【イントロマエストロ藤田太郎が厳選】神イントロソング 年別TOP10 ~2009年編~


ある編曲家は言いました。「編曲(アレンジ)」は、良いイントロができたらほぼ完成。それが、できるかできないかで大きく違ってくる。
名曲には、すべて良いイントロあり!そんな素敵な「神イントロ」からはじまる曲を、bayfm「9の音枠」水曜DJを担当し、クイズルーム「ソーダライト」のイントロクイズでお馴染みのイントロマエストロ藤田太郎が、経験と知識を駆使し当時の音楽トレンドや背景なども含め、リリースされた年でくくった独自のランキングを決定。そのTOP10を紹介していきます。

第20回目の今回、フォーカスするのは「2009年」

 

裁判員法が施行され、くじで選ばれた20歳以上の国民が裁判官とともに重大事件を審理し判決を出す裁判員裁判がスタート。前年の秋に起きた世界規模の金融危機の直撃を受け、GDP(国内総生産)が前期から大幅減となる中、最新の流行を取り入れながら低価格に抑えたファストファッションや、家庭的で優しいが恋愛には消極的な草食男子が流行。村上春樹の『1Q84』、湊かなえの『告白』がベストセラーになるなど、豊かな時代の定義が変わってく混沌とした年でした。
そんな2009年という時代にヒットした音楽はどんな曲だったのか。厳選した「神イントロ」という切り口で、それまでとは違う楽曲の楽しみ方を見つけてくれたらうれしいです。それでは、カウントダウン!

 

神イントロソング_第10位
 

第10位:「ヒーロー」FUNKY MONKEY BABYS
発売日:2009年11月18日
編曲:田中隼人
イントロ秒数:15秒

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10位は、日本テレビ系列で放送の情報番組『ズームイン!!SUPER』、『ズームイン!!サタデー』のテーマソングに起用された「ヒーロー」。
1979年にスタートした『ズームイン‼朝!』が放送から30周年を迎え、FUNKY MONKEY BABYSとコラボ企画として制作されたこの曲のテーマは“お父さんを讃える歌”。第三のビールを飲み、昨晩の疲れとアルコールが残った朝でも、冤罪対策で満員電車ではバンザイポーズをし、家族のために涙をぐっと堪えて踏ん張って働くお父さんと子どもの架け橋となってくれると嬉しい、という想いでメンバーが書いた歌詞を鍵盤の音が行進するように力強く太く響くイントロは、ダディの気持ちを奮い立たせてくれます。羽鳥慎一アナウンサーをジャケ写に起用し、ミュージックビデオでお父さん役として出演した映像も、世の中のお父さんを讃えるカッコいい仕上がりになっているのもグッとくるこのナンバーから、2009年神イントロソング紹介、スタートです!

 

神イントロソング_第9位
 

第9位:「10年桜」AKB48
発売日:2009年3月4日
編曲:井上ヨシマサ
イントロ秒数:14秒

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9位は、AKB48が「桜の花びらたち」に続く“桜ソング”シリーズ第2弾としてリリースした「10年桜」。
卒業シーズンにリリースされたこの曲のイントロは、学校の卒業式で広く歌われる唱歌「仰げば尊し」のメロディを使用しています。作詞を手掛けた秋元康は、この曲をその年の“卒業式”だけではなく、その先の人生にも刻まれていき長く愛され続けてほしいと「卒業はプロセスさ 再会の誓い」というフレーズを描き、今日は羽ばたいていく日でもあり、通過点でもある、という思いを表現しています。センターポジションを務めたメンバーの前田敦子は、この曲の発売から10年後の2019年に第一子を出産。「10年後にまた会おう」と歌うこの曲を出産のニュースで体現した奇跡のような話も素晴らしい。イントロで響く「仰げば尊し」のメロディは、今も私たちを成長させてくれます。

 

神イントロソング_第8位
 

第8位:「GUILTY」V6
発売日:2009年9月2日
編曲:陶山隼
イントロ秒数:17秒

V6の代表曲は?と聞かれたら、デビューシングル「MUSIC FOR THE PEOPLE」から続いたユーロビートアレンジのシングルか「WAになっておどろう」と答える人が多いのではないでしょうか。どちらのサウンドも子どもから大人まで楽しめるキャッチーで間口の広い楽曲なので、V6というグループのイメージは?という問いでも近い答えが返ってくるかもしれません。
「GUILTY」は、その真逆のアプローチに挑戦している曲です。一言でいうならばSEXY。曲のテーマになっている“叶わぬ恋”を、イントロからため息が出るほど美しく儚いピアノを主体としたR&Bアレンジで彩り、アメリカのシンガー、Ne-Yoの「Closer」をオマージュしたダンスチューンで大人のV6を堪能できます。前年にリリースしたバラード「way of life」、アッパーなラテンアレンジの「蝶」から年齢を重ねたことで新しいイメージ戦略に挑んだV6の楽曲は、売上枚数だけで測ることが野暮だと感じるほどの名曲揃い。神イントロのこの曲から堪能してみてください。

