【イントロマエストロ藤田太郎が厳選】神イントロソング 年別TOP10 ~2004年編~


ある編曲家は言いました。「編曲(アレンジ)」は、良いイントロができたらほぼ完成。それが、できるかできないかで大きく違ってくる。
名曲には、すべて良いイントロあり!そんな素敵な「神イントロ」からはじまる曲を、bayfm「9の音枠」水曜DJを担当し、クイズルーム「ソーダライト」のイントロクイズでお馴染みのイントロマエストロ藤田太郎が、経験と知識を駆使し当時の音楽トレンドや背景なども含め、リリースされた年でくくった独自のランキングを決定。そのTOP10を紹介してきます。

第16回目の今回、フォーカスするのは「2004年」

 

アテネオリンピックで金16個、メダル総数37個を獲得し、大リーグではイチローが262安打で84年ぶりに年間最多安打記録を更新と、日本人が世界のスポーツ界で大きな結果を残しました。韓国ドラマ『冬のソナタ』が放送。冬ソナ現象が起き「冬ソナ」が流行語大賞のトップテンに入賞するほどの大ブームが起こし、J.K.ローリングの『ハリーポッターと不死鳥の騎士団』、片山恭一の『世界の中心で、愛をさけぶ』がベストセラーに。
夏に気温30度以上の「真夏日」が東京で70日、大阪で93日、熊本で105日など、全国12地点で記録を更新し、熱中症などで病院に運ばれる人が続出。過去最多10個の台風が上陸し、浸水や土砂災害で各地に大きな被害をもたらすなど、自然災害に多く見舞われる年でした。
そんな2004年という時代にヒットした音楽はどんな曲だったのか。厳選した「神イントロ」という切り口で、それまでとは違う楽曲の楽しみ方を見つけてくれたらうれしいです。それでは、カウントダウン!

 

神イントロソング_第10位
 

第10位:「マツケンサンバII」松平健
発売日:2004年7月7日
編曲:宮川彬良
イントロ秒数:67秒

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10位は、松平健が舞台公演のラストで歌っていた曲が話題となり、CD化された「マツケンサンバII」。
音楽プロデューサーのヒャダインはこの曲に関して「ブラジルの音楽では「ボンゴ」という楽器は使わないのに、サビのフレーズで登場するし、「オレ!」っていう掛け声は、スペインのフラメンコなのにタイトルには『サンバ』。そういうハチャメチャな感じが最高!日本のエンタメで、唯一世界で戦えるのは『マツケンサンバII』だと思っている」と語るように、誰が聞いても笑顔で踊り出してしまう強烈なパワーを持っているナンバーです。イントロが67秒と長いのは、その間に舞台衣装から金ピカ衣装に着替えるための時間稼ぎというしっかりとした理由があり、松平健本人がブロードウェイのショーを参考にして衣装の制作から携わっていることからもわかるように、この曲はどこを切り取っても本気のエンターテインメントを魅せるために妥協が無いのです。
いまや日本を代表するお祭りソングとなったこの曲から、2004年神イントロTOP10の紹介はスタートです!

 

神イントロソング_第9位
 

第9位:「以心電信」ORANGE RANGE
発売日:2004年12月1日
編曲:ORANGE RANGE(プロデュース:シライシ紗トリ)
イントロ秒数:15秒

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2004年のORANGE RANGEは「ミチシルベ〜a road home〜」「ロコローション」「チェスト」そして、映画『いま、会いにゆきます』の主題歌「花」と、シングルを立て続けにヒットさせ、J-POP界のど真ん中を駆け抜けました。2004年12月にそれらのシングルをすべて収録したアルバム『musiQ』を満を持してリリース。この曲は、このアルバムに初収録でシングルカットされていませんが、バンドメンバーたちも出演したau by KDDIのCMソングとしてTVでサビが大量オンエアされました。その甲斐もあって、通信会社のCMだから以心「伝心」ではなく「電信」という遊び心を加えたタイトルで、ファミリーコンピュータの電子音に近い音色がイントロからキャッチーに駆け抜けていくこの曲は、当時、携帯電話で人気だった「着メロ」の各サイトでロングヒット。アルバム『musiQ』も売上枚数264万枚を記録。この年を代表するアーティストの神イントロソングのランクインは当然の結果です!

