【イントロマエストロ藤田太郎が厳選】神イントロソング 年別TOP10 ~2011年編~


ある編曲家は言いました。「編曲(アレンジ)」は、良いイントロができたらほぼ完成。それが、できるかできないかで大きく違ってくる。
名曲には、すべて良いイントロあり!そんな素敵な「神イントロ」からはじまる曲を、bayfm「9の音枠」水曜DJを担当し、クイズルーム「ソーダライト」のイントロクイズでお馴染みのイントロマエストロ藤田太郎が、経験と知識を駆使し当時の音楽トレンドや背景なども含め、リリースされた年でくくった独自のランキングを決定。そのTOP10を紹介していきます。

第22回目の今回、フォーカスするのは「2011年」

 

3月11日午後2時46分、宮城県沖で国内観測史上最大のマグニチュード9.0の巨大地震が発生、原発停止が相次ぎ、電力不足が深刻化する事態に。アナログ放送が地上デジタル放送に完全移行し、任天堂が初の3D携帯ゲーム機『ニンテンドー3DS』を発売。なでしこジャパン、サッカーW杯優勝、ドラマ『マルモのおきて』のエンディングテーマ「マル・マル・モリ・モリ!」のマルモリダンスが大流行し『日清カップヌードルごはん』の生産が追いつかず一時出荷休止となる大ヒットを記録した年でした。
そんな2011年という時代にヒットした音楽はどんな曲だったのか。厳選した「神イントロ」という切り口で、それまでとは違う楽曲の楽しみ方を見つけてくれたらうれしいです。それでは、カウントダウン!

 

神イントロソング_第10位
 

第10位:「労働讃歌」ももいろクローバーZ
発売日:2011年11月23日
編曲:イアン・パートン
イントロ秒数:24秒

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10位は、週末ヒロイン ももいろクローバーZの「労働讃歌」。
作詞を、筋肉少女帯など多くのユニットでボーカルを担当している大槻ケンヂが手掛け、ラップを交えた「働くぜ 働くぜ バッチバチに輝け!」といったフレーズで、まさにタイトル通り“労働”することをエモーショナルに讃える歌詞に、イギリスのバンド“ザ・ゴー!チーム”のリーダー、イアン・パートンが制作した、ファンキーなサウンドが乗ったファンキーなロックナンバー! イントロからブラスとオルガンが熱のこもった演奏で混ざり合い、心を高ぶらせてくれます。さまざまな国々のメンバーが集い音楽を奏でているバンドの演奏で、日本で働く人を讃える歌詞を歌うという、突拍子もない組み合わせを超スタイリッシュに聴かせてしまうのは、それまでのアイドルのイメージを壊し、確かなパフォーマンスと笑顔で進み続けているももいろクローバーZだからこそ歌いこなせたのではないでしょうか。
国境を越えたカオスなこの曲から2011年神イントロソング紹介、スタートです!

 

神イントロソング_第9位
 

第9位:「迷宮ラブソング」嵐
発売日:2011年11月2日
編曲:Trevor Ingram
イントロ秒数:22秒

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9位は、メンバーの櫻井翔が執事・影山役で主演を務め、フジテレビ系列で放送されたドラマ『謎解きはディナーのあとで』の主題歌に起用された「迷宮ラブソング」。
ドラマは、北川景子が演じる宝生グループの令嬢で、警視庁国立署刑事として働くヒロイン宝生麗子を陰で支えるドSキャラの執事・影山が、捜査中の麗子の側に潜伏して見守りつつも、麗子に顔を近づけて屈辱的な暴言を吐き、逆鱗に触れさせたあと、決めゼリフ「謎解きはディナーのあとに致しましょう」から推理を始めるお決まりの展開が、毎回ミステリアスで且つコミカルと話題になり、平均視聴率15.9%を記録。そんなハートフルで神秘的なドラマを、この曲は時計の針の音からはじまるイントロからしっかりと演出し、盛り上げています。前年に6枚のシングルをリリースし、年間チャートTOP10に全曲ランクインさせた嵐が新たなステージに到達し、イントロから大人の余裕と貫禄を魅せてくれる1曲です。

 

