モデル・菅野結以が贈る、“真夜中の安眠ソングス”。音楽と密接な関係を紐解く

mysoundが注目するさまざまな分野の人物に、テーマに合わせた楽曲をピックアップしてもらい、その曲にまつわるエピソードや思い入れを語っていただくプレイリスト企画。今回はモデルであり、ブランドCrayme,のプロデューサーであり、ラジオDJやイベントMCなどもこなす菅野結以さんが“真夜中の安眠ソングス”というテーマでプレイリストを作成。たった9曲、されど9曲。菅野さんの生活や人生観が垣間見える内容となりました。

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菅野結以 “人生って“どれだけ正気を失っていられるか”だと思ってるんです。”

―初の写真集『Halation』も11月6日に発売されます。タイトルの意味を訊かせてもらえますか?

“Halation”は“眩しくて見えない”っていうような意味なんです。光が回って白くぼやけてるような。

―告知に使われていた写真の光加減も絶妙ですよね。

人生って“どれだけ正気を失っていられるか”だと思ってるんです。まともでいたら悲しくてやりきれないことって、たくさんあるんじゃないですか。でも何かに夢中になってるときとか恋してるときって、ある意味まともじゃなくて、普段ではありえない力が出たり、すごく疲れていても好きな人に会いにいけたり。そういう意味で、自分が辛かったときに、いろんなカルチャーに助けられてきた部分があるので、この本を開いているときだけはハレーションを起こして、嫌なことも全部忘れて美しい世界に連れ出せるようなものにしたくて。

―カルチャーに助けられた。そこには音楽もあるわけですよね?

はい。小学生の頃から、誰が決めたかもわからない謎のルールに従うことに違和感があったし、そのルーティーンに意味が見出せなくって。だからはやく学校を辞めて、毎日違う時間に違う場所で違う人と会う仕事をするって決めました。それを強く後押ししたのは音楽だったんです。

―音楽がどう影響したのでしょう?

みんな疑問を持たずに“前ならえ”するけれど、私は素直にできない。周りに共感をしてくれる人もいなくて。そんなときにMy Bloody Valentineの「Only Shallow」に出会って衝撃を受けて、アルバム『Loveless』を聴いてから、正しいとされていることより美しいと思える物事を選びたいって確信できたんです。きっと正しくないし、歪んでいるけど、とびっきり美しい音楽。それが私にとっての救いでした。

―そういった過去の話~現在のブランドや写真集の話と、今回のプレイリストの世界観とも繋がっていますね。小学生の頃からぶれてない。

もはや性ですね。

―テーマは“真夜中の安眠ソングス”。1曲目がHeliosの「Velius」。こういったエレクトロニカ/アンビエント音楽もまた、菅野さんのイメージや夜にもはまりますね。

アンビエントの魅力にはまった時期があって、レイ・ハラカミさんとかHeliosとか。この曲は最近再発されたデビューアルバムに入ってるんですけど、儚なさとか憂いがあって、そういった要素は私にとっては無になれる普遍的なもの。眠れない夜にはぴったりなんです。

 

Velius
Helios

 

―2曲目はRIDEの「Dreams Burn Down」。シューゲイザーの代表的なアーティスト。アルバムもやはりこの曲が入っている『Nowhere』ですか?

はい、そうです。青春の1枚。アートワークからなにから、青き衝動と美しきロマンがあって、素晴らしい。特にイントロ。天に誘われるようで、永遠にループさせて聴いていたいくらい好きです。

 

Dreams Burn Down
Ride

 

―3曲目はThe Album Leafの「Streamside」。ギターの音色が優しい曲。

メランコリーで曖昧な感覚が音になってるように思うんですけど、それがすごく肌に合うんです。周りの雑音から離れて自分の好きな世界に連れて行ってくれる。

 

Streamside
The Album Leaf​​​​​​​

 

