【イントロマエストロ藤田太郎が厳選】神イントロソング 年別TOP10 ~2000年編~


ある編曲家は言いました。「編曲(アレンジ)」は、良いイントロができたらほぼ完成。それが、できるかできないかで大きく違ってくる。
名曲には、すべて良いイントロあり!そんな素敵な「神イントロ」からはじまる曲を、bayfm「9の音枠」水曜DJを担当し、クイズルーム「ソーダライト」のイントロクイズでお馴染みのイントロマエストロ藤田太郎が、経験と知識を駆使し当時の音楽トレンドや背景なども含め、リリースされた年でくくった独自のランキングを決定。そのTOP10を紹介してきます。

第1回目の今回、フォーカスするのは「2000年」

 

2000年は、シドニーオリンピック開催。女子マラソンで高橋尚子が金メダルを獲得し、国民栄誉賞を受賞。イチローが野手として日本人初のメジャーリーガーになるなど、日本に留まらないアスリートの躍進が目立つ中、NTTドコモが1999年にスタートした世界初の携帯電話IP接続サービス「iモード」の契約者数が1000万人を突破。後にシリーズ化し映画も大ヒットを記録する、J・K・ローリングの『ハリー・ポッターと秘密の部屋』が発売されるなど、のちにスタンダードとなっていく「モノ」や「コト」の動きが目立った20世紀の最後の年でした。

そんな2000年という時代にヒットした音楽を「神イントロ」という切り口で、それまでとは違う楽曲の楽しみ方を見つけてください。それでは、カウントダウン!

神イントロソング_第10位
 

第10位:「今夜月の見える丘に」B'z
発売日:2000年2月9日
編曲:稲葉浩志・松本孝弘
イントロ秒数:12秒

まず紹介するのは、木村拓哉と常盤貴子が主演したドラマ『Beautiful Life ~ふたりでいた日々~』の主題歌に起用された「今夜月の見える丘に」。
イントロはボーカル稲葉浩志が持っていたマンドリンを松本孝弘が演奏し、エレキギターの音とミックスした、12秒の幻想的で且つ情熱的な音色からスタートするミディアムロックバラード。
カリスマ美容師がブームだった時期に、主役を演じた木村拓哉自身が、脚本を担当した北川悦吏子に「美容師役はどうですか?」と進言したという。世間の流れをしっかりとキャッチしたこのドラマは、最高視聴率41.3%を記録。記録にも記憶にも残る2000年を代表する名作ドラマを彩ったのは、B'zサウンドの真骨頂であるギターロックサウンドが、まさに「ビューティフル」に轟く楽曲でした。

 

神イントロソング_第9位

 

第9位:「月光」鬼束ちひろ
発売日:2000年8月9日
編曲:羽毛田丈史
イントロ秒数:13秒

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9位は、仲間由紀恵演じる自称天才マジシャンの山田奈緒子と、阿部寛演じる日本科技大学の教授上田次郎のコンビが、超常現象や奇怪な事件に隠されたトリックを解決していくミステリードラマ『トリック』の主題歌に起用された「月光」。
イントロは、絶望のどん底から見える一筋の明かりを表現するように響くピアノの音色が美しい13秒。ミステリアスなストーリーにエキセントリックな笑いがミックスされたドラマの展開に、奥行きを加えさらに立体的なものとして魅せてくれる主題歌となっていると思います。
ピアノの演奏を担当してるのは、編曲も手掛けた羽毛田丈史(はけた たけふみ)。
アコースティックギターデュオゴンチチのレコーディングにも参加し、映画やテレビドラマの劇中で流れる劇伴(げきばん)も多く担当している羽毛田丈史は、いわゆる「歌モノ」ではない音楽で、リスナーを引き付けるメロディを書くことができる素晴らしいピアニスト。低音域が伸びやかに響く鬼束ちひろの歌声との相性も抜群。J-POPの神秘が宿る1曲です。

 

神イントロソング_第8位

 

第8位:「Last Smile」LOVE PSYCHEDELICO
発売日:2000年11月1日
編曲:LOVE PSYCHEDELICO
イントロ秒数:21秒

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8位は、ボーカルKUMIとギターNAOKIのロックデュオLOVE PSYCHEDELICOのサードシングル「Last Smile」。
6,70年代のロックをルーツに、同じフレーズを繰り返すギターリフにPOP性を持たせてサウンドを作っていく洋楽的なアプローチの楽曲構成と、日本語と英語を混在させた歌詞と歌唱スタイルで表現したスタイルは、デビューシングル「LADY MADONNA ~憂鬱なるスパイダー~」から音楽ファンにいち早く注目され、イントロから気だるさと切なさが合わさり、淡々としたリズムで独特なグルーヴのリフが鳴り響く「Last Smile」で知名度が急上昇。
翌年の1月にリリースしたアルバム『THE GREATEST HITS』が、ファーストアルバムにもかからわず166万枚のミリオンヒットを記録。オールドスタイルのロックに2000年のトレンドセンスをしっかりと加えたアプローチで、J-POPというジャンルの幅を広げることに大成功した稀有なバンドを代表する1曲です。

 