神イントロソング_第8位
 

第8位:「はだかんぼー」山下智久
発売日:2011年1月19日
編曲:乙三. / 大竹創作
イントロ秒数:30秒

8位は、アイドルグループ、NEWSのメンバーとしての活動と並行し、ソロとしてリリースした山下智久の「はだかんぼー」。
この年一番インパクトが強いタイトルの曲を選べと言われたら間違いなくナンバーワンですが、イントロもそれに負けず劣らず。超ファンキーなドラムのリズムから、ホーンセクションが入ってくる最強のマリアージュが響きます。サウンドアレンジを手掛けたのは、フロントマンの大竹創作が率いるロックバンド、乙三.(おっさん)のメンバー。生涯軽音楽部をモットーに、青臭い三十路男六人衆が集まり結成したバンド、乙三.(おっさん)が繰り出すサウンドは、聴いている人を笑顔にしてくれる、パワーを感じさせてくれる曲がとても多いです。まさにそのスタイルを体現するように、あるがままでいることの大切さを込めた「はだかんぼー」のイントロに、バンド愛や音楽愛を感じずにはいられないのは、私だけではないでしょう。

 

神イントロソング_第7位
 

第7位:「花束」back number
発売日:2011年6月22日
編曲:back number&島田昌典
イントロ秒数:27秒

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“等身大” この言葉は、back numberの楽曲を説明するときによく使われます。「花束」の歌い出しはカップルの何気ない日常会話からはじまります。
「どう思う?これから2人でやっていけると思う? んんどうかなぁでもとりあえずは一緒にいたいと思ってるけど」
この2人は、どのくらい付き合っているんだろう? もう結婚とか考えているのかな? この一文だけで幸せなカップルを想像させてくれます。
まさに“等身大”の真骨頂。バンドのフロントマン、清水依与吏が手掛けた歌詞に、aikoの楽曲で多くのアレンジを手掛けている島田昌典とメンバーが、温かい雰囲気のギターを響かせ、イントロからハッピーを包み込みます。昭和の時代からヒットチャートを賑わせてきたラブソングは数多くありますが、ここまで“等身大”を表現するためのスタイルを極め続けたバンドを私はほかに知りません。2011年、胸がキュンとするラブソングNo.1の、神イントロTOP10入りは当然の結果です!

 

神イントロソング_第6位

 

第6位:「福笑い」高橋優
発売日:2011年2月23日
編曲:浅田信一
イントロ秒数:21秒

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6位は、東京メトロ「TOKYO HEART」のCMソングに起用された「福笑い」。
高橋優がDJを担当したラジオ番組で「いま世界を変えるために何が必要だと思いますか?」というテーマでメールを募集し、リスナーから送られてきた「世界の共通言語は、英語じゃなくて笑顔だと思う」というメッセージに触発されて制作された曲です。イントロは言葉の力強さを表現するように、鍵盤の音が勇敢に且つ、シンプルに響くバンドサウンド。誰かの笑顔につられて、ほかの人も、自分も笑顔になる。そんな雰囲気にさせてくれるイントロです。高橋優は、この曲に関してインタビューで
「歌うにはひとつハードルを超えなきゃなという、トライする気持ちがあったと思いますね。
〈遂に笑顔の歌を作っちまった〉とか、〈まだ早いんじゃないか〉とか、勝手に一人で考えてました。手応えよりも」
その考えは杞憂でした。笑顔が連鎖していくことを、これからも後押ししてくれる、大切な一曲です。

 

神イントロソング_第5位

 

第5位:「家族になろうよ」福山雅治
発売日:2011年8月31日
編曲:福山雅治、井上鑑
イントロ秒数:33秒

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5位は、リクルートの結婚情報誌『ゼクシィ』のCMソングに起用された「家族になろうよ」。
編曲は福山雅治本人と、2000年代前半から現在も福山雅治のサウンドアレンジを担当し、寺尾聰の「ルビーの指環」や、小泉今日子の「木枯しに抱かれて」、泰葉の「フライディ・チャイナタウン」なども担当した、井上鑑(あきら)が手掛けました。家族を敬う表現で綴り「あなたとなら生きてゆける」というフレーズで締める言葉たちを、エリック・クラプトンの「ティアーズ・イン・ヘヴン」を彷彿とさせる、柔らかいギターアルペジオを響かせるイントロで彩ります。普遍的なテーマで歌うポピュラー・ミュージックは、広すぎる表現を使うと難解なイメージがついてしまうこともありますが、この曲のイントロは、どんな世代の方にも手を差し伸べる包容力があります。40年以上第一線で活動してきた井上鑑とのタッグだからこそ響く、素晴らしい神イントロです。

