【後編】この夏はどこに行く? ABSとSTUTSが選ぶ“旅で聴きたい”10曲

 

天才MPCプレイヤーにして、国内外から高い評価を受ける屈指のビートメーカー、STUTS。そして類まれなるソングライターとしての才能、ラテン、ソウル、ファンク、フォーク、ロックなどを独自にブレンドした折衷主義的でユニークな音楽性で注目を集めるシンガーソングライター、Alfred Beach Sandal。共作やライブでの共演を重ね、プライベートでも親交のあるふたりが完成させたABS+STUTS名義でのミニ・アルバム『ABS+STUTS』のリリースを記念して、2回にわたってお届けするAlfred Beach Sandal×STUTSのクロストーク。

2人の出会いや新作『ABS+STUTS』の制作エピソードについての興味深い話、またSTUTSさんのプレイリストを公開した前編に続き、今回はAlfred Beach Sandalのプレイリストを公開!LAビート・ミュージックの総本山<LOW END THEORY>に出演するなど、非常に濃厚な旅となったLA旅行の話、また7月16日に<Wall & Wall>で開催されるワンマン・ライブ<"ABS+STUTS" Release One Man Show>に向けての意気込みなど、後半も見逃せない内容です!

Alfred Beach Sandal“人と関わっている時間が旅でいちばん楽しい瞬間”

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L→R:STUTS、Alfred Beach Sandal

 

—今回のプレイリストは「旅で聴きたい曲」がテーマになっています。ちなみにおふたりにとって、最高の旅ってどこに行った時ですか?

STUTS:実は先週までAlfred Beach Sandal(以降、ビーサン)さんと一緒にLAに行ったんです。一週間滞在して、今までにない体験をいっぱいしたので、非常に楽しい旅でした。

—なぜLAに?

STUTS:<LOW END THEORY>というイベントに呼んでもらって、ビーサンさんと一緒にライブをやったり、ラジオに出演させてもらったり、あと「Horizon」という曲のミュージック・ビデオの撮影もしてきました。

—濃厚な旅ですね。<LOW END THEORY>でのライブはどうでしたか?

STUTS:楽しかったです。本当に音楽が好きなお客さんが集まっているという感じで。必要以上にインスタを撮ったりしないというか。

Alfred Beach Sandal:いい雰囲気だったよね。

—Alfred Beach Sandalさんにとっての最高の旅は?

Alfred Beach Sandal:この前のアメリカも楽しかったですけど、知らないところに行くのはわりといつも楽しいですね。ライブをやりにいった場所でいうと、沖縄は好きです。本島の中でも北と南の雰囲気の違いも面白いですし、あとは人ですね。沖縄の人の感じが好きです。でもそれは沖縄に限ったことではなくて、どこに行っても人と関わっている時間が旅でいちばん楽しい瞬間かもしれないです。

—ちなみにおふたりはプレイリストって普段から作ったりしますか?

STUTS:どこかにドライブに行ったりとか、何かきっかけがあれば、そのために作ることはあります。ずっと同じものを聴くということはなくて、その時の気分で編集して、次の時はまたその時の気分で作る感じです。

Alfred Beach Sandal:僕は全然作ったことないです。アルバム単位で聴くので。だからどこかに行くときにも、CDごとポータブルのCDプレーヤーと一緒に持っていきます。

—では、プレイリストの紹介にいきましょう。後編はAlfred Beach Sandalさんのリストです。1曲目はBeckの『Mutations』(1998年)に収録の「O Maria」ですね。

Alfred Beach Sandal:自分が旅している時に聴きたい曲って、アッパーな曲よりも、淡々として、質感も乾いていて、どこかもの寂しさがあるくらいのほうがいいなって思うんです。Beckのこの曲もそうだし、次のMilton Nascimentの「Tudo o Que Voce Podia Ser」も、そういう感じで選びました。

—Beckの『Mutations』は表題がブラジルのサイケデリック・ロック・バンド、Os Mutantes(ムタンチス)に由来していたり、「Tropicalia」なんて曲もあったり、ブラジル音楽から影響を受けつつ、フォークやブルースを融合させたアルバムで、乾いた土地をフラフラと彷徨うような独特の旅情がありますね。

Alfred Beach Sandal:はい。旅でブチ上がりたくないので、このくらいの感じが自分には合っている。『Mutations』は大好きなアルバムでよく聴きますね。いい感じの地味さが気に入っています。

 

O Maria
Beck

 

—そしてMilton Nascimentの「Tudo o Que Voce Podia Ser」。文句なしにかっこいい曲ですね。

Alfred Beach Sandal:この曲も大好きだし、この曲が収録されているアルバム『Clube Da Esquina(街角クラブ)』(1972年)も大好きです。儚さや哀愁があるけれど、ベタっとしていないというか、その絶妙な質感や温度感のようなものが心地いいし、日本で暮らす自分にとっては、何か旅情めいたものも感じます。

—この時代のブラジル音楽には好きなものがたくさんあるんじゃないかと思いますが、今回この曲を選んだ理由は?

Alfred Beach Sandal:アルバムにはもっと淡々とした曲もあるんですけど、この曲には、ちょっとしたノリのいい感じというか、疾走感のようなものがあって、その絶妙なバランスですかね。

 

Tudo o Que Voce Podia Ser
Milton Nascimento

 

—次はジャズですね。Roland Kirkの「Fly By Night」。盲目でありながらサクソフォン、フルート、トランペット、オーボエなど、多種多様な管楽器を演奏した天才ジャズ奏者。これはどういう理由で?

