【イントロマエストロ藤田太郎が厳選】神イントロソング 年別TOP10 ~2001年編~


ある編曲家は言いました。「編曲(アレンジ)」は、良いイントロができたらほぼ完成。それが、できるかできないかで大きく違ってくる。
名曲には、すべて良いイントロあり!そんな素敵な「神イントロ」からはじまる曲を、bayfm「9の音枠」水曜DJを担当し、クイズルーム「ソーダライト」のイントロクイズでお馴染みのイントロマエストロ藤田太郎が、経験と知識を駆使し当時の音楽トレンドや背景なども含め、リリースされた年でくくった独自のランキングを決定。そのTOP10を紹介してきます。

第14回目の今回、フォーカスするのは「2001年」

 

9月11日に旅客機が相次いで激突、犠牲者3,000人以上を出す史上最悪のテロ事件が発生。日本では「聖域なき構造改革」を唱えた小泉純一郎内閣が発足。大リーグに移籍したイチローが、MVP(最優秀選手賞)を受賞。有機合成化学分野で野依良治教授が、ノーベル化学賞を受賞と、日本人が世界に名を轟かせる輝かしい記録を残しました。また、東京ディズニーシーがグランドオープン、JR東日本に新しいタイプの定期券「Suica」が登場、『ハリー・ポッター』シリーズがベストセラーと、ヤだねったら、ヤだね、と、明日があるさ、が胸に響く年でした。 
そんな2001年という時代にヒットした音楽はどんな曲だったのか。厳選した「神イントロ」という切り口で、それまでとは違う楽曲の楽しみ方を見つけてくれたらうれしいです。それでは、カウントダウン!

 

神イントロソング_第10位
 

第10位:「ultra soul」B'z
発売日:2001年3月14日
編曲:松本孝弘・稲葉浩志・徳永暁人
イントロ秒数:23秒

10位は『世界水泳福岡2001』大会公式テーマソングに起用された「ultra soul」。
21世紀にリリースされたB'zのシングルで最大の売上枚数87.6万を記録したこの曲は、ライブではほぼ必ずといって良いほど演奏され、サビラスト「♪ウ、ル、ト、ラ、ソウルッ」のあとで、ハイッ!!という掛け声とともにジャンプするパフォーマンスが定番のバンドを代表するナンバーです。
テクノなサウンドアレンジが散りばめられているイントロがスタートするだけで、もうワクワクがとまらない!はじまりから7秒後に入ってくるラテン風味のギターが夏を演出!エモさが揃ったところから入る歌い出しは「どれだけがんばりゃいい 誰かのためなの」という、悩んでいる人の背中を押すフレーズ!これもエモい!!21世紀の始まりを告げる神イントロランキング紹介のスタートにふさわしい、最高のアンセムからTOP10紹介、スタートです!

 

神イントロソング_第9位
 

第9位:「波乗りジョニー」桑田佳祐
発売日:2001年7月4日
編曲:桑田佳祐 / 管編曲:山本拓夫 / 弦編曲:島健
イントロ秒数:14秒

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9位は、コカ・コーラ「No Reason」キャンペーンCMソングに起用された「波乗りジョニー」。
桑田佳祐は、著書『言の葉大全集 やっぱり、ただの歌詩じゃねえか、こんなもん 』の中で、この曲に関して、「波乗りジョニー」というタイトルは、茅ヶ崎から青山学院大学へ通っていた大学生の頃に電車の中で思いついたもので、「いつか、このタイトルで曲をつくろう」と温めていた。25年以上の時を経て、この曲が完成したとおっしゃっています。イントロは、沖田浩之の「E気持」を彷彿とさせる、軽快なピアノがポップに且つ、楽しく鳴り響き、そこにエレキギターの懐かしいフレーズが入り込んでくるところで楽しかった夏の思い出が一気によみがえってきます。
これからも夏のはじまりに聴きたくなる、みんなのサマーソング!文句なしのTOP10入りでしょう。

 

