【イントロマエストロ藤田太郎が厳選】神イントロソング 年別TOP10 ~2010年編~


ある編曲家は言いました。「編曲(アレンジ)」は、良いイントロができたらほぼ完成。それが、できるかできないかで大きく違ってくる。
名曲には、すべて良いイントロあり!そんな素敵な「神イントロ」からはじまる曲を、bayfm「9の音枠」水曜DJを担当し、クイズルーム「ソーダライト」のイントロクイズでお馴染みのイントロマエストロ藤田太郎が、経験と知識を駆使し当時の音楽トレンドや背景なども含め、リリースされた年でくくった独自のランキングを決定。そのTOP10を紹介していきます。

第21回目の今回、フォーカスするのは「2010年」

 

岐阜県多治見市で7月に最高気温39.4度を観測し、8月の平均気温が全国で戦後最高を記録する猛暑となる中、南アフリカで開催されたFIFAワールドカップで、日本代表がベスト16の活躍を魅せる。一方で、相撲界は野球賭博が発覚し、多数の力士が謹慎、休場。ローソンで発売された「プレミアムロールケーキ」や、桃屋の「辛そうで辛くない少し辛いラー油」、通称、食べるラー油がヒットし、福山雅治主演のNHK大河ドラマ『龍馬伝』の大ヒットで、坂本龍馬ブームが到来した年でした。
そんな2010年という時代にヒットした音楽はどんな曲だったのか。厳選した「神イントロ」という切り口で、それまでとは違う楽曲の楽しみ方を見つけてくれたらうれしいです。それでは、カウントダウン!

 

神イントロソング_第10位
 

第10位:「ずっと好きだった」斉藤和義
発売日:2010年4月21日
編曲:斉藤和義
イントロ秒数:10秒

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10位は、資生堂「IN&ON」のCMソングに起用された「ずっと好きだった」。
薬丸(旧姓:石川)秀美、伊藤つかさ、荻野目洋子、河合その子という、80年代にアイドルとして活動していた4人が出演したこのCMのテーマは“同窓会で再会した初恋の人に思いを告白”。現役で活動していた時から20年以上経った2010年に「キミは今も綺麗だ」と歌うこの曲のイントロは、チャック・ベリーの「ジョニー・B.グッド」のギターリフをオマージュしたロックンロールナンバー。変わらない美しさを、カッコ良い響きで飾ります。ミュージック・ビデオは、ビートルズが1969年に実施した『ルーフトップ・コンサート』をモチーフにした映像で仕上げたことからも、ロックンロールが“ずっと好きだった”斉藤和義の想いが伝わってくる粋なこの曲から、2010年神イントロソング紹介、スタートです!

 

神イントロソング_第9位
 

第9位:「ベイビー・アイラブユー」TEE
発売日:2010年10月27日
編曲:HIRO、TEE、Ryousuke Imai
イントロ秒数:20秒

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2004年に、携帯電話の端末に1曲まるごとダウンロードができる「着うたフル®」のサービスがスタートします。ガラケー時代を象徴する文化として爆発的に普及した「着うたフル®」から、それまでのヒットとは異なる新しい形のヒット曲が誕生していきます。サービス開始から6年経ち、人気が安定期に入った2010年を代表する「着うたフル®」ヒット曲が「ベイビー・アイラブユー」です。「着うたフル®」のヒット曲は、サビのメロディを30秒前後切り取って配信する「着うた®」サービスで、ダウンロード数も伸ばすために、サビにキャッチーなフレーズが登場する曲は多いのですが、イントロも強いインパクトを残す曲は多くありません。この曲は、アコースティックギターの優しい音がフィンガリング・ノイズといわれる、指を動かすときに聴こえる「キュッ」という音とともに響き、言葉に出して好きと言えない不器用な人の気持ちをキュンとさせる、愛おしい神イントロから聴き手の心をグッと掴むバラードナンバー。「着うたフル®」ヒットからのランクインは、音楽の聴き方が変化していった2010年ならではの結果ではないでしょうか。

※着うた®、着うたフル®は株式会社ソニー・ミュージックソリューションズの商標登録です。

 

