【イントロマエストロ藤田太郎が厳選】神イントロソング 年別TOP10 ~2003年編~


ある編曲家は言いました。「編曲(アレンジ)」は、良いイントロができたらほぼ完成。それが、できるかできないかで大きく違ってくる。
名曲には、すべて良いイントロあり!そんな素敵な「神イントロ」からはじまる曲を、bayfm「9の音枠」水曜DJを担当し、クイズルーム「ソーダライト」のイントロクイズでお馴染みのイントロマエストロ藤田太郎が、経験と知識を駆使し当時の音楽トレンドや背景なども含め、リリースされた年でくくった独自のランキングを決定。そのTOP10を紹介してきます。

第15回目の今回、フォーカスするのは「2003年」

 

国際社会が求めていた大量破壊兵器の査察、廃棄に応じないとして、米英軍がイラクに対する軍事作戦を開始し、中国・広東省で新型肺炎(SARS)が大流行、カナダでは送電線障害が発端となった大停電が起こり5000万人に影響が及ぶなど、世界が混乱をきたしました。宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』が第75回アカデミー賞長編アニメ映画賞を受賞し、北野武監督・主演の『座頭市』が、第60回ベネチア国際映画祭で監督賞を受賞。
本木ヒルズがグランドオープンし、地上デジタルテレビ放送が東京、大阪、名古屋で開始され、トヨタ自動車が製造・発売した、世界初の量産ハイブリッド車『プリウス』やアップルコンピュータの『iPod』がヒットと、お笑い芸人が「なんでだろう~」と歌うことも「へぇ~」とボタンを押し理解する年でした。
そんな2003年という時代にヒットした音楽はどんな曲だったのか。厳選した「神イントロ」という切り口で、それまでとは違う楽曲の楽しみ方を見つけてくれたらうれしいです。それでは、カウントダウン!

 

神イントロソング_第10位
 

第10位:「世界に一つだけの花(シングル・ヴァージョン)」SMAP
発売日:2003年3月5日
編曲:槇原敬之 / ストリングスアレンジメント:門倉聡
イントロ秒数:2秒

10位は、草彅剛主演のドラマ『僕の生きる道』の主題歌に起用された「世界に一つだけの花(シングル・ヴァージョン)」。
元々は、前年にリリースしたアルバム『SMAP 015/Drink! Smap!』収録曲でしたが、メンバーがアルバム中で一番好きな曲だとコメントし、ドラマの主題歌に起用が決まり大きな反響があったため、シングル・ヴァージョンの制作が決定。メンバーの歌唱パートの入れ替えやコーラスの追加、そして2秒のイントロから「NO.1にならなくてもいい もともと特別なOnly one」と歌う構成を変更したシングル・ヴァージョンは、200万枚をこえるダブルミリオンヒットを記録。1998年リリースの「夜空ノムコウ」のミリオンヒットで、みんなのアイドルとなったSMAPが、誰もが認める国民的アイドルとなった事実を”魅せつける”ではなく”寄り添う”雰囲気に感じられるのは、温もりが同居するギターフレーズが響くこの曲のイントロに集約されているのではないでしょうか。
2003年神イントロソングTOP10のスタートは、この年の売上一位のこの曲の紹介からスタートです!

 

神イントロソング_第9位
 

第9位:「空に唄えば」175R
発売日:2003年4月16日
編曲:175R、佐久間正英
イントロ秒数:17秒

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9位は、J-PHONEのCMソングに起用された、福岡県北九州市出身のパンク・ロック・バンド175R(イナゴライダー)の「空に唄えば」。
2003年に颯爽と登場し、日本の音楽シーンにムーブメントを巻き起こした音楽ジャンルに『青春パンク』がある。シンプルなコード進行でキャッチーなメロディをエネルギッシュなバンド演奏で、青臭さの残る時代の想い出を綴った歌詞を語らかに歌うスタイルは、この時代を席捲。この『青春パンク』の代表的なバンドが175Rだったと言って、異論はないでしょう。まさに『青春パンク』をサウンドとして表現する一つのアンサーのように、パワフルなバンドアンサンブルで疾走していくイントロからスタートする「空に唄えば」は、シングルチャート初登場1位、売上枚数36万枚を記録。この勢いのまま、この年の大晦日に放送の『第54回NHK紅白歌合戦』に初出場を果たし、この曲を披露。「何も恐いモノなんてなかった」175Rの快進撃は、この曲の神イントロに深く刻まれているのです。