神イントロソング_第7位

 

第7位:「HOTEL PACIFIC」サザンオールスターズ
発売日:2000年7月19日
編曲:サザンオールスターズ
イントロ秒数:25秒

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2000年の年間シングルチャートTOPは「TSUNAMI」でしたが、「TSUNAMI」はイントロが無く歌い出しから始まるので今回のランキングでは圏外。
「TSUNAMI」の次にリリースされたシングルがこの曲「HOTEL PACIFIC」。イントロからラテン歌謡ロック炸裂のこの曲は「♪ギラギラ輝く太陽が~」は安西マリアの「涙の太陽」、「♪八月の濡れた誘惑が」は石川セリの「八月の濡れた砂」など、歌謡曲からのオマージュが歌詞にたくさん散りばめられていて、それらの楽曲はすべて熱い夏の海をイメージする曲ばかり。
ライブでは、小川ローザが出演し「オー、モーレツ!」のフレーズで話題となった丸善石油のCMコスチューム姿のダンサーが多く登場して盛り上げる、昭和の爛々とした雰囲気を思い出させてくれる曲です。

 

神イントロソング_第6位

 

第6位:「らいおんハート」SMAP
発売日:2000年8月30日
編曲:コモリタミノル
イントロ秒数:29秒

草彅剛主演のドラマ『フードファイト』の主題歌に起用された、SMAPのバラードが6位。
作詞を手掛けたのは『フードファイト』の脚本を担当した野島伸司。「百獣の王」と言われるライオンを、擬人法を使い勇敢さと優しさをリアリティのある表現で描いた歌詞を、イントロからまろやかで柔らかいギターの音色が奏でられ、温もりのあるサウンドとして響かせるこの曲は156万枚のミリオンヒットを記録。
90年代に「SHAKE」や「ダイナマイト」など、アッパーでダンサブルな楽曲をSMAPに提供してきたコモリタミノルが、2000年にメロウなサウンドを提供した背景には、宇多田ヒカルやMISIAといったR&B系シンガーの台頭が挙げられると思います。
翌年に「PIECES OF A DREAM」で華々しくデビューを飾るCHEMISTRYの最終オーディションで、その後CHEMISTRYのメンバーとなる川畑要と、後にEXILEとしてデビューするATSUSHIこと佐藤篤志の2人がこの曲を披露。「らいおんハート」は女性R&B系シンガーの活躍を追うようにブームとなる、男性R&B系シンガーのブレイクを予兆していた1曲だったのかもしれません。

 

神イントロソング_第5位

 

第5位:「if...」DA PUMP
発売日:2000年9月27日
編曲:富樫明生
イントロ秒数:23秒

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「if...」のアレンジを手掛けたのは、1993年に、m.c.A・T名義で日本語ラップが入ったナンバー「Bomb A Head!」をスマッシュヒットさせた富樫明生。
ラップとメロディの融合を90年代前半からトライしていた富樫明生は、当時のことをこう話しています。

「当時はまだ探り探りで、後韻が多くて一般の人にはダジャレみたいに聴こえるものばかりだった。僕も最初はそれに近いものを作っていたんだけど、やはり違うなって感じていて。それで考え出したのは、日本語の「ま」や「ぱ」や「だ」の子音とか、あとは「っ」の付く促音便とか、そういう部分を活かした、つまりは韻を排除したラップだったんですね。」2014.12.7 Real Soundインタビューより

独自で開発したラップ手法に、イントロからプリズムな雰囲気のファンキーなサウンドが轟く『富樫印』の最高到達点が「if...」だと思います。メンバーのKenさんが斬りこむ、ギャングスタ風のラップは、マネしない方が無理無理無理無理!今も、カラオケで誰が歌うか取り合いになる、インパクト大の人気ラップソングです。

 

神イントロソング_第4位

 

第4位:「Wait & See ~リスク~」宇多田ヒカル
発売日:2000年4月19日
編曲:ジミー・ジャム & テリー・ルイス
イントロ秒数:17秒

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1998年に「Automatic」でメジャーデビューした宇多田ヒカルは、1年も経たない間に日本の音楽業界のトップに君臨。
90年代にTKプロデュースで音楽業界を席捲した小室哲哉がその才能を賞賛し「ヒカルちゃんが僕を終わらせた」と、語るほどの衝撃だった宇多田ヒカルの登場はデビューから2年目も勢いは全く衰えず、5枚目のシングル「Wait & See ~リスク~」は、80年代にジャネット・ジャクソンの『リズム・ネイション1814』をプロデュースしたジャム&ルイスが編曲とプロデュースを担当。イントロからスリリングでダイナミックな哀愁R&Bサウンドが響き、独特の譜割りでインパクトのあるフレーズの歌詞が綴られていきます。
歌は変わらない強さ持ってる 悩みなんて一つの通過点 大きすぎるブレスレットのように するり」当時まだ17歳。この説得力のある歌詞、今読んでも震えます。

 

神イントロソング_第3位

 