 

神イントロソング_第4位

 

第4位:「絶滅黒髪少女」NMB48
発売日:2011年7月20日
編曲:GRAVITY
イントロ秒数:17秒

4位は、大阪市・難波にある『NMB48劇場』を拠点とし、近畿地方を中心に活動するアイドルグループNMB48のデビューシングル「絶滅黒髪少女」。
黒髪を“日本の美”として捉え、それを保護しなければという表現の歌詞を、ソリッドでダンサブルなアレンジで聴かせてくれます。イントロから、短刀で鋭く切るようにシンセの音が和の雰囲気を醸し出すのですが、どこか素朴で且つ、オリエンタルな異国情緒を感じ、それが心地良い違和感として残り続けます。ミュージックビデオを観ると、習字で「変」という文字を書いているシーンが登場。確信犯だとわかり、にやついてしまった方も多いのではないでしょうか。5位にランクインの「家族になろうよ」を歌った福山雅治が、当時テレビ番組のインタビューで、最近気になる曲としてこの曲を紹介していたことも納得です。音楽的な遊び心をしっかりと取り入れた、楽しくてキュートなアイドルポップス神イントロです。

 

神イントロソング_第3位

 

第3位:「スターライトパレード」SEKAI NO OWARI
発売日:2011年11月23日
編曲:SEKAI NO OWARI
イントロ秒数:11秒

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3位は、第1回NHK・民放連共同ラジオキャンペーン「はじめまして、ラジオです。IN 渋谷」のキャンペーンソングに起用された「スターライトパレード」。ボーカルの深瀬慧はWEBのインタビューでこの曲に関して、こう話しています。
「まず最初に“スターライトパレード”という言葉が浮かんで。その言葉に合うのが、このメロディだったんです。文明が発達することによって見えなくなってしまったもの、本当はあるのにも関わらず、みえなくなってしまっているものの代表的な存在が星だと思うんですけれど、それがラジオというアナログなものと重なって。そこから書いていきました。」
この年の3月11日に発生した東日本大震災で、ラジオは発生直後、唯一の情報入手手段となり、多くの人へ情報を伝えました。改めてラジオというメディアの重要性を認識した年だったのかもしれません。イントロからアミューズメントパークに来た人たちが胸躍る瞬間を切り取ったような幻想的なサウンドからスタートするこの曲は、エンタテインメントの真髄が詰まっています。まさに神イントロ! これからも私たちを素晴らしい世界へ連れて行ってほしいです。

 

神イントロソング_第2位

 

第2位:「やさしくなりたい」斉藤和義
発売日:2011年11月2日
編曲:斉藤和義
イントロ秒数:17秒

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2位は、松嶋菜々子が主演を務め、日本テレビ系列で放送されたドラマ『家政婦のミタ』の主題歌「やさしくなりたい」。
常に無表情でミステリアスな家政婦・三田灯を主人公にしたドラマは、最終回で最高視聴率40.0%。21世紀に放送された日本のテレビドラマとしては、初の40%越えという大記録を樹立。主人公の決まり文句「承知しました」、「それは業務命令でしょうか」、「それはあなたが決めることです」といったフレーズが流行し、社会現象を巻き起こしました。その大ヒットドラマをエモーショナルに演出したのが、ディレイするギターのリフレインが響き続ける神イントロ。この曲のヒットで、斉藤和義は初のNHK紅白歌合戦に出場を果たしますが、初出場を果たした感想を聞かれたインタビューで
「なんかちょっと場違いな気がしてますが、呼んでいただいてありがとうございます。ただ今年は『ガキ使』(『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!』の大晦日特番)が観れないなと思いまして……(笑)。」
と発言。変わらない自然体のロックミュージシャンの紅白出場は、爆笑に包まれました。ライブ定番曲となったこの曲は、イントロが響くとすぐに歓声が上がり、聴き手は感傷的な気持ちに。愛なき時代に生きる私たちを、やさしい気持ちにし続けてほしい神イントロです。