神イントロソング_第8位
 

第8位:「アゲハ蝶」ポルノグラフィティ
発売日:2001年6月27日
編曲:ak.homma。
イントロ秒数:8秒

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8位は、エフティ資生堂「ティセラ・トコナッツココナッツ」にCMソングに起用された「アゲハ蝶」。
編曲を担当したのは、デビュー曲「アポロ」から変わらず、ポルノグラフィティのプロデュースを手掛けている、本間昭光。前年の2000年神イントロランキングで、ラテンロックが響く哀愁アレンジの「サウダージ」を2位にしましたが、イントロからフォルクローレ調な雰囲気で儚さを表現したこの曲も堂々のランクイン。
2000年以降のアレンジャーの中で、本間昭光がポルノグラフィティに手掛けた編曲は、斬新でインパクトがあるのに、どんな人でも楽しめる名アレンジ揃いだと私は思うのです。昭和のレジェンド音楽家、筒美京平が2000年代に手掛けた曲のアレンジの多くを本間昭光が担当していることがそれを証明しているのかもしれません。そこに、「アゲハ蝶」のイントロと同じく、日本のポップスの、美しい系譜を感じるのは私だけではないでしょう。

 

神イントロソング_第7位
 

第7位:「ばらの花」くるり
発売日:2001年1月24日
編曲:くるり
イントロ秒数:30秒


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7位は、ロックバンド、くるりの7枚目のシングル「ばらの花」。
イントロは、ギターのピッキングから、この曲のチャームポイントである、サイダーが弾けるようにキュートで爽やかなピアノのメロディが入り込み、そこにドラムが入ってくるというシンプルな構成。しかしこのアレンジが、「雨なので君に会えない」と綴る歌詞に登場する主人公の濡れている心情の湿り具合にピッタリ。
「ジンジャーエール」という言葉から想像すると、その時、降っている雨はきっと「ざあざあ」の土砂降りの雨ではなく、長く降り続く「しとしと」の雨。雨は、ジメジメして嫌なイメージを持つ人が多い言葉ですが、この曲のイントロを聴くと、雨の情景が爽やかでポジティブに聴こえてきます。リリースから20年以上経った今も、いや当時よりもファンを増やしている、魔法がかかったような、不思議で美しい雨ソング。TOP10入りは当然の結果です。

 

神イントロソング_第6位

 

第6位:「PIECES OF A DREAM 」CHEMISTRY
発売日:2001年3月7日
編曲:藤本和則
イントロ秒数:22秒


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1999年10月バラエティ番組「ASAYAN」内で、男子ボーカリストオーディション開催の告知が放送されます。『完全実力主義』というコンセプトの元、全国で開催されたオーディションに参加した人数は19,100人。一年以上に渡る番組の密着がついた、長期の選考審査を経て選ばれたのは、川畑要と堂珍嘉邦の2人。
プロデューサーの松尾潔は、彼らを選んだ理由を著書の中でこう話しています。『2人を選んだわけは、まずは圧倒的な完成度。個々の現時点での表現力と潜在能力の高さは勿論のこと、ふたりが一緒になった時の化学反応が突出して素晴らしいことを痛感した。これは決定打だった。』ユニット名も、オーディション全体のキーワードとして多く登場していた『二人のボーカリストの「化学反応」』という意味から、CHEMISTRYに決定。そのデビューシングルとしてリリースされたのが「PIECES OF A DREAM」です。この曲のイントロは、オーディションを勝ち抜いてきた道を、優しく讃えるようにメロウなサウンドが響きます。
2001年の音楽シーンに、それまで大成しないと言われ続けた男性R&Bユニットを、一気にド真ん中に君臨させたこの企画と、CHEMISTRYというユニットの力強さだけを考えてもTOP10入りは当然なのですが、そんな気合いを、クールな雰囲気でスマートに醸し出すこのイントロは秀逸。素晴らしい。

 

神イントロソング_第5位

 