 

神イントロソング_第7位
 

第7位:「ふたつの唇」EXILE
発売日:2009年11月11日
編曲:Jin Nakamura
イントロ秒数:18秒

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7位は、小栗旬、水嶋ヒロが出演し、フジテレビ系列で放送された月9ドラマ『東京DOGS』の主題歌に起用された「ふたつの唇」。
2008年神イントロランクインの6位で紹介した「Ti Amo」と同じく、作詞を松尾潔、作曲・編曲をJin Nakamuraが手掛けたこの曲でEXILEが描いたテーマは「踊れるバラード」。ATSUSHIとTAKAHIROのツインボーカルが交互にたたみかける歌唱スタイルで、スリリングなR&Bアレンジの曲に疾走感を加え、あまい秘密をかかえる“切ない恋”を儚く響かせます。決して強い光で照らされることのない夜の情事に、ほの暗い光をいつまでも灯し続けるような温度で鍵盤が響き続けるイントロ。まさに耽美、そしてメロウ。2009年でも堂々のTOP10入りです。

 

神イントロソング_第6位

 

第6位:「はつ恋」福山雅治
発売日:2009年12月16日
編曲:福山雅治、井上鑑
イントロ秒数:17秒

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6位は、本人も出演した、東芝の液晶テレビ「REGZA」のCMソングに起用された「はつ恋」。
「REGZA」のCMコンセプトが“記憶”だったことから“美しい記憶”をテーマに制作されたこの曲は、誰もが経験する“初恋”の記憶を優美に且つ、儚く彩ったラブソング。「はつ」を、ひらがな表記にしたのは、漢字表記の時に想像してしまう、いやらしさの想像から遠ざけるためということからも、この曲を、美しく真摯な曲として聴かせたいという思いが伝わってきます。その思いを描いたこの曲のイントロは、音数が少ないマイナーコードのギターがゆっくりと響き、走馬灯のように過去の記録を蘇らせる17秒。健気な雰囲気を醸し出す神イントロランキングがあるのなら、この年で断トツ1位。昭和の時代から名イントロのヒットソングを手掛けてきた井上鑑の2000年代を代表する神イントロソングという意味でも、この曲は必聴です。

 

神イントロソング_第5位

 

第5位:「じょいふる」いきものがかり
発売日:2009年9月23日
編曲:田中ユウスケ、近藤隆史
イントロ秒数:24秒

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5位は、忽那汐里が出演した江崎グリコ「ポッキー」のCMソングに起用された「じょいふる」。
バラード曲だったデビューシングルの「SAKURA」と、アコースティックスタイルのセカンドシングル「HANABI」で、バンドのイメージを確立していた“いきものがかり”が、あえてアッパーなアレンジに挑んだナンバーです。メンバーの水野良樹も、著書で“それまでのイメージをぐらりと揺らすような楽曲が書きたかった。”と語っているほど、それまでのスタイルと逆の意識で制作されたこの曲は、hide with Spread Beaverの「ROCKET DIVE」を彷彿とさせる、まさに発射寸前のロケットのようなダンサブルなロックサウンドがイントロから轟きます。ロックアレンジでも、吉岡聖恵のはっきりと言葉をきかせるボーカルが乗れば、いきものがかりというバンドの存在感がしっかりと輝くことを証明しました。その後に流行するTikTokカルチャーなどを先取りしていたとも読み取れるチャレンジも最高な一曲です。

 

神イントロソング_第4位

 

第4位:「笑顔のまんま」BEGIN with アホナスターズ
発売日:2009年1月7日
編曲:BEGIN
イントロ秒数:36秒

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この曲は、2008年にフジテレビ系列で放送された『FNS27時間テレビ!!みんな笑顔のひょうきん夢列島!!』で総合司会を務めた明石家さんまが、BEGINに番組のエンディングテーマを制作してほしいという依頼から誕生した曲です。無茶ぶりといっても過言ではない要望に、まさに“笑顔”で答え、15時間で作ったとは思えないハートフルな歌詞にグッと来た人も多いのではないでしょうか。明石家さんまの座右の銘『生きてるだけで丸儲け』をサビのフレーズに起用し、歌詞のラストで登場する
「僕が笑いを君にあげるから 君の笑顔を僕にください」
で締めるこの曲には、笑いの本質が凝縮されています。そんな言葉たちを、アコースティックギターの音が重なりあうイントロが、とっても温かいグルーヴで包み込みます。間寛平、村上ショージ、ジミー大西、雨上がり決死隊、ガレッジセール、タカアンドトシという、幅広い年齢層の芸人が“アホナスターズ”としてコーラスにも参加し、一緒に笑顔を作る神イントロ。これからもずっと聴き続けたいです。

 

神イントロソング_第3位

 