 

神イントロソング_第8位
 

第8位:「COLORS」宇多田ヒカル
発売日:2003年1月29日
編曲:宇多田ヒカル & 河野圭
イントロ秒数:15秒

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8位は、トヨタ「WiSH」のCMソングに起用された「COLORS」。
98年の衝撃のデビューから、桁違いのセールスを記録し続けてきた宇多田ヒカルが、色彩豊かな歌詞を、モノクロームな哀愁を感じさせてくれる神イントロで表現したナンバーです。この曲以前にリリースされたシングルに比べて、シンプルで飾らない印象を持っている方が多いかもしれませんが、令和の時代に聴いても、すこし不安なメロディをスッと心のスキマに入れてくる心地良さは健在。20年以上前のリリース曲とは思えないスタイリッシュなアレンジに脱帽です。
2001年の神イントロランキングでは「traveling」が3位、宇多田ヒカルが創り出す曲がJ-POPシーンのど真ん中にいる時代に生まれて良かった!そう思わせてくれる1曲です。

 

神イントロソング_第7位
 

第7位:「異邦人」TAK MATSUMOTO featuring ZARD
発売日:2003年8月27日
編曲:徳永暁人
イントロ秒数:30秒

7位は、B'zのギタリスト松本孝弘がZARDの坂井泉水をボーカルに起用し、1979年に久保田早紀がリリースした曲のカバー「異邦人」。
このカバーは、松本孝弘がギター少年だった頃に影響を受けた邦楽を自ら選曲し、TAK MATSUMOTO名義でプロデュースとギターを担当するというプロジェクトで、この曲の後も倉木麻衣がボーカルを担当した「イミテイション・ゴールド」(オリジナルは山口百恵)、稲葉浩志がボーカルを担当した「勝手にしやがれ」(オリジナルは沢田研二)も制作され、この年の11月に、それらの楽曲をまとめたカバーアルバム『THE HIT PARADE』がリリースされました。オリジナル曲ではイントロからエキゾチックな雰囲気の醸し出す「異邦人」を坂井泉水の透明感のある歌声と、イントロから嘆くように高鳴るギターでハードロックアレンジとして演出したこの曲は、カバーソングが乱発していく2000年代の中でも抜群の存在感を放っています。

 

 

神イントロソング_第6位

 

第6位:「君という花」ASIAN KUNG-FU GENERATION
発売日:2003年10月16日
編曲:ASIAN KUNG-FU GENERATION
イントロ秒数:32秒

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6位は、4人組ロックバンドASIAN KUNG-FU GENERATIONのセカンドシングル「君という花」。
この曲は、ひとつの発明を生み出しました。それはイントロで、ドラムが「♪ドッチードッチー」というリズムを刻む、4つ打ちのダンスビートをロックに取り入れたこと。ASIAN KUNG-FU GENERATIONのフロントマン、後藤正文は雑誌のインタビューで「「君という花」のような、「ああいう和のような、アジアっぽいメロディに4つのキックが乗ってくると、日本人のいろんなとこのツボを押す曲だなと思うけどね、今から思うとね。絶対にフェスとかでやって盛り上がんない訳ない要素しかない!」と語ることからも、この曲は、意識的に生演奏で4つ打ちに挑戦した曲だったことが伺えます。2000年代前半に、野外音楽フェスがポピュラーなカルチャーと進んでいく最中で、ロックとダンスミュージックを融合させたこの曲が誕生したことは、必然だったのかもしれません。その観点からみても、この曲のランクインは当然の結果です!

