【イントロマエストロ藤田太郎が厳選】神イントロソング 年別TOP10 ~2013年編~


ある編曲家は言いました。「編曲(アレンジ)」は、良いイントロができたらほぼ完成。それが、できるかできないかで大きく違ってくる。
名曲には、すべて良いイントロあり!そんな素敵な「神イントロ」からはじまる曲を、bayfm「9の音枠」水曜DJを担当し、クイズルーム「ソーダライト」のイントロクイズでお馴染みのイントロマエストロ藤田太郎が、経験と知識を駆使し当時の音楽トレンドや背景なども含め、リリースされた年でくくった独自のランキングを決定。そのTOP10を紹介していきます。

第24回目の今回、フォーカスするのは「2013年」

 

内閣総理大臣の安倍晋三が「デフレからの脱却」と「富の拡大」を目指す経済政策『アベノミクス』を掲げるなか、プロ野球では、東北楽天ゴールデンイーグルスの田中将大投手がシーズン負けなしの24連勝を記録し、長嶋茂雄と松井秀喜が国民栄誉賞を受賞。東京五輪を招致するプレゼンテーションの場で滝川クリステルさんが口にした「お・も・て・な・し」のほか「今でしょ!」、「じぇじぇじぇ」、「倍返し」の4つがユーキャン新語・流行語大賞の年間大賞に選出される豊作の特例年でした。
そんな2013年という時代にヒットした音楽はどんな曲だったのか。厳選した「神イントロ」という切り口で、それまでとは違う楽曲の楽しみ方を見つけてくれたらうれしいです。それでは、カウントダウン!

 

神イントロソング_第10位
 

第10位:「潮騒のメモリー」天野春子(小泉今日子)
発売日:2013年7月31日
編曲:大友良英
イントロ秒数:7秒

https://mysound.jp/song/1632267/


10位は、NHK連続テレビ小説『あまちゃん』の挿入歌として、能年玲奈演じる主人公・天野アキの母親役、天野春子名義で小泉今日子が歌った「潮騒のメモリー」。
ユーキャン新語・流行語大賞の年間大賞に、能年玲奈演じる主人公・天野アキの口癖「じぇじぇじぇ」が選出されるほど、この年大きな話題となった『あまちゃん』。ストーリーに笑いの要素を加えて凝縮したこの曲の作詞を手掛けたのは、ドラマの脚本も担当した宮藤官九郎、そして作曲・編曲・プロデュースは、ドラマの音楽制作も手掛けた大友良英が担当したこの曲のイントロは、松田聖子の「瞳はダイアモンド」と「天使のウィンク」をミックスしたような、80年代アイドルポップスをオマージュした儚くキラキラした7秒。『あまちゃん』の劇中で使用された昭和リリースのポップスをまとめたコンピレーションCDもリリースされ、昭和に再び注目が集まるきっかけとなったことも含め、ランクイン必須のこの曲から2013年神イントロソング紹介、スタートです!

 

神イントロソング_第9位
 

第9位:「地獄でなぜ悪い」星野源
発売日:2013年10月2日
編曲:星野源
イントロ秒数:11秒

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9位は、同名映画の主題歌として書き下ろした「地獄でなぜ悪い」。
この曲の歌詞は、くも膜下出血による定期検査入院中の、夜中の病室に完成。退院し、レコーディングを終えたときに、入院中の手術した箇所が万全でないことがわかり、星野源はすべての活動を休止します。そんな状況を、この曲の歌詞はこう歌います。
「ただ地獄を進む者が 悲しい記憶に勝つ」
「動けない場所からいつか 明日を掴んで立つ」
映画の世界観を組み込みつつ、自身の心境を綴ったとも捉えることができるフレーズを、クレイジーキャッツへのリスペクトを感じる、すべての楽器の音が楽しく響く、何が起こるかわからない昂揚感で彩ったイントロを聴くだけでグッときます。映画『地獄でなぜ悪い』に登場する長谷川博己の、狂気の演技とともに楽しんでもらいたい一曲です。

 

神イントロソング_第8位
 

第8位:「Mistake!」SMAP
発売日:2013年2月27日
編曲:CMJK
イントロ秒数:27秒

2013年にSMAPがリリースしたシングルは全曲、神イントロです。メンバーの草彅剛が主演を務めたフジテレビ系ドラマ『独身貴族』の主題歌に起用された「シャレオツ」は、ゴージャスな雰囲気を、全然問題ない塩梅で優雅なバンドサウンドで響かせるイントロで大人の余裕を魅せてくれましたが「Mistake!」は、恋愛の駆け引きを際どくも艶やかに描く歌詞を、クライマックスでどんでん返しを畳掛けていく映画のように、スピード感と緊張感が心地良いデジタルロックサウンドで駆け抜けていくイントロ。電気グルーヴのメンバーとして活動し、脱退後の活動で、日本のクラブ・テクノ・シーンにて黎明期の礎を築いたCMJKが手掛けたアレンジが、身震いするほど轟きます。これからも新たなリスナーを巻き込み広がっていく神イントロは「Mistake!」で間違いない! 文句なしのTOP10入りです。

