第三十四回 吹奏楽コンクールと各地の銘酒・名居酒屋4【名曲と美味しいお酒のマリアージュ】

 

音楽を気軽に楽しんでいただくため、毎回オススメの曲とそれに合わせたお酒をご紹介する連載【名曲と美味しいお酒のマリアージュ】。第三十四回は「吹奏楽コンクールと各地の銘酒・名居酒屋」を引き続きお送りします。

第4回目となるコンクールと銘酒・名居酒屋シリーズ。今回は11月に大阪城ホールで開催された『第42回全日本小学生バンドフェスティバル』、そして『第36回全日本マーチングコンテスト』の話題をお届けします。

両大会ともに近年は大阪城ホールで行われていましたが、来年度からは小学生バンドフェスティバルが「ステージパフォーマンス部門」(座奏演奏)と「マーチング部門」の2部門に分かれ、それぞれ札幌コンサートホール Kitaraと大阪城ホールでの開催となるようです。かねがね大阪城ホールという大きな会場での座奏はかわいそうだと思っていたので、これは朗報ですね。

また、マーチングコンテストは日程が二日間の開催となり、第一日目の午後に中学生の部、二日目は全日高等学校以上の部、と枠が拡大されるようです。出場団体数も増えるでしょうから、マーチング・ファンにとっては嬉しい知らせといえるでしょう。

 

名曲と美味しいお酒のマリアージュ(1)

 

では、さっそく小学生バンドフェスティバルで印象に残った団体からご紹介していこうと思います。全36団体、どのバンドもそれぞれに良さがあって、本当は全部紹介したいところですが、座奏・マーチングと偏らないようにできるだけ多くを取り上げました。

演奏順に、前半から東関東代表・千葉県野田市立山崎小学校吹奏楽部は「スパニッシュ・ダンス」というタイトルでキレのある動きのマーチングを披露。北陸代表・富山県南砺市立福野小学校管楽器クラブは、懐かしい名曲、序曲《バラの謝肉祭》(J.オリヴァドーティ作曲)を端正な演奏で聴かせてくれました。中国代表・山口県下松市立下松小学校吹奏楽部の《大いなる約束の大地〜チンギス・ハーン》(鈴木英史作曲)は、こだわりの表現が光る丁寧な演奏。関西代表・大阪府池田市立石橋小学校金管クラブは《やまなみのしらせ》(福田洋介作曲)を先生の流れるような指揮のもと、とても自然に演奏しており心に染み入りました。四国代表・愛媛県松山市立桑原小学校金管バンド部は『河ながれるところより』のタイトルでJ.スウェアリンジェン作曲の3曲を披露。かっちりとした作りが立派でした。また、中国代表・山口県防府市立松崎小学校吹奏楽部の《斐伊川に流るるクシナダ姫の涙》(樽屋雅徳作曲)は豊かな表現力が魅力的な演奏でした。

 

名曲と美味しいお酒のマリアージュ(2)

 

後半は、東海代表・長野県松本市立清水小学校金管バンド部が「古代エジプト3つの謎〜ようこそ、神秘の世界へ」と題し、衣装や振り付けにも凝ったステージを見せてくれました。東北代表・山形県山形市立滝山小学校ブラスバンド部は「音楽は楽園〜Only oneの花、咲かせよう」で躍動感のあるマーチングを披露。中国代表・山口県山口市立小郡小学校吹奏楽部は木管のサウンドが美しく聴き入りました。曲は《春に寄せて〜風は光り、春はひらめく》(福島弘和作曲)。中国代表はすべて山口県からでしたが、どこもハイレベルな演奏でした。ハイレベルといえば、関西代表・奈良県生駒市立桜ヶ丘小学校ハーモニックバンドクラブの演奏もあげなくてはなりません。《第六の幸福をもたらす宿》(M.アーノルド作曲)は見事な演奏でした。演出面で光ったのは東京都代表の台東区立富士小学校吹奏楽部の「人生讃歌〜希望のつぼみ」と題したマーチング、そして四国代表・徳島県徳島市国府小学校マーチングバンド部の「チェンジ マイセルフ〜大好きな音楽の力で」の演奏・演技でした。両団体ともにカラーガードが素晴らしい演技を見せてくれました。

この晩は、大阪に来ていた友人と合流し、昔からの大阪の味を楽しめるという「生成り料理」を出すと評判の割烹へ。素材の良さもさることながら、その良さを引き出す技、とりわけきりっとした出汁、そしてさりげない器の趣味に感じ入りました。とりわけマーチングでは音楽の良さだけでなく、演出・魅せ方も大事な要素なので「素材の良さ=音楽の良さ」を引き立てる演出とは何かを考えさせられる機会となりました。

 

名曲と美味しいお酒のマリアージュ(3)

 

翌日は中学校の部からのスタートです。ここでは、音楽と演出の融合度合いが素晴らしいと感じた団体をご紹介していこうと思います。

四国代表・高知県香美市立鏡野中学校吹奏楽部。高知県は座奏よりマーチングが盛んなのでしょうか。中学と高校にそれぞれもう1団体出場していましたが、中でも鏡野中の構成・音楽が抜きん出ていたように感じました。九州代表・鹿児島県薩摩川内市立川内北中学校吹奏楽部も繋ぎがややワンパターンだったものの全体の統一が取れた演奏・演技でした。全25団体中圧倒的だったのは関西代表の2校。兵庫県西宮市上甲子園中学校吹奏楽部と大阪府大阪市立堀江中学校吹奏楽部。上甲子園中は木管のサウンドが大変魅力的で全体のバランスも素晴らしく、メリハリの効いた演奏でした。特に弱奏の美しさにはうっとりさせられました。構成面でも隙がなく圧巻のパフォーマンス。堀江中は打楽器の良さが光る演奏で、選曲も《アフリカの儀式と歌、宗教的典礼》(R.W.スミス)とバッチリ。ホルンの咆哮もカッコ良く、動きの面白さ、ユニークさとも相俟ってぐいぐいと引き込まれました。中国代表・広島県広島市立翠町中学校は《大いなる約束の大地〜チンギス・ハーン》(鈴木英史作曲)で音と動きが絶妙にマッチした演技でした。

高等学校以上の部では、どこも甲乙つけ難い演奏・演技の数々でしたが、関西代表・京都橘高等学校吹奏楽部、西関東代表・群馬県東京農業大学第二高等学校吹奏楽部、関西代表・兵庫県滝川第二高等学校吹奏楽部、同じく関西代表・大阪府箕面自由学園高等学校吹奏楽部が演奏と演技の融合という観点からは印象に残りました。

終演後は、大阪の大衆酒場で二日間の感想を語り合いながら、賑やかに打ち上げ。最後はひとり静かにバーで締めました。

 

名曲と美味しいお酒のマリアージュ(4)

 

 

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Text&Photo:野津如弘

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