【イントロマエストロ藤田太郎が厳選】神イントロソング 年別TOP10 ~2006年編~


ある編曲家は言いました。「編曲(アレンジ)」は、良いイントロができたらほぼ完成。それが、できるかできないかで大きく違ってくる。
名曲には、すべて良いイントロあり!そんな素敵な「神イントロ」からはじまる曲を、bayfm「9の音枠」水曜DJを担当し、クイズルーム「ソーダライト」のイントロクイズでお馴染みのイントロマエストロ藤田太郎が、経験と知識を駆使し当時の音楽トレンドや背景なども含め、リリースされた年でくくった独自のランキングを決定。そのTOP10を紹介してきます。

第17回目の今回、フォーカスするのは「2006年」

 

冬季トリノオリンピックでフィギュアスケートの荒川静香が金メダリストとなり話題となった"イナバウアー"、日本プロ野球でパシフィック・リーグを制した日本ハムファイターズのヒルマン監督がお立ち台で絶叫した"シンジラレナ〜イ"、全国高等学校野球選手権大会で優勝した早稲田実業・斎藤佑樹の通称"ハンカチ王子"が流行語となり、スポーツの話題で盛り上がる中、日本の人口率が、65歳以上で世界最高、15歳以下では世界最低となり、少子高齢化が急速に進みました。山田昌弘の著書『希望格差社会』に記された内容から、所得や教育、職業などさまざまな分野において格差社会が広がり、二極化が浮き彫りになり、深刻化していった年でした。
そんな2006年という時代にヒットした音楽はどんな曲だったのか。
厳選した「神イントロ」という切り口で、それまでとは違う楽曲の楽しみ方を見つけてくれたらうれしいです。それでは、カウントダウン!

 

神イントロソング_第10位
 

第10位:「ハネウマライダー」ポルノグラフィティ
発売日:2006年6月28日
編曲:ak.homma, Porno Graffitti
イントロ秒数:19秒

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10位は、大塚製薬『ポカリスエット』のCMソングに起用された「ハネウマライダー」。
作詞を手掛けたポルノグラフィティの新藤晴一は、この曲の歌詞に関して「『ポカリスエット』のCMテーマだった"RE・BODY(再生)"をイメージし、思い浮かんだ"暴れ馬"をバイクや跳ね馬に例えてみました。」と語っています。ただ例えただけではなく「ただ必死にしがみついてたら、君が目の前に現われた。Hey you!このBig Machineに乗っていけよ。」や「大切なものを乗せて走りたいなら、生まれ変わっていかなければねえ。」など、バイクに乗って疾走する情景と、破天荒な人生へ向かっていく気持ちを応援する気持ちの2つの意味を、一つのフレーズで意味をもたせる「ダブル・ミーニング」という手法で描いています。躍動感のある言葉に乗せたサウンドは、イントロから力強くグルーヴィーなギターが轟く爽快なアッパーチューン!もやもやした気持ちを吹き飛ばしてくれるこの曲から、2006年神イントロTOP10紹介、スタートです!

 

神イントロソング_第9位
 

第9位:「ハレ晴レユカイ」涼宮ハルヒ(平野綾)、長門有希(茅原実里)、朝比奈みくる(後藤邑子)
発売日:2006年5月10日
編曲:安藤高弘
イントロ秒数:14秒

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9位はアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』のエンディングテーマに起用された「ハレ晴レユカイ」。
リズミカルな打ち込みドラムで踊りたくなるイントロから終わりまで、アニメのキャラクターがなめらかな動きで踊り上げる、通称、ハルヒダンスは秋葉原やコミケを中心に、大きな話題となりました。話題となった背景に、動画配信サービス『ニコニコ動画』が2006年12月にスタートしたことが非常に大きな理由として挙げられます。アニメの放送終了から5カ月後にローンチした『ニコニコ動画』に「ハルヒダンス踊ってみた」という動画が多数アップされ、翌年、この曲をシングルチャート1位にすべく、秋葉原の歩行者天国で大勢のコスプレイヤーによる同ダンスのフラッシュモブが撮影されました。2006年に誕生した新しい動画メディアの急成長とともに、世の中に浸透していったこの曲のランクインは、新しいメディアが軌道に乗った一つ重要なコンテンツ、という意味でも当然の結果です。