 

神イントロソング_第7位
 

第7位:「GOUNN」ももいろクローバーZ
発売日:2013年11月6日
編曲:木村篤史
イントロ秒数:25秒

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7位は、ももいろクローバーZ、10枚目のシングル「GOUNN(ゴウン)」。
人間の肉体と精神を構成する五つの要素である五蘊(ごうん)をタイトルとしたこの曲は、仏教の世界観を取り入れ、輪廻転生で、ももクロがまったく新しい旅をスタートさせるという解釈の凛とした歌詞に、インドの弦楽器・シタールや、同じくインドの太鼓・タブラといった神秘的なサウンドを奏でる楽器を使用し、そこに、ピエール中野の激しいドラムとOKAMOTO'Sのハマ・オカモトのチョッパーベースというリズム隊が轟く、エモーショルな神イントロ。第一線で活動するロックバンドが、このサウンド展開の曲をリリースすると“意欲作”と言われてしまうかもしれない、かなり攻めたアレンジも、ももクロメンバーの声が重なりあうユニゾンの響きが、魔法をかけたかのように唯一無二のポップスタイルを生み出し、マニアックにならないこの感じ、病みつきになること間違いなしです。

 

神イントロソング_第6位

 

第6位:「ナノ・セカンド」UVERworld
発売日:2013年12月18日
編曲:UVERworld&平出悟
イントロ秒数:25秒

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6位は、6人組ロックバンドUVERworldの、25枚目シングル「ナノ・セカンド」。
直訳すると「10億分の1秒」という意味がタイトルのこの曲は、ボーカルのTAKUYA∞が、親しい友人のプロボクサーの試合映像を観て感化され、10億分の1秒の努力を積み重ねて今がある、夢や希望をそのままで終わらせるな、努力すれば夢は叶う。という力強いメッセージを込めた歌詞を、ダンサンブルで強靭なロックアレンジで創り上げたナンバー。イントロで轟くサックスと重低音のハーモニーを体感すると、この曲に嘘、偽りがないことに気づくのではないでしょうか。6人が奏でる音すべてが、マボロシのままで終わっていいわけない、本気は痛みを厭わないと思っているからこそ、パワフルでメロウな曲が完成したのです。凝り固まった想像を木っ端微塵に壊す、エモーショナルな神イントロ、ここにあり!

 

神イントロソング_第5位

 

第5位:「にんじゃりばんばん」きゃりーぱみゅぱみゅ
発売日:2013年3月20日
編曲:中田ヤスタカ
イントロ秒数:14秒
 

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5位は『au 驚きを、常識に。「FULL CONTROL/REAL」編』のCMソングに起用された「にんじゃりばんばん」。
増上寺でCM撮影することが決定していたことから、編曲とプロデュースを手掛けた中田ヤスタカが、和を感じさせるオリエンタル・エレクトロ・ポップスサウンドを作り上げたこの曲のイントロは、家庭用ゲーム機『ファミリーコンピュータ』のアクションゲーム『忍者じゃじゃ丸くん』のオープニングBGMを彷彿とさせるレトロな仕上がり。古の雰囲気をしっかりと残しつつ「シャキン!」という刀の斬るBGMや、手裏剣をなげるポーズが振付に登場するなどコミカルな演出も入り、キュートでドリーミーなポップ感を強烈に印象付けます。
きゃりーぱみゅぱみゅは、2012年の神イントロで8位の「CANDY CANDY」に続き2年連続ランクイン! 世界に通用するJ-POPを発明したサウンドのランクインは当然の結果です!

 

神イントロソング_第4位

 

第4位:「リリック」TOKIO
発売日:2013年2月20日
編曲:長瀬智也
イントロ秒数:2秒

4位は、メンバーの長瀬智也が主演を務め、日本テレビ系列で放送されたドラマ『泣くな、はらちゃん』の主題歌として書き下ろした「リリック」。
5人組バンドTOKIOは、この時期からメンバーのみで楽曲制作を手掛ける曲が増えていきましたが、この曲は作詞、作曲、そして編曲も長瀬智也が担当。バンドのリーダー城島茂が弾く2秒のギターソロが響く、短いシンプルなイントロですが、このギターが、ボーカルと掛け合うように曲の終わりまでずっと響き続けます。それはまるで、この曲のサビアタマの歌詞
「何気ない言葉が胸の中に溶けて行く それが涙となり溢れるよ」
を表現するように。TOKIOがデビュー20周年を記念しファン投票によって選出された楽曲を収録したオールタイム・コンピレーションアルバム『HEART』では、ファン投票シングル部門で1位を獲得した、2秒の神イントロからリスナーを壮大なサウンドアレンジの世界へと包み込むエモーショナルな一曲です。

 

神イントロソング_第3位

 