第3位:「恋のダンスサイト」モーニング娘。
発売日:2000年1月26日
編曲:ダンス☆マン
イントロ秒数:26秒

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イントロ一音目から響くオリエンタルなサウンドと正拳突きのような振付、低音専用スピーカーを意味する「ウーハー」を“恋の重低音”という、言葉の意味はよく分からないが、とにかくすごい感じがするフレーズで歌いきる。それだけに留まらず、ドイツのグループ、ジンギスカンが歌ったグループ名と同タイトルの曲をモチーフにしたコード進行で矢口真里が「SEXYビーム」と叫び、安倍なつみが「同じ人なら踊ろぜワイヤイ」と煽り立てる中毒性の高い、いや中毒になる要素だけで構成された怪曲。
1999年リリースの前作「LOVEマシーン」で日本全国の子供から大人の社長さんまで、みんなを踊らせたアイドルグループが次の一手として打ってきたこの曲のハチャ! メチャ!フルコースのヤバさは、絶対に忘れてはならない!そういう意味も込みでTOP3にランクイン!ほんと最高。

 

神イントロソング_第2位

 

第2位:「サウダージ」ポルノグラフィティ
発売日:2000年9月13日
編曲:ak.homma
イントロ秒数:9秒

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アレンジを担当したのは本間昭光。本間は、デビュー前のポルノグラフィティのライブを観た時、派手で華があるバンドのスタイルと、ボーカル岡野昭仁のライブハウスで聴いても言葉がきちんと聴こえる滑舌の良さとスピードの速い声に驚き、デビュー曲の「アポロ」からプロデュースを担当。
4枚目のシングルとなる「サウダージ」は、1997年に本間昭光が編曲を手掛けてヒットした、広瀬香美の「promise」と同じくイントロからラテンロックが響く哀愁アレンジで演出。J-POPでは王道の「失恋」というテーマに、ポルトガル語で「郷愁」「つらい思い出」を意味する言葉のタイトルをつけ、歌詞、メロディ、アレンジ、そして歌声のすべてを情熱的に彩ることで強い説得力と感じされるサウンドは2000年に完成した一つのJ-POPの発明だと思います。

 

神イントロソング_第1位

 

第1位:「Everything」MISIA
発売日:2000年10月25日
編曲:冨田恵一
イントロ秒数:27秒

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2000年の1位は、松嶋菜々子主演の月9ドラマ『やまとなでしこ』の主題歌に起用されたMISIAの「Everything」。
ドラマ『やまとなでしこ』は、心よりお金が大事と公言する松嶋菜々子演じる才色兼備な女性、桜子がお金では買えない本当の恋を見つけるまでを描いたラブコメディ。
イントロで響く夢の中にいるような柔らかいサウンドから、大切な人のことを想う気持ちにさせてくれる編曲を担当したのは冨田恵一。作曲を担当した松本俊明の優しい旋律を、ジャズミュージシャンも唸る複雑なコードを駆使しながら、心地よいサウンド作りを徹底的に拘ってこのアレンジを完成させました。
その拘りが「Everything」を聴いた人、一人一人が自分の歌として受けとることができる力を生み出しているのだと思います。20世紀の終りに生まれた神イントロは、永遠の愛されるラブバラードとして、今、この時間も誰かの一番大切な曲として響いています。


【2000年神イントロランキングの総評】

2000年という時代は、1998年にデビューした、宇多田ヒカル、MISIA、DOUBLE、嶋野百恵、SILVAといったR&B系シンガーのサウンドが世の中に浸透し、新しい時代を築き始めた時期。
そのサウンドをさらに磨き上げた曲がヒットチャートに名を連ね、神イントロランキングもその代表と言っても過言ではないMISIAの「Everything」が堂々の1位。成熟したR&B系シンガーが醸し出すサウンドへのカウンターカルチャーのように、オリエンタルなサウンドでダンスを魅せる「恋のダンスサイト」や、イントロのギターリフだけでロックの存在感を示した「Last Smile」、「HOTEL PACIFIC」や「サウダージ」といった懐かしさと哀愁を融合させ、情熱的なサウンドを構築した曲もランクイン。
一つのブームが大きな存在感を示していたからこそ、そのブームを軸にイントロだけでも様々な音楽ジャンルのアプローチで「ワクワク」する曲が揃っていた年だったと思います。

次回も1つの年をフォーカスし、「神イントロ」TOP10を紹介していきますのでよろしくお願いします。

 


 

【2000年イントロベスト25】

ランキングは25位まで決定したので、11位以下も下記に紹介します。
(藤田太郎調べ) 

 

ランキング1-10位ランキング11-20位

ランキング21-25位

 

さらに、YouTubeでイントロクイズとして楽しむことができます。

うたドン!【イントロクイズ】

 

 

【Profile】

藤田太郎

「30,000曲のイントロを0.1秒聴くだけでわかる男」イントロマエストロ。bayfm「9の音粋 」水曜日のラジオDJ、Tokyo FM『ももいろクローバーZのSUZUKI ハッピー・クローバー!』音楽コメンテーターを担当。フジテレビ『99人の壁』に出場し、ジャンル「90年代J-POP」でグランドスラム達成。日本初のクイズ専門店「ソーダライト」で毎月イントロクイズを出題中。

 

 

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Text&ランキング:藤田太郎