【レコードジャンキー富和】第9話「レコ屋を体験せよづら!」

mysoundマガジン読者の皆さまにはもうお馴染み、レコードの深遠なる魅力をお伝えする【レコにまつわるエトセトラ】。その著者であるディスクユニオン新宿ロックレコードストア店長の山中明氏が、なんと今度は漫画の連載をスタート!? 得意のイラストを武器に間口はより広く、しかしディープな内容をポップにご紹介していきます。
第9話では、「レコ部」部員のヴァシュちゃんとキューくんが、延々と続くレコ磨きにちょっと疲れてきた模様。そんな時を見計らったかのように、富和から課外活動の提案が。特製Tシャツを着て、みんなでレコ屋の「一日体験」へと出かけることになり…。
※レコード磨きの極意は第7話を参照
体験入店したレコ屋では、部活の成果もあって完璧なレコ磨きを見せたヴァシュちゃんとキューくん。接客でもそれぞれの個性を発揮して活躍(?)を見せますが、2人を見守る富和にお客さんからあの名盤についての質問が…。そんな“バナナ”にまつわるエトセトラは下記をご参照ください!
★今回のレコードMEMO★
レア度:★★★★★☆(5/6)
※モノラル盤の美品の場合
今回のレコードは、The Velvet Underground & Nicoが’66年にリリースしたデビュー・アルバムにして、ロック史に深く刻み込まれた伝説の名作『The Velvet Underground & Nico』です。
本作が伝説として語り継がれる要因は数多ありますが、その1つとして注目したいのが、ジャケットのアートワークです。
ロック界を代表すると断言してもよい、このあまりにも有名なアートワークを手掛けたのは、ご存知ポップアート界の巨匠、アンディ・ウォーホル。
ジャケット表面にはバナナのステッカーが貼り付けられており、それをピールする(剥がす)と中身が見れるという秀逸なデザインは、その音楽の内容以上に広く一般的な認知度を獲得していると思います。
ただこの凝った作りこそが、現代のレコード・コレクターたちの頭を悩ませる、実に罪づくりなヤツなのです。
「Peel Slowly and See」と記載されてもいますが、そもそもこんな作りにされたとあっては、普通はピールしてみようと思うのが人間の性ってヤツでしょう。
チラッと一部分(特にヘタの部分)をめくってみたり、ガッと剥がしてステッカーをくしゃくしゃポイってしてみたり、そんなこんなで50年以上も経ってしまえば、現在残っている個体がダメージだらけであっても無理はないでしょう。
ということで、現在ではステッカーがきれいに保たれたものは、すこぶる高値で取引されています。
また、さらにレコード・ジャンキー的情報を付け加えるとすると、ジャケット裏面にも注目したいところです。
裏面にはライヴ・ステージの写真が使われていますが、ポイントは中央上部のルー・リードの顔がぼんやりと浮かんでいる箇所です。そこにミュージシャン兼俳優、エリック・エマーソンの顔が逆さに映り込んでいるものがありますが、それが通称「Torso Cover(トルソ・カヴァー)」と呼ばれる、完全な初回仕様となります。
その後、エマーソンから写真の不正使用の訴えを受け、写真を黒く大きいステッカーで覆い隠したものが2ndカヴァー 。そして写真そのものを修正し、エマーソンが消されたものが3rdカヴァーとなっています。
非常にややこしいですが、市場価格には大きく関わってきますので、これだけでも覚えて帰ってください!
<登場人物 プロフィール>
富和(とみかず)
3度の飯よりレコが好き、ナチュラル・ボーン・レコード・ジャンキー。
好きな音楽はブリティッシュ・ロック。高円寺在住。
ヴァシュちゃん
レコード初心者なオテンバ娘。
レコ部の紅一点.。
キューくん
富和の同級生。
顔も趣味も度を越しているが、根は優しい富和の良き友達。基本CD党。
フレディのおっちゃん
富和の一番のレコ友。
QUEENに全てを捧げる漢。
ボビー
クールに決めるレコード仕事人。
数少ない富和憧れのディガー。
Text&Comic:山中明(ディスクユニオン)
Edit:大浦実千