第5位:「LOVE涙色」松浦亜弥
発売日:2001年9月5日
編曲:  渡部チェル
イントロ秒数:10秒


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2001年に「ドッキドキ!LOVEメール」でデビューし、続くセカンドシングル「トロピカ〜ル恋して~る」で、恋愛に振り回される、同世代の気持ちをリアルに描いた歌詞を、屈託のない笑顔で歌いきる姿を観て「久々にJ-POP界に本物のソロアイドルが出てきた!」と、ワクワクしていた最中にリリースされた3rdシングル「LOVE涙色」は、イントロから歌謡ポップスの香りをしっかりと漂わせる失恋ナンバー。ラストの歌詞フレーズ「メールは返さない」で、せつなさを表現できるアイドルは、松浦亜弥以降、登場していないのではないでしょうか。
2013年の無期限活動休止から9年後の2022年、Amazon Audibleにて配信されたマシュー南のポッドキャスト番組『Matthew's Matthew マシュー南の部屋の中のマシュー』のゲストで登場した中で「作詞・作曲には全く興味がない。もしまた歌うことになったとしたら、誰かが作った曲を歌いたい。」と言い切っていたあやや。カッコ良すぎる。そんなカッコ良い松浦亜弥の表現力がイントロから堪能できるこの曲が堂々のTOP5入り。願いが叶うのであれば、また多くの人の前で歌う姿を観てみたい!

 

神イントロソング_第4位

 

第4位:「ザ☆ピ〜ス!」モーニング娘。
シングル発売日:2001年7月25日
編曲:ダンス☆マン、ホーンアレンジ:川松久芳
イントロ秒数:34秒

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4位も続けて、つんくプロデュースがランクイン。モーニング娘。「ザ☆ピ〜ス!」。
この年一番ハッピーなイントロは!?といわれたら間違いなくこの曲でしょう。プロデュースを手掛けたつんくは、この曲の制作に関して「21世紀の日本の「ある休日」をな〜んとなくイメージして歌詞を書きました。俺も最近そんなにゆっくり休んでいないし“こんな休日あこがれるよな〜!”ってな感じでしょうか・・・。まあ、休日に限らず「時間がある時」って感じでもいいんだけど・・・。」と答えています。イントロから、大声で言いたくなる掛け声が響き、ファンキーなダンスミュージックをベースに、1920年代のアメリカで流行ったポピュラージャズのテイストをちりばめ、センター石川梨華の語りが入り、なかなか終わらないラストへと怒涛の流れは圧巻!リリース当時、一緒に聴いてた友人と今会ってもすぐに「そうだ みんな誓おうぜ」と必ず歌える曲。最高だぜ!

 

神イントロソング_第3位

 

第3位:「traveling」宇多田ヒカル
発売日:2001年11月28日
編曲:河野圭 & 宇多田ヒカル
イントロ秒数:33秒


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3位は、NTTドコモ「FOMA」のCMソングに起用された「traveling」。
モノマネ芸人が宇多田ヒカルの真似をすると、この時の衣装が多い。紀里谷和明が担当したCGやアニメーションを駆使した独創的なミュージックビデオも話題になったナンバー。1998年の衝撃的なデビューから3年後、2001年の宇多田ヒカルは、プロ野球でいえば、オールスターファン投票で絶対に選出されるような、実力もスター性も世の中に浸透したトップアーティスト。その地位まで一気に上り詰めた宇多田ヒカルがこの曲で表現したのは「元気が出る曲」。平日の仕事や学校が終わって、昭和で言うところの”花金”を満喫するために動く人を、シンセの打ち込みサウンドが、イントロからワクワクを演出。全ては気分次第と綴る歌詞も、曲アタマからこの多幸感サウンドが響くことで、パワーをもらえるように仕込まれているようにすら感じます。一度聴いたら忘れない、イントロクイズで出題したくなる1曲です!