 

神イントロソング_第8位
 

第8位:「ココロオドル」nobodyknows+
発売日:2004年5月26日
編曲:nobodyknows+
イントロ秒数:8秒

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2022年6月10日、一発撮りのパフォーマンス「THE FIRST TAKE」に、この曲がアップされます。2007年に脱退したメンバーのg-tonも加わり、5MCに1DJのオリジナルメンバーで披露した「THE FIRST TAKE」バージョンのこの曲は、2023年9月までに再生回数4700万超え。リリースから19年後に再ブレイクを果たします。「THE FIRST TAKE」動画のコメントに溢れていたのは「みんな楽しそう!観ててこっちも笑顔になった」「笑顔になったあと、なぜか涙が出てきた」という内容ばかり。その理由は、個性的な声にメンバーが高速ラップを畳みかける曲構成に、リリースからこれまでの”生き様”が乗っているから。メンバーはもちろん、リリース当時の2004年、まさに心躍りながらこの曲を聴いていたリスナーも同じく年月を重ね、様々な経験を経て今があります。そんな経験を、この曲は全肯定し想い出と共に高鳴るのです。その口火を切るように、ギターのアルペジオと鈴の音のワクワク感ではじまるイントロの8秒は、まさにENJOY&IT’S JOIN!2004年から今日までを力強く駆け抜けたすべての人に、今も最高の音楽が鳴り続けているのです。

 

神イントロソング_第7位
 

第7位:「ロックンロール」くるり
発売日:2004年2月11日
編曲:くるり
イントロ秒数:31秒

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この曲のイントロは、ラストサビの歌詞に登場する「8の字描くように無限のビート」がすべてを物語っています。イントロから曲のラストまで響き続けるギターリフに、美しく爽やかなメロディとコーラスが重なり、エモーショナルな気持ちがこみ上げてくるこの曲のタイトルは「ロックンロール」。語りで表現すると野暮になりそうなこの言葉を、こんなにもやさしく、そして儚く音楽で表現している曲を私は知りません。メンバーの入れ替わりが多い、くるりというバンドが、ボーカル&ギターの岸田繁と、ベースの佐藤征史の結成当時から現在までずっと変わらない2人と、ギター大村達身、ドラムス、クリストファー・マグワイアの4人編成だった時にこの曲がリリースされたこと関して、フロントマンの岸田はインタビューで、「ずっと繰り返す大村のギターと、日本人では出せないグルーヴのドラムがなければ思いつかなかった、完成しなかった曲」と、語っていることも一期一会で諸行無常。音楽の不思議な力が、この曲には深く宿っているように私は感じるのです。

 

神イントロソング_第6位

 

第6位:「君にBUMP」ケツメイシ
発売日:2004年7月28日
編曲:YANAGIMAN
イントロ秒数:21秒

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90年後半に現在のメンバーとなって活動をスタートしたケツメイシは結成当初、いわゆるゴリゴリ、イケイケなヒップホップをやっていたグループでした。しかしそれだと盛り上がらない。いったい自分たちは何のためにやってるんだと考えた時、俺たちは、その夜に参加したライヴが楽しかったり、曲を聴いていい気分になれたり、多くの人たちに聴いてもらえることがうれしい。ということに気づきます。そこから、曲作りを、どんな曲を作るかのコンセプトを決め、それがメンバー全員に受けるかどうかの選考会的なことで詰めてから、曲と歌詞を書き始める方法で楽曲制作をはじめます。その手法で制作し2002年にリリースした、地元の連れをノスタルジーなリリックで描いた「トモダチ」がヒット、翌年2003年には、若者が羽目を外しちゃう雰囲気で暑い季節にやんちゃする情景を、裏打ちレゲエサウンドで彩った「夏の思い出」がロングセラーに。その勢いと確かな戦略でリリースしたのが、イントロからトライバルな楽器の音が響き、懐かしのディスコアレンジと絡み、妖しく楽しいリリックを乗せたのがこの曲です。互いの腰をぶつけるダンスをテーマにするという、ちょっぴり卑猥な感じもケツメイシというグループのイメージとピッタリマッチし、スマッシュヒットを記録。そして翌年にリリースされる、グループ最大のヒットとなるあの曲へと繋がっていくのです。

 

神イントロソング_第5位

 