第3位:「Joy!!」SMAP
発売日:2013年6月5日
編曲:菅野よう子
イントロ秒数:26秒

TOP10にSMAPがもう一曲ランクイン! 3位は、メンバーの香取慎吾が主演を務め、フジテレビ系列で放送されたドラマ『幽かな彼女』の主題歌に起用された「Joy!!」。
1991年にデビューしたSMAPは、すぐにスターの階段を駆け上がっていったグループではありませんでした。一歩一歩着実に結果を残し、たどり着いたこの曲で歌うフレーズは
「無駄なことを 一緒にしようよ」
「どうにかなるさ」
メンバー最年長の中居正広と木村拓哉が40歳を越えるタイミングで発売され、余裕を感じられる年齢になったメンバーが歌うこのフレーズに、元気をもらった方も多いのではないでしょうか。クールなサンバ調サウンドが軽快なリズムで響くイントロから、楽しい雰囲気にしてくれるこの曲がTOP3入り。淋しくなったら、この曲で盛り上がりましょう。

 

神イントロソング_第2位

 

第2位:「高嶺の花子さん」back number
発売日:2013年6月26日
編曲:back number&蔦谷好位置/ストリングスアレンジ:蔦谷好位置
イントロ秒数:39秒
 

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2位は、2023年にストリーミング累計再生回数が3億回を突破した「高嶺の花子さん」。
リリースから10年経ってもカラオケでの人気が衰え知らずのこの曲のイントロは、ゆったりとした弦楽器から、エレキギター、そしてバンドサウンドへ流れていく構成。この構成は、B'zが1993年にリリースした「愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない」と雰囲気が似ている曲として、たびたびSNS等で話題になります。私は、日本初のクイズ専門店「ソーダライト」で7年以上継続して毎月イントロクイズを出題しているのですが、この2曲を間違えて解答した方を、何人観てきたかわかりません。
ストリングスアレンジを担当した蔦谷好位置は、オマージュを公言していないのですが、イントロ秒数は両曲とも39秒。これが偶然だったとしても、リスペクトを感じるアレンジに心が躍ります。恋に消極的な人の心情を優麗に彩る歌詞を、ノスタルジーと清涼感がミックスされたサウンドアレンジで演出したこの曲は「僕のものに なるわけないか」と思う気持ちを、これからもずっと輝かせ続けていくことでしょう。

 

神イントロソング_第1位

 

第1位:「恋するフォーチュンクッキー」AKB48
発売日:2013年8月21日
編曲:武藤星児
イントロ秒数:23秒

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1位は、AKB48、32枚目のシングル「恋するフォーチュンクッキー」。
リリース後、かなり早い時期から耳の肥えた音楽ファンが、イントロから華やかなストリングスやホーンを生かした70年代ニューソウル調サウンドがめっちゃ良い感じと、話題にしていたことを覚えている人は多いのではないでしょうか。当時、私が印象に残っているのは、車を運転しているときにこの曲がラジオから流れ、一緒に乗っていた60代の母親が、平山三紀の「真夏の出来事」みたいな素敵な曲がかかってるね。とつぶやいたことです。この曲はとてつもない大衆性をもってることを確信した瞬間でした。アレンジを手掛けた武藤星児は、南野陽子の「はいからさんが通る」や「吐息でネット」、木村カエラの「Level42」、「happiness!!!」、そして松浦亜弥の「チョコレート魂」の編曲を担当し、玄人好みの晴れやかなポップスの編曲に定評があるアレンジャーでしたが、そのセンスが、この曲にすべて凝縮されたといっても過言ではないでしょう。2010年代の10年間でのベスト神イントロ選曲でも、私はこの曲をセレクトします。まさにベストなこの曲を、2013年の1位とさせていただきます!

 

【2013年神イントロランキングの総評】

1位の「恋するフォーチュンクッキー」と、2位の「高嶺の花子さん」は、2010年代を代表する曲として2024年現在も、そしてこれからも語り継がれていくでしょう。2曲ともソウルフルで、エモーショナルな神イントロ。ポピュラーミュージックの力が、世の中を変えてくれるかもしれないと感じさせてくれる曲が揃ったTOP10だったのではないでしょうか。

 


 

【2013年イントロベスト25】

ランキングは25位まで決定したので、11位以下も下記に紹介します。
(藤田太郎調べ) 

 

ランキング1-10位ランキング11-20位

ランキング21-25位

 

さらに、YouTubeでイントロクイズとして楽しむことができます。

うたドン!【イントロクイズ】

 

 

【Profile】

藤田太郎

「30,000曲のイントロを0.1秒聴くだけでわかる男」イントロマエストロ。bayfm「9の音粋 」水曜日のラジオDJ、Tokyo FM『ももいろクローバーZのSUZUKI ハッピー・クローバー!』音楽コメンテーターを担当。フジテレビ『99人の壁』に出場し、ジャンル「90年代J-POP」でグランドスラム達成。日本初のクイズ専門店「ソーダライト」で毎月イントロクイズを出題中。

 

 

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Text&ランキング:藤田太郎

 

参考文献

・星野源6thシングル「地獄でなぜ悪い」特設サイト
https://www.hoshinogen.com/special/jigoku/

・音楽業界総合情報サイト『Musicman-NET』(現Musicman)より
UVERworld、友人プロボクサーに感化されて書いたシングル「ナノ・セカンド」発売
(2013年12月18日)
https://web.archive.org/web/20131219050827/http://www.musicman-net.com/artist/31798.html