 

神イントロソング_第2位

 

第2位:「secret base~君がくれたもの~」ZONE
発売日:2001年8月8日
編曲:虎じろう
イントロ秒数:14秒

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2位は、TBS系列で放送されたドラマ『キッズ・ウォー3 ~ざけんなよ~』の主題歌に起用された「secret base~君がくれたもの~」。
ホタルの光のように鍵盤の音が、儚くしとやかに響くイントロ14秒だけで、楽しかった夏のワンシーンを思い出し、そのメロディに「10年後の8月 また出会えるのを信じて」という歌詞が乗る、世代を越えた夏の終わりの定番ノスタルジーソング。
この曲は、リリースから10年後に放送されたアニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』のエンディングテーマとして、登場人物の声優が歌ったバージョンが起用され、こちらも大きな話題に。カラオケランキングを観ると、令和になった今でもどちらのバージョンも上位にランクインし続けています。
神イントロTOP3にセレクトした理由は、イントロの素晴らしさはもちろんですが、ドラマやアニメを通じて、リスナーの夏の思い出の”深い”部分にまで入り込む力がこの曲にはある点です。ZONEのメンバーは、リリースから10年後の8月に集まり、この曲を披露しましたが、ここから先、何年経っても私たちを“あの頃”の夏の終わりの気持ちに戻してくれる1曲です。

 

神イントロソング_第1位

 

第1位:「天体観測」BUMP OF CHICKEN
発売日:2001年3月14日
編曲:BUMP OF CHICKEN
イントロ秒数:30秒

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ギターのフェードインからスタートし、バンドアンサンブルが躍動する30秒のイントロを私が初めて聴いたのは大学生の頃。多感な時期を越え、二十歳を過ぎたばかりの、これからの将来に関して不安や悩みを持ちつつも、強がりながら前へ進もうとしていた時期にこの曲は、イマを肯定し、これまでの過去を輝かしく照らしてくれました。その後「天体観測」は、どんな人たちが歌って演奏しているのだろうと調べて、1979年生まれの千葉出身の4人組バンドと知った時の衝撃をいまだにずっと覚えています。
「自分と年も出身も同じ人たちが、こんな凄い曲を生み出したのか」
その事実を知ってからBUMP OF CHICKENというバンドが、リスペクトする存在に変わりました。リスペクトに変わってから22年。40歳を越えた私は、変わらず自分に問いかけます。この曲の主人公のように、今も何かを追いかけているのか?それは、様々な形の痛みを知り、静寂と暗闇の帰り道を駆け抜けてきたからこそ、感じとれることだということも知った上での問いかけだということもわかっているのです。それはBUMP OF CHICKENというバンドを知った自分への誇りなのかもしれません。この曲は、これからも、もっともっと私たちの心に響き続けるでしょう。そしてこの30秒のイントロに私たちは、これまでの人生を投影し続けるのです。「イマ」という、ほうき星が輝き続けるこの曲を、2001年神イントロランキング堂々のTOPとして紹介させていただきます。

 

【2001年神イントロランキングの総評】

新進気鋭のミュージシャンやアイドルといったバラエティに富んだナンバーが並ぶ中、1位の「天体観測」と、2位の「secret base~君がくれたもの~」は、それまでのJ-POPで描かれ続けてきた哀愁やノスタルジーといった表現を、メインターゲットを新しい世代としアップデートした重要な曲で、この2曲が21世紀最初の年にリリースされたことは、これからの日本のヒットソングを語る上で、タ-ニングポイントになった!と、もっとフォーカスされていくと思います。この2曲が、神イントロとして突き抜けていた年でした。

 


 

【2001年イントロベスト25】

ランキングは25位まで決定したので、11位以下も下記に紹介します。
(藤田太郎調べ) 

 

ランキング1-10位ランキング11-20位

ランキング21-25位

 

さらに、YouTubeでイントロクイズとして楽しむことができます。

うたドン!【イントロクイズ】

 

 

【Profile】

藤田太郎

「30,000曲のイントロを0.1秒聴くだけでわかる男」イントロマエストロ。bayfm「9の音粋 」水曜日のラジオDJ、Tokyo FM『ももいろクローバーZのSUZUKI ハッピー・クローバー!』音楽コメンテーターを担当。フジテレビ『99人の壁』に出場し、ジャンル「90年代J-POP」でグランドスラム達成。日本初のクイズ専門店「ソーダライト」で毎月イントロクイズを出題中。

 

 

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