第5位:「金魚花火」大塚愛
発売日:2004年8月18日
編曲:愛×Ikoman
イントロ秒数:23秒

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2003年に「さくらんぼ」で一気にスターダムを駆け上がった大塚愛は、後のインタビューで、この曲の曲調から「元気いっぱいの女性」というビジュアルイメージがついてしまい、それを払拭するのに時間がかかったと話しています。15歳で作詞、作曲をはじめ、中学の時に受けた「ヴォーカルクイーンコンテスト」オーディションでグランプリを獲得と、若いころから地元の大阪で素晴らしい経験と実績を積み上げていた大塚愛は、メジャーデビューの時から、ヒットソングを作る!という意識が非常に強く「さくらんぼ」も「イケる!」と強い確信をもってリリースし、みごとに結果を残したのですが、彼女の実力をその一曲で語るのはあまりにも過小評価。イントロから幻想的なサウンドで”夏の雨”を演出し、金魚の赤く優美な姿と”ぽたぽた落ちる”という優しい語感で、風情(ふぜい)のあるムードを演出するバラードのこの曲こそ、大塚愛の真骨頂だと私は思うのです。
ため息が出るほどに美しく儚いこの曲の神イントロを聴いて、大塚愛の底知れぬ実力に酔いしれてみるのはいかがでしょうか。

 

神イントロソング_第4位

 

第4位:「やさしいキスをして」DREAMS COME TRUE
シングル発売日:2004年2月18日
編曲:中村正人
イントロ秒数:12秒

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4位は、TBS系列で放送されたSMAPの中居正広が主演を務めたドラマ『砂の器』の主題歌に起用された「やさしいキスをして」。
イントロからストリングスとピアノの音が陰影を刻む物憂げなアレンジは、禁断の愛を歌った曲と表現されたこともあるのですが、この件に関して、DREAMS COME TRUEのリーダーで、この曲の編曲を担当した中村正人はブログで「運命に翻弄されながらも (ドラマ『砂の器』の)主人公、和賀英良を必死で支える、この作品のオリジナルキャラクター成瀬あさみの目線で描かれたもので不倫の歌じゃないんだなぁ。」と、否定。このブログを読むと、この曲で表現した愛の深さをより味わうことができます。そこに、言葉数少ない歌詞を、吉田美和の魂のこもった歌声で響かせる名バラード。2000年代にリリースされたDREAMS COME TRUEのシングルで最大の売上枚数を記録という点からも、この曲のランクインは当然です。

 

神イントロソング_第3位

 

第3位:「栄光の架橋」ゆず
発売日:2004年7月22日
編曲:松任谷正隆
イントロ秒数:15秒

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3位は、NHK『アテネオリンピック中継』公式テーマソングに起用された「栄光の架橋」。このオファーを受けたゆずのリーダー北川悠仁は、オリンピック選手の気持ちになれば曲が書けると考え、たくさんの競技を見学し多くのアスリートに取材をしにいきます。しかし、取材をすればするほど、オリンピックというスケールの大きさに打ちのめされ、全く曲を書くことができなかったそうです。
自分の理解できる気持ちは何だろう。そう思ったときに浮かんだのは、拍手喝采を浴びている勝者の横で、ひっそりと肩を落とす敗者の姿。負けてしまった人が、また立ち上がっていく気持ちなら僕にもわかる。それに気づいた北川悠仁は、一気にこの曲を描き上げます。70年代から多くの日本のポピュラーミュージックの編曲を手掛けてきた松任谷正隆がつけたイントロの美しいピアノのメロディに、傷ついた経験を癒してくれるパワーを感じるのは私だけではないでしょう。必死に何かに打ち込んできたから、たどりついた今がある。たとえそれが、うまくいかなかったとしても、必ずあなたの糧となり、新しいステージへ連れて行ってくれる。挫折や悔しい気持ちを知っているチームが制作したからこそ、この曲は多くの人に感動を与えたのです。そしてこれからもずっと、立ち止まってしまった人へ、ゆっくりと、しっかりと背中を押す曲として響き続けるのでしょう。

 

神イントロソング_第2位

 