 

神イントロソング_第5位

 

第5位:「月のしずく」RUI
発売日:2003年1月15日
編曲:  松本良喜
イントロ秒数:13秒

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5位は、SMAPの草彅剛、竹内結子出演の映画『黄泉がえり(よみがえり)』の主題歌に起用された「月のしずく」。歌ったのは、劇中に登場する2年間音楽活動が確認されていなかったため、死亡説まで出た伝説の歌姫RUIを演じた柴咲コウ。民族楽器からはじまるイントロは、イントロクイズで出題すると、はじめの1秒が松任谷由実の「真夏の夜の夢」、ポルノグラフィティの「サウダージ」と間違える人が多く、一気に幻想的な世界に引き込まれる優麗な演出が施されています。編曲を担当したのは、2001年にリリースしたKinKi Kidsの「情熱」をアレンジし注目を集めた、松本良喜(りょうき)。昭和の歌謡曲時代から、日本人の心の奥に深く刻まれている「哀愁」を2000年代の空気感にアップデートしたアレンジでヒット曲を制作した松本良喜は、2003年のJ-POP界オールスターゲームがあるのなら、ファン投票一位を獲得していたかもしれない大活躍ぶり。それを物語るように、5位に続けて4位も松本良喜アレンジ作品が続きます!

 

神イントロソング_第4位

 

第4位:「雪の華」中島美嘉
シングル発売日:2003年10月1日
編曲:松本良喜
イントロ秒数:34秒

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4位は、本人が出演した明治製菓「boda」、「galbo」のCMソングに起用された「雪の華」。
この曲の編曲を担当したのも、第5位の「月のしずく」と同じく、松本良喜(りょうき)。この年リリースの聴き惚れるバラードナンバーを2曲手掛けただけでなく、両曲とも、カラオケ人気は健在で今もリスペクトされ続けていることも素晴らしいです。「雪の華」は、オルゴールの音色のようなエレクトリックピアノの響きから、極上の”せつなさ”を演出。イントロだけで「ずっと大切にしたい」と感じさせてくれる雰囲気があります。この年の第45回日本レコード大賞では、金賞を受賞。徳永英明や中森明菜、森進一など多くのミュ-ジシャンにカバーされ、2019年には、この曲をモチーフとした実写映画が公開と、ゆっくりと時間をかけて日本を代表する名バラードになったこの曲は、もちろん2003年神イントロランクインでもTOP10入りです。

 

神イントロソング_第3位

 

第3位:「ロストマン」BUMP OF CHICKEN
発売日:2003年3月12日
編曲:BUMP OF CHICKEN
イントロ秒数:15秒

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私がこの曲をはじめて聴いたのは就職活動中でした。面接に、箸にも棒にもかからず絶望していた時に、この曲のギターイントロが私の頭の中で強く響きました。緊張感を持ったまま高鳴り続けるバンドの音に乗って綴られる
「そして現在地 夢の設計図 開く時は どんな顔」
この歌詞にどれだけ背中を押してもらったか。その時のボロボロの結果だった就職活動が悔しくて、でも何もできない、どこに怒りをぶつければよいかわからない感情を、私は今も忘れることはありません。でも、あれから20年以上経った今ならわかるのです。ただ青かった、そして自分は何でもできる!と勘違いしていたことを。それがわかった今、この曲のイントロを聴いて私は、拳をグッと強く握るのです。あの時の気持ちをノスタルジーで終わらせない。あの熱量を今でも持ち続けてるんだと。ロストマンは僕だ。そして、あなただ。同じ気持ちで今を生きる仲間へ、今日もこの神イントロを捧げます。これが僕の望んだ世界だ、そして今も歩き続ける不器用な旅路の果てに 正しさを祈りながら。

 

神イントロソング_第2位

 

第2位:「AMBITIOUS JAPAN!」TOKIO
発売日:2003年10月1日
編曲:  船山基紀
イントロ秒数:15秒

この曲は、作詞を担当したなかにし礼が、当時JR東海の社長だった葛西敬之(かさい よしゆき)から「新しい鉄道唱歌を作って欲しい」と依頼を受けたことがきっかけで制作されました。作曲を担当したのは筒美京平。この曲がシングルチャートでTOPを獲得したことで、筒美京平は歌手・プロデュースを含めて史上初の1960年代から2000年代の5年代に渡ってのシングルチャートという偉業を達成します。
「突き進めば、望みはかなう、立ち止まらない 振り返らない やるべきことをやるだけさ」
記録にも記憶にも残る勇気のフレーズに、常に未来へ向けて進み、新しい大衆音楽を作り続けた音楽家がつけたメロディを、令和になった今も、40年以上に渡りジャニーズソングの編曲を手掛け続ける船山基紀が、クールで煌びやかさを持つイントロをつけたこの曲は、JR東海の新幹線車両の車内チャイムとして起用されます。そして、リリースから20年経った2023年2月16日にJR東海の新たなキャンペーン「会いにいこう」の展開に伴い、車内チャイムの利用は終了。その役目を終えました。旅立つ人に栄光あれ!という歌詞を讃えるように、出発の合図を伝えるように響くこの曲のイントロは、私たちの想い出とともに刻まれる続けるのです。