神イントロソング_第8位
 

第8位:「Troublemaker」嵐
発売日:2010年3月3日
編曲:ha-j
イントロ秒数:25秒

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8位は、メンバーの櫻井翔が主演を務め、TBS系列で放送されたドラマ『特上カバチ!!』の主題歌に起用された「Troublemaker」。
2010年の嵐は、この曲の他に「Monster」、「To be free」、「Love Rainbow」、「Dear Snow」、「果てない空」と6曲のシングルをリリースし、すべての曲が週間シングルチャートで1位を獲得。年間シングルチャートTOP10にも全曲ランクインと、記録も記憶も、この年ベストのパフォーマンスを魅せたグループといっても過言ではありません。2010年の最初にリリースしたこの曲のイントロは、輝かしい幕開けを飾るように、鐘の音が高らかに響き、軽快なリズムを刻みながら疾走するバンドサウンド。躍動していくグループの勢いをつけた25秒の神イントロから、完璧なんてない、単純なくらいはじけろ!動け!というフレーズが跳ねながら轟くファンキーな一曲です!

 

神イントロソング_第7位
 

第7位:「携帯電話」RADWIMPS
発売日:2010年6月30日
編曲:RADWIMPS
イントロ秒数:20秒

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2010年は、日本の携帯電話の普及率が初めて90%を越えてから8年目という安定期を迎え、スマートフォンの販売がスタートし、その普及率は9%。翌年に29.3%に跳ね上がっていく“ケータイ”を携帯するのが当たり前になった年でした。そんな年にリリースされたこの曲は「こんなものがあるから 忘れていいようなことが、いつまでも残ってる、でもそれは、僕の居場所があるってことだろう。」と、通信機器を持って過ごすことも悪くないと歌います。固定電話が普及した時代に、歌詞に“電話”が登場するヒット曲が数多く誕生しましたが“ケータイ”になってからその数が一気に減少しました。歌われなくなったのは、時間の縛りがなくなり、電話を掛けるという行為自体が、カジュアルになったことが挙げられますが、そんな時代だからこそ、どんなことを想って“ケータイ”を使っているのかを描くこの曲の素晴らしさが、ひときわ際立っているのではないでしょうか。ダイヤルプッシュ音からスタートし、カントリー調のロックサウンドが軽快に響く、懐かしさと新しさが同居する神イントロ、ご堪能ください。

 

神イントロソング_第6位

 

第6位:「2人のストーリー」YUKI
発売日:2010年9月15日
編曲:YUKI、玉井健二、百田留衣
イントロ秒数:34秒
 

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2010年の音楽シーンは、シングルチャート上位をアイドルグループが席捲。CDの売上枚数だけでヒット曲を定義するのが難しい時代になりました。その中で、音楽フェスが成熟期を迎え、フェスの一番大きなステージのトリや、ヘッドライナーと呼ばれるそのフェスの主役を飾るアーティストに注目が集まるようになっていきます。そこに価値を見出したのはロックバンド。音楽活動の重要なテーマとしてフェスでの知名度を上げることを大きな目標として掲げるようになっていきます。ヒットの定義が多様化し、群雄割拠な時代となった2010年に“JUDY AND MARY”というモンスターロックバンドのボーカルを務めたYUKIがリリースした「2人のストーリー」は、そんな世界とは全く無縁の、ローソンで待ち合わせし、おにぎりを買って帰る、中央線沿いに住むカップルを歌ったラブソング。楽しいことも悲しいことも一緒に歩んできた歩幅の違う2人がテクテクと歩く音を表現するようにギターが響くイントロに、ノスタルジーを感じます。スケールの大きな経験をしているからこその余裕を感じられるこの曲は、いつまでも私たちに寄り添い続けてくれることでしょう。

 

神イントロソング_第5位

 