Alfred Beach Sandal:Roland Kirkが好きなのと、自分の中でこの曲は、飛行機が離陸する前のソワソワしている感じに通じるものがあって。実際のこの曲は、Roland Kirkが飛行機の中で旅をイメージして作曲したという話を聞いたことがあって。聞いた話なんで、ガセかもしれないですけど(笑)。でもそんな感じがします。

 

Fly By Night
Rahsaan Roland Kirk

 

Alfred Beach Sandal“ものすごくディープな感情も、音楽を通すことで、別の次元に転換されている”

 

—次はダブの神様、Lee Perryの『Revolution Dub』(1975年)に収録の「Dreadlock Talking」です。急にユルくなりましたね(笑)。

Alfred Beach Sandal:これはもう曲のムードのままで、旅先のビーチでダラッとしながら聴きたい曲です。天気も良くて、なにも考えたくないときに。それだけですね。旅にはそういう時もあっていいなって(笑)。

 

Dreadlock Talking
Lee ”Scratch” Perry & The Upsetters

 

—最後は2枚の素晴らしいアルバムを残し、35歳の若さで他界した伝説的女性シンガー・ソングライター、Judee Sillの「THE LAMB RAN AWAY WITH THE CROWN」、1971年の曲ですね。

Alfred Beach Sandal:これはどこかもの悲しくて、旅の終わりのイメージですね。「ああ、もう家に帰らないといけないのか」って気分の時の曲。

—名残惜しい気分ですね(笑)。Alfred Beach Sandalさんにとって、Judee Sillというシンガーの魅力ってどういうところですか?

Alfred Beach Sandal:歌の内容とかものすごく内省的なものが多いと思うんですけれど、でも彼女の場合、それが閉じているように聴こえないというか。すごい美しい曲ばかりだし。内省的でものすごくディープな感情も、音楽を通すことで、別の次元に転換されているんですよね。そこに何かマジックというか、表現の面白さがあるような気がして。

 

The Lamb Ran Away With The Crown (Remastered Version)
Judee Sill

 

—それぞれ選んだ曲を見せていただくと、お互いのカラーがよく出ているような気がしますが、Alfred Beach Sandalさんのプレイリストをご覧になっての感想はどうでしょうか?

STUTS:らしいですね(笑)。

—新作『ABS+STUTS』のリリースを受けて、7月16日には表参道の<Wall & Wall>にて、ワンマン・ライブ<"ABS+STUTS" Release One Man Show>が開催されます。どんなライブになりそうでしょうか?

STUTS:内容については、まだ考えはじめたばかりなんですけれど、いろいろ楽しんでもらえるセットを用意したいと思っています。お互いひとりではできないことを見せられたらって思いますので、ぜひ楽しみにしていてください。

Alfred Beach Sandal:お、いいこと言ってくれた。たっぷり楽しんでもらえると思います。

—楽しみにしています!今回は本当にありがとうございました。

Alfred Beach Sandal/STUTS:ありがとうございました。

 

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【前編】この夏はどこに行く?ABSとSTUTS選ぶ“旅で聴きたい”10曲

 

 

ORIGINAL PLAYLIST

旅で聴きたい楽曲プレイリスト

Alfred Beach Sandal

 

O Maria
Beck
Tudo o Que Voce Podia Ser
Milton Nascimento
Fly By Night
Rahsaan Roland Kirk
Dreadlock Talking
Lee ”Scratch” Perry & The Upsetters
The Lamb Ran Away With The Crown (Remastered Version)
Judee Sill

 

NEW RELEASE

Alfred Beach Sandal + STUTS『ABS+STUTS』
2017.06.21(水)Release

 

ABS+STUTS
Alfred Beach Sandal + STUTS

 

DISCOGRAPHY

Pushin'
STUTS
Unknown Moments
Alfred Beach Sandal

 

PROFILE

STUTS
1989年生まれのトラックメーカー/MPC Player。2013年2月、ニューヨーク・ハーレム地区の路上でMPCライブを敢行。オーディエンスが踊り出す動画をYouTubeで公開して話題になる。MPC Playerとして都内を中心にライブ活動を行う傍ら、ジャンルを問わず様々なアーティストよりトラック制作、リミックスの依頼を受けるようになる。2016年4月、縁のあるアーティストをゲストに迎えて制作した1stアルバム『Pushin’』を発表し、大きな反響を呼んだ。 現在、国内外でのライブ活動を中心に、楽曲プロデュース、CM音楽制作を行いながら、新しい作品制作に没頭している。
STUTS アーティストページ

Alfred Beach Sandal
2009年に北里彰久(Vo, Gt)のフリーフォームなソロユニットとして活動開始。ロックやラテン、ブラックミュージックなど、雑多なジャンルをデタラメにコラージュした上に無理矢理ABS印のシールを貼りつけたような唯一無二の音楽性で、真面目に暮らしている。
Alfred Beach Sandal アーティストページ

 

LIVE

■“ABS+STUTS” Release One Man Show
日程:2017年07月16日(日)
会場:Wall & Wall
時間:OPEN 18:30/START 19:30
料金:ADV ¥3,000/DOOR ¥4,000

日程:2017年08月05日(土)
会場:新栄Live & Lounge Vio
時間:OPEN 19:00/START 19:00
料金:ADV ¥3,000/DOOR ¥3,500

日程:2017年09月01日(金)
会場:福岡KIETH FLACK
時間:OPEN 19:00/CLOSE 3:00
料金:ADV ¥2,500(150枚限定)/DOOR ¥3,000

日程:2017年09月03日(日)
会場:熊本bar Abyss
時間:OPEN 19:00/CLOSE 24:00
料金:ADV ¥2,500(150枚限定)/DOOR ¥3,000

詳細はオフィシャルサイトで


Interview&Text:加藤 直宏
Photo:山口 真由子

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