 

神イントロソング_第8位
 

第8位:「sakura」NIRGILIS
発売日:2006年3月1日
編曲:NIRGILIS
イントロ秒数:20秒

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アニメのテーマソングが続きます。8位は、『交響詩篇エウレカセブン』のオープニングテーマ「sakura」。
この曲のイントロは、2つ以上の曲から片方はボーカルトラック、もう片方は伴奏トラックを取り出し、ミックスし重ねあわせる「マッシュアップ」という手法で制作されました。国立音楽大学声楽科出身のシンガー堀澤麻衣子が歌う「アメイジング・グレイス」のボーカルトラックを、ギターを中心とした疾走感のあるバンドサウンドと重ね合わせたサウンドは、桜の花びらが舞い散る情景を、美しく且つ、力強く表現し、数多くリリースされてきた「桜ソング」の中で異彩を放つ楽曲として、アニメファンの枠を超え、愛され続けています。ボーカルの岩田アッチュが別れを叫ぶフレーズを舞いながら轟かせるのですが、この曲は悲壮感をあまり感じません。それはイントロで響く、凛とした声楽家の歌声とギターのカッティングが、曲に壮大なスケール感を与えているからでしょう。新しいアイデアで、流行に一石を投じた「桜」ソング堂々のTOP10入りです。

 

神イントロソング_第7位
 

第7位:「会いたかった」AKB48
発売日:2006年10月25日
編曲:  田口智則・稲留春雄
イントロ秒数:7秒

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7位は、秋葉原に「AKB48劇場」を持ち"会いに行けるアイドル"をコンセプトに2005年から活動を開始したAKB48のメジャーデビューシングル「会いたかった」。
この曲の前にインディーズで「桜の花びらたち」、「スカート、ひらり」の2枚のシングルをリリースしていたグループが、様々な経験を経てリリースすることになったこの曲のイントロは、はじめの自転車のベル音だけで、甘酸っぱい雰囲気を一気に想像されてくれる青春ソング。ベルの音から一気にバンドサウンドが駆け抜けていくアレンジは、インディーズで新しいアイドルのスタイルを確立し、メジャーのステージへ挑戦する決意のように聴こえるのは私だけではないでしょう。タイトルの「会いたかった」から、グループのコンセプトである"会いに行けるアイドル"の紹介が伝わる秋元康の言葉選びも秀逸。その後の、誰もが目にした快進撃へと繋がっていく原点となった一曲が"神(イントロ)7"にランクインです!

 

神イントロソング_第6位

 

第6位:「魔法のコトバ」スピッツ
発売日:2006年7月12日
編曲:スピッツ&亀田誠治
イントロ秒数:19秒

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2006年神イントロで『優しいイントロ部門』という部門賞があれば、間違いなくこの曲が受賞するでしょう。6位は、美術大学を舞台に恋愛に不器用な大学生達の報われない恋模様や自分の才能や生き方について迷う若者達の姿を描いた、羽海野チカ原作の漫画を実写化した映画『ハチミツとクローバー』の主題歌に起用された「魔法のコトバ」。
『ハチミツとクローバー』の"ハチミツ"は、スピッツが1995年にリリースした同名アルバムタイトルからの引用("クローバー"はスガシカオの同名アルバム『Clover(クローバー)』から)であり、このタイアップでコラボが実現したという事実に、漫画作品とバンドの両方にリスペクトと愛を感じます。イントロは、その雰囲気をしっかりと演出した、鍵盤の優麗な音色が1音目から甘く、せつなく響き渡るアレンジ。おかしくてうれしくて、キラキラしたあの時代を味わえるイントロを堪能してください。

 

神イントロソング_第5位

 

第5位:「Venus」タッキー&翼
発売日:2006年1月18日
編曲:  CHOKKAKU
イントロ秒数:21秒
 

過去を振り返った時にその年といえば!という決め打ちで"懐かしい"楽曲よりも、本当の発売年が記憶では多少前後していたとしても、その辺りの年でみんなが聴いてた、みんながカラオケで歌っていたと感じる曲の方が、その後も語り継がれやすく想い出濃度が濃い曲が多いです。その理由は、同世代以外の方と音楽の話をする時に一緒に盛り上がることができるから。「Venus」は、まさにその代表ではないでしょうか。情熱的なラテンアレンジのイントロから、軽快なリズムに乗った歌いやすいキーのメロディでみんなが真似したくなるダンスとともに駆け抜けていくそのサウンドは、老若男女を巻き込んでフィーバーできるアゲアゲスタイル!シルクロードに行き、サザンクロスや蜃気楼も登場する歌詞のテーマは『異国のランデヴー』。世界各地の情景に胸焦がすアッパーナンバーがこの年リリースされたことを、私は今も、カラオケボックスに入るたびに思い出します。

 

神イントロソング_第4位

 

第4位:「シャングリラ」チャットモンチー
発売日:2006年11月15日
編曲:  チャットモンチー
イントロ秒数:30秒

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私は、2005年リリースのメジャーデビューミニアルバム『chatmonchy has come』収録の「ハナノユメ」が流れてきた、チャットモンチーの曲をはじめて聴いた衝撃を今も覚えています。キュートな声が遠くまで轟く橋本絵莉子のボーカルとギター、福岡晃子のベース、高橋久美子のドラムという、3人のバンドサウンドの音だけなのに、こんなにも力強く心に突き刺さるのは何故なのだろう。それは、この3人からでしか実現することができない音の魔法がかかっているからだと気づき、それが確信に変わったのがこの曲「シャングリラ」です。バスドラムのリズムからスタートし、5拍子のダンスビートが炸裂するイントロは、いまだにリズムをとりながら聴いていてもズレることがあります。それは私の音楽センスが無いからで、、ということは置いといて、そのズレさえも心地よさに変わるのです。この3人だから奏でられ、音楽の楽しさが溢れんばかりに伝わってくるこの曲のイントロには、音楽の理想郷に連れて行ってくれるパワーがあるのだと、私は今も信じています。

 

神イントロソング_第3位

 

第3位:「宙船(そらふね)」TOKIO
発売日:2006年8月23日
編曲:船山基紀
イントロ秒数:3秒

3位は、メンバーの長瀬智也が主演を務め、日本テレビ系列で放送されたドラマ『マイ☆ボス マイ☆ヒーロー』の主題歌に起用された「宙船(そらふね)」。
この曲で編曲を担当した、昭和の時代から多くのヒットソングでアレンジを手掛けてきた船山基紀はこの曲に関してこう話しています。「私がアレンジする前に、ボーカルの長瀬智也が、こういうアイデアでこの曲を作っていきたいと、デモテープを私に持ってきた。それがこのまま発表しても何の問題ないくらいの完成度でビックリした。私はそれを派手にする形でこの曲の編曲を完成させました。自分の作品を作っていきたいという思いを強く感じましたね。」メンバーの強いこだわりを尊重し、完成させたイントロ3秒で轟くギターは、アイドルの枠を越え、高いスキルを身に着けたTOKIOという5人組バンドから滲み出る"自信"の現れなのかもしれません。中島みゆきが作詞・作曲を担当したハードロックな歌謡ナンバーの歌い出しで響く言葉は「おまえが消えて喜ぶ者に おまえのオールをまかせるな」必死に何かに打ち込んできたからこそ、たどりついた今がある。たとえそれが、うまくいかなかったとしても、必ずあなたの糧となり、新しいステージへ連れて行ってくれる。挫折や悔しい気持ちを知っているチームが制作したからこそ、この曲は、多くの人に愛されているのです。そしてこれからもずっと、立ち止まってしまった人へ、ゆっくりと、しっかと背中を押す曲として響き続けるのでしょう。信念を貫き、前に進もうとしているすべての人に届いてほしいエモーショナルな神イントロソングをTOP3入りで紹介させていただきます。

 

神イントロソング_第2位

 

第2位:「純恋歌」湘南乃風
発売日:2006年3月8日
編曲:湘南乃風、Soundbreakers
イントロ秒数:21秒

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私は早押し機が常設されている、日本初のクイズ専門店『ソーダライト』で2018年から現在(2023年)まで継続して、毎月イントロクイズの出題者プレゼンターを担当しているのですが、その出題に参加いただいた方から「2000年代中盤は、優しい感じのピアノイントロ曲が多くて、どの曲か判断するのが難しい」という声をいただくことがとても多いです。
2006年は、スマートフォンよりも前世代の端末フィーチャー・フォン、別名"ガラケー"と呼ばれていた携帯電話の普及が拡大し、自分の手元でいつでも好きな曲を楽しむことができる『着うた』や『着うたフル』の利用者が急増しました。ガラケーは、高い音が抜けて聴こえる特徴があり、各レコード会社は、その特徴にあわせた楽曲を制作し『レコチョク』をはじめとする有料音楽配信サイトでそれらの曲がロングヒットするという、新しい音楽の流行を生みだしました。その流行をしっかりと掴み、且つ時代を越えて、今も愛され続けている曲となったのが「純恋歌」です。一時の流行に終わらなかった理由は、リアリティのある歌詞と、過度に装飾せず、心地良いシンプルな音色が耳にスッと入ってくる神イントロのマリアージュ。「着うた」ヒットの代表だけに留まらなかったラブソングは、令和の時代も、私たちのスマホから、愛を届け続けています。

 

神イントロソング_第1位

 

第1位:「抱いてセニョリータ」山下智久
発売日:2006年5月31日
編曲:前嶋康明
イントロ秒数:20秒

2006年の音楽シーンは、CDの売上が前年比で微減、その分を配信の売上が支え、全体では前年比増。音楽フェス『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』に矢沢永吉が出演し、前年のサザンオールスターズの出演に続き、大きな話題となり、神イントロ2位、湘南乃風「純恋歌」の時の紹介した「着うた」でのヒットソングが生まれはじめるなど、新しい音楽ムーブメントとともに認知度が上がっていく楽曲やアーティストが増えた年でした。そんな中で、イントロから日本のヒットソングの王道である歌謡サウンドにロック要素を加えたアレンジを投下し、ドラマ『クロサギ』の主題歌という、90年代から鉄板となっていったTVのタイアップとしっかり連動した形でヒットした「抱いてセニョリータ」に王者の貫禄を感じるのは私だけでは無いでしょう。聴いたことが無いアプローチで展開していくイントロも、もちろん素晴らしいですが、この先、さらに群雄割拠な世界戦が展開していく日本の音楽シーンの最中に、毎日食べるごはんとみそ汁のような、全く飽きることが無い、しっかりとこれまでの日本のポップスの歴史を繋ぐように響くこの神イントロを、2006年の1位として紹介させていただきます。

 

【2006年神イントロランキングの総評】

ダブルミーニングの歌詞、マッシュアップ、5拍子のリズム、ニコニコ動画のブレイク、『着うた』ヒットなど、テクニカルな手法や、新しいムーブメントとともに話題となった曲が多くランクイン。テレビやCDではなく、ケータイやパソコンでこの10曲を聴いていた人の方が多いかもしれませんね。改めてアナログではなく、もうデジタルが当たり前になった時代だったんだなあと感じられる曲が揃ったTOP10でした。

 


 

【2006年イントロベスト25】

ランキングは25位まで決定したので、11位以下も下記に紹介します。
(藤田太郎調べ) 

 

ランキング1-10位ランキング11-20位

ランキング21-25位

 

さらに、YouTubeでイントロクイズとして楽しむことができます。

うたドン!【イントロクイズ】

 

 

【Profile】

藤田太郎

「30,000曲のイントロを0.1秒聴くだけでわかる男」イントロマエストロ。bayfm「9の音粋 」水曜日のラジオDJ、Tokyo FM『ももいろクローバーZのSUZUKI ハッピー・クローバー!』音楽コメンテーターを担当。フジテレビ『99人の壁』に出場し、ジャンル「90年代J-POP」でグランドスラム達成。日本初のクイズ専門店「ソーダライト」で毎月イントロクイズを出題中。

 

 

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