第5位:「できっこないを やらなくちゃ」サンボマスター
発売日:2010年2月24日
編曲:サンボマスター
イントロ秒数:19秒

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5位は、日産「セレナ」のCMソングのためにメンバーが書き下ろした「できっこないを やらなくちゃ」。
ミュージック・ビデオには、当時、横浜F・マリノスの選手だった中澤佑二が出演し、サッカーワールドカップでベスト4という、誰もが「できっこない」と思っていることを目指す姿と、イントロから響くストレートなロックサウンドが融合し、エモーショナルな映像になっているこの曲は、日産「セレナ」のCM起用が終了したあとも、様々な形で聴き手を熱くし続けていきました。歌詞の内容が、翌年の2011年3月11日に発生した、東日本大震災被災者の復興を目指す気持ちとリンクし、多くの反響を呼び、全米チアダンス選手権大会で優勝した、福井商業高校チアリーダー部「JETS」の創部当初から、ずっと踊り続けている曲として話題となりました。2018年にTBS系列で放送されたドラマ『チア☆ダン』のテーマソングに起用と、2010年代を代表する応援ソングとして、今も根強い人気をキープしています。嘘や偽りのない、メンバー3人の楽器の音が轟くイントロには、時代を越えるパワーが宿っていると感じるのは、私だけではないでしょう。

 

神イントロソング_第4位

 

第4位:「ソラニン」ASIAN KUNG-FU GENERATION
発売日:2010年3月31日
編曲:ASIAN KUNG-FU GENERATION
イントロ秒数:32秒

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4位は、浅野いにおの漫画が原作の、宮崎あおい、高良健吾が出演し映画化された同名映画の主題歌「ソラニン」。
浅野にいおの当時交際していた彼女が、ASIAN KUNG-FU GENERATIONのアルバム『ソルファ』を読み間違えたことがきっかけで生まれたこのタイトルの本当の意味は、じゃかいもの芽にある毒。その意味にも触れているこの曲の作詞は、浅野にいおが担当しています。サビの歌詞で繰り返されるフレーズは
「たとえばゆるい幸せがだらっと続いたとする きっと悪い種が芽を出して もうさよならなんだ」
将来に希望を感じられず、社会や大人に対し、不平不満があるが、どうすればいいのかわからない気持ちを抱えている人の背中を押すこのフレーズをイントロから彩るのは、しどけないコードを響かせる優しいギター。
スッと心の奥に入り込んでくるこの音を聴いて、あなたはどう動きますか? 動くのは今じゃなくてもいい。この先いつでも。もしかしたら動かない選択肢が正しいかもしれない。必ず何かを感じさせてくれる神イントロです。

 

神イントロソング_第3位

 

第3位:「完全感覚Dreamer」ONE OK ROCK
発売日:2010年2月3日
編曲:ONE OK ROCK & akkin
イントロ秒数:31秒


ONE OK ROCKは、2007年にシングル「内秘心書」でメジャーデビューした時からずっと、ネクストブレイクバンドと言われていました。前年の2009年にメンバーの不祥事で5カ月の活動休止を発表、新たな体制で再始動し、復帰作としてリリースしたのが「完全感覚Dreamer」です。高いポテンシャルを秘めていたバンドは、この曲で一気にその才能を開放。イントロからエモーショナルなロックサウンドで駆け抜け「決してこのままでは終わらない、理屈ではない感覚的発想で未来を切り開いていく!」というメッセージを、力強く響かせます。その勢いのまま、この年の6月にアルバム『Nicheシンドローム』をリリースし『ROCK IN JAPAN』、『SUMMER SONIC』、『RISING SUN ROCK FESTIVAL』といった日本の音楽フェスで堂々のパフォーマンスを披露、11月にキャリア初となる日本武道館でのワンマンライブを実施し、大成功を収めます。2010年、怒涛のスピードで人気バンドへと駆け上がっていった4人の想いが神イントロに凝縮されている一曲。TOP3入りは当然の結果です!

 

神イントロソング_第2位

 

第2位:「タマシイレボリューション」Superfly
発売日:2010年6月18日
編曲:蔦谷好位置
イントロ秒数:19秒​​​​​​​

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2位は、NHKの2010年度サッカーテーマソングに起用された「タマシイレボリューション」。
この年に開催した『2010 FIFAワールドカップ』南アフリカの中継はもちろん、Jリーグ中継、天皇杯サッカー中継、アジアカップなど、NHKの“サッカー”に関する番組で起用されたこの曲のイントロは、試合前に気合いを入れるアスリートの気持ちを鼓舞するように、エレキギターが高鳴りまくるロックサウンド! 高鳴りから「突っ走るのさ!go to the future」「人生はショータイム!」というポジティブな歌詞フレーズを、ボーカル越智志帆の力強くソウルフルな歌声が響きます。本田圭佑のフリーキックゴールから、岡田武史監督の雄叫び映像とともに流れるこの曲を何度聴いたことでしょう。歴代のスポーツ関連テーマソングの中でも、印象に残る曲ナンバーワンではないでしょうか。誇り高きアレンジの神イントロは、これからも私たちを未知の世界へと連れていってくれます!