 

神イントロソング_第1位

 

第1位:「さくら(独唱)」森山直太朗
発売日:2003年3月5日
編曲:中村タイチ
イントロ秒数:13秒

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この曲は、2002年にリリースしたアルバム『乾いた唄は魚の餌にちょうどいい』の収録曲でした。当時のJ-POPシーンは「さくら」がタイトルにつく曲がヒットがする流れが続いていたので、制作スタッフは、森山直太朗に「季節に合わせてこの曲をシングルで出したい」と提案します。森山直太朗は「あまりにもベタすぎる。」と、はじめは拒否しますが、バンドアレンジだったこの曲を、イントロからピアノ伴奏のみのスタイルにリアレンジし、シングルカットすることに。リリース後、「桜前線 北上ツアー」と称し、九州から北海道まで30都道府県のレコード店を巡回し、地元のラジオ局へ出演する草の根宣伝活動が実を結び、シングルチャートの順位が上昇し、リリースから5週目でTOP10入り。9週目で1位を獲得。結果、105万枚のミリオンヒットを記録します。この曲のヒットの要因は2つあります。一つは、当時のヒットチャートの主流が、R&B調のメロウなアレンジやラップが入る打ち込み系のサウンドが多かったこと。フォークをベースに制作されたこの曲は、ヒットチャートの中で異彩を放ち、シンプルなサウンドが逆に、強いインパクトになったこと。もう一つは、曲の後ろに(独唱)を入れ、生演奏、生歌唱としての魅せ方を徹底的にこだわったこと。ミュージックビデオも、倉田信雄のピアノ演奏と森山直太朗本人のみを映し、独唱スタイルで披露することで、青春の儚さや甘酸っぱさを引き立たせ、この季節にピッタリな一人でも、みんなでも歌いたい定番曲として広まっていったのです。このことは、フォークソング歌手としてデビューした森山良子を母に持ち、親戚に、グループサウンズ、ザ・スパイダースのメンバーでソロに転身後、吉田拓郎が作曲した「我が良き友よ」をヒットさせた、かまやつひろしがいる音楽一家で育った森山直太朗に青春歌謡の遺伝子がしっかりと受け継がれていたことの証明になったのではないでしょうか。どんな想い出にも美しく咲き誇り、新しい生活を後押しするように舞い散る花の情景のように響くこの神イントロ曲を堂々のTOPとして紹介させていただきます。

 

【2003年神イントロランキングの総評】

TOP5に選出した曲は、人間の心を動かし、“音楽”の枠を越えたかけがえのない存在としして令和の時代になった今も、色褪せず、新しい輝きを放ち続けている曲が揃いました。
時代を越えて愛される名曲として、もっともっと、語られてほしいと切に願います。昭和も良いけど、2000年代も良いね!と思える曲が揃った年だったのではないでしょうか。

 


 

【2003年イントロベスト25】

ランキングは25位まで決定したので、11位以下も下記に紹介します。
(藤田太郎調べ) 

 

ランキング1-10位ランキング11-20位

ランキング21-25位

 

さらに、YouTubeでイントロクイズとして楽しむことができます。

うたドン!【イントロクイズ】

 

 

【Profile】

藤田太郎

「30,000曲のイントロを0.1秒聴くだけでわかる男」イントロマエストロ。bayfm「9の音粋 」水曜日のラジオDJ、Tokyo FM『ももいろクローバーZのSUZUKI ハッピー・クローバー!』音楽コメンテーターを担当。フジテレビ『99人の壁』に出場し、ジャンル「90年代J-POP」でグランドスラム達成。日本初のクイズ専門店「ソーダライト」で毎月イントロクイズを出題中。

 

 

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