第3位:「イチブトゼンブ」B'z
発売日:2009年8月5日
編曲:松本孝弘
イントロ秒数:27秒

3位は、山下智久が主演を務めフジテレビ系列で放送された月9ドラマ『ブザー・ビート~崖っぷちのヒーロー~』の主題歌「イチブトゼンブ」。
90年代に、ダンサブルなデジタルロック、ハードロック、ブルースといった多様な音楽ジャンルを日本人の琴線に触れるサウンドに仕上げ、ヒットチャートのTOPに送り込み続けてきたB'zがこの曲で魅せたのは、奥深いリアルな歌詞を疾走感のあるサウンドで響かせるロックサウンド。デジタルビートを刻みながら、ダンサブルなギターリフを響かせるイントロから余裕すら感じられる様々なアプローチを研究し、実績を積んできたB'zがたどり着いた最高到達点といっても過言ではないでしょう。リリース以降、B'zのライブの呼称『LIVE-GYM』で「イチブトゼンブ」が披露されなかったことがほとんどないという事実も、それを証明しています。B'zの新たな定番ナンバーとして定着したこの曲のTOP3入りは、当然の結果です!

 

神イントロソング_第2位

 

第2位:「虹」ゆず
発売日:2009年9月2日
編曲: 蔦谷好位置 & ゆず / ストリングスアレンジ:弦一徹
イントロ秒数:16秒

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2位は、日本生命のCMソングに起用された「虹」。
ゆずのホームページでは「重厚なストリングスサウンドが圧倒的なスケール感を誇る珠玉のナンバー」と紹介されているこの曲は、弦楽器の音がクラシカルに、イントロから気持ちを高揚させるように轟きます。壮大なスタートを切ったこの曲は
「曲がりくねった道の途中で いくつもの分岐点に僕らは出会うだろう」
「遠回りしたっていいさ 時にはつまづく事もあるさ」
という歌詞フレーズで、しっかりと自分の足で人生を突き進む人を彩ります。そしてサビで連呼される「越えて 越えて」。頑張ろうといった“応援”という意味の言葉ではなく、あなたが今、考えていることは絶対に正しい。その正しさの上に、あなたは何を魅せていくの?と問いかけるのです。この曲のイントロを聴いたあと、あなたはその問いにどう答えますか?

 

神イントロソング_第1位

 

第1位:「やさしさで溢れるように」JUJU
発売日:2009年2月11日
編曲:亀田誠治
イントロ秒数:13秒

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2009年のシングルチャートは、ファンダムの動きによって、ヒットチャートの上位にランクインする楽曲の数字が跳ね上がり、それまでの機能を果たすことができなくなっていきました。そんな時代にリリースされたこの曲は、ヒットチャート上位にランクインしなかったのですが、リスナーの記憶に残る曲として根強い人気をキープし続けました。YouTubeの再生回数が2024年1月現在で5,000万回を越えているという実績は、流行に流されず、しっかりと当時のトレンドを見つめながら、本当に大切なものは何かを見つめ、その答えを守り抜いてきた結果ではないでしょうか。ピアノソロからはじまり、バンドの音が一斉に重なり合う13秒のイントロから、ぬくもりと安心感、そしてブレない力強さを感じるのは私だけではないでしょう。リリースから15年経った今、日本の音楽シーンは当時より「やさしさで溢れるように」なったのでしょうか。その答えに私は、何の迷いもなく「はい」と答えます。この曲の存在が、これから先の未来も、多くの人の生活を豊かにしていくことに期待を込めて、2009年の神イントロ1位とさせていただきます!

 

【2009年神イントロランキングの総評】

良い曲を作れば、絶対に聴き手に届く。という、強い信念から誕生し、これから先も音楽配信サービスで、再生回数が伸び続けるアンセムが多くリリースされた年でした。シングルチャートだけでヒットソングをチェックするのが難しくなったことと、チャートの数字は、あくまでも結果でしょ。という、音楽職人たちの粋な想いがこの結果に繋がっていると思うと胸が熱くなります。

 


 

【2009年イントロベスト25】

ランキングは25位まで決定したので、11位以下も下記に紹介します。
(藤田太郎調べ) 

 

ランキング1-10位ランキング11-20位

ランキング21-25位

 

さらに、YouTubeでイントロクイズとして楽しむことができます。

うたドン!【イントロクイズ】

 

 

【Profile】

藤田太郎

「30,000曲のイントロを0.1秒聴くだけでわかる男」イントロマエストロ。bayfm「9の音粋 」水曜日のラジオDJ、Tokyo FM『ももいろクローバーZのSUZUKI ハッピー・クローバー!』音楽コメンテーターを担当。フジテレビ『99人の壁』に出場し、ジャンル「90年代J-POP」でグランドスラム達成。日本初のクイズ専門店「ソーダライト」で毎月イントロクイズを出題中。

 

 

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Text&ランキング:藤田太郎