいる、7つの食材で構成されています。
ソーセージ、ベーコン、ベイクド・ビーンズ、卵(目玉焼き or スクランブルエッグ)、マッシュルーム、焼きトマト、ハッシュドポテトの7つがその要素で、そこにトーストといったパンが付いてくるような感じです。

そして肝心の味なんですが、マズイっていうワケじゃないんですけど、とりあえず微妙ではあります。もちろんレストランやホテルでクオリティーは違ってきますが、なーんかどこか微妙なんですよ……。
それぞれの要素がジャパン・クオリティーであればなんら問題ないんです。ただ、例えばソーセージやベーコンは親の仇かっていうぐらいの超よく焼きで、ジューシー感なんて微塵も残っていないですし、そもそもこの7大要素の組み合わせ自体も、もうちょっとなんかあるんじゃないかとも思うのです。

別に好き嫌いなんてまったくない私ですが、特に某航空会社の機内食で出るイングリッシュ・ブレックファーストは、数年前に苦手モードに入って以来、ちょっと食べれなくなってしまいました……。

 

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一般的なホテルの朝食ビュッフェ。

 

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ちょっと星多めのホテルでも、結局置いてあるものは大体同じ。

 

なんかすごいディス・モードに入ってしまいましたが、そんな微妙な組み合わせも、バラしてしまえば1つひとつはそれほどフリーキーな感じではありません。

イギリスもホテルの朝食はビュッフェ・スタイルが普通なんですが、ホテルによってのバリエーションはほとんどなくて、徹頭徹尾この7大要素+アルファが並んでいるだけです。まぁ何が言いたいかというと、要は英国式に逆らって、7大要素を全部並べずに食べちゃえば全然普通ですよねっていう寸法です。めでたしめでたし?

ちなみにですが、そんな7大要素には実はもう1つの要素が存在しています。本当は結構重要な要素ではあるんですが、現地の人でも好き嫌いが分かれるのか、レストランとかでイングリッシュ・ブレックファーストを頼んでも入っていないことのほうが圧倒的に多いです。
そして、その最後の要素こそが「ブラック・プディング」っていうヤツなんですけど、主原料は豚の血液です。まぁ、味はなんとなく想像つきますよね……。

 

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選り好みしすぎた結果、すでにイングリッシュ・ブレックファーストではないの図。

 

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これが鬼門のブラック・プディング。

 

ここまでなんだかんだ失礼なことを言ってしまいましたが、朝食はとりあえず食べられれば良いっていう感じで、それほど細かいことは気にしていません。ただ、やっぱり1日を締めくくる、そして明日への糧となる「一杯」ともなるとワケが違います。

ヨーロッパはいわずもがなのビール大国で、その素晴らしい味はもちろんのこと、とりあえず買いやすい値段設定にグッときます。
今現在の物価のヤバさに私たちは苦しめられていますが、下手すりゃ水よりビールのほうが安いなんていうこともあるので、やはりいろんな局面で口にするワケです。レコード・ディーラー宅で親睦を深めるために飲み交わしたり、水やジュースのノリで普通に飲料水として飲んだりといろいろですが、イギリスではやっぱりパブで飲むのがオススメです。

 

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さぁ今日はどれにしようかな?

 

パブって日本でいう居酒屋みたいなものですが、昼から開いている店がほとんどで、老若男女が通うファミレス感もあったりはします。なお、深夜営業は一切なくて、23時までの営業が基本ではあります。健全。

パブでのビールの提供はカウンターで頼んでその場で受け取る、キャッシュオン・スタイルが基本です。カウンターには複数種類のサーバーがズラッと並んでいて、いろいろなテイストが楽しめちゃいます。何十と種類のある店なんかもあって結構目移りしちゃいますが、思い切って店員さんにオススメなんかを聞いてみるのも良いでしょう。ちょっと試飲させてくれるお店もあったりしますしね!

 

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では、ここで私が特にオススメするパブをご紹介しておきましょう。ただ、良い店ってそこら中にあるもので、挙げ出すと本当にキリがありません。そもそもいわゆるハズレなんてないんですし、そこはさすがの大英帝国という貫禄を感じます。

ということで、私からは美味い、行きやすい、一見でも入りやすいの三拍子がそろったお店を1つだけピックアップさせていただきます。

ご紹介するのは、ロンドン5大主要駅の1つ、ユーストン駅の目の前に居を構える名店「The Euston Tap」です。駅の目の前という好立地、古い駅舎を改造した風格のある造り、30種近いバラエティーに富んだサーバー、そして店内でも店外でも飲める気軽さを持ち合わせた、ロンドン最強パブの1つです。

ヴィンテージな造りに反するネオン輝く雰囲気は、クラシックなパブとはまた異なる魅力を持ちますが、とにかくここはビールの種類が豊富です。店内壁の黒板にはビッシリと銘柄が書かれていて、どれにしようかと悩んじゃいますが、そこはノリで選ぶかスタッフにレコメンドでも聞いて、いつも通りキャッシュオンで買いましょう。

もちろん店内で飲んでも良いんですが、真冬以外は外席もオススメです。夏は店を取り囲むように人だかりができていて、気軽に立ち飲みスタイルで飲めちゃうワケです。「あー今日はついにあのレコード買えたな!」とか、「明日はあっちのフェアに行ってみるか……」なんてレコード・バイイングに想いを馳せながら、美味いビールで英気を養うのです……最高ですね!

 

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夏はやっぱり外席。写真はまだ明るいですけど、19時頃です。

 

そんな最高のパブ「The Euston Tap」ですが、1点だけ注意事項があります。店内は1Fカウンターのほか、2Fにはテーブル席も設置されています。ただ、2Fはそんなに雰囲気良いっていう感じでもないので、そこで誰も飲んだりはしないんですが、トイレがあるので人の往来自体は多いです。
で、何が注意点かというと、上がるための階段がけっこうタイトめな螺旋階段なんですよ……。ヨーロッパではまま見られるタイプなんですが、なにせコッチは千鳥足。さすがに転げ落ちたらシャレにならないので、手すりを持って一歩ずつ上り下りしましょうね……。

 

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最後に他ヨーロッパ諸国のホテルの朝食例として、オランダのものを見てください。オシャン。

 

ということで、今回はここまで。
もう話がレコードと全然関係ないじゃんって言われたらぐうの音も出ませんが、ただ海外に行ってレコードを買うっていうことでも、いろんな楽しいことが付随してきて良いもんですよっていう、海外レコード旅のススメでした! ではまた次回!

 

【Information】


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『アナログレコードにまつわるエトセトラ』
(辰巳出版刊)

山中明著
初版刊行日:2023年4月24日
判型:A5判(オールカラー)
定価:2,300円+税
ISBN:978-4-77-782972-9
https://tg-net.co.jp/tatsumi_book/13936/

ディスクユニオンサイト:https://diskunion.net/rock/ct/detail/1008635156

 


 

Text&Photo:山中明(ディスクユニオン)
Edit:大浦実千

 

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