―4曲目はThe Radio Dept.の「Memory Loss」。全体的にそうなんですけど、肌触りが冷たい音楽が多いですね。

昔から好きで、初めて買ったアナログレコードがThe Radio Dept.でした。北欧ならではのひんやりする美しさって、冬の夜に合うんです。

 

Memory Loss
THE RADIO DEPT.​​​​​​​

 

―続いて5曲目は歴史を遡って、ここまで挙げてくださったバンドも影響を受けているであろう、Velvet Undergroundの「Candy Says」。

服や物を作るうえでも多大な影響を受けています。Lou Reedが亡くなった日は、コラボで作る服の最終打ち合わせの日だったんです。もうだいたいのことは決まっていたんですけど、私が今この時代に生きて物を作れているという意味を残したいと思って、急遽デザインの変更を提案して、この曲のもとになった人、Candy Darlingへ向けたメッセージの刺繍を入れました。

 

Candy Says (Album Version)
The Velvet Underground​​​​​​​

 

―6曲目。国内から、Toeの「tremolo+delay」。

日本の好きなアーティスト5本の指に入ります。言葉がないのに言葉より雄弁な音ですよね。ライブでは毎回号泣するくらいのエモさ。でも何も押し付けてこないから、その時々の感情で聴けてはまれる。

 

tremolo+delay
toe​​​​​​​

 

―7曲目はRhyeの「Open」。ソウルフルなナンバーが入ってきました。

今年のフジロックベストアクト。スモークがたかれている森の中のステージからこの曲が流れてきて、子供たちが走り回っていて、まるで桃源郷のようで。その景色が忘れられなくて聴いてます。

 

Open
Rhye​​​​​​​

 

―8曲目はCorneliusのアルバム『Mellow Waves』から「あなたがいるなら」。今年のもっとも大きな衝撃かと。

坂本慎太郎さんが作詞で愛の歌を書いたってことにも感動。そしてCorneliusとの相性の良さ。時代に迎合することなく、好きなことを好きな人と突き詰めて現代に生まれた名曲だと思います。

 

あなたがいるなら
Cornelius​​​​​​​

 

―最後はSigur Rósの「Valtari」。

私が人生で観たベストライブの1位2位はシガーロスが独占です。この間の国際フォーラムのライブでは音楽の極限を観てしまったような、意味もわからず涙が止まらなかったんです。宇宙が爆発してなくなっては再生する、生命のサイクルを見ているような感覚。

 

Valtari
Sigur Ros​​​​​​​

 

―見えるはずもないものが見えたり精神世界に影響を及ぼしたり、全体を通して、セレクトの理由がとても興味深いです。

わたしは好きなものが少ない方だと思うんです。the pillowsの「ストレンジ カメレオン」にある“君といるのが好きであとはほとんど嫌いで”って歌詞、あれはもう私の曲だと思ってるくらい(笑)。だから好きなものが本当に特別なんです。純粋な美しさが見えて、くだらないことで悩むことを止められる。もっと美しいものを見て生きていこうって。

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ORIGINAL PLAYLIST

真夜中の安眠ソングス

Velius
Helios​​​​​​​

Dreams Burn Down
Ride​​​​​​​​​​​​​​

Streamside
The Album Leaf​​​​​​​

Memory Loss
THE RADIO DEPT.​​​​​​​​​​​​​​

Candy Says (Album Version)
The Velvet Underground​​​​​​​

tremolo+delay
toe​​​​​​​

Open
Rhye​​​​​​​

あなたがいるなら
Cornelius​​​​​​​

Valtari
Sigur Ros​​​​​​​

 

PROFILE

ファッション誌「LARME」を中心に他雑誌にも多数出演中。その傍ら、自身のアパレルブランド「Crayme,」のディレクション/プロデュースも手掛ける。ラジオで音楽番組のMCを務めるなど多才な活躍を見せる。初の写真集「Halation」がワニブックスより絶賛発売中!

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Interview&Text:岩見泰志
Photo:山口真由子

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