 

神イントロソング_第1位

 

第1位:「ありがとう」いきものがかり
発売日:2010年5月5日
編曲:本間昭光
イントロ秒数:15秒​​​​​​​

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1位は、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の主題歌に起用された「ありがとう」。
この曲の編曲を手掛け、いきものがかりのコンサートやイベントでは、キーボーディスト兼バンドマスターとして参加している本間昭光は、イントロに関してインタビューでこう話しています。
“イントロ勝負だと昔から思っています。例えば、ポール・マッカートニーが「レット・イット・ビー」のイントロの最初の一音弾いただけで、東京ドームが沸き立つ、あの感じにやっぱり憧れているんですよね。イーグルス「ホテルカリフォルニア」のイントロとか。リフとかイントロが大好きな世代です。カーペンターズもビートルズもそうだし、レッド・ツェッペリンだってリフじゃないですか。あのリフ弾いたら一発で興奮ですよ。やっぱりその世代で生きてるから、一音聴いただけでお客さんの拍手が起きるような、いつもそんなイントロになるように心がけてアレンジしています。イントロ命です。”
シングルチャート上位をアイドルが席捲し、ロックフェスが、バンドの急成長とともに新しいカルチャーとして定着化していった2010年の音楽シーンの中で、そのどちらにも属していない、いきものがかりというグループが、イントロの重要性をしっかりと理解しているプロデューサー兼アレンジャーと組み、お茶の間で、みんなが口ずさめる曲を生み出したことに敬意を表します。
イントロから奏でられる温かい鍵盤の音から、ポピュラーミュージックの素晴らしさを信じ続けた熱い想いを感じられるこの曲を、まさに「ありがとう」という気持ちを込めて、2010年の神イントロ1位とさせていただきます。

 

【2010年神イントロランキングの総評】

TOP10を選曲する一つの条件として、今も、そしてこれからもずっとスタンダードナンバーとして愛され続ける曲をセレクトしているのですが、その条件をしっかり満たしているのが、いきものがかり「ありがとう」だったのではないでしょうか。しかしこの条件は、昨今のTikTok人気や、海外でも聴くことができるサブスクリプション(音楽配信)サービスの浸透で、これまでとは違った形で、過去にリリースされた曲が、突如スタンダードナンバーとしてフォーカスされる世の中になりました。今回TOP10にセレクトした、とくにロック系の楽曲が世の中に新しいトレンドとして注目が集まるようになると、日本の音楽シーンはもっと盛り上がるのではないでしょうか。私はずっとそうなるように願い続けていきます。

 


 

【2010年イントロベスト25】

ランキングは25位まで決定したので、11位以下も下記に紹介します。
(藤田太郎調べ) 

 

ランキング1-10位ランキング11-20位

ランキング21-25位

 

さらに、YouTubeでイントロクイズとして楽しむことができます。

うたドン!【イントロクイズ】

 

 

【Profile】

藤田太郎

「30,000曲のイントロを0.1秒聴くだけでわかる男」イントロマエストロ。bayfm「9の音粋 」水曜日のラジオDJ、Tokyo FM『ももいろクローバーZのSUZUKI ハッピー・クローバー!』音楽コメンテーターを担当。フジテレビ『99人の壁』に出場し、ジャンル「90年代J-POP」でグランドスラム達成。日本初のクイズ専門店「ソーダライト」で毎月イントロクイズを出題中。

 

 

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Text&ランキング:藤田太郎

 

参考文献

・『総務省』サイトより「第1節 スマートフォン社会の到来」 
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h29/html/nc111110.html​​​​​

・『SPICE』サイトより「音楽業界でもトップランナーともいえる男『エンタメの今に切り込む新企画【ザ・プロデューサーズ】第十三回・本間昭光氏』」 
https://spice.eplus.jp/articles/88487
(2016年11月17日)