 

神イントロソング_第1位

 

第1位:「フライングゲット」AKB48
発売日:2011年8月24日
編曲:生田真心
イントロ秒数:27秒​​​​​​​

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1位は、この年(第53回)日本レコード大賞を受賞した「フライングゲット」。
AKB48は、デビュー時からのレコード会社との契約が終了し、キングレコードに移籍が決まった2008年にリリースした第1弾シングル「大声ダイヤモンド」から、握手券付きのCD購入者を対象にした「全国握手会」を初開催。ここからグループの快進撃がスタートします。「全国握手会」を求めるファンのCD購入数が雪だるま式に増えていき、2010年リリースの「Beginner」で初のミリオンヒットを記録。2011年に入ってからリリースした「桜の木になろう」、「Everyday、カチューシャ」も続けてミリオンヒットを達成し、この年3枚目のシングルとしてリリースしたのが「フライングゲット」でした。「フライングゲット」はそれまでグループのイメージである、日本の古き良き四季の雰囲気にしっかりと当て込んだ、まぶしい青春を感じる楽曲とは一線を画す、イントロからエモーショナルなギターが、激しく響きまくるラテンロックサウンド。このアレンジを聴いて、勝負をかけてきたな!を感じた人も多いかもしれません。“平成”の「勝手にシンドバッド」といっても過言ではない、言語化することすら野暮に感じるテンションMAXの興奮を感じるこの曲のタイトルの意味は、正規発売日より前倒しで商品を入手する俗語。しっかりとファンを意識した「フラゲ」タイトルで響く、この曲のイントロはまさに“神”。
AKB48という現象が日本を席捲した凄さも含め、この曲を2011年の1位とさせていただきます!

 

【2011年神イントロランキングの総評】

2011年のシングルチャート年間ランキングは、TOP5をAKB48が独占した年。この結果から、この年の音楽トピックス総括は、握手券で売上枚数を伸ばしたことの是非が問われる内容が多く、楽曲のことに関して触れられることが少ない年でした。改めて、イントロという切り口でヒットソングを聴くことで、楽曲の良さを再発見した曲が多かったです。私はTOP10のうち半分の5曲がアイドルソングという結果になりましたが、あなたはどうですか? たくさんの方の意見が聴きたいと感じた年でした。

 


 

【2011年イントロベスト25】

ランキングは25位まで決定したので、11位以下も下記に紹介します。
(藤田太郎調べ) 

 

ランキング1-10位ランキング11-20位

ランキング21-25位

 

さらに、YouTubeでイントロクイズとして楽しむことができます。

うたドン!【イントロクイズ】

 

 

【Profile】

藤田太郎

「30,000曲のイントロを0.1秒聴くだけでわかる男」イントロマエストロ。bayfm「9の音粋 」水曜日のラジオDJ、Tokyo FM『ももいろクローバーZのSUZUKI ハッピー・クローバー!』音楽コメンテーターを担当。フジテレビ『99人の壁』に出場し、ジャンル「90年代J-POP」でグランドスラム達成。日本初のクイズ専門店「ソーダライト」で毎月イントロクイズを出題中。

 

 

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Text&ランキング:藤田太郎

 

参考文献

・『タワーレコードオンライン』よりインタビュー:高橋優『福笑い/現実という名の怪物と戦う者たち』
https://tower.jp/article/interview/2011/02/23/75616
(2011年2月23日)

・『Fanplus Music』よりインタビュー:SEKAI NO OWARI「ラジオキャンペーンソング“スターライトパレード”リリース!!」
(2011年11月23日)
https://music.fanplus.co.jp/special/20111101087a26398

・『日刊スポーツ』より:AKBブレークのきっかけ「全国握手会」誕生に迫る
https://www.nikkansports.com/entertainment/akb48/news/201903190000833.html
(2019年3月20日)