第2位:「奏(かなで)」スキマスイッチ
発売日:2004年3月10日
編曲:スキマスイッチ
イントロ秒数:42秒

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2位は、スキマスイッチのセカンドシングル「奏(かなで)」。この曲は、音楽チャート好きの中では超ロングセラー曲として有名です。リリースから17年後の2018年に第一興商(DAM)の年間カラオケランキングで3位にランクイン、2019年にYouTubeで公開されたミュージックビデオの再生回数が1億回を突破し、2020年のビルボード年間チャートで90位にランクインと、令和の時代も様々な音楽チャートの年間ランキングに名を連ね、色褪せることなく愛され続けている不朽のラブソングなのです。愛され続ける理由として、42秒という歴代ヒットソングの中でもトップクラスに長いイントロがあることが大きな要素になってると私は考えます。まさに、ゆっくりと奏でられる、せつないピアノが響くイントロで、曲の世界観に深く入り込むことができるこの曲を、あなたは誰にも邪魔されない一人カラオケで歌ったことがあるでしょうか。大人数で行くカラオケでこの曲を歌うと、イントロが待ちきれない、盛り上がってる雰囲気を台無しにしてしまうかもしれないと感じや、歌うのを躊躇したことがある人非常に多いと思います。しかし一人だとそんなことを全く気にすることはありません。42秒で気持ちを作り、囁くようにはじまるAメロから盛り上がる最初のサビ、そしてラストサビで一気にパワーを開放!という構成になっているこの曲以上に一人カラオケでピッタリな曲を私は知りません。この長いイントロで、この先も私たちとつながっていける。これから先も、多くの方に歌い継がれる2004年を代表する神イントロです。

 

神イントロソング_第1位

 

第1位:「ハナミズキ」一青窈
発売日:2004年2月11日
編曲:武部聡志
イントロ秒数:17秒

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この曲は、デビュー曲「もらい泣き」をリリースする前の段階で、既に存在していました。「ハナミズキ」を初めて聞いた時の印象を、編曲とプロデュースを手掛けた武部聡志は、こう話しています。「作曲したマシコタツロウ君のデモ・テープでは、もっとAOR的な、すごくさわやかな感じで、サックスソロなども入っていました。テープには歌も入っていて、それが圧倒的に素晴らしかったんです。」武部聡志は、アレンジする段階で歌詞がある場合、必ず歌詞の内容や意味について尋ねるようにしており、一青窈にも、この曲で書いた歌詞の意味を聴いてみたところ、こういう答えが返ってきたそうです。「この曲は、私にとっての反戦歌。ジョン・レノンの「イマジン」なのです。この歌詞に歌われているような想いをみんなが持つようになれば、戦争はきっとなくなる。そういう歌です」
その説明を聴いた武部聡志は、その想いをしっかりと伝えるためのサウンド作りにこだわり、アレンジを完成させます。特にこだわった点は、イントロから、ピアノとバイオリンなどの弦楽器の音だけ抜き出しても成立する、厚みのあるアレンジ。強いエネルギーを持っている言葉の歌詞をしっかりと演出し、且つ、その言葉を引き立たせるずっしりとした重厚感を持ったアレンジのこの曲は、第一興商(DAM)の発表した、平成の時代に最も歌われた「カラオケランキング」で1位を記録。多くの方に愛されるスタンダードナンバーとなりました。ハナミズキの花言葉は「返礼」。過去の気持ちを大切に、これからの百年、いや、それ以上、先の未来にも素敵なことが続きますように。と願うこの曲を、2004年の神イントロランキングでも1位として紹介させていただきます。

 

【2004年神イントロランキングの総評】

10位から6位はアッパーな曲が、5位から1位はバラードが並ぶという、メリハリのあるランキングとなりました。そしてアッパーな曲もバラードにも共通しているのは、イントロを聴くだけで感傷的な気持ちなること。その理由は、この10曲はこの年を代表する曲に留まらず、今もアップデートされて新しいファンを獲得し続けているから。当時よく聴いていた方はもちろん、若い世代にも音楽の良さが沁みてくる曲が揃ったTOP10でした。

 


 

【2004年イントロベスト25】

ランキングは25位まで決定したので、11位以下も下記に紹介します。
(藤田太郎調べ) 

 

ランキング1-10位ランキング11-20位

ランキング21-25位

 

さらに、YouTubeでイントロクイズとして楽しむことができます。

うたドン!【イントロクイズ】

 

 

【Profile】

藤田太郎

「30,000曲のイントロを0.1秒聴くだけでわかる男」イントロマエストロ。bayfm「9の音粋 」水曜日のラジオDJ、Tokyo FM『ももいろクローバーZのSUZUKI ハッピー・クローバー!』音楽コメンテーターを担当。フジテレビ『99人の壁』に出場し、ジャンル「90年代J-POP」でグランドスラム達成。日本初のクイズ専門店「ソーダライト」で毎月イントロクイズを出題中。

 

 

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