【イントロマエストロ藤田太郎が厳選】神イントロソング 年別TOP10 ~1990年編~


ある編曲家は言いました。「編曲(アレンジ)」は、良いイントロができたらほぼ完成。それが、できるかできないかで大きく違ってくる。
名曲には、すべて良いイントロあり!そんな素敵な「神イントロ」からはじまる曲を、bayfm「9の音枠」水曜DJを担当し、クイズルーム「ソーダライト」のイントロクイズでお馴染みのイントロマエストロ藤田太郎が、経験と知識を駆使し当時の音楽トレンドや背景なども含め、リリースされた年でくくった独自のランキングを決定。そのTOP10を紹介してきます。

第13回目の今回、フォーカスするのは「1990年」

 

世界では東西ドイツが統一され、グローバリズムが拡大し、ペルーでは日系2世のアルベルト・フジモリ氏が大統領に就任。日本では、中年男性がするようなことを好んでやる、たくましい行動力と生活力をもった20代後半の女性を指す言葉「おやじギャル」や、呼べばすぐ来て、車で送り迎えしてくれる男「アッシーくん」が流行語となり、若者に新しいスタイルが根付きはじめ、気象では記録的な猛暑で水不足が深刻な問題となった年でした。
そんな1990年という時代にヒットした音楽はどんな曲だったのか。
厳選した「神イントロ」という切り口で、それまでとは違う楽曲の楽しみ方を見つけてくれたらうれしいです。それでは、カウントダウン!

 

神イントロソング_第10位
 

第10位:「今すぐKiss Me」LINDBERG
発売日:1990年2月7日
編曲:井上龍仁
イントロ秒数:13秒

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10位は、浅野温子、三上博史が出演し、フジテレビ系列で放送された月9ドラマ『世界で一番君が好き!』の主題歌に起用された「今すぐKiss Me」。
ドラマのオープニング映像では、歌詞通りに浅野温子と三上博史のキスシーンが使用されたことも話題となり、平均視聴率22.0%を記録。当時を象徴する”トレンディドラマ”を代表する作品として、今も語られることが多いです。
元アイドルだった渡瀬麻紀(バンドでは渡瀬マキに改名)がボーカルを務め、ギター平川達也の音楽仲間であったベースの川添智久、ドラムの小柳昌法で結成したLINDBERGは、飛行家のチャールズ・リンドバーグがバンド名の由来で、大きな夢に向かって、前向きに進んでいこうとする姿勢をバンドのコンセプトとし、楽曲を制作。イントロから爽快なサウンドを響かせる「今すぐKiss Me」は、まさにバンドスタイルを100%表現したポップロックナンバー!身に着けた変化球を使わずに「WOW WOW」といったストレートでわかりやすい言葉とメロディで綴られるこの曲からTOP10紹介はスタートです!

 

神イントロソング_第9位
 

第9位:「情熱の薔薇」THE BLUE HEARTS
発売日:1990年7月25日
編曲:THE BLUE HEARTS
イントロ秒数:18秒

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9位は、斉藤由貴が主演しTBS系列で放送されたドラマ『はいすくーる落書2』の主題歌に起用された「情熱の薔薇」。
ドラムのハイハットを「シャン・シャン・シャン」と3回叩く音から、シンプルなコード進行と哀しい旋律のメロディがゆっくり響く、感傷的なバンドアンサンブルのイントロだけで涙腺が緩みます。ドラマの内容とリンクさせてこの曲の歌詞を読むと、青春は一瞬で過ぎていくから、大切なその時を熱く生きよう!というメッセージに聴こえるため、この曲が自らを鼓舞させてくれる大切な1曲と捉えている人がとても多いです。そう感じさせてくれる最大の理由は、2分57秒というとても短い時間で終わるこの曲にサビは一回しか登場しないこと。この曲構成こそが、答えはずっと、心の奥の方にあるものだと教えてくれるのです。言葉で語ること自体が野暮かもしれない。イントロからそう思わせてくれるパンクロック!エモい。

 

神イントロソング_第8位
 

第8位:「サイレント・イヴ」辛島美登里
発売日:1990年11月7日
編曲:若草恵
イントロ秒数:15秒

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8位は、仙道敦子、吉田栄作が出演し、TBS系列で放送されたドラマ『クリスマス・イブ』の主題歌に起用された「サイレント・イヴ」。
脚本を内館牧子が手掛けたこのドラマは、初回放送から「イブはどう過ごすの?」というセリフが登場し、12月24日のクリスマス・イブが一年を通して、恋人同士の最大のビッグイベントだったという当時の世相を描いています。1990年当時は、クリスマスのために1年前から高級ホテルを予約するのが当たり前とまで言われていた時期。バブルの象徴といっても過言ではない、クリスマスに好きな人と一緒に過ごしたい!と思う若者の姿を描いたドラマを彩るのは、煌びやかでアッパーなサウンドではなく、少ない音数でサウンドを響かせ、荘厳な雰囲気を感じられる名バラード。当時のカルチャーを上っ面だけ綺麗に魅せるのではなく、好きな人を想う気持ちの強さや変化をイントロから見事に表現しています。シンプルだけど魅せるイントロ。この年を代表する1曲と言って間違いないでしょう。

 

神イントロソング_第7位
 

第7位:「壊れかけのRadio」徳永英明
発売日:1990年7月7日
編曲:瀬尾一三
イントロ秒数:15秒

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7位は、高嶋政伸が主演し、TBS系列で放送されたドラマ『都会の森』の主題歌に起用された「壊れかけのRadio」。
この曲の編曲を担当したのは、瀬尾一三(せお いちぞう)。1988年にリリースした「風のエオリア」から、91年の「Wednesday Moon」まで7枚のシングルでアレンジを手掛けヒット曲を連発し、神秘的なサウンドに伸びやかでハスキーなボーカルが重なるミュージシャン”徳永英明”の色を濃く演出しました。その代表的な1曲と言っても過言ではない「壊れかけのRadio」は、瀬尾一三曰く、はじめからこの曲は、頭の中でショートフィルムのような物語ができていて、イントロのキラキラしたピアノは、光が差し込む屋根裏部屋で、小さなホコリが綿毛のようにフワフワと舞いあがっている感じをサウンドで表現したと、自身の著書で紹介しています。
この年の第32回日本レコード大賞で、編曲賞を受賞した、ため息が出るほど美しいイントロを改めてまた堪能してみてください。

 

神イントロソング_第6位

 

第6位:「サマータイムブルース」渡辺美里
発売日:1990年5月12日
編曲:奈良部匠平
イントロ秒数:22秒

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天気図は曇りのち晴れの予報。吸い込まれそうな青空。砂浜でボール遊び子供達。おろしたてのあの日のスニーカー。Aメロ、Bメロを2回繰り返し、そこで夏のノスタルジーな情景を涙誘うメロディで、これほどまでに力強く、そして優しく描いた歌詞を私は知りません。その情景をよりドラマティックに描いているのが、乾いたギターからはじまるイントロ。
明治生命「スーパーライフ」のCMソングにサビの部分が起用されたことでこの曲の認知度は上がりました。バークリー音楽大学を卒業し、米米CLUBのサポートメンバーとしてキーボードを担当した奈良部匠平がアレンジを担当した、イントロ~Aメロ、Bメロを聴いたことが無い人は、ぜひ聴いていただきたい。ライブで他のオーディエンスとハンドクラップしている姿を想像するだけで、もうそれが「サマータイムブルース」。今年の夏も何十回、いや何百回もリピートしたい、神イントロからはじまるサマーソングです。

 

神イントロソング_第5位

 

第5位:「少年時代」井上陽水
発売日:1990年9月21日
編曲: 井上陽水 平井夏美
イントロ秒数:10秒

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私はイントロを聴くだけでタイムマシーンに乗ったような”ノスタルジー”を感じる曲が大好きです。聴き手は一人一人、全く違う人生を歩んでいるのに、同じ風景が浮かぶ不思議。「少年時代」は、90年代にリリースされた楽曲の中でトップクラスに、共通の”ノスタルジー”を感じさせてくれるイントロ!と断言します。藤子不二雄A原作の漫画と同タイトルの映画主題歌として起用されたこの曲のイントロ10秒は、ピアノとストリングスが重なり合う、優しく深いアレンジ。この10秒だけで、夏を過ぎ、風あざみ、”あの頃”の秋はじめに連れて行ってくれます。と、書きましたが「風あざみ」という言葉は、井上陽水がこの曲のメロディを最適に響かせるために作った造語なのだという衝撃も、この曲の素晴らしさを物語る一つの要素です。想い出にしっかりとした答えなんて、きっと無くていい。年を重ねるごとに美化し続けてもいい。ノスタルジーとはそういうものなのかもしれない。そう思えたことも含め、心の奥が晴れやかになる名イントロここにあり。今日もこの曲を聴いて、私の心は夏模様になるのです。

 

神イントロソング_第4位

 

第4位:「浪漫飛行」米米CLUB
シングル発売日:1990年4月8日
編曲:中崎英也 & 米米CLUB
イントロ秒数:15秒

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4位は、3枚目のオリジナルアルバム『KOMEGUNY』(コメグニ)収録曲を3年の時を経てシングルカットしリリースした「浪漫飛行」。
米米CLUBのボーカリスト、カールスモーキー石井は、著書『米の器』の中で、この曲に関してこう話しています。
「友達で漫画家志望の奴がいて、そいつがくじけそうになっていたから励ますつもりで書いた曲。米米だと、逆にめずらしいといわれてしまう哀しさがある。メロディもおおらかだし、これが「新鮮」といわれる米米CLUBの面白さに気がついてほしいですね。」
唯一無二のエンターテインメントバンドとしてデビューした米米CLUBにとって、異質の存在を放つ曲でしたが、JALの沖縄旅行「JAL STORY 夏離宮キャンペーン」のイメージソングに起用が決まり、シングルとして初のミリオンヒットを記録します。イントロから大空を舞うように響く優雅なベースラインに支えられたサウンドに、雑念のない歌声で、自分探しの旅に出るという表現を綴るこの曲は、時が流れて、誰もが行き過ぎてもずっとそばにいてくれる、特別な1曲と感じている人も多いのではないでしょうか。
今年(2023年)8月に収録すべてが「浪漫飛行」のトリビュート・アルバムがリリースされることも、この曲は、息が長く愛されている証明です。

 

神イントロソング_第3位

 

第3位:「WON'T BE LONG」バブルガム・ブラザーズ
発売日:1990年8月22日
編曲:THE BUBBLE GUM BROTHERS
イントロ秒数:48秒

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お茶の間で歌番組を観ている人が、ついつい踊ってしまう曲を作ることは、とても難しい。既にヒット曲を生み出したミュージシャンだと、前の曲と比べられてしまい、新人だと「誰!?」という音楽ではない部分で判断されてしまうことも少なくないです。何をしたら人は踊ってしまうのか。それは、日本人の根底にある、お祭りで騒ぎたいマインドをくすぐることが一番の近道であり、音楽的に落とし込むと、ついつい心を許してしまいそうな隙のある儚いメロディのループと、強靭なリズム隊のグルーヴでシンプルにわかりやすく表現すること。その全てを兼ね備えているのが「WON'T BE LONG」ではないでしょうか。日本語で「もうすぐだ」という意味のタイトルを裏切るかのように、48秒も長いイントロは、何かがはじまるワクワク感でいっぱい!東京の高円寺阿波おどりをモチーフに、「♪OLY OLY OLY OH! YELY YELY YELY YEAH!!」という小さな子供でも歌えるフレーズを繰り返し、YouTubeのミュージックビデオ再生回数は1300万回越え!2006年にEXILEと倖田來未がカバーしたことで、幅広い世代に認知された日本を代表するダンスミュージックは堂々のTOP3にランクインです!

 

神イントロソング_第2位

 

第2位:「真夏の果実」サザンオールスターズ
発売日:1990年7月25日
編曲:サザンオールスターズ&小林武史
イントロ秒数:18秒

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この曲のイントロを作ったのは、小林武史。この曲以降、90年代中盤に、Mr.Children、MY LITTLE LOVERをプロデュースし、リリースする曲が次々にヒット。ヒットした曲すべてが、イントロから印象的な曲ばかりで、その素晴らしいサウンドメイキングがら “イントロ大王” の異名をとった音楽プロデューサーです。
歌詞に登場する「マイナス100度の太陽」のような、涼やかなる情熱を感じ、曲の世界観に一気に引き込まれるこの曲の神イントロは、平成J-POPを牽引していく小林武史が作ったという事実だけでなく、椎名林檎や平井堅、いきものがかりなど、2000年代以降多くのJ-POPのヒットアーティストの編曲やプロデュースを手掛けていく亀田誠治にも大きな影響を与えています。元々サザンオールスターズのファンだったと公言する亀田は「真夏の果実」を聴いたときのエピソードを、こう語っています。
「真夏の果実」を聴いた時に、もうイントロ2秒で、2小節で号泣してしまったんですね。キンコンカーンというグロッケンの音しかないのに、そのメロディだけで泣けてしまった。「これは今まで僕が聴いてきたサザンと違う!!」と思って、CDシングルを買った。すると、そこで “小林武史” という名前を発見したのです。"Produced by 桑田佳祐、小林武史"。つまりプロデューサーという人が入ることで「こんなに音が変わるのか……」と初めて気が付いたのです。
日本のJ-POPを語る上で欠かすことのできないプロデューサーが音楽の道へ進むきっかけとなったといっても過言ではないこの曲のTOP3入りは当然です。えっ1位じゃないの!?って思ったあなた、、ナンバーワンを発表します!

 

神イントロソング_第1位

 

第1位:「希望の轍」稲村オーケストラ(サザンオールスターズ)
発売日:1990年9月1日
編曲:桑田佳祐・小林武史
イントロ秒数:24秒

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1990年9月、サザンオールスターズのバンドマスター、桑田佳祐が初監督を務めた映画「稲村ジェーン」が公開されます。1965年の鎌倉市稲村ヶ崎で、変わりゆく時代の中を生きる若者たちのひと夏を描いたこの映画は、観客動員数350万人を超える大ヒットを記録。「希望の轍」は映画のサウンドトラックに収録された曲でサウンドトラックの1曲としてのみ収録予定だったため、当初は、サザンオールスターズ名義ではなく桑田佳祐とプロデュースを担当した小林武史が主体となった「稲村オーケストラ」名義で制作された。この曲は、JR茅ケ崎駅の発車メロディにサザンオールスターズの曲を導入しようと実施したアンケート投票で一位。平成最後の放送となった、第69回NHK紅白歌合戦の特別枠でサザンオールスターズが出場した際にも披露するなど、バンドを代表する1曲となっていきます。
2018年にサザンオールスターズが40周年を迎え出演した野外音楽イベント「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」を観に行った際に、大トリで登場するバンドを待ちながら、数えきれないほどの素晴らしい曲の中から今日はどの曲が聴けるんだろう?と、ワクワクしながら始まった1曲目に、この曲のイントロが流れてきた時の感動は今でも忘れません。音楽は理屈じゃないということを改めて教えてくれました。刻み続けた人生を振り返った時、熱い涙がこみあげてくるその気持ちがサウンドに宿っているこの神イントロを、1990年の1位とさせていただきます。

 

【1990年神イントロランキングの総評】

サザンオールスターズのワンツーフィニッシュはすぐに決まりました。
10曲すべてが、飾らないシンプルなメロディのなかに力強さを感じる曲が揃ったのは、1990年代という新しい10年のはじまりを明るく彩っていこうという風潮があったのかもしれません。売上枚数などの記録はもちろん、人々の記憶の奥にずっと残りづづける、野球の打率に例えるとアベレージをしっかり残す3番バッターが揃っているような、人気も実力も兼ね備えた神イントロが多かった年でした。

 


 

【1990年イントロベスト25】

ランキングは25位まで決定したので、11位以下も下記に紹介します。
(藤田太郎調べ) 

 

ランキング1-10位ランキング11-20位

ランキング21-25位

 

さらに、YouTubeでイントロクイズとして楽しむことができます。

うたドン!【イントロクイズ】

 

 

【Profile】

藤田太郎

「30,000曲のイントロを0.1秒聴くだけでわかる男」イントロマエストロ。bayfm「9の音粋 」水曜日のラジオDJ、Tokyo FM『ももいろクローバーZのSUZUKI ハッピー・クローバー!』音楽コメンテーターを担当。フジテレビ『99人の壁』に出場し、ジャンル「90年代J-POP」でグランドスラム達成。日本初のクイズ専門店「ソーダライト」で毎月イントロクイズを